J-TEXT(j-text tokamak)は、核融合・プラズマ物理学の装置。中国・華中科技大学に設置された中型トカマク実験装置で、共鳴磁場摂動(RMP)を用いたモード同期・磁気島形成とその抑制、密度限界および逃走電子の制御など、プラズマのMHD安定性と輸送現象を実験的に研究するために用いられる。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは184本ある。比重が最も大きかったのは2020–2024年で、その期間の論文の0.67%を占めた。直近の2025–2029年では0.52%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは2005年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
Tokamak device at Huazhong University
解説
J-TEXT は、中国・華中科技大学が運用する中型トカマク実験装置である。もともと米国テキサス大学で TEXT として、後に TEXT-U として運用された装置の主要機器を移設したものであり、現在は中国側で J-TEXT の名称のもと、高温トカマクプラズマの閉じ込めと安定性に関する基礎物理と制御手法の開発を長期研究プログラムとして進めている。その成果は ITER の運転や中国次世代炉 CFETR の設計に資することを目指すものである。装置の断面とポート配置、診断機器の設置状況を示したのが次の図である。

fig.2 First application of the island divertor configuration in the J-TEXT tokamak (2025) · CC BY 4.0
Layout of the wall geometry and plasma diagnostics for the formation of the island divertor configuration on J-TEXT.
図は装置の上面図を中心に、リミター、高磁場側ターゲット、各ポートに設置された診断(偏光干渉計 POLARIS、CCD カメラ、再入射型プローブ系など)の配置を示したものである。装置はリミター配置を基本としつつ、TEXT-U 由来のポロイダルダイバータコイルを備え、ダイバータ配置での運転にも対応する点が特徴である。以下、装置と研究プログラムの概要、電子サイクロトロン加熱、共鳴磁気擾乱と MHD・ディスラプション、端部プラズマ物理、診断と制御の順に概観する。
装置と研究プログラム
J-TEXT は主要プラズマ半径 20 数 cm 程度の中型円形断面トカマクであり、リミター配置を基本構成とする。多くの現代トカマクが軸対称ダイバータを標準装備するなかで、リミター装置として運用できることは、端部プラズマの物理を隔離された条件で調べるうえでむしろ利点となる。実際、高磁場側端部に生じる高密度領域(後述)の観測において、J-TEXT では他装置で顕著な強い放射が見られないことが報告されており、これはポロイダル方向に局在した小面積リミターを用いる同装置特有の配置に起因すると考えられている。
研究プログラムは、電子サイクロトロン共鳴加熱(ECRH)による加熱物理、MHD 不安定性とディスラプション制御、乱流輸送、端部プラズマ物理という物理主題を柱とし、それを支える診断・加熱・電源システムの開発を並行して進める構成をとる。2016 年以降は高磁場側に設置したダイバータコイルを用いた運転が整備され、2018 年末にダイバータ配置での放電が初めて実現した。さらに近年は、RMP コイルが作る端部磁気島を排気経路として利用する「アイランドダイバータ」配置の構築が進められている。磁力線のピッチが通常のトカマクダイバータより桁違いに小さく接続長が長くなるため、実効的な半径方向輸送が増大してターゲットへのピーク熱負荷が下がるというのがこの配置の原理であり、ステラレータ(W7-X など)で長時間の安定デタッチメントが実現された実績をトカマクに持ち込む試みである。
ECRH システムと加熱物理
J-TEXT の主加熱手段は 105 GHz のジャイロトロンによる ECRH である。2017 年に開発が始まり、2019 年に 1 号機(500 kW・1 秒)が実験投入され、2022 年に 2 号機が調整を終えた。両ジャイロトロンからの同時注入により合計 1 MW が利用可能となり、2023 年には両系統の同時注入で中心電子温度が 2 keV を超えるまで上昇した。1 号機単独の 400 kW 超の注入でも、中心電子温度は約 0.9 keV から約 1.5 keV へ上昇している。システムの構成と注入実績を示したのが次の図である。
![(a) Layout of the 105 GHz ECRH system on J-TEXT. (b) Schematic of the ECRH launcher. The microwave is reflected by the focusing mirror and the steering mirror in turn. (c) A typical discharge with 350 kW ECRH [4].](https://fusionpapers-figures.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/nfac3afff1.jpg)
fig.1 Advances in physics and applications of 3D magnetic perturbations on the J-TEXT tokamak (2022) · CC BY 4.0
(a) Layout of the 105 GHz ECRH system on J-TEXT. (b) Schematic of the ECRH launcher. The microwave is reflected by the focusing mirror and the steering mirror in turn. (c) A typical discharge with 350 kW ECRH [4].
図の (a) はジャイロトロンから波源、伝送系、ランチャーに至る全体配置、(b) は集光ミラーとステアリングミラーでマイクロ波を反射してプラズマへ注入するランチャー内部の光路、(c) は 350 kW の ECRH を注入した典型放電で、注入に伴い電子温度が上昇し、軟X線信号が増大する様子を時間発展で示している。伝送系はコルゲート導波管 2 系統で、損失は 7–12% にとどまり、1 MW の発生電力のうち 800 kW 超をプラズマに注入できる。ランチャーはトロイダル方向 −10°〜+15°、ポロイダル方向 −15°〜+15° の範囲で独立に走査でき、加熱位置と電流駆動位置を選べる。動作モードは装置のトロイダル磁場に合わせて第二高調波 X モードが標準である。ECRH は加熱だけでなく、電子熱輸送や温度揺らぎの研究、放電の予備電離、ディスラプション時のランナウェイ電子挙動への影響の解明など、幅広い物理実験の道具としても使われている。
共鳴磁気擾乱、MHD とディスラプション
J-TEXT の MHD 研究の中心にあるのは、共鳴磁気擾乱(RMP)コイル系である。この系は最大回転周波数 6 kHz の回転らせん磁場擾乱を発生でき、主な共鳴モードは m/n = 2/1、3/1、1/1 である。回転する RMP を印加すると、もともと壁に固定されてロックしていたティアリングモードが RMP の回転に引きずられて共回りするようになることが観測されており、これは磁気島を外部から加速するという初の直接観測である。擾乱振幅が十分大きければモードロッキングが起こり、逆に中程度の振幅では m/n = 2/1 ティアリングモードの抑制が観測される。これらのモードロッキングと抑制は、縮約 MHD 方程式に基づく非線形数値計算でよく再現されている。RMP コイル配置と、それが作る端部磁場位相空間の構造を示したのが次の図である。

fig.1 Dynamic characteristics of edge plasma profiles during the opening of edge islands on the J-TEXT tokamak (2024) · CC BY 4.0
(a) Layout of the RMP coils in J-TEXT, and the position of the reciprocating Langmuir probe. (b) 2D Fourier (m, n) spectrum of the radial magnetic field {B_r} generated by RMP coils at the plasma edge. (c)–(d) Poincaré plots of the plasma cross-section {\phi _{{\text{tor}}}} = {337.5^\circ } for first and second RMP configurations, with three limiters at {\phi _{{\text{tor}}}} = {337.5^\circ } indicated by black rectangles. The real parameter settings used in the prediction of magnetic topology are from discharges 1056901 and 1056898.
図の (a) はトーラス周囲に配置された RMP コイルと再入射型プローブの位置、(b) はコイル電流が作る半径方向磁場の二次元フーリエスペクトルで m=1〜5 の成分分布を示し、(c)(d) は二つの RMP 設定でのポアンカレ図で、端部に磁気島鎖と確率的磁場領域が形成される様子を見せるものである。RMP が作る磁気島はプラズマの温度・密度分布を局所的に平坦化し、島のセパラトリックス近傍の強い流れ剪断は輸送障壁の形成を促す。RMP の振幅と周波数がディスラプション防止に及ぼす効果も系統的に調べられ、RMP なしではロッキングからディスラプションに至るティアリングモードが、回転 RMP によって RMP 周波数まで加速され、ロッキングとディスラプションが遅延または防止されることが示された。
ディスラプション研究では、特にランナウェイ電子の制御が重点課題である。ディスラプション時に生成されるランナウェイ電子ビームは軟X線検出器アレイで直接観測されており、RMP のモードペネトレーション(擾乱がプラズマ内部まで侵入すること)によってランナウェイ電子の生成が完全に抑制できること、逆にディスラプション中の電子サイクロトロン共鳴加熱はランナウェイ電子電流をかえって増大させること、モードロッキング自体がランナウェイ電子を抑制する働きを持つことが報告されている。破片ペレット注入(shattered pellet injection)システムの整備も進められており、ディスラプション緩和手段の多様化が図られている。また RMP がディスラプション限界に与える影響についても実験的研究が行われている。
端部プラズマ物理、バイアスとダイバータ配置
端部プラズマ物理は J-TEXT のもう一つの柱である。電極バイアス(EB)システムを用いた実験が特に豊富で、リミター配置では端部の流れ剪断を強めて乱流を抑制し閉じ込めを改善すること、プラズマ回転を変調すること、m/n = 2/1 ティアリングモードを制御すること、負バイアスによって測地音響モード(GAM)を励起すること、ブロブ(端部から飛び出す高密度構造)のダイナミクスを変化させること、放電密度限界を高めることなどが示されてきた。バイアスによる電場制御は、端部乱流輸送と密度限界の関係を調べる手段としても使われ、密度上昇に伴う端部流れ剪断の崩壊と乱流輸送の増大が高磁場側高密度領域(いわゆる MARFE/HFSHD)の出現に先行することが観測され、微視的乱流と巨視的熱的不安定性を結びつける実験的証拠が得られている。
ダイバータ研究では、高磁場側赤道面に X 点を持つ単極配置(HFS-MSN)が特徴である。これは赤道面に対して上下対称なダイバータ構造を持つ、現存唯一のトカマク配置であり、装置幾何の影響を排除して上下非対称性の物理を純粋に調べられる点が利点である。この配置を用いて、端部の半径方向電場を電極バイアスで能動的に変調し、E×B ドリフトがダイバータの粒子・熱流束の上下非対称性を決める機構が実験と SOLPS-ITER 流体シミュレーションの両面から検証されている。さらに前述のアイランドダイバータ配置の構築が進められており、3/1 や 4/1 の端部磁気島を利用した熱排気と不純物制御の効果が調べられている。RMP が作る端部磁気島が開く過程での端部プラズマ分布の動的変化も観測され、磁気島とリミターの相互作用を通じた不純物遮蔽効果への影響が示されている。
診断と制御システム
物理研究を支える診断・制御系の開発も J-TEXT の重要な活動である。代表的なのは三波法に基づく偏光干渉計 POLARIS で、電子密度とファラデー回転角(電流分布の情報)を同時に、時間分解能 1 µs、位相分解能 0.06°、空間分解能約 3 cm で測定できる。この高分解能により、鋸歯状振動やティアリングモードに伴う磁場・密度擾乱の観測や、平衡の速い動力学、電流密度分布の再構成が可能になっている。主診断系の配置を示したのが次の図である。

fig.1 Critical roles of edge turbulent transport in the formation of high-field-side high-density front and density limit disruption in J-TEXT tokamak (2025) · CC BY 4.0
Arrangement of the main diagnosis. (a) Cross-section of J-TEXT tokamak, viewing lines of the J-TEXT PDA (in blue) and POLARIS (in magenta), respectively. (b) Top view of J-TEXT tokamak, POLARIS and CLP are toroidally separated by 45◦. (c) The configuration of CLP array.
図の (a) は装置断面に重ねた POLARIS と水素線放射アレイの視線、(b) は上面図で POLARIS と炭素リミタープローブ(CLP)がトロイダル方向に 45° 離れて配置されていること、(c) は CLP アレイのマッハプローブと二重プローブの構成を示している。このほか、75–140 GHz 帯の 256 チャンネル電子サイクロトロン放射イメージング(ECEI)システム、40–60 GHz 帯の多チャンネルドップラー反射計、遠赤外レーザーを用いた集団散乱系、LCFS をまたぐ 10 cm × 10 cm 領域を毎秒 10 万フレームで撮影するガスパフイメージング(GPI)、静電・磁場揺らぎを同時測定する複合ラングミュア・磁気プローブ、時間分解能を 40 ms から約 2 ms に改善した真空紫外分光系など、端部から中心部までの揺らぎと輸送を覆う診断群が整備されている。
制御系では、プラズマ水平位置制御のロバスト制御設計、リミター配置とダイバータ配置のそれぞれでの制御性能評価、リアルタイムフレームワーク上に構築されたダイバータ電源の新制御系、EPICS 互換のスロープラント制御器などが開発されている。また、磁気診断に影響を与える装置機械振動の測定や、アルフベンアンテナ、軽不純物輸送研究用の分光診断システムなど、装置インフラの整備も継続的に行われている。これらの基盤の上に、前節までの物理研究が成り立っている。
この解説が根拠にした論文から
- Recent research work on the J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2013
- Overview of the recent research on the J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2015
- Advances in physics and applications of 3D magnetic perturbations on the J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2022
- Disruption prevention using rotating resonant magnetic perturbation on J-TEXTNuclear Fusion 2020
- Overview of the recent experimental research on the J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2024
- Dynamic characteristics of edge plasma profiles during the opening of edge islands on the J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2024
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推移
研究の変遷
2005–201426本 · 0.17%
J-TEXT計測・摂動場実験の開始期
この時代は、J-TEXTトカマクの装置報告と、共鳴磁気摂動(Resonant magnetic perturbation)や磁気摂動の侵入・粒子輸送への影響に関する研究が中心である。X線イメージングや干渉計、Experimental Physics and Industrial Control System、Control, Data Access and Communicationなど計測・制御技術とともに論じられ、回転共鳴磁気摂動による磁気島回転加速の初観測(2013年)などが代表的な成果である。全タイトルに占める割合は0.17%と小さいが、装置固有の研究が立ち上がりつつある時代である。
同時に語られた主題共鳴磁場摂動、磁場摂動、X線イメージング、干渉計、EPICS、CODAC
この時代の論文から
- Recent research work on the J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2013
- Study of the penetration of resonant magnetic perturbations in J-TEXTNuclear Fusion 2014
- Enhanced particle transport caused by resonant magnetic perturbations in the J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2014
- First observation of rotation acceleration of magnetic island by using rotating resonant magnetic perturbation on the J-TEXT tokamakPlasma Physics and Controlled Fusion 2013
2015–2026158本 · 0.63%
プラズマ disruption・3次元磁気摂動研究の拡大期
この時代は、プラズマ disruption(26件)や磁気摂動(23件)、共鳴磁気摂動(20件)と並んで、電子サイクロトロン加熱、テアリングモード、 runaway electron、プラズマ診断、電源といったテーマとともにJ-TEXTが論じられる。密度限界 disruption 予測へのハイブリッドニューラルネットワーク適用(2018年)や disruption 時の runaway electron 生成(2017年)、3次元磁気摂動の物理と応用(2022年)など、装置研究から物理機構・予測制御へと対象が広がっている。ITERやASDEX-Upgradeとの関連も現れ、タイトル占有率は0.63%へ増加した。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題プラズマディスラプション、磁場摂動、共鳴磁場摂動、電子サイクロトロン加熱、逃走電子、テアリングモード
この時代の論文から
- Plasma flows and fluctuations with magnetic islands in the edge plasmas of J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2015
- Overview of the recent research on the J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2015
- Hybrid neural network for density limit disruption prediction and avoidance on J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2018
- Runaway electron generation during disruptions in the J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2017
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている(J-TEXT、j-text tokamak など)。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文100本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、9本の論文(うち全文6本)と4枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
