EU-DEMO(european demo)は、核融合・プラズマ物理学の装置。欧州の核融合ロードマップでITERの後に建設が計画されている実証炉の概念設計である。商用規模での発電とトリチウム燃料の自己供給を実証することを主目的とし、ブランケットやダイバータ、プラズマ性能等の統合的な設計検討が進められている。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは169本ある。比重が最も大きかったのは2020–2024年で、その期間の論文の0.91%を占めた。直近の2025–2029年では0.61%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1995年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
EU-DEMO(European DEMO)は、欧州の核融合ロードマップにおいてITERの次に位置づけられた実証炉(DEMO、demonstration power plant)であり、発電の実証と閉じた燃料サイクル(トリチウムの増殖・回収)の実現を目指す、ITERと商業炉との間をつなぐ単一のステップとして構想されているトカマク型炉である。欧州ではEUROfusionの下で2010年代から予備概念設計(pre-conceptual design)、続く概念設計(conceptual design)段階の研究が進められており、炉心物理からブランケット、ダイバータ、安全設計まで広範な設計研究の対象となっている。

fig.01 European DEMO design strategy and consequences for materials (2017) · CC BY 4.0
Schematic of a DEMO power plant.
図はDEMO発電プラントの主要システム構成を示したブロック図である。トカマク本体(真空容器・磁石・ブランケット・ダイバータ)を中心に、増殖したトリチウムを回収する燃料回収系、一次冷却系と中間ループを経由してタービン発電機へ熱を送る系統、パルス電源や定常電源、クライオプラント、遠隔保守用ホットセルなどが一つの発電所として描かれている。DEMOが単一の実験装置ではなく発電プラント全体として設計対象であることを示す図である。
欧州融合ロードマップにおける位置づけ
欧州のロードマップでは、ITERで核融合の物理・技術基盤を確立した後、DEMOによって実際に電力網への送電と閉燃料サイクル運転を実証し、その後の商業炉につなぐこととされている。DEMOはITERのように単一の物理実験装置ではなく、数百MW規模の正味電力を発生させる発電所として設計されるため、設計思想が大きく異なる。ITERがQ=10(入力加熱電力に対する核融合出力の比)の設計点を持つのに対し、DEMOははるかに高い核融合出力、高い正規化ベータ、プラズマ全領域にわたる高温、高い燃料供給率、高いコア放射損失割合という、より厳しい条件に直面する。
設計の進め方としては、各サブシステムの技術的成熟度を技術準備レベル(TRL)で評価し、最終解を待たずに成熟した技術から選定する「低外挿(low extrapolation)」のアプローチが初期の設計統合研究の基礎となった。各サブシステムで究極の最適解を待つことは融合電力の実現を無期限に先送りするというロードマップ上の判断がその背景にある。このためDEMOは「点設計(point design)」として、物理・技術の不確実性を明示的にマージンとして扱うシステムエンジニアリング的手法で設計が進められている。
設計点と設計駆動要因
EU-DEMOの0次元設計点はシステムコードPROCESSを用いて導出され、2017年に公式なベースラインが作成された。その後のG1ゲートレビュー(2020年)では、設計上の重大な問題が複数指摘された。すなわち、閉じ込め性能の仮定に対する感度が高すぎて設計マージンがないこと、95%磁気面の安全係数 q95 が運転上限と考えられる3.0に設定され余裕がないこと、再接合時の異常事象でダイバータ熱流束が許容値を超えること、軸上トロイダル磁場が高く低温マスの機械構造が大型・高価になること、中央ソレノイドの繰り返し数が多く疲労設計を支配すること、ブランケットの遠隔保守に実現可能な解がないこと、である。
これを受けて、閉じ込めのエピステミック(認識論的)不確実性に対して q95 を介した設計マージンを設計最適化問題に自己無矛盾に組み込む手法が開発された。プラズマ性能が想定より低い場合には定常運転からパルス運転へ後退して性能を回復する戦略も設計に織り込まれている。ステークホルダー要求としては正味電力300〜500 MWe、パルス長2時間以上が掲げられている。2018年ベースラインでは主要半径約9 m、プラズマ電流約17.5 MA、軸上トロイダル磁場約5.9 T、核融合出力2 GW、パルス長7200秒という規模が示されている。
![Left: Pulsed EU-DEMO 2018 baseline parameters [7, 8]. Right: Vacuum vessel and flux surface geometry for one of the simulations with direction of the ion \vec{\nabla} |B| drift.](https://fusionpapers-figures.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/nfad7612f1.jpg)
fig.1 The feasibility of the L-H transition for a purely electron-heated EU-DEMO tokamak (2024) · CC BY 4.0
Left: Pulsed EU-DEMO 2018 baseline parameters [7, 8]. Right: Vacuum vessel and flux surface geometry for one of the simulations with direction of the ion \vec{\nabla} |B| drift.
図はパルス運転EU-DEMO 2018ベースラインの主要パラメータ表(左)と、シミュレーションで用いられた真空容器と磁束面の断面形状(右)である。表には主要半径9.0 m、プラズマ電流17.75 MA、軸上磁場5.85 T、核融合出力2 GW、パルス時間7200秒、補助加熱130 MWなどが並んでおり、右図にはイオンの∇|B|ドリフト方向も示されている。この規模感が、後述するダイバータやブランケット設計の境界条件を定めている。
炉心シナリオと物理基盤
DEMOの設計を支える物理知見は「DEMO物理基盤(DEMO Physics Basis)」として体系化が進められており、シナリオモデリング、輸送、MHD、加熱・電流駆動、高速粒子、プラズマ壁相互作用、ディスラプションの各分野が研究対象となっている。ITERからの外挿がITER自体の外挿より大きいため、設計点の一貫性を詳細レベルで確保することが課題となる。
経済性の観点からは、エネルギー閉じ込め時間を最大化する高閉じ込めモード(Hモード)運転が最有力候補であり、L-H遷移へのアクセスが設計上の鍵となる。特にDEMOでは加熱が電子サイクロトロン加熱(ECRH)など電子加熱に偏る可能性があり、L-H遷移しきい値がイオン熱流束に依存するという実験的知見の下では、純電子加熱での遷移達成が自明でない。核融合生成アルファ粒子による加熱がこのしきい値の達成を助ける役割を果たすことが、ASTRA等を用いた輸送解析で検証されている。また、タングステン等の不純物(アルゴン、キセノン等)の注入濃度が遷移条件とダイバータ排熱の両方に影響するため、シナリオ設計とパワー排気戦略は密接に結びついている。
増殖ブランケットとトリチウムシステム
DEMOの閉燃料サイクルを実現する中核部品が増殖ブランケットであり、欧州ではヘリウム冷却ペブルベッド方式(HCPB)と水冷却リチウム鉛方式(WCLL)の2概念が並行して開発されてきた。HCPBは固体増殖材を用いヘリウムで冷却する方式、WCLLは液体リチウム鉛(LiPb)を増殖材兼冷却材とする方式である。両方式についてブランケットモジュールの熱構造設計、LiPbループの統合、トリチウムの浸透を抑える防食・抗浸透バリアコーティングの開発、トリチウム抽出システムと冷却材精製システムの概念設計が進められている。
G1ゲートレビュー以降、両ブランケット概念の性能評価が進むと、プラント正味電力の観点でHCPBが有利との評価が示され、設計の重点がHCPB側に移る方向となった。ブランケットの遠隔保守はゲートレビューで解が見えていなかった課題の一つであり、モジュール交換の概念も設計統合の重要な駆動要因となっている。また、増殖ブランケットを備えた炉での安全性評価として、冷却材喪失事故(LOCA)や真空容器真空喪失事故(LOVA)などの設計基準事故・設計基準を超える事故について、MELCOR等を用いた決定論的解析が実施され、トリチウムやタングステンダストの移行・放出評価、水素爆発リスク評価まで含めた安全設計研究が行われている。
ダイバータとパワー排気
DEMO設計上最も厳しい課題の一つが、プラズマから放出される巨大な熱出力の処理である。核融合出力2 GW級の炉では、主プラズマとダイバータでの放射冷却によって総加熱電力の8割以上(frad ≥ 0.8)を放射で除去することが必要とされる。これはITERで求められる0.6〜0.7を上回る値であり、同時にダイバータターゲットのピーク熱流束を中性子照射環境下で10 MW/m²レベルに抑えなければならない。このため、不純物(アルゴン等)シードによる放射冷却を用いた排熱シナリオが中心となり、SOLPS-ITER等を用いたプラズマ周縁シミュレーション(ドリフトや運動論的中性粒子を含む解析)と、カセット構造の熱流動・熱構造解析が組み合わされて設計が進められている。ダイバータ保護の評価指標(figure of merit)の整備も行われている。

fig.8 Preliminary accident analysis of the loss of vacuum in vacuum vessel for the European DEMO HCPB blanket concept (2024) · CC BY 4.0
One cassette design of the divertor.
図はダイバータカセット1枚の設計例である。カセット本体、インボード・アウトボードのターゲット板、中性子遮蔽ライナ、リフレクタ、冷却水の入口・出口配管、ウォッシュボーン(支持・位置決め部材)などの構成要素が示されている。ターゲット部にはタングステンモノブロックが用いられ、その背後のヒートシンク構造で10 MW/m²級の熱流束を冷却水へ除去する。垂直変位イベントなどの電磁過渡がカセットに与える機械的影響も設計解析の対象となっている。
加熱・電流駆動とプラント統合
G1ゲートレビュー以降、EU-DEMOの加熱・電流駆動系は電子サイクロトロン(EC)のみで構成する方針が採られた。総計130 MWの補助加熱電力を想定し、そのうち約30 MWを炉心部のバルク加熱に、約30 MWを新古典・ティアリングモード(NTM)などMHD不安定の局所制御用の狭いビームに、さらに約70 MWをタングステン流入時の放射不安定対策としてプラズマ縁での入射に備える、という配分が概念設計の基礎となっている。電源は2 MW級同軸キャビティジャイロトロンをクラスタにまとめ、真空波導管と準光学系を組み合わせた伝送路でトカマク建屋まで送り、赤道ポートのミラーアンテナから入射する構成が検討されている。スリット型ICRFアンテナの設計研究など、他の加熱方式の選択肢も残されている。プラズマ立ち上げ・立ち下げの支援やブレークダウン支援もEC系の任務に含まれる。
プラント統合の観点では、加熱・燃料供給ラインのブランケット内での配線・配管統合、二次系統(発電系)のサイクル設計、水冷却系の水化学と腐食対策、中性子輸送解析のためのモンテカルロ計算ツールの整備など、個別部品設計を発電所全体として矛盾なく組み上げるための研究が進められている。これらの設計研究は、ITERの建設経験と産業界の参画を得ながら、商業炉への道筋を示す概念設計として2020年代半ばのゲートレビューに向けて更新が続けられている。
この解説が根拠にした論文から
- European DEMO design strategy and consequences for materialsNuclear Fusion 2017
- Advances in the physics basis for the European DEMO designNuclear Fusion 2015
- Power exhaust concepts and divertor designs for Japanese and European DEMO fusion reactorsNuclear Fusion 2021
- Preliminary accident analysis of the loss of vacuum in vacuum vessel for the European DEMO HCPB blanket conceptNuclear Fusion 2024
- Conceptual design of a modular EC heating system for EU-DEMONuclear Fusion 2024
- The feasibility of the L-H transition for a purely electron-heated EU-DEMO tokamakNuclear Fusion 2024
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推移
研究の変遷
1995–20041本 · 0.01%
欧州DEMOブランケット概念の比較検討
この時期は欧州DEMOのブランケット概念に関する検討が1件のみ行われている。4つの欧州DEMOブランケット概念の比較解析であり、DEMOブランケットという主题との関連のみが見られる。
同時に語られた主題DEMOブランケット
この時代の論文から
- Comparative availability analysis of the four European DEMO blanket concepts in view of the selection exerciseFusion Engineering and Design 1997
2005–20143本 · 0.02%
設計・維持戦略と核・電磁解析の基盤構築
欧州DEMOの設計と維持戦略、ブランケットの電磁荷重解析、中性子解析など、設計基盤を構築する研究が3件行われた。いずれも概念設計や解析手法の開発に関わるものであり、まだ研究数は少ない。
この時代の論文から
- European DEMO design and maintenance strategyFusion Engineering and Design 2008
- Analysis of electromagnetic loads on EU-DEMO inboard and outboard blanket vertical segmentsFusion Engineering and Design 2014
- Neutronic analyses and tools development efforts in the European DEMO programmeFusion Engineering and Design 2014
2015–2026165本 · 0.66%
設計戦略・物理基盤・ブランケット・ダイバータ研究の急増
この時期には160件と急増し、EU-DEMOの設計戦略と材料、物理基盤、放射化・廃棄物、ダイバータ保護など多岐にわたる研究が展開された。関連主题としては、増殖ブランケット、水冷鉛リチウム、熱流動、プラズマ対向機器、第一壁、ヘリウム冷却ペブルベッド、真空容器、リチウムなどが挙げられ、ITERやJT-60SAの知見も参照されている。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題増殖ブランケット、水冷却鉛リチウム、熱水力、プラズマ対向機器、第一壁、ヘリウム冷却ペブルベッド
この時代の論文から
- European DEMO design strategy and consequences for materialsNuclear Fusion 2017
- Advances in the physics basis for the European DEMO designNuclear Fusion 2015
- Activation, decay heat, and waste classification studies of the European DEMO conceptNuclear Fusion 2017
- Waste implications from minor impurities in European DEMO materialsNuclear Fusion 2019
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている(EU-DEMO、european demo など)。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文26本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、7本の論文(うち全文7本)と3枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
