プラズマ診断(Plasma diagnostics、diagnostic、diagnostics)は、核融合・プラズマ物理学の計測。プラズマの電子密度・温度、磁場構造、高速イオン分布などを測定する技術体系であり、トカマクやヘリカル装置などの核融合実験装置で不可欠である。受動的・能動的手法を問わず多岐にわたり、プラズマの制御や物理機構の解明を支える。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは1,517本ある。比重が最も大きいのは直近の2025–2029年で、その期間に発表された論文の3.38%を占める。
Includes standalone 'diagnostic' and 'diagnostics' as used in the corpus.
解説
プラズマ診断とは、核融合炉やプラズマ実験装置の中で生じているプラズマの状態——電子・イオンの温度と密度、電流分布、不純物組成、放射損失、磁気配位などを——外部から測定し、数値として取り出す技術の総称である。プラズマは高温で容器に直接触れさせられないため、その内部を知る手段は本質的に間接的であり、電磁波や粒子の放出・散乱、あるいは意図的に注入したビームの応答を読み解くことで成り立つ。トカマクやヘリカル装置のような磁場閉じ込め核融合研究において診断は単なる観測手段ではなく、プラズマ制御や機器保護の入力信号を供給する基幹システムであり、ITER のような燃焼プラズマ装置ではその設計が建設計画の初期段階から装置設計に組み込まれている。

fig.3 Advances in European in-kind contributions to plasma diagnostics and port integration for ITER (2026) · CC BY 4.0
Overview (partially cut-away) of port structures in Equatorial Port #10, including integration of the diagnostic systems. At the left, the port plug components—3 diagnostic Shielding Modules, internal cooling circuits and closure plate feedthroughs (electrical, gas and water). The closure plate mates with the ITER vacuum vessel to close the vacuum. In the centre, the interspace support structure (left), including radiation shielding, and Bioshield Plug (right). At the right, the port cell structure.
図は ITER の赤道ポートに診断システムを組み込んだ状態を部分的に切り欠いて示したものである。プラズマに面する側のポートプラグ内部に複数の診断用遮蔽モジュールと冷却回路、閉止板を貫通する電気・ガス・水のフィードスルーが収められ、その外側に放射遮蔽を備えた支持構造、バイオシールドプラグ、そしてポートセルが続く。このように診断は装置本体のポートという限られた空間に、遮蔽・真空・冷却の要件と両立する形で組み込まれる。以下、測定原理の分類、燃焼プラズマ装置での役割と要件、過酷環境下での工学課題、データ処理の順に概観する。
測定原理:受動診断と能動診断
プラズマ診断の手法は、プラズマが自発的に放出するものを観測する受動診断と、外部から光や粒子を入射しその応答を測る能動診断に大別される。
受動診断の代表は分光測定である。プラズマ中の原子・イオンは固有の波長の光を放出するため、そのスペクトルから不純物の種類と量、イオン温度(スペクトル線のドップラー幅)、プラズマ回転(ドップラーシフト)を読み取ることができる。可視から真空紫外域の分光器は、プラズマに「何が入っているか」を同定する基本的な手段であり、水素のバルマー系列(Hα など)を用いた測定は再結合中性子や境界層プラズマの観測に広く使われる。また、核融合反応で生じる中性子やガンマ線、荷電融合生成物の測定は、燃焼プラズマに固有の受動診断であり、中性子計数から融合出力を、ガンマ線スペクトルから高エネルギーイオンの分布を推定する。磁気プラズマの平衡や揺動の情報は、プラズマ電流が作る磁場をコイルで測る磁気診断から得られ、これはプラズマ位置・形状制御の最も基本的な入力である。マイクロ波を用いた受動測定(電子サイクロトロン放射計測)は電子温度の時間変化を高時間分解能で与える。
能動診断では、プラズマに何かを「照らして」その応答を見る。最も広く使われるのはトムソン散乱である。短パルスの高エネルギーレーザーをプラズマに入射すると、自由電子による散乱光のスペクトル形状から電子温度と電子密度が原理に基づいて直接求まる。図は EAST トカマクでのマルチチャンネル・トムソン散乱(TVTS)システムの構成を示したものであり、レーザー入射系、プラズマ中の散乱点を集光するミラーとレンズ、分光器・多チャンネルプレート・CCD からなる検出系、そして制御・データ収録系がどう接続されるかが見て取れる。散乱光は極めて微弱なため、絶対校正の方法(レイリー散乱やラマン散乱を用いる)が測定精度を左右する。

fig.1 Rovibrational Raman calibration of a multi-channel TV Thomson scattering diagnostic on EAST (2026) · CC BY 4.0
TV Thomson scattering experimental setup on EAST Tokamak.
図は EAST での TVTS 実験全体の配置を示す。左側のトカマク中心軸から測定半径範囲(正規化小半径 0.8–1.1 相当)までレーザー光が通り、最終ミラーと集光レンズを経て光ファイバー束で分光器・検出器へ導かれ、計算機でスペクトル解析が行われる。このように能動光学診断は、レーザー系・観測光学系・検出・解析からなる一連のシステムとして設計される。
能動分光のもう一つの柱は、中性粒子ビームをプラズマに入射しその発光を測る手法群である。荷交換再結合分光(CXRS)はビームによる荷交換で生じた励起イオンの発光からイオン温度・回転・不純物分布を、ビーム発光分光(BES)はビーム原子の発光から密度揺動を、モーショナル・スターク効果(MSE)はビーム原子が磁場中で受けるスターク分裂から磁場方向すなわち電流密度分布を得る。電流密度分布と半径方向電場の分布は、逆磁気せん断や輸送障壁の制御といった先進的運転に不可欠でありながら最も測定が難しい量であり、これらを偏光計(ファラデー効果)や重イオンビームプローブと組み合わせて測る研究が続けられている。マイクロ波を用いた能動診断(反射計、集団トムソン散乱など)は、密度分布や高エネルギーイオンの測定を担う。高速カメラによる可視画像化、干渉計・偏光計、飛行時間型質量分析計なども目的に応じて使われる。
燃焼プラズマ装置における役割と要件
ITER のような燃焼プラズマ装置では、診断は測定対象のパラメータごとに、その役割の重要度で分類される。機器保護(プラズマの異常を検知して放電を安全に終わらせる)、基本制御(位置・形状・出力の定常制御)、先進制御(輸送障壁や MHD 揺動の能動制御)、物理研究という四つの階層であり、機器保護に関わる融合出力や全トロイダル電流の測定には初めて安全上の要件が課された。各パラメータについて原則として一つ、できれば二つの一次測定系を用意し、単一系の故障で制御が破綻しないようにすることが設計方針とされている。測定要件は時間・空間分解能、精度、動作範囲を各パラメータごとに定めた仕様表として管理され、プラズマサイズの拡大に合わせて改訂されてきた。
燃焼プラズマ特有の測定対象は、融合出力とアルファ粒子である。中性子の計数・スペクトル測定と中性子活性化法による出力較正、ガンマ線分光による高エネルギーイオン分布の追跡、専用の高速イオン損失検出器によるアルファ損失測定などが整備されつつあり、かつて性能が未知とされていた中性子源分布の測定も設計が確定した。また、燃焼制御のために D-T 混合比(nT/nD)を高分解能中性子スペクトロメータで測る系も設計されている。DEMO のような発電炉を念頭に置けば、診断はさらに少ないアクセス性と高い可用性の下で、燃焼状態を定常的に制御する役割を担うことになる。
過酷環境下での工学課題
燃焼プラズマ装置の診断設計を難しくしているのは、測定原理そのものより環境である。ITER では高レベルの中性子・ガンマ線照射、中性子による発熱、粒子衝撃に加え、超高度真空・トリチウム閉込めバリアとしての資格認定・電磁力・熱負荷という要件が重なる。現在の大型トカマクでは経験のない現象が診断設計に現れ、場合によっては新しい測定手法そのものの開発が必要とされる。
とくに重要なのがファーストミラーの問題である。光学診断の多くは、プラズマを見るための金属製ミラーを炉内に置く構成をとる。ミラーは中性子照射や粒子衝撃による侵食、堆積、粒子の注入によって光学特性が変化し、診断系全体の性能を左右する。このため候補材料の評価が複数の装置で行われ、プラズマ照射やレーザー照射によるミラー表面のその場洗浄技術の開発・比較が進められている。図はミラーを用いた診断系の例として、ITER の Hα 計測系の配置とファーストミラーを示したものである。

fig.164 Diagnostics: Chapter 8 of the special issue: on the path to tokamak burning plasma operation (2025) · CC BY 4.0
ITER Hα as an example of mirror-based diagnostic and its first mirror: (a) diagnostic locations in ITER equatorial port plugs (EPP) and upper port plugs (UPP), (b) the reflecting surface of the first mirror and (c) rear view of the mirror. The single crystal molybdenum reflecting surface has dimensions of 164 × 60 × 42 mm and a radius of 364 mm.
図の (a) は ITER の赤道ポート・上部ポートに設置された Hα 観測系の視線配置を示し、(b) は一結晶モリブデン製の反射面、(c) はその背面の冷却構造を写している。反射面は一辺数十センチ級の曲面ミラーであり、炉内で長期にわたり光学性能を保つ必要がある。光ファイバーも放射損傷に対する耐性試験が課題であり、炉内光学系はポートプラグ内ではミラーのみ、炉外ではミラーとレンズを組み合わせるという形で設計される。
もう一つの工学課題はポート統合である。ITER のように巨大な装置でも、診断を収められるポート空間は驚くほど限られており、多くの系は装置寿命中ほぼアクセス不能な位置に置かれる。このため信頼性・可用性の要件が厳しく、診断の設置は運転段階計画に合わせて段階的に行われる。放射線効果、ファーストミラー、リアルタイム診断、統合データ解析といった横断的課題には、国際協力のもとで専門の研究グループが当たってきた。
データ、校正と統合解析
診断の価値は、校正された測定と、それを物理量に変換する解析によって初めて生まれる。絶対校正は密度や温度の精度を直接決める。トムソン散乱では散乱光の絶対強度から電子密度が、スペクトル形状の相対較正から電子温度が決まるため、レイリー散乱や回転・振動ラマン散乱を用いた校正手法の改良が精度向上の鍵となる。受動分光では、較正された分光器に加え、原子・分子過程と輸送を記述する物理モデル、そして金属壁からの反射といった環境効果を補正する解析ワークフローが必要である。機械学習を衝突放射モデルに基づく光学診断と組み合わせ、電子温度を推定する試みも現れている。
運転制御の観点では、診断データは数十ミリ秒からミリ秒の時間スケールで実時間処理され、プラズマ制御系へ送られなければならない。大型装置では多数の診断系のデータ収集・制御を分散処理とネットワークで結ぶ基盤が整備されており、異なる診断系から得られた測定を物理モデルの下で一貫して解釈する統合データ解析が、診断研究の標準的な枠組みとなりつつある。測定値を診断系の応答関数を通して合成し実測と比較する合成診断シミュレーションも、系の性能を事前に評価する手法として定着している。
この解説が根拠にした論文から
- Chapter 7: DiagnosticsNuclear Fusion 2007
- First mirrors for diagnostic systems of ITERNuclear Fusion 2007
- RF techniques in plasma diagnosticsPlasma Physics and Controlled Fusion 1998
- Diagnostics for current density and radial electric field measurements: overview and recent trendsPlasma Physics and Controlled Fusion 2002
- Diagnostics: Chapter 8 of the special issue: on the path to tokamak burning plasma operationNuclear Fusion 2025
- Rovibrational Raman calibration of a multi-channel TV Thomson scattering diagnostic on EASTPlasma Physics and Controlled Fusion 2026
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推移
研究の変遷
1970–198430本 · 1.22%
放射・レーザー診断の草創期
この時期は、軟X線分光、サイクロトロン放射、CH3Fレーザー、シュリーレン法などの個別診断手法をトカマクやプラズマフォーカスへ適用する論文が中心である。電子サイクロトロン放射やトムソン散乱といった基本的手法が、定常状態やプラズマディスラプションと関連づけて論じられている。全体に占める割合は1.22%と低調である。
同時に語られた主題電子サイクロトロン放射、トムソン散乱、定常状態、散乱計測、プラズマディスラプション、レーザープラズマ
この時代の論文から
- Soft-X-ray spectroscopic diagnostics of laboratory plasmasNuclear Fusion 1981
- Cyclotron radiation as a diagnostic tool for tokamak plasmasNuclear Fusion 1977
- Tokamak diagnostics with the 496-μm CH3F laserNuclear Fusion 1974
- Schlieren diagnostics of the plasma focusNuclear Fusion 1984
1985–1994133本 · 2.43%
大型トカマクと核融合生成物診断への展開
論文数は30本から133本へ増加し、割合も2.43%に上昇する。トムソン散乱や散乱診断、レーザー生成プラズマ、軟X線、不純物、核融合生成物などのテーマと並び、TFTR、JT-60SA、JET、ASDEX-Uといった大型装置向けの診断が現れる。ペレットアブレーション解析や高速アルファ粒子のノックオンイオン尾部診断、磁場診断コイルの三次元平衡コードによるモデリングなどが代表的である。
同時に語られた主題トムソン散乱、散乱計測、レーザー生成プラズマ、軟X線、不純物、核融合生成物
この時代の論文から
- Analysis of low Za impurity pellet ablation for fusion diagnostic studiesNuclear Fusion 1988
- Plasma diagnostics on large tokamaksNuclear Fusion 1988
- Modelling the behaviour of the magnetic field diagnostic coils on the W VII-AS stellarator using a three-dimensional equilibrium codeNuclear Fusion 1990
- Fast alpha particle diagnostics using knock-on ion tailsNuclear Fusion 1994
1995–2004239本 · 2.41%
ITERに向けた診断統合と磁気診断の体系化
割合は2.41%と前時代とほぼ同水準であり、相対的な横ばいが続く。ITER、LHD、JET、TEXTORなどでの応用が進み、電子サイクロトロン放射、磁気診断、慣性核融合、トムソン散乱などと並んで、ガンマ線診断、ペレット電荷交換、照射試験などの炉環境を意識した研究が行われる。磁気診断の一般原理と電流・圧力分布再構成という体系的課題も扱われている。
同時に語られた主題電子サイクロトロン放射、磁気計測、慣性核融合、トムソン散乱、散乱計測、イオンビーム
この時代の論文から
- γ-ray diagnostics of energetic ions in JETNuclear Fusion 2002
- Magnetic diagnostics: General principles and the problem of reconstruction of plasma current and pressure profiles in toroidal systemsNuclear Fusion 2001
- Hot spot phenomena on Tore Supra ICRF antennas investigated by optical diagnosticsNuclear Fusion 2003
- Studies of energetic confined alphas using the pellet charge exchange diagnostic on TFTRNuclear Fusion 1995
2005–2014338本 · 2.20%
ITER建設期におけるミラー工学と計測基盤
ITER関連の論文が88本と突出し、第一ミラーやデータ収集、チャージ交換再結合分光などの工学的・要素技術が中心となる。割合は2.2%とやや低下し、他分野の成長に対して相対的に減速している。JET、ASDEX-U、ウィーゲンシュタイン7-X、TJ-IIなどでの応用研究も並行して進められている。
同時に語られた主題磁気計測、散乱計測、トムソン散乱、データ収集、電荷交換再結合分光法、中性ビーム
この時代の論文から
- Chapter 7: DiagnosticsNuclear Fusion 2007
- Spectroscopy—a powerful diagnostic tool in source developmentNuclear Fusion 2006
- First mirrors for diagnostic systems of ITERNuclear Fusion 2007
- Progress in research and development of mirrors for ITER diagnosticsNuclear Fusion 2009
2015–2026775本 · 3.10%
燃焼プラズマと定常運転へ向けた診断の拡充
割合は3.01%に上昇し、論文数も731本と大幅に増加する。重イオンビームプロービング、中性子診断、高速粒子駆動イオンサイクロトロン放射など、高エネルギー粒子と乱流の計測が活発である。ITERに加えてEASTやウィーゲンシュタイン7-X、ASDEX-Uなどでの開発が続き、DEMOの診断と制御についても議論されている。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題散乱計測、トムソン散乱、電子サイクロトロン放射、磁気計測、慣性核融合、軟X線
この時代の論文から
- Heavy ion beam probing—diagnostics to study potential and turbulence in toroidal plasmasNuclear Fusion 2017
- Diagnostics and control for the steady state and pulsed tokamak DEMONuclear Fusion 2016
- Energetic ion confinement studies using comprehensive neutron diagnostics in the Large Helical DeviceNuclear Fusion 2019
- Fast particle-driven ion cyclotron emission (ICE) in tokamak plasmas and the case for an ICE diagnostic in ITERNuclear Fusion 2015
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている(Plasma diagnostics、diagnostic、diagnostics など)。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文120本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、7本の論文(うち全文3本)と3枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
