点火(Ignition)は、核融合・プラズマ物理学の現象。核融合燃料が、アルファ粒子加熱などの自己加熱がエネルギー損失を上回り、外部加熱なしで燃焼を持続する状態への遷移を指す。慣性閉じ込め核融合(ICF)の中心点火や高速点火、トカマク等の磁場閉じ込めにおいて、点火条件や点火閾値が研究されている。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは440本ある。比重が最も大きかったのは1975–1979年で、その期間の論文の1.06%を占めた。直近の2025–2029年では0.96%。
解説
点火とは、核融合プラズマにおいて融合反応で生じた生成物がもたらす加熱が、放射損失や熱伝導損失を上回り、外部からの加熱なしにプラズマが自発的に高温を維持・増大する状態のことである。熱核融合研究における中心的な目標がこの状態の実現であり、磁場閉じ込めと慣性閉じ込めという二つの主要なアプローチのいずれでも、点火条件を満たすことが最終的な関門とされてきた。重水素と三重水素の融合反応 D + T → n (14.1 MeV) + α (3.5 MeV) では、帯電したα粒子がプラズマ中にエネルギーを預けるのに対し、中性子は逃げてしまうため、自己加熱の主役はα粒子である。点火に至れば反応率が温度の上昇とともに急増する熱核的不安定性が働き、燃焼が周囲の燃料へ伝播していく。
点火とローソン条件
自己加熱が持続するために必要な条件は、プラズマの密度、温度、閉じ込め時間の組み合わせで表され、ローソン条件と呼ばれる。その物理的な意味は単純である。α粒子が単位体積あたり単位時間に付与するエネルギーは密度の二乗に比例し、一方で損失は熱伝導と放射によって決まる。密度と温度が高く、エネルギーを長く閉じ込められるほど、生成と損失の収支が黒字に向かう。重水素–三重水素燃料では、イオン温度が約10 keV(約1億度)を超え、密度と閉じ込め時間の積が一定値を超えたあたりで条件が満たされる。この「三重積」が融合研究の進捗を測る共通の物差しとなってきた。
慣性閉じ込めでは、閉じ込め時間が極めて短いため、条件は燃料の面密度 ρR(密度と半径の積)と温度で書き換えられる。中心に形成された高温の「ホットスポット」がα加熱で自己加熱を始め、周囲の高密度低温燃料へ燃焼波を伝播させるには、ホットスポットの温度と面密度が臨界線を越える必要がある。この臨界線はホットスポットのエネルギー収支モデルから求められ、温度が低いほど必要な面密度が急増する。図は、ホットスポットの自己加熱が成立する領域と点火領域を温度–面密度平面上に示したものであり、α粒子加熱のみを考慮した場合と、14.1 MeV中性子の一部がホットスポットにエネルギーを預ける場合を比較している。中性子は電気的に中性のためクーロン衝突でなく核弾性散乱でエネルギーを渡すが、その平均自由行程は点火級燃料の面密度より大きく、通常は無視できる。ただし高利得級の大面密度燃料では中性粒子ビーム加熱が無視できなくなり、必要面密度を下げる方向に働く可能性が示されている。
![Ignition criteria calculated using the conventional hot-spot power-balance model [14] on the T_\mathrm{h}–\rho R_\mathrm{h} plane. ‘α-heating’ and ‘n-heating’ denote α-particle heating and neutron heating, respectively. The solid curve presents the case in which only α-particle heating is considered as the self-heating power. The dotted, dashed, and dot-dashed curves correspond to the cases including neutron heating, where \eta_\mathrm{h,n} = 5\% (dotted), 10% (dashed), and 15% (dot-dashed), respectively, of the neutron birth energy (14.07 MeV) is assumed to be deposited into the hot spot.](https://fusionpapers-figures.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/nfae41cff1.jpg)
推移
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研究の変遷
1970–198424本 · 0.97%
初期の点火条件探求
トカマクと慣性核融合の両方で点火条件が議論され、高Z不純物の影響や中性粒子入射加熱の役割が調べられた。重イオンビーム駆動やレーザー駆動爆縮の理論解析が行われ、高密度トカマク点火炉の概念も出現した。
同時に語られた主題核融合ターゲット、中性粒子入射、低域混成波、リミッター、イオン加熱、慣性核融合
この時代の論文から
- Effect of high-Z impurities on the ignition and Lawson conditions for a thermonuclear reactorNuclear Fusion 1974
- Laser-driven isentropic hollow-shell implosions: the problem of ignitionNuclear Fusion 1979
- Numerical simulation and theoretical analysis of implosion, ignition and burn of heavy-ion-beam reactor-size ICF targets
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文120本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、5本の論文(うち全文3本)と3枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない


