逆磁場ピンチ(Reversed field pinch、RFP、reversed field)は、核融合・プラズマ物理学の現象。トロイダル磁場が周辺部で反転するトーラス状磁気閉じ込め配位で、ポロイダル磁場と同程度の強さを持つ。安全係数が1未満で高ベータ化が可能であり、自己組織化緩和(ダイナモ効果)により配位が維持される。磁気揺動とテアリングモードが輸送を支配し、単一ヘリカル状態などの改善閉じ込めが研究されている。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは401本ある。比重が最も大きかったのは1985–1989年で、その期間の論文の2.45%を占めた。直近の2025–2029年では0.15%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1975年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
逆磁場ピンチ(RFP)は、トーラス型磁気閉じ込め配置の一つであり、トロイダル(環方向)磁場とポロイダル(極方向)磁場がほぼ同程度の大きさを持つことを特徴とする。トカマクではトロイダル磁場がポロイダル磁場より桁違いに強いのに対し、RFPではプラズマ自身が流す強いトロイダル電流が磁場の大部分を作り、しかもプラズマ縁でトロイダル磁場の向きが反転する。この「反転」が名前の由来である。外部コイルへの依存が小さく、オーミック加熱だけで高温プラズマを達成しうる可能性が古くから指摘され、トカマクやステラレータに次ぐ主要な代替概念として研究されてきた。RFPの断面の概念図を図1に示す。

fig.1 Error field correction in reversed field pinch with feedback stabilization of resistive wall mode (2025) · CC BY 4.0
Schematic drawing of poloidal cross-section, indicating minor radii of plasma limiter (a), stainless steel vacuum vessel (r_\mathrm{v}), sensor flux loops and double-layered copper shell (r_\mathrm{w}) and control coils (r_\mathrm{c}). Figure is not drawn to scale.
図はポロイダル断面の模式図で、内側からプラズマ限界半径 a、真空容器、センサ用フラックスループ、二層の銅殻(半径 r_w)、制御コイル(半径 r_c)の位置を示している。RFPでは電流駆動による理想キンク不安定性に対する安定化を導体殻に強く依存するため、このようにプラズマのすぐ外側に近接した導電性殻を置くことが装置設計の基本となっている。
磁場配位と平衡
RFPの平衡は、軸対称の下で安全係数 q が磁軸で正、プラズマ縁でゼロ以下になる強いシアを持つ。ポロイダル磁場のシアが理想キンク不安定性を安定化する一方、m = 1 の有理面が全領域に多数存在し、そこでは電流駆動のティアリングモードが本質的に不安定となる。このためRFPの平衡は、飽和した複数のティアリングモードが存在する三次元的な配位として理解されるのが実態である。
トロイダル磁場が縁で反転する配位は、ピンチパラメータ Θ(縁のポロイダル磁場に対する平均トロイダル磁場の比)が十分大きいときに実現する。トロイダル曲率を無視した軸対称の力学的平衡(force-free field)では、縁で B_z < 0 となる反転は μa > 2.404 のときに起こる。トロイダル成分とポロイダル成分の半径方向分布の一例を図2に示す。

fig.1 Enhanced dynamo drive for the sawtooth relaxation process due to non-uniform resistivity distribution in a reversed field pinch (2025) · CC BY 4.0
The toroidal and the poloidal components of the magnetic field as functions of the normalized radius r/a for the initial paramagnetic pinch equilibrium with a\lambda(0) = 3.8, where a is the minor radius of plasma.
図は規格化半径 r/a に対するトロイダル成分 B_φ とポロイダル成分 B_θ の分布で、中心軸で最大だったトロイダル磁場が外側に向かって減衰し、縁で符号を変える様子が読み取れる。ポロイダル成分は中間半径で極大を持つ。この配位では、プラズマを閉じ込める主要な磁場をプラズマ電流自身が供給するという点で、外部コイル中心のトカマクとは対照的である。
自己組織化、緩和とMHDダイナモ
RFPの最も深い物理は、プラズマが自発的に磁場配位を「緩和」させる自己組織化現象にある。テイラーの緩和理論によれば、完全導体殻に囲まれたプラズマは磁気ヘリシティ
K = ∫ A·B dV
を保存量としつつエネルギーを極小化し、その結果 ∇×B = μB という力学的場(プラズマ電流が至る所磁場に平行で、圧力勾配が消えた状態)に落ち着く。この理論はトロイダル磁場の反転を自然に説明し、RFP研究の出発点となった。ただし実験では、コアと縁で λ = μ₀j∥/B が異なるなど、厳密な大域的力学的平衡ではないことが測定されており、この拡張として、部分領域ごとにヘリシティを保存量とする多領域緩和MHD(MRxMHD)モデルが発展している。
緩和を担う微視的機構がMHDダイナモである。外部から印加されるループ電圧だけではトロイダル磁場の反転は維持できない。ダイナモ電場が外部のポロイダル磁束をトロイダル磁束に変換することで、ポロイダル電流と縁でのトロイダル磁場反転が持続する。実験では、プラズマ電流分布が次第に尖る上昇相を経て、複数の m = 1 ティアリングモードの非線形相互作用が閾値を超えると急速なクラッシュ相に移行する。クラッシュ時には磁気再結合が起き、(0,1) モードなどが急成長し、ダイナモ電場が磁束をコアから縁へ輸送して電流分布を平坦化する。この準周期的な緩和振動は「のこぎり歯振動」と呼ばれ、再結合は修正スウィート・パーカー則に従うことがRFXでのシミュレーションと実験の比較で示されている。電流分布の尖り方や抵抗率の空間分布(不均一性)がクラッシュの振る舞いを左右することも、三次元MHDシミュレーションで調べられている。なお、ダイナモ電場の起源としてはMHDスケールの速度揺らぎに加え、電気双極子ドリフトなど静電的な流れの寄与も指摘されており、単一ヘリカル状態では静電ポテンシャルのヘリカル変調が全ドリフトと同程度になりうることが示されている。
磁気乱流と異常輸送
m = 1 の有理面上に多数のティアリングモードが共存する標準状態(マルチヘリシティ状態)では、磁気島が互いに重なり合い、プラズマコアの磁力線が確率的(ストカスティック)につぶれた状態になる。入れ子になった磁面の破壊は粒子や熱の閉じ込めを直接損ない、RFPの標準運転における主要なエネルギー損失経路となる。実際、大電流運転での局所的なパワー・粒子収支の解析から、標準運転ではコアの輸送が磁気乱流に支配され、閉じ込めの多くを縁領域——強くシアした半径方向電場が存在する領域——が担っていることが示されている。磁気的には閉じ込めが劣るにもかかわらず、縁の電場シアによる輸送抑制が全体の性能を支えるという構図は、RFP特有のものである。
磁気乱流による異常輸送は、磁力線が半径方向にランダムウォークすることで熱・粒子を運ぶ機構であり、その強さは磁場揺らぎのスペクトル幅に依存する。揺らぎの n スペクトル幅を狭めると熱輸送が減少することが観測されており、乱流の制御が閉じ込め改善の直接の手段となる。
単一ヘリシティ状態と閉じ込め改善
標準的なマルチヘリシティ状態に対し、プラズマ電流を上げると、m = 1、n ≳ 3R/2a の単一の抵抗性キンクモードが他の二次モードを圧倒して支配的になる状態が出現する。理論的に予測される理想は単一ヘリシティ(SH)状態であり、実験で観測されるその近似が準単一ヘリシティ(QSH)状態である。SH状態では単一モードとその高調波がダイナモ電場を駆動し、磁気的カオスが強く抑制されるため、RFP配位の利点を保ちながら磁気乱流の問題を克服できると期待される。支配的モードの成長と二次モードの減衰には正の相関があり、磁気カオスの減少と閉じ込め改善の兆候が電流の増加とともに見られる。
QSH状態には磁気トポロジーによって二つのタイプがある。支配的モードの振幅が平均磁場の数パーセント程度では、O点が二つ現れる二重磁軸(DAx)状態となる。さらに振幅が大きくなると、単一のヘリカル磁軸を持つ単一ヘリカル磁軸(SHAx)状態へ移行する。これらの自己組織化状態の磁面形状を図3に示す。

fig.2 Effects of magnetic helicity on 3D equilibria and self-organized states in KTX reversed field pinch (2024) · CC BY 4.0
Flux surfaces of different self-organized states.
図は軸対称状態、DAx状態、SHAx状態の三つの磁面トポロジーを三次元的に描いたもので、軸対称のトーラスから、二重の磁軸がよじれた状態、さらに単一のヘリカル磁軸へと変化する様子が分かる。SHAx状態の磁面構造と m = 1 モードのスペクトルの例を図4に示す。

fig.5 Effects of magnetic helicity on 3D equilibria and self-organized states in KTX reversed field pinch (2024) · CC BY 4.0
The Poincaré plot and n spectrum of m = 1 modes in a typical SHAx state.
図のポアンカレ断面には単一のヘリカル磁軸の周りに再構成された磁面が見え、スペクトルでは n = 6 の支配的モードが他の高調波より桁違いに大きいことが示されている。
QSH状態への分岐に伴い、電子輸送障壁が形成されることがRFX-modで発見された。磁気配位がヘリカル平衡へ分岐すると q シアの零点が生じ、カオス減少とともに強い温度勾配を持つ内部障壁が形成される。このときの大きな電子温度勾配は、マイクロティアリングモードの発生と残留磁気カオスによって制限されている。さらに外側(r/a ≈ 0.8)に形成される別のタイプの電子輸送障壁では、大域的閉じ込め時間が約30%改善する。これらの障壁は高電流・低衝突性の領域で現れ、トカマクのL-H遷移を思わせる挙動を示す。磁気カオスの抑制が輸送障壁形成という形で閉じ込め改善に直結する点は、RFP研究の中心的な成果の一つである。
制御と実験装置
RFPの運転は、電流駆動の理想キンクモードに対する安定化を導電性殻に依存している。殻が有限の抵抗を持つと、殻の磁場拡散時間程度の比較的遅い成長率を持つ抵抗壁モード(RWM)が現れるが、この成長が遅いことはアクティブ磁気フィードバック制御を可能にする。実際、RFPでもRWMのフィードバック安定化が実証されている。また、コイルの取り付け誤差や殻のポロイダルギャップなどに起因する微小な磁場非対称性(誤差場)は、ティアリングモードを壁に固定(ロック)させて高電流運転を制限するため、誤差場の推定と補正が重要な課題である。インテリジェントシェル型の制御では壁位置の半径方向磁場を零にするようにコイル電流を制御し、これが誤差場の最小化にも働く。モデル予測制御やカルマンフィルタを用いた状態空間制御など、リアルタイムで誤差場推定とRWM安定化を並行して行う手法が開発されている。ティアリングモードがプラズマと共回りする回転状態は、誤差場補正の効果の指標としても用いられる。トロイダル回転の導入がループ電圧と磁場揺らぎを低減することも報告されており、回転制御は閉じ込め改善の手段となっている。
実験装置としては、RFX(イタリア、プラズマ電流1 MA級)、MST(米国)、EXTRAP T2R(スウェーデン)、KTX(中国)などが知られ、それぞれ薄い抵抗殻・厚い導電殻・フィードバックコイル制御など異なる境界条件の下でRFP物理を調べてきた。核融合炉としての可能性も古くから検討され、TITANのようなRFP炉設計研究では材料選定や保守手順まで含めた概念設計が行われた。理論・シミュレーション面では、NIMRODなどの三次元MHDコードによる緩和過程の研究、ステラレータ用平衡コードを用いた三次元平衡解析、起動相から定常相までを統合した一次元輸送モデルなどが発展しており、実験・理論の両面で、磁気ヘリシティという保存量を軸にした自己組織化物理の理解が進んでいる。
この解説が根拠にした論文から
- Internal and external electron transport barriers in the RFX-mod reversed field pinchNuclear Fusion 2011
- Recent progress in reversed field pinch research in the RFX experimentNuclear Fusion 1999
- A new paradigm for RFP magnetic self-organization: results and challengesPlasma Physics and Controlled Fusion 2007
- Magnetohydrodynamic dynamo effect from electrostatic drift velocity field on sustainment of reversed field pinch plasmas in three-dimensional KTX equilibriumPlasma Physics and Controlled Fusion 2022
- Effects of magnetic helicity on 3D equilibria and self-organized states in KTX reversed field pinchNuclear Fusion 2024
- Error field correction in reversed field pinch with feedback stabilization of resistive wall modePlasma Physics and Controlled Fusion 2025
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推移
研究の変遷
1970–198427本 · 1.10%
揺動とダイナモ効果の探求
1970〜1984年は全タイトルの1.1%を占め、逆磁場ピンチ研究の初期段階として、磁気揺動の構造、ティアリングモードの非線形飽和、ダイナモ効果による持続放電が主要テーマだった。HBTX-1Aの実験と0次元シミュレーションが併用され、エネルギー閉じ込めや異常輸送、不純物との関連も議論された。
同時に語られた主題テアリングモード、ピンチプラズマ、磁気揺動、不純物、エネルギー閉じ込め、異常輸送
この時代の論文から
- Reversed-field-pinch researchNuclear Fusion 1980
- The structure of magnetic fluctuations in the HBTX-1A reversed field pinchNuclear Fusion 1984
- The dynamo effect in sustained reversed-field pinch dischargesNuclear Fusion 1984
- Zero-dimensional simulations of reversed-field pinch experimentsNuclear Fusion 1982
1985–1994112本 · 2.05%
自己反転・自己維持機構とMHD安定性
1985〜1994年は全タイトルの2.05%とシェアのピークを迎え、MHD安定性解析、非線形結合による緩和過程、非線形駆動リコネクションに基づく自己反転のシミュレーションが盛んに行われた。RFX実験の抵抗性シェル効果の計算モデルや、電流駆動・ソフトX線計測などの周辺主題も並行して進展した。
同時に語られた主題ピンチプラズマ、電磁流体力学、軟X線、電流駆動、磁気リコネクション、キンクモード
この時代の論文から
- MHD stability analysis of force-free reversed field pinch configurationsNuclear Fusion 1986
- Simulation study of the self-sustainment mechanism in the reversed field pinch configurationNuclear Fusion 1990
- Non-linear coupling effects on the relaxation process in the reversed field pinchNuclear Fusion 1987
- Simulation study of the self-reversal process in the reversed-field pinch based on a non-linearly driven reconnection modelNuclear Fusion 1986
1995–2004113本 · 1.14%
準単一ヘリシティとMSTの改善閉じ込め
1995〜2004年は全タイトルの1.14%に低下しつつも、準単一ヘリシティ実験の概観や、MSTにおける高ベータ・低トロイダル磁場でのトカマク的閉じ込めが報告された。RFXでは軟X線トモグラフィー、MSTでは平衡再構成など計測技術が発展し、リコネクション過程のスケーリング則や粒子輸送、プラズマ回転も研究された。
同時に語られた主題ピンチプラズマ、電磁流体力学、テアリングモード、プラズマ回転、不純物、電流駆動
この時代の論文から
- Reconnection processes and scaling laws in reversed field pinch magnetohydrodynamicsNuclear Fusion 1996
- Overview of quasi-single helicity experiments in reversed field pinchesNuclear Fusion 2003
- Tokamak-like confinement at a high beta and low toroidal field in the MST reversed field pinchNuclear Fusion 2003
- Soft X ray tomographic imaging in the RFX reversed field pinchNuclear Fusion 2001
2005–2014102本 · 0.66%
抵抗性壁モード制御と改善閉じ込め
2005〜2014年は全タイトルの0.66%へとシェアが減少する一方、EXTRAP T2Rでのスマートシェルフィードバックによる抵抗性壁モードの能動制御や、RFX-modでの輸送・閉じ込め研究が中心となった。単一ヘリカル軸プラズマの境界構造、高密度物理のトカマク・ステラレータ比較、改良閉じ込めやイオン温度勾配との関連も扱われた。
同時に語られた主題ピンチプラズマ、電磁流体力学、抵抗性壁モード、テアリングモード、不純物、改善閉じ込め
この時代の論文から
- Experimental and theoretical studies of active control of resistive wall mode growth in the EXTRAP T2R reversed-field pinchNuclear Fusion 2005
- Transport and confinement studies in the RFX-mod reversed-field pinch experimentNuclear Fusion 2007
- High density physics in reversed field pinches: comparison with tokamaks and stellaratorsNuclear Fusion 2009
- Reversed field pinch operation with intelligent shell feedback control in EXTRAP T2RNuclear Fusion 2006
2015–202647本 · 0.19%
総説と新ヘリカル状態のモデリング
2015〜2026年は全タイトルの0.19%と大幅に減少したが、「The reversed field pinch」のような総説、RFX-modのアップグレード、MSTの実験総説が発表された。MHDモデリングが新しいヘリカル状態を予測し、トカマクとの密度限界比較や高エネルギーイオン・アルヴェン波といった関連現象も共に論じられた。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題ピンチプラズマ、電磁流体力学、磁気リコネクション、テアリングモード、抵抗性壁モード、オーミック加熱
この時代の論文から
- The reversed field pinchNuclear Fusion 2021
- Upgrades of the RFX-mod reversed field pinch and expected scenario improvementsNuclear Fusion 2019
- Magnetohydrodynamics modelling successfully predicts new helical states in reversed-field pinch fusion plasmasNuclear Fusion 2017
- Density limit studies in the tokamak and the reversed-field pinchNuclear Fusion 2015
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている(Reversed field pinch、RFP、reversed field など)。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文120本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、8本の論文(うち全文3本)と4枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
