プラズマ制御(Plasma control)は、核融合・プラズマ物理学の手法。磁場閉じ込め核融合装置において、プラズマの位置・形状・電流・密度などを計測し、アクチュエータへ実時間フィードバックする手法である。ITERやDEMOなどの大型装置では、高性能運転や安定性維持、ディスラプション回避に不可欠な技術となっている。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは149本ある。比重が最も大きかったのは2005–2009年で、その期間の論文の0.37%を占めた。直近の2025–2029年では0.33%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1995年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
プラズマ制御とは、核融合装置内の高温プラズマの位置・形状・密度・温度・運転点などを、診断で得た実時間測定値に基づいてアクチュエータを操作しながら目標値に保つ技術である。トカマクのプラズマは本質的に不安定で自己組織化的な振る舞いをするため、単に放置すれば垂直位置の暴走やディスラプションなどで放電が失われる。そこで磁場コイル、加熱・電流駆動装置、粒子注入といった外部操作量を、ミリ秒から秒の時間スケールで閉ループ的に制御する必要があり、これは現代のトカマク装置の設計そのものを規定する中心的な要素となっている。
制御ループの基本構造
プラズマ制御の骨格は、古典的なフィードバック制御ループそのものである。センサ(磁気プローブ、干渉計、分光器など)がプラズマ状態を測定し、オブザーバがそれを処理して制御対象のパラメータ値(プラズマ位置、形状パラメータ、密度など)を推定する。推定値と要求値の誤差が制御アルゴリズムに入力され、アクチュエータ要求として磁場コイルや加熱装置へ送られる。プラズマはこの操作に応答して変化し、再び測定される。

fig.2 Plasma control for the step prototype power plant (2024) · CC BY 4.0
General plasma control loop.
図はこの一般的な制御ループを示したもので、制御アルゴリズムを持つコントローラ、オブザーバ、そして制御対象としてのプラズマが描かれている。制御対象の枠内には、トロイダル場コイルや極向き場コイル、電子サイクロトロン加熱・電流駆動、ペレット注入、不純物注入といったアクチュエータの並びと、その対面に「??」と示された多数のセンサが並んでおり、測定がループを閉じる役割を担うことが分かる。
このループの特徴的な点は、制御対象が単一のスカラー量ではなく、多くの入力と多くの出力が互いに結合した巨大な多入力多出力系であることである。例えば垂直位置を制御するコイル操作は形状にも影響し、密度制御のためのガス注入は閉じ込め性能にも手を伸ばす。したがって各制御器は独立には設計できず、系全体としての整合性が要求される。
制御量とアクチュエータ
最も基本的な制御対象はプラズマの磁気平衡、すなわち位置と形状である。細長い(エロンゲーションの大きい)断面を持つプラズマは垂直方向に指数関数的に不安定で、周囲の導電体構造が誘導電流による受動的な安定化を与え、それでも残る成長率を能動的な垂直安定化コイルが打ち消す。導電体は安定化に有利な半面、制御磁場の浸透を妨げ、センサが見る磁場変化を減衰させるため、周囲構造の導電率分布の設計そのものが制御性能に影響する。

fig.1 Plasma control for the step prototype power plant (2024) · CC BY 4.0
Sketch based on the present STEP prototype design. Note that this design is evolving, and the figure is for illustration only. The figure includes PF coils, passive structures, plasma facing component contour and an example equilibrium.
図は原型炉級の球状トカマク設計に基づく断面図で、中心ソレノイドとトロイダル場コイルを収めた中心柱、極向き場コイル、受動的な垂直安定化構造、垂直安定化コイル、そしてプラズマ平衡の磁面が描かれている。細長いプラズマを低アスペクト比で実現するには中心柱の空間が極めて限られ、ソレノイドはプラズマ生成と電流立上りの初期にしか使えないため、定常相ではブートストラップ電流と外部電流駆動に頼る運転が前提となる。
磁気制御の次には運転点の制御が続く。密度はガスパフやペレット注入で、電子密度や電流プロファイルは加熱・電流駆動装置の照射位置と出力で制御する。核燃焼プラズマではアルファ粒子加熱とブートストラップ電流が支配的となり、プラズマは強く自己組織化するため、限られた外部アクチュエータでこの自己組織系を導くことが制御系の役割となる。またダイバータの熱負荷を抑えるため、不純物注入による放射損失の制御や、プラズマをダイバータ板から離脱させた「デタッチメント」状態の維持も制御対象に加わる。
実時間アーキテクチャ
プラズマ制御システムは、装置の中央計算機上に実装される分散型の実時間ソフトウェア基盤である。各装置(ITER、DIII-D、MAST、EAST、KSTAR、WEST、LHD、HL-2M など)が独自の制御システムを持ち、その設計は共通して、実時間オペレーティングシステム上で動く複数の制御タスク、診断データの実時間取得、実時間平衡再構成などの物理計算コード、そして放電シーケンスを記述するフレームワークから構成される。制御周期は垂直安定化のような高速ループでは数十マイクロ秒から百マイクロ秒程度、形状制御やプロファイル制御ではミリ秒から秒のオーダーであり、時間スケールの異なるループが階層的に共存する。
この規模のソフトウェアを信頼性高く開発するため、システムズエンジニアリングの手法が採用されている。ITER の制御システム設計では、すべての制御要求を追跡管理する制御データベースを整備し、要求から設計・検証への一貫した作業工程を定めている。また制御システムを実際の装置に接続する前にプラントモデルとのコシミュレーションや制御シミュレータで検証する手法が定着しており、建設中の装置が初日の運転から制御機能を動作させる(いわゆる Day-One 運転)ための標準的な手順となっている。
モデルベース制御と統合設計
従来の制御器は実験的なチューニングに頼る部分が大きかったが、近年は平衡コードや応答モデルに基づいて制御器を設計し、シミュレーションで検証してから実機に適用するモデルベース設計が主流になりつつある。統合プラズマ制御の手法では、線形化したプラズマ応答モデルから制御器を設計し、非線形シミュレーションによる検証を経て実験に移すことで、装置運転時間をほとんど消費せずに高信頼の制御器を導入できる。この手法は建設中の超伝導トカマクの制御系実装にも転用され、ITER でも不可欠とされている。
さらに進んだ形がモデル予測制御である。これは実時間でプラズマ・アクチュエータ・診断のモデルを走らせ、将来のアクチュエータ軌道の候補を複数評価して、要求されたパラメータ軌道に最も良く合うものを選ぶ方式である。

fig.3 Plasma control for the step prototype power plant (2024) · CC BY 4.0
Model predictive control—scheme.
図はモデル予測制御の構成を示す。制御対象の測定軌道とモデルが予測する診断軌道を比較してモデルパラメータを実時間で更新する適応機構を備え、実時間より速くモデルを回すことで、コイル電流制限などの拘束を満たしながら複数の制御目的を同時に最適化できる。この種の手法は、新古典ティアリングモードの電子サイクロトロン電流駆動による安定化や、抵抗壁モードの制御、ELM を伴う運転下での軸対称制御など、従来は個別に扱われてきた課題を統合的に扱う道を開いた。
例外処理とディスラプション回避
制御系の最も難しい仕事は、運転が順調でないときに何をするかである。例外処理とは、プラント系統の故障や制御性能の劣化を検出した際に、放電をどう導くかを決める論理の総称である。パラメータ空間の描像が有用である。通常運転ではプラズマは公称軌道に沿って点火から定常運転点まで導かれ、小さな擾乱に対しては制御が軌道を公称領域に戻す。

fig.5 Plasma control for the step prototype power plant (2024) · CC BY 4.0
Conceptual 2D illustration of parameter space and the response of the plasma control system to exceptions.
図は二次元のパラメータ空間を概念的に描いたもので、緑の通常制御領域から外れるにつれて「正常制御への復帰」「ソフトランディングの試み」、そしてディスラプションが不可避で損傷が予想される領域へと色分けされており、プラズマの生成・終了も境界領域の軌道として表されている。つまり例外処理の選択肢は、復帰を試みる、制御可能な経路を通って安全に放電を終了させる(ソフトランディング)、あるいは最悪の場合、ディスラプション緩和に移行して損傷を最小化することである。
ディスラプション回避は例外処理の中でも特に専用の設計を要する要素であり、ITER の制御システムでは独立した機能群として分解・設計が進められている。現有トカマクで試験された回避機能と設計要求の対応付けが行われているが、研究段階の概念を実時間コードとして信頼性高く展開するまでには依然として課題が残る。原型炉では中性子環境のために診断が制限され、測定できない量を実時間モデルで補う必要があるため、モデルの信頼性がそのまま例外処理の信頼性につながる。制御系が「うまくいかないとき」にどう振る舞うかの設計は、燃焼プラズマの定常制御そのものと同じ重みを持つ課題である。
この解説が根拠にした論文から
- Development of ITER-relevant plasma control solutions at DIII-DNuclear Fusion 2007
- Overview of the preliminary design of the ITER plasma control systemNuclear Fusion 2017
- Plasma control for the step prototype power plantNuclear Fusion 2024
- Developing disruption avoidance functions for the ITER plasma control systemPlasma Physics and Controlled Fusion 2026
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推移
研究の変遷
1995–200417本 · 0.17%
先進トカマクと定常運転への応用
この時代の論文は、先進トカマクや定常状態運転に関連してプラズマ制御を論じ、MAST、DIII-D、LHD、JETなどの装置で検討されていた。周辺プラズマやエルゴディックダイバータ、渦電流、電流分布といった主題と並置され、炉心制御というより装置統合の文脈が目立つ。
同時に語られた主題定常状態、プラズマ対向機器、電磁流体力学、エルゴディックダイバータ、周辺プラズマ、渦電流
この時代の論文から
- Plasma control issues for an advanced steady state tokamak reactorNuclear Fusion 1999
- Maturing ECRF technology for plasma controlNuclear Fusion 2003
- Approximation of eddy currents in three dimensional structures by toroidally symmetric models, and plasma control issuesNuclear Fusion 1997
- Steady-state operation of magnetic fusion devices - plasma control and plasma facing componentsNuclear Fusion 2000
2005–201455本 · 0.36%
ITER実機対応と診断統合
ITER向け制御ソリューションの開発が中心となり、DIII-D、EAST、KSTAR、ASDEX-Upgradeでの実験と並行して進められた。プラズマ診断、周辺プラズマ、定常状態、逆転磁場ピンチなどと共に論じられ、DEMOの制御診断の課題も現れる。
同時に語られた主題プラズマ診断、周辺プラズマ、定常状態、逆磁場ピンチ、電源、ピンチプラズマ
この時代の論文から
- Development of ITER-relevant plasma control solutions at DIII-DNuclear Fusion 2007
- Initial experiments towards edge plasma control with a closed helical divertor in LHDNuclear Fusion 2013
- Diagnostics for plasma control on DEMO: challenges of implementationNuclear Fusion 2012
- Edge plasma control by local island divertor in LHDNuclear Fusion 2005
2015–202677本 · 0.31%
ITER制御システム設計と統合運転
ITERプラズマ制御システムの予備設計・最終設計と初プラズマ準備が中心となり、EAST、KSTAR、DIII-D、Wendelstein 7-X、TCV、TJ-IIなどの装置での統合制御実験が並行する。プラズマ診断、定常状態、プラズマ擾乱、平衡再構成、データ収集、テアリングモードなどと並置され、多アクチュエータ統合制御や3次元効果が扱われている。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題プラズマ診断、定常状態、プラズマディスラプション、平衡再構成、データ収集、燃焼プラズマ
この時代の論文から
- Overview of the preliminary design of the ITER plasma control systemNuclear Fusion 2017
- Control of neoclassical tearing modes and integrated multi-actuator plasma control on TCVNuclear Fusion 2019
- 3D effects on transport and plasma control in the TJ-II stellaratorNuclear Fusion 2017
- ITER plasma control system final design and preparation for first plasmaNuclear Fusion 2021
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文29本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、4本の論文(うち全文1本)と4枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
