テアリングモード(Tearing mode、tearing、tearing modes)は、核融合・プラズマ物理学の現象。有理面で磁気リコネクションにより磁気島を形成する抵抗性MHD不安定性で、電流密度勾配によって駆動される。トカマクでは閉じ込め劣化やディスラプションの要因。新古典テアリングモードはブートストラップ電流の摂動で駆動され、高ベータ運転を制限する。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは523本ある。比重が最も大きいのは直近の2025–2029年で、その期間に発表された論文の1.15%を占める。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1975年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
テアリングモード(tearing mode)とは、磁力線の再結合(マグネティック・リコネクション)によって、トカマクなど環状磁気閉込めプラズマ中の有理面に螺旋状の「磁気アイランド(磁島)」が生成・成長する磁気流体力学(MHD)不安定性である。名前は、平衡時には一様だった磁気面が「引き裂かれて」新しいトポロジーを作ることに由来する。磁島ができると熱と粒子が磁力線に沿って島の内外を行き来するようになり、閉込めが局所的に失われる。さらに島が成長してプラズマ回転と同期して停止すると大破壊(ディスラプション)に至ることもあり、テアリングモードの物理の理解と制御は、ITER 以降の炉規模装置にとって死活的な課題となっている。
磁気アイランドとテアリング不安定性
トカマクの磁場はトロイダル(環方向)成分とポロイダル(極方向)成分の組み合わせでできており、磁力線は安全因子 q で特徴づけられる螺旋を描く。q が有理数 m/n となる磁気面では、摂動磁場が平衡磁場と共鳴でき、そこで磁気面の再結合が起こりやすい。テアリングモードは、ポロイダル・トロイダル方向にそれぞれ m 個・n 個の周期をもつ螺旋構造で現れ、代表的なものとして m/n = 2/1 や 3/2 モードが知られる。
再結合の駆動力は、電流密度分布の中に蓄えられた自由エネルギーである。有理面を挟んで平行電流分布が「折り畳まれた」形状(電流勾配が不連続に近い形状)を持つとき、摂動による磁気エネルギーを下げる方向に再結合が進む。この安定性の尺度がテアリング安定性パラメータ Δ′ で、Δ′ > 0 なら線形に不安定となる。ただし実際のトカマクでは、抵抗のために磁力線が凍結される理想 MHD 的性質が有理面のごく薄い層で破れるという構造をとり、成長は抵抗拡散時間スケールの遅いものになる。この「理想領域+抵抗層」の漸近接合(層構造理論)がテアリングモード線形理論の骨格である。
磁島が形成されると、磁力線に沿った熱伝導が島の幅にわたって急激に強まり、島の内部で電子温度・圧力分布が平坦化される。これがテアリングモードのあらゆる帰結――閉込め劣化、次に述べる新古典的駆動、そして検出の物理――の出発点になる。実際のトカマク平衡はシャフラノフ・シフトや断面の楕円性・三角性をもつため、単一のモード数では記述できず、複数のポロイダル高調波が結合した島列となる。また島は有理面に対して半径方向に非対称に広がる。次の図は、そのような非対称磁島の周りの規格化電子温度分布の等高線を示したもので、太い実線が磁気分離面、点線が有理面、黒点が島の O 点(磁場再結合の中心)である。分離面の内側で温度が平坦化され、外側では平衡温度勾配が保たれている様子が分かる。

fig.15 Investigation of neoclassical tearing mode detection by ECE radiometry in an ITER-like tokamak via asymptotic matching techniques (2026) · CC BY 4.0
Contours of the normalized electron temperature profile, \tilde{T}(x/W,\zeta), in the vicinity of an asymmetric magnetic island characterized by δ = 0.5. The thick solid line shows the magnetic separatrix, the dotted line shows the rational surface, and the black dot shows the island O-point.
修正ラザフォード理論と島の発展
線形段階を過ぎた島の幅 w の時間発展は、修正ラザフォード方程式と呼ばれる発展方程式で記述される。元のラザフォード理論では、島の成長速度は Δ′ と抵抗性拡散で決まり、Δ′ < 0 なら島は飽和幅に収束する。ところが磁島内部で圧力勾配が平坦化されると、圧力勾配駆動の非誘導電流であるブートストラップ電流がその領域から失われる。この局所的な電流欠損が元の電流の折り畳みを強め、島をさらに成長させる。これが新古典テアリングモード(NTM)の本質的な機構であり、ブートストラップ電流項の寄与は 1/w に比例するため、いったん島ができれば小さな種島でも成長が加速される。
この 1/w 則が文字通りに成り立つなら、どんな小さな摂動でも最終的に大きな島へ育つはずであり、すべての放電が不安定になることになる。しかし実験では、十分に小さい種島は自然に癒えて消滅するという閾値効果が観測される。閾値を生む候補として二つの機構が知られている。第一は有限輸送効果で、島の幅が輸送の横方向拡散長より小さいときは圧力勾配の平坦化が不完全になり、ブートストラップ電流の欠損が減って駆動が弱まる。第二は分極電流で、島がプラズマに対して周波数 ω で伝播するとき、イオンと電子の応答の違いが静電ポテンシャルと分極電流を生み、その反平行電流が島の発展に寄与する。トロイダル幾何では grad-B ドリフトと曲率ドリフトの合成により捕獲粒子がバナナ軌道を描き、その軌道幅 ρ_b に島幅が近づくと新古典分極電流の寄与(Δ_pol ∝ 1/w³)が顕著になる。これらの項が安定化側に働けば小さな種島は癒え、閾値幅 w_c が定まる。実際の観測では閾値幅がイオン・バナナ幅と同程度になる例が多く、有限粒子軌道幅効果を含めた定量理論が ITER の閾値予測のために発展している。さらに曲率と熱輸送を含めた非線形 MHD シミュレーションは、線形には安定でも有限サイズの種島によって非線形に不安定化される領域の存在を示しており、NTM の発生閾値が抵抗 MHD 的な意味でも形づくられることが分かってきた。
新古典テアリングモードと閾値物理
NTM は高ベータ放電における破壊の主要な原因であり、特に m/n = 2/1 と 3/2 モードが最も危険視されている。島が成長するとコアの熱が島に沿って外へ迂回し、閉込め性能が低下する。さらに島が成長して壁の誤差場など外部摂動と共鳴すると回転が止まって「ロックモード」となり、多くの場合大破壊に至る。
NTM の発生には種島の幅が閾値 w_c を超えることが必要で、w_c は種島自身が誘起する電流摂動――安定化側のブートストラップ電流摂動と、多くの場合不安定化側に働く分極電流――の競合で決まる。重要なのは、w_c が固定値ではなくプラズマ状態に依存して変動することである。例えば ITER ベースラインシナリオに合わせた DIII-D の約 300 例に及ぶ放電データベース解析では、q = 1 面と q = 2 面の間の差動回転が 0.8 kHz を下回ると 2/1 NTM が発生し、それ以上では安定であることが統計的に示された。種島がプラズマと共回転するようになると分極電流の符号が安定化から不安定化へ反転し、閾値幅が実験的な回転変化の範囲で最大 6 分の 1 まで低下する。つまり「どの過渡現象が NTM を引き起こすか」は種島を作る側だけでなく、閾値を下げる側の状態遷移によって決まる。この知見に基づき、ガスパフと密度ポンプアウトで差動回転を維持してテアリング安定な定常運転を実現する制御手法が開発されている。
種島の供給源としては、サトウキビ振動(sawtooth)、フィッシュボーン、エッジ局在モード(ELM)などの比較的穏当な MHD 過渡現象が挙げられる。どのサトウキビ・クラッシュや ELM が NTM を誘発するかを事前に決定することは原理的に不可能であり、NTM 発生は本質的に予測困難である。このため、発生を避ける戦略(テアリング回避)と、発生後すみやかに検出して鎮圧する戦略の両方が必要になる。検出には電子サイクロトロン放射(ECE)計測が主流で、光学的に厚いプラズマでは放射強度が電子温度に対応し、周波数から放射位置が分かることを利用して、島に伴う温度摂動から島の O 点の半径位置を実時間で求める。ITER のような高温・高密度プラズマでは相対論的効果による放射のシフトと広がりが位置決め精度を制限するため、高調波結合や島の非対称性を含めた精密な信号計算が診断設計に反映されている。
シーディング、回転とモードロッキング
NTM に至る経路は、まず過渡現象が種島を作り、その種島が閾値を超えて新古典的に成長するという二段階である。種島の形成には、サトウキビ・クラッシュの三波結合による 2/1 面への摂動伝播、フィッシュボーンなど高エネルギー粒子駆動のモード、ELM に伴う磁場摂動などが関与する。逆磁気せん断配位では二重テアリングモード(隣接する二つの有理面の島が結合するモード)が非線形に不安定化し、種島供給と NTM トリガの両方を担いうる。
回転はテアリングモードの振る舞いを二つの面から制御する。一つは前節の通り分極電流項への影響であり、島とプラズマの相対周波数がゼロに近づくと安定化が失われる。もう一つは外部共鳴摂動場(誤差場を含む)との共鳴である。回転する島は外部摂動を時間平均して打ち消しうるが、摂動が閾値を超えたり回転が遅くなったりすると島は外部場の位相に引き込まれて停止する。ロックした島は熱排出と電磁応力を局所化し、成長が加速されて破壊に直結する。ロッキング前後でモードの固有周波数が示す挙動は、回転と確率的磁場、外部摂動の共鳴相互作用として理論・実験の両面から研究されており、回転維持がテアリング回避の実効的な手段となっている。高エネルギー粒子との共鳴によってテアリングモードがフィッシュボーン活動を生む例もあり、島による高エネルギー粒子再分布が帯状フローやトロイダル・アルフベン固有モードを励起するなど、テアリングモードは微視的乱流や高速粒子物理とも結びつく。
電流駆動による制御と安定化
NTM 制御の主流は電子サイクロトロン電流駆動(ECCD)である。マイクロ波を島の位置に集めてプラズマ電流と同方向の局所電流を駆動し、島の内部で失われたブートストラップ電流を補償する。島幅が閾値以下に縮められれば島は自発的に癒える。ASDEX Upgrade、DIII-D、JT-60U、TEXTOR、TCV、EAST など多くの装置で有効性が実証されており、ITER における NTM 制御の第一候補とされている。
効率を上げる工夫がいくつも開発されてきた。島が回転している場合は、島の O 点が加熱位置を通過する半周期だけマイクロ波を出す変調 ECCD の方が、島幅が波の入射幅より小さいときには連続駆動より効率的である。成長前の早期に駆動する先制的 ECCD は必要電力を下げるが、小さな島の半径位置特定が難しいという課題を伴う。外部共鳴磁場摂動で島の O 点の位相を加熱位置の位相に固定して常時 O 点に照射する手法、マイクロ波駆動電流が島内に凝縮される効果を利用する手法なども理論と実験で検証が進む。一方で、密度摂動による波の沈着位置の広がりや、島と沈着位置の半径ずれは安定化効率を下げ、炉規模装置で必要となる電力を押し上げる要因となる。このため、ECE 計測による島位置の低遅延検出、複数モードの成長率の実時間推定、そして ECCD 位置の実時間追従を組み合わせた統合制御が、ITER ベースラインシナリオでのテアリング安定な長パルス運転に向けた中心的な研究課題となっている。
この解説が根拠にした論文から
- Finite ion orbit width effect on the neoclassical tearing mode threshold in a tokamak plasmaNuclear Fusion 2019
- Nonlinear three-dimensional MHD simulations of tearing modes in tokamak plasmasPlasma Physics and Controlled Fusion 2001
- Neoclassical tearing mode stabilization by electron cyclotron current drive in EAST tokamak experimentsNuclear Fusion 2024
- Detecting neoclassical tearing modes in high-temperature ITER plasma scenarios with the ITER prototype electron cyclotron emission diagnosticNuclear Fusion 2024
- Tearing stable stationary ITER baseline operation in DIII-DNuclear Fusion 2025
- Investigation of neoclassical tearing mode detection by ECE radiometry in an ITER-like tokamak via asymptotic matching techniquesNuclear Fusion 2026
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推移
研究の変遷
1970–198418本 · 0.73%
初期の理論的・配位研究
この時代の論文は、テアリングモードの非線形成長や拡散ピンチ配位の安定性といった理論的解析が中心である。プラズマ崩壊や逆転磁場ピンチ、電流駆動といった関連現象と共に議論されており、実験装置名はまだ登場しない。
同時に語られた主題プラズマディスラプション、逆磁場ピンチ、電流駆動、鋸歯状振動、低域混成波電流駆動、低域混成波
この時代の論文から
- Non-linear growth of the m = 1 tearing modeNuclear Fusion 1976
- Tearing-mode-stable diffuse-pinch configurationsNuclear Fusion 1978
- Tearing-mode activity for hollow current profilesNuclear Fusion 1979
- Stabilization of the (2, 1) tearing mode and of the current disruption in the W VII–A stellaratorNuclear Fusion 1980
1985–199428本 · 0.51%
安定化と電流分布制御の時代
この時代の論文は、テアリングモードの安定化を局所的な電流密度摂動や加熱・電流駆動によって達成することを扱っている。外部構造との相互作用や結合モードの安定性といった理論的課題も並行して研究された。実験装置名は明示されていないが、電流分布制御への関心が高まった時期である。
この時代の論文から
- Interaction of tearing modes with external structures in cylindrical geometry (plasma)Nuclear Fusion 1993
- Stability of coupled tearing modes in tokamaksNuclear Fusion 1993
- Tearing mode stabilization by local current density perturbationsNuclear Fusion 1990
- Effect of local heating on the m=2 tearing mode in a tokamakNuclear Fusion 1994
1995–200480本 · 0.81%
新古典テアリングモードとECCDによる安定化
この時代は、新古典テアリングモード(NTM)が主要な主題となり、電子サイクロトロン電流駆動(ECCD)による安定化実験がASDEX UpgradeやDIII-Dで実施された。高ベータ運転における抵抗性テアリングモードの制限や、シードアイランドの形成なども研究されている。ITERに向けた装置間比較の基盤も築かれた。
同時に語られた主題新古典的テアリングモード、電子サイクロトロン電流駆動、ダブルテアリングモード、逆磁場ピンチ、電流駆動、電子サイクロトロン加熱
この時代の論文から
- Experiments on neoclassical tearing mode stabilization by ECCD in ASDEX UpgradeNuclear Fusion 1999
- Complete suppression of the m = 2/n = 1 neoclassical tearing mode using electron cyclotron current drive in DIII-DNuclear Fusion 2004
- Seed island of neoclassical tearing modes at ASDEX UpgradeNuclear Fusion 1999
- High beta tokamak operation in DIII-D limited at low density/collisionality by resistive tearing modesNuclear Fusion 1997
2005–2014136本 · 0.88%
ITERに向けた制御とベンチマーク
この時代の論文は、ECCDによるNTM安定化のITERへの適用を視野に入れたクロス装置ベンチマークや、回転・共鳴磁場摂動(RMP)がテアリングモードに与える影響の解明を扱っている。DIII-DやTEXTOR、KSTAR、MASTなどの実験装置で制御手法が精力的に研究された。また、二重テアリングモードや磁気島の非線形発展も重要なテーマとして継続している。
同時に語られた主題新古典的テアリングモード、電子サイクロトロン電流駆動、電流駆動、ダブルテアリングモード、磁気島、逆磁場ピンチ
この時代の論文から
- Cross–machine benchmarking for ITER of neoclassical tearing mode stabilization by electron cyclotron current driveNuclear Fusion 2006
- Dependence of the threshold for perturbation field generated m/n = 2/1 tearing modes on the plasma fluid rotationNuclear Fusion 2006
- Neoclassical tearing mode control using electron cyclotron current drive and magnetic island evolution in JT-60UNuclear Fusion 2009
- Effect of externally applied resonant magnetic perturbations on resistive tearing modesNuclear Fusion 2012
2015–2026261本 · 1.04%
マルチスケール相互作用とITER応用
この時代は、テアリングモードが高周波揺動や高エネルギーイオンと相互作用するマルチスケール現象として研究されている。ITERのECランチャー設計に向けたNTM安定化モデリングや、プラズマ終息時のテアリングモード発生機構も扱われた。DIII-D、EAST、ASDEX Upgradeなどの装置で実験が進み、磁気島の非線形発展や流れの効果の解析が盛んに行われている。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題新古典的テアリングモード、ダブルテアリングモード、高エネルギーイオン、電子サイクロトロン電流駆動、電流駆動、磁場摂動
この時代の論文から
- On recent results in the modelling of neoclassical-tearing-mode stabilization via electron cyclotron current drive and their impact on the design of the upper EC launcher for ITERNuclear Fusion 2015
- Modelling and analytic studies of sheared flow effects on tearing modesNuclear Fusion 2015
- Experimental observation of multi-scale interactions among kink /tearing modes and high-frequency fluctuations in the HL-2A core NBI plasmasNuclear Fusion 2017
- Onset of tearing modes in plasma termination on JET: the role of temperature hollowing and edge coolingNuclear Fusion 2021
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている(Tearing mode、tearing、tearing modes など)。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文120本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、6本の論文(うち全文5本)と1枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
