プラズマ回転(Plasma rotation)は、核融合・プラズマ物理学の現象。磁気閉じ込め装置内で、プラズマが磁気面に沿ってトロイダル方向やポロイダル方向に集団的に流れる現象である。中性粒子ビーム入射や外部磁場摂動、さらにはプラズマ内部の対称性の破れによって駆動され、その大きさやシアはMHD安定性と乱流輸送に強く影響して閉じ込め性能を左右する。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは179本ある。比重が最も大きかったのは1995–1999年で、その期間の論文の0.54%を占めた。直近の2025–2029年では0.15%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1975年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
プラズマ回転とは、磁場閉じ込めプラズマ中のイオンおよび電子が磁力線に沿って、またそれを横切って流動する現象であり、特にトカマクでは環方向(トロイダル)と極方向(ポロイダル)の流速成分で特徴づけられる。回転は単なる運動量の流れではなく、径向電場と密接に結びつき、乱流輸送や磁気流体力学(MHD)安定性を左右するため、現代の閉じ込め研究の中心的な主題の一つとなっている。

fig.19 Study of impurity C transport and plasma rotation in negative triangularity on the TCV tokamak (2024) · CC BY 4.0
Comparison between energy confinement time and toroidal velocity profiles of plasmas operated in limited (\#68408, I_\mathrm{P} = 340 kA, B_\mathrm{T} = 1.4 T) and diverted (\#68272, I_\mathrm{P} = -320 kA, B_\mathrm{T} = 1.4 T) configurations: (a) energy confinement time and central toroidal rotation (\rho \sim 0.1) as a function of plasma density, discharge \#68408; (b) energy confinement time and central toroidal rotation (\rho \sim 0.1) as a function of plasma density, discharge \#68408; (c) toroidal rotation profiles during the LOC (red) and the SOC (blue) phases, discharge \#68408; (d) toroidal rotation profiles during the LOC (red) and the SOC (blue) phases, discharge \#68272.
図は、限界配置とダイバータ配置で運転したトカマク放電の比較で、(a)(b) には密度掃引に対するエネルギー閉じ込め時間と中心トロイダル回転の変化、(c)(d) には線形オーミック(LOC)相と飽和オーミック(SOC)相におけるトロイダル回転の半径方向プロファイルが示されている。中心回転が数 km/s から十数 km/s のオーダーで変化し、閉じ込め状態の遷移と回転の向きが対応して変化する様子が読み取れる。
回転の二つの成分:トロイダル流とポロイダル流
トカマクのプラズマ速度は、トロイダル(環)方向とポロイダル(極)方向の成分に分解して扱うのが通例である。トロイダル回転は主として中性粒子ビーム入射(NBI)などの外部駆動がもたらす運動量によって生じ、その大きさは大型装置で数十から百 km/s を超えることもある。一方、ポロイダル回転はイオンの軌道運動と衝突の釣り合いで決まる新古典論的な予測にほぼ従うことが、複数の中型トカマクでの分光測定によって確かめられている。すなわち、ポロイダル速度は新古典理論とよく一致するのに対し、トロイダル速度は理論値から大きく外れる「異常」な振る舞いを示す。この非対称性が、トロイダル回転の駆動源をめぐる研究の出発点となっている。
測定は主に、不純物イオン(例えば炭素)の電荷交換再結合分光法(CXRS)によるドップラーシフト計測で行われる。また、重水素・トリチウムプラズマでは 14 MeV 中性子のスペクトル形状から熱化した燃料イオンのトロイダル速度を推定でき、CXRS 計測と相互検証が可能である。これは、ITER のようにビームトルクが小さく回転が低くなる状況での回転評価手段としても意味を持つ。
駆動機構:外部トルクと固有回転
NBI は高速中性粒子を注入してプラズマに運動量を与えるため、最も直接的なトロイダル回転の駆動源である。しかし、外部トルクをほとんど与えていないオーミック放電でも、プラズマは一貫して回転していることが観測されており、これを固有回転(イントリンジック・ローテーション)と呼ぶ。固有回転の起源としては、乱流によるレイノルズ応力、共鳴磁気摂動やリップルとの相互作用、中性粒子との摩擦、イオンの損失に伴う電場誘起駆動など、複数の機構が提案されてきた。
小型装置では中性の影響が相対的に強まるため、中性摩擦に基づくモデルの検証に適している。実際の比較では、電子とイオンの温度差に起因する一つの理論モデルの寄与は小さい一方、部分電離プラズマ中の垂直電流と摩擦力を含む別のモデルが観測された固有回転の一部を説明しうることが示されている。また、バイアス電極による径向電流の駆動や、イオン損失が誘起する電場によって回転が生じる例も報告されており、固有回転は単一の機構ではなく、装置条件に応じて複数の駆動が競合する現象であると理解されている。
回転反転と経験則
固有回転の最も顕著な現象の一つが回転反転である。オーミック放電でプラズマ密度を上げていくと、ある臨界密度を境にトロイダル回転が電流と同方向から逆方向へ(あるいはその逆へ)急に反転する。この反転は線形から飽和へのオーミック閉じ込め遷移(LOC/SOC 遷移)と密接に関係し、臨界条件は電子衝突率(無次元衝突頻度でおよそ 10^-2 のオーダー)で整理される。数値シミュレーションは、密度掃引に対する反転と、掃引方向によって履歴が生じる非線形分岐としての振る舞いを再現しており、反転が乱流状態の変化に伴う運動量輸送の転換として起こることを支持する。臨界密度は電子温度(すなわち衝突率)の増加とともに上昇するため、プラズマ電流への依存性もオーミック加熱出力の変化を通じて説明できる。
反転や固有回転の大きさは、磁場配置にも強く依存する。限界配置ではコアで電流逆方向の強い固有回転が生じるのに対し、ダイバータ配置では同方向の回転が現れる。さらに、ある密度しきい値を超えると限界配置では同方向へ、ダイバータ配置では逆方向へ反転し、このしきい値はプラズマ電流、電子サイクロトロン加熱の有無、磁気位形に依存する。トロイダル速度の絶対値はピークイオン温度にほぼ比例し、プラズマ電流に反比例するという経験則も得られている。また、プラズマ三角形性(δ)も回転プロファイルを大きく変える。図は、負の三角形性と正の三角形性の放電で、ビーム入射中および入射終了後のトロイダル回転プロファイルを比較したものである。正の三角形性ではビーム駆動によってコア回転が大きく加速されるのに対し、負の三角形性では回転の変化が小さく、形状が運動量源と輸送の両方に影響することを示している。
回転、径向電場と閉じ込め
回転が重要なのは、それが径向電場 E_r と直結しているからである。磁化プラズマではイオンのポロイダル方向の運動量保存から E_r がほぼ一意に決まり、E_r の半径方向の勾配は E×B せん断として乱流渦の剪断に働く。したがって回転プロファイルの変化は、乱流輸送と閉じ込め性能に直接反映される。LOC/SOC 遷移に伴う回転反転は、この E_r 構造の変化と同時に観測されており、閉じ込め状態と回転が同じ物理(乱流の抑制と駆動のバランス)で結ばれていることを示す。
外部からもこの結びつきは操作できる。バイアス電極で径向電場を制御すればエッジ回転が加速され、閉じ込めが改善する。共鳴磁気摂動(RMP)を印加した場合、静的な摂動ではコア回転が減速してエッジ回転が電流同方向に 20 km/s を超えるまで加速される一方、回転する RMP を用いると、その周波数がプラズマのモード周波数より高ければ回転は RMP 周波数まで加速されて閉じ込めが改善し、低ければ減速して閉じ込めが劣化する。すなわち、回転と閉じ込めは RMP の周波数選択性を介して相互に影響し合う。
回転と MHD 安定性:RWM、ティアリングモード、RMP
回転は MHD 不安定性に対する「盾」としても機能する。抵抗壁モード(RWM)は、理想 MHD 的には不安定だが、プラズマが導体壁に対して回転していると渦電流の位相遅れが安定化力として働く。この安定化は、モード周波数とプラズマ回転周波数の差(ドップラーシフト)で決まるため、トロイダル回転が大きいほど壁の安定化効果が増す。興味深いことに、トロイダル回転が遅くてもポロイダル回転がドップラーシフトを変調するだけで安定性が変化し、さらに回転の向きによっても線形安定性が変わる場合がある。逆せん断配置では、回転周波数が静的平衡の安定固有モードの周波数に近づくと RWM が再不安定化することも数値的に示されており、回転の「量」だけでなく「速さと向き」が設計上の制約となる。
一方、新古典ティアリングモード(NTM)のような回転する n>1 モードは、プラズマ回転を逆に減衰させる。図は、3/2 NTM が成長する放電でのトロイダル回転プロファイル、モード周波数、モード振幅の時間発展を示したものである。コア回転の低下はモード位置(q=3/2)よりもさらに内側の q=1 近くで先に起こり、その後 2/1 NTM が発生して破壊に至る経路がとられる。低トルク運転では、q=1 面と q=2 面の間の回転差(差分周波数)がゼロに近づくと 3 波結合によって破壊的な 2/1 モードが種まきされることが統計的に示されており、コア回転プロファイルを保つことが長パルス安定運転の鍵となる。NTM と高速イオンの相互作用がビームトルクの実効値を数割低下させうることも、回転減衰の一因として検証されている。
RMP との相互作用も両義的である。RMP はエッジの局在化モードを制御する一方、プラズマ回転との間で電磁的なブレーキ(トルク)を生み、回転を減速させる。回転が十分に速ければ摂動は遮蔽されて浸透が抑えられ、遅ければ摂動が磁気島を形成して閉じ込めに影響する。このため、摂動による安定化効果と回転減速による悪化のバランスは、ペデスタル制御やティアリングモード回避の設計における中心的な評価項目となっている。回転の制御——ビームトルクの調整、バイアス、摂動周波数の選択——は、閉じ込め性能と MHD 安定性の両方を左右する操作であり、炉規模プラズマでは外部トルクが小さい分、固有回転の理解と予測が一層重要になる。
この解説が根拠にした論文から
- Symmetry breaking driving spontaneous plasma rotation in tokamak fusion devicesNuclear Fusion 2021
- Bulk plasma rotation in the TCV tokamak in the absence of external momentum inputPlasma Physics and Controlled Fusion 2007
- Impact of plasma rotation on the linear physics of resistive wall modes in tokamaksPlasma Physics and Controlled Fusion 2013
- Response of plasma rotation to resonant magnetic perturbations in J-TEXT tokamakPlasma Physics and Controlled Fusion 2018
- Overview of plasma rotation studies on the TCABR tokamakPlasma Physics and Controlled Fusion 2021
- Study of impurity C transport and plasma rotation in negative triangularity on the TCV tokamakPlasma Physics and Controlled Fusion 2024
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推移
研究の変遷
1970–19845本 · 0.20%
トカマクにおけるプラズマ回転測定の始まり
PDX、PLT、ISX-B、LT-3などのトカマクにおいて、中性粒子ビーム入射や不純物輸送と関連づけてプラズマ回転の測定が行われた。また、ホローカソードアルゴン放電のドップラー分光計測でも回転が観測された。この時期は回転の基礎的観測が中心である。
同時に語られた主題中性粒子入射、不純物輸送、不純物、ホローカソード、アルゴン
この時代の論文から
- Plasma rotation in the PDX tokamakNuclear Fusion 1983
- Toroidal plasma rotation in the PLT tokamak with neutral-beam injectionNuclear Fusion 1981
- Impurity transport and plasma rotation in the ISX-B tokamakNuclear Fusion 1983
- Measurements of plasma rotation in tokamak LT-3Nuclear Fusion 1979
1985–199420本 · 0.37%
回転と径電場・閉じ込めの関連付け
TFTR、JT-60SA、JET、DIII-Dなどの装置において、プラズマ回転と径電場、Hモード、エネルギー閉じ込め、磁気島との関係が調べられた。イオン損失が誘起する電場によるトロイダル回転の観測や、回転の磁気ブレーキがHモード径電場と閉じ込めに及ぼす効果が報告された。
同時に語られた主題径方向電場、プラズマ診断、オーミック加熱、磁気島、イオンサイクロトロン加熱、Hモード
この時代の論文から
- Observation of toroidal plasma rotation driven by the electric field induced by loss of ionsNuclear Fusion 1991
- Effect of magnetic braking of the plasma rotation on the H-mode radial electric field and energy confinement in the DIII-D tokamakNuclear Fusion 1993
- Behaviour of plasma rotation and radial electric field with density ramp rate in an ohmically heated tokamakNuclear Fusion 1992
- Suppression of magnetic islands by plasma rotationNuclear Fusion 1991
1995–200452本 · 0.52%
回転による抵抗性壁モード安定化と高速イオン駆動
JET、DIII-D、TEXTORなどの装置で、ICRFや高速イオン(アルファ粒子、高速粒子)によるプラズマ回転の駆動と、回転が抵抗性壁モード(n=1)の安定化に果たす役割が研究された。また、中性粒子が回転へ及ぼす効果も調べられた。
同時に語られた主題逆磁場ピンチ、抵抗性壁モード、イオンサイクロトロン加熱、サイクロトロン共鳴、径方向電場、イオンサイクロトロン共鳴
この時代の論文から
- Spatially resolved toroidal plasma rotation with ICRF on JETNuclear Fusion 2003
- Plasma rotation driven by alpha particles in a tokamak reactorNuclear Fusion 1996
- Scaling of the critical plasma rotation for stabilization of the n = 1 resistive wall mode (ideal kink) in the DIII-D tokamakNuclear Fusion 2004
- Toroidal plasma rotation induced by fast ions without external momentum injection in tokamaksNuclear Fusion 2002
2005–201455本 · 0.36%
回転とMHD安定性・運動量輸送の統合的理解
JET、TEXTOR、MAST、DIII-Dなどの装置において、プラズマ回転がELM特性や抵抗性壁モード、ティアリングモード、確率的磁場との相互作用を通じてMHD安定性に影響することが調べられた。また、ジャイロ運動論的シミュレーションによる運動量輸送と回転分布の予測も試みられた。
同時に語られた主題電磁流体力学、抵抗性壁モード、磁場リップル、テアリングモード、ペデスタル、輸送障壁
この時代の論文から
- Energy loss for grassy ELMs and effects of plasma rotation on the ELM characteristics in JT-60UNuclear Fusion 2005
- Momentum transport and plasma rotation profile in toroidal direction in JT-60U L-mode plasmasNuclear Fusion 2007
- Effect of the dynamic ergodic divertor in the TEXTOR tokamak on MHD stability, plasma rotation and transportNuclear Fusion 2005
- Predictions on heat transport and plasma rotation from global gyrokinetic simulationsNuclear Fusion 2011
2015–202647本 · 0.19%
回転の制御と反転現象の観測
NSTX-U、JET、DIII-D、ASDEX-Upgrade、EAST、TCV、J-TEXT、Aditya-Uなどの装置で、共鳴磁気摂動(RMP)や中性粒子ビーム入射、電子サイクロトロン加熱によるプラズマ回転のモデリングと制御が行われた。また、トロイダル回転の反転現象や乱流特性への影響が観測された。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題磁場摂動、共鳴磁場摂動、電磁流体力学、テアリングモード、誤差磁場、三角形度
この時代の論文から
- Modeling and control of plasma rotation for NSTX using neoclassical toroidal viscosity and neutral beam injectionNuclear Fusion 2016
- Effects of central electron cyclotron power on plasma rotation and on triggerless onset of NTMs in the TCV tokamakNuclear Fusion 2015
- Influence of resonant magnetic perturbations and induced islands on plasma rotations and turbulence properties in the J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2019
- Plasma rotation from momentum transport by neutrals in tokamaksNuclear Fusion 2016
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文105本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、8本の論文(うち全文4本)と1枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
