逆磁場ピンチ(Reversed field pinch、RFP、reversed field)は、核融合・プラズマ物理学の現象。トロイダル磁場が周辺部で反転するトーラス状磁気閉じ込め配位で、ポロイダル磁場と同程度の強さを持つ。安全係数が1未満で高ベータ化が可能であり、自己組織化緩和(ダイナモ効果)により配位が維持される。磁気揺動とテアリングモードが輸送を支配し、単一ヘリカル状態などの改善閉じ込めが研究されている。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは400本ある。比重が最も大きかったのは1985–1989年で、その期間の論文の2.45%を占めた。直近の2025–2029年では0.14%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1975年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
Schematic drawing of poloidal cross-section, indicating minor radii of plasma limiter (a), stainless steel vacuum vessel (r_\mathrm{v}), sensor flux loops and double-layered copper shell (r_\mathrm{w}) and control coils (r_\mathrm{c}). Figure is not drawn to scale.
The toroidal and the poloidal components of the magnetic field as functions of the normalized radius r/a for the initial paramagnetic pinch equilibrium with a\lambda(0) = 3.8, where a is the minor radius of plasma.
緩和を担う微視的機構がMHDダイナモである。外部から印加されるループ電圧だけではトロイダル磁場の反転は維持できない。ダイナモ電場が外部のポロイダル磁束をトロイダル磁束に変換することで、ポロイダル電流と縁でのトロイダル磁場反転が持続する。実験では、プラズマ電流分布が次第に尖る上昇相を経て、複数の m = 1 ティアリングモードの非線形相互作用が閾値を超えると急速なクラッシュ相に移行する。クラッシュ時には磁気再結合が起き、(0,1) モードなどが急成長し、ダイナモ電場が磁束をコアから縁へ輸送して電流分布を平坦化する。この準周期的な緩和振動は「のこぎり歯振動」と呼ばれ、再結合は修正スウィート・パーカー則に従うことがRFXでのシミュレーションと実験の比較で示されている。電流分布の尖り方や抵抗率の空間分布(不均一性)がクラッシュの振る舞いを左右することも、三次元MHDシミュレーションで調べられている。なお、ダイナモ電場の起源としてはMHDスケールの速度揺らぎに加え、電気双極子ドリフトなど静電的な流れの寄与も指摘されており、単一ヘリカル状態では静電ポテンシャルのヘリカル変調が全ドリフトと同程度になりうることが示されている。
磁気乱流と異常輸送
m = 1 の有理面上に多数のティアリングモードが共存する標準状態(マルチヘリシティ状態)では、磁気島が互いに重なり合い、プラズマコアの磁力線が確率的(ストカスティック)につぶれた状態になる。入れ子になった磁面の破壊は粒子や熱の閉じ込めを直接損ない、RFPの標準運転における主要なエネルギー損失経路となる。実際、大電流運転での局所的なパワー・粒子収支の解析から、標準運転ではコアの輸送が磁気乱流に支配され、閉じ込めの多くを縁領域——強くシアした半径方向電場が存在する領域——が担っていることが示されている。磁気的には閉じ込めが劣るにもかかわらず、縁の電場シアによる輸送抑制が全体の性能を支えるという構図は、RFP特有のものである。
磁気乱流による異常輸送は、磁力線が半径方向にランダムウォークすることで熱・粒子を運ぶ機構であり、その強さは磁場揺らぎのスペクトル幅に依存する。揺らぎの n スペクトル幅を狭めると熱輸送が減少することが観測されており、乱流の制御が閉じ込め改善の直接の手段となる。
2015〜2026年は全タイトルの0.19%と大幅に減少したが、「The reversed field pinch」のような総説、RFX-modのアップグレード、MSTの実験総説が発表された。MHDモデリングが新しいヘリカル状態を予測し、トカマクとの密度限界比較や高エネルギーイオン・アルヴェン波といった関連現象も共に論じられた。