EAST(east tokamak)は、核融合・プラズマ物理学の装置。中国にある超伝導トカマク装置で、長パルス・高性能Hモードの定常運転実証を目的とする。ITER類似のポロイダル配位とRF主体の加熱・電流駆動を備え、ダイバータ熱制御やELM抑制などの研究に用いられている。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは1,015本ある。比重が最も大きいのは直近の2025–2029年で、その期間に発表された論文の4.30%を占める。この用語集がこの主題を最初に拾うのは2005年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
EAST(実験先進超伝導トカマク、Experimental Advanced Superconducting Tokamak)は、中国・合肥の中国科学院合肥物質科学研究院に建設された全超伝導コイル式トカマク装置であり、長パルス・高性能プラズマ運転を主眼に据えた磁気核融合研究装置である。主要半径1.9 m、マイナー半径0.45 m、トロイダル磁場約2.5 T、短パルスで最大1 MAのプラズマ電流を特徴とし、超伝導磁石による定常磁場と高出力の高周波加熱・電流駆動を組み合わせることで、数百秒に及ぶ定常状態プラズマの実現を狙っている。ITERやその後の中国次世代装置(CFETR)に向けた定常運転の物理・工学課題――特に金属壁環境下での長パルスHモード、パワー排出、ELM制御――を先行的に検証する役割を担っており、2006年の運転開始以降、100秒級の定常状態Hモード放電など、長パルス運転に関する世界を代表する成果を多数上げてきた。
装置の概要とミッション
EASTの最大の特徴は、トロイダル場コイル・ポロイダル場コイル・センターソレノイドのすべてを超伝導磁石で構成したことである。銅コイル装置では磁場を数秒から数十秒しか維持できないのに対し、超伝導磁石は原理的に定常の閉じ込め磁場を与えられるため、放電自体を長時間化できる。これは単に「長く運転できる」というだけでなく、プラズマの電流分布や乱流輸送が自励的な定常状態に落ち着く様子を観測する、すなわち将来の定常炉で問題となる時間スケールの物理を実験するための不可欠な条件である。装置断面の内部構造と各部の材料構成を示すのが次の図である。

fig.1 Physics design of new lower tungsten divertor for long-pulse high-power operations in EAST (2021) · CC BY 4.0
Cross-section of the previous EAST internal structures and a photo of PFCs (2014–2020), including the lower carbon (C) divertor covered with graphite tiles bolted onto water-cooled copper alloy heat sinks (heat removal capability < 2 MW m−2 between 2008 and 2020), the upper tungsten (W) divertor with ITER-like W/Cu monoblock cassette bodies (heat removal capability up to 10 MW m−2 since 2014) and the molybdenum (Mo) alloy first wall (heat removal capability ∼0.5 MW m−2 since 2012). Two in-vessel cryogenic pumps are located behind the low-field-side baffles with nominal pumping speed of ∼2 × 75 m3 s−1 for deuterium.
図は装置のポロイダル断面(左)と炉内部材の写真(右)で、上部にタングステン製の上ダイバータ、下部に当時使われていた黒鉛タイル製の下ダイバータ、第一壁を覆うモリブデン合金タイル、そして低磁場側バッフル背後の2基の極低温ポンプが見て取れる。EASTは上下両方にダイバータを備え、単極(SN)に加えてダブルヌル(DN)磁場配置での運転も可能である点も特徴である。
EASTのミッションはITERとCFETRに向けた定常運転の検証であり、そのための物理条件として「主に電子加熱」「低トルク入力」「金属壁」が揃っていることが挙げられる。中性粒子ビーム入射(NBI)のトルクが小さく、高周波加熱が支配的で、タングステンダイバータを持つというこの組合せは、ITERで想定される運転条件に近く、他の中型装置では再現しにくい実験環境を提供している。
超伝導磁石と工学システム
超伝導磁石は、液体ヘリウムによる極低温冷却を要するため、クライオスタット、冷却配管、絶縁系など銅コイル装置にはない工学系が装置の大部分を占める。一方でプラズマ放電自体は誘導電流で開始されるため、長パルス運転ではボルト秒の枯渇を回避する、すなわち電流駆動でループ電圧を実質ゼロに保つことが必須となる。このためEASTでは高周波電流駆動が装置の中核技術となっており、後述のように2.45 GHzと4.6 GHzの低域混成波電流駆動(LHCD)を主軸とする構成が取られている。
炉内機器の面では、2012年に第一壁の大部分を水冷モリブデン合金タイルに更新し(熱除去能力約1 MW m⁻²)、2014年には上部黒鉛ダイバータをITER型タングステン/銅モノブロック構造のダイバータに置き換えた。モノブロック構造はタングステン製の小片を銅製の冷却パイプに沿って並べたもので、最大10 MW m⁻²の熱除去能力を持つ。下部ダイバータは2008年から2020年までSiCコーティング黒鉛タイルを銅合金ヒートシンクにボルト留めした構造で、熱伝導が限られ熱除去能力は2 MW m⁻²未満にとどまり、長パルス運転の制約要因となっていた。このため下部ダイバータもタングステン化する計画が進められており、その設計では閉じたダイバータ槽で中性粒子を閉じ込めて安定な完全デタッチメントを可能にする「閉鎖型ダイバータ」の考え方を採用しつつ、炉内コイルの助けでXダイバータ配置も取れるようにしている。新しい下部ダイバータの外側モジュールの実物大模型を示すのが次の図である。

fig.6 Physics design of new lower tungsten divertor for long-pulse high-power operations in EAST (2021) · CC BY 4.0
One outer-divertor module mock-up of the new lower divertor on EAST with ITER-like monoblock PFUs. The horizontal and vertical target plates are connected with a square end box. Water flows into the divertor module through an end box at the end of the baffle and flows out through another end box at the end of the horizontal target plate.
図はITER型モノブロックのプラズマ対向ユニットを用いた外側ダイバータモジュールの模型で、水平ターゲット板と垂直ターゲット板が角形エンドボックスで連結され、冷却水がバッフル端のエンドボックスから流入して水平ターゲット端から流出する構成が分かる。
加熱・電流駆動と計測
EASTの加熱・電流駆動系は高周波が主体である。LHCDは2.45 GHz系(2 MW)と4.6 GHz系(3 MW)を備え、後者は高い電流駆動効率を持ち長パルス定常運転の主力である。これにイオンサイクロトロン共鳴加熱(ICRF、約30 MHzで3 MW)、電子サイクロトロン共鳴加熱(ECRH、140 GHzで1.5 MW)が加わる。NBIは4本のビームラインで同方向6 MWの入射能力を持つが、長パルス運転では高周波のみで放電を維持することが基本方針である。実際、純粋な高周波加熱だけでゼロ・ループ電圧の状態を電流緩和時間の40倍を超える21秒間維持した例があり、ECHとLHWの相乗効果――ECHがLHWの加熱・電流駆動を増強する――も確認されている。全入射パワーは短パルスで約15 MW、長パルスで約6 MW(将来的に約10 MWへ増強)である。
計測系は長パルス運転に耐える構成が求められる。ダイバータ部のラングミュアプローブ群、絶対極端紫外線(AXUV)フォトダイオードアレイによる放射計測、トムソン散乱による電子温度・密度計測、極端紫外線分光器、タングステン分光、ガスパフ入口などが断面内に配置されており、炉内の2基の極低温ポンプと合わせて密度・不純物・排気のフィードバック制御を支える。中性子計測も整備されており、NBIとICRFの複合加熱プラズマでの高速イオン特性を中性子放出分光で調べる研究や、ICRF少数種加熱時の中性子放出挙動の研究、中性子放射化システムの較正などが行われている。また、高速電子によって駆動されるアルフベン固有モードの観測や、自発的ディスラプションに伴うランナウェイ電子の生成といった、高周波加熱・電流駆動に特有の物理も研究対象となっている。
長パルスHモードと定常運転
EASTの中心的な成果は、長パルスHモードの実現である。2013年頃にはLHCDのみで駆動する完全定常の長パルス・ダイバータ放電が400秒を超えて達成され、LHCDとICRFの併用で30秒を超える定常Hモードが得られた。2014年には規格化閉じ込め性能H98 ∼ 1.2の高性能Hモードが28秒(エネルギー閉じ込め時間の約200倍)維持され、2017年以降は約100秒の長パルスHモード運転が可能となった。2020年頃には、ITER型タングステン上部ダイバータを用い、不純物制御・コアとエッジのMHD安定性・熱排出の制御を伴う100秒級の定常状態Hモード放電が初めて実証されている。この放電では高密度(グリーンワルト(Greenwald)密度の0.6–0.8倍)でβP ∼ 2.5、βN ∼ 2.0、ブートストラップ電流割合約50%という、定常炉シナリオに求められる水準の性能が示された。
長パルス運転の鍵は、エッジ局在モード(ELM)の制御と熱排出の定常化にある。大型のtype-I ELMはダイバータに許容できない過渡熱負荷を与えるため、EASTでは低域混成波、超音速分子ビーム入射(SMBI)、共鳴磁気摂動(RMP)、リアルタイムのリチウムエアロゾル注入など多様なELM緩和・抑制手法が開発されてきた。RMPによるELM抑制では、n = 4の偶数パリティ構成の炉内コイルを用いてq95 ∼ 3.7付近に加え、q95 = 3.9–4.1および4.2–4.8の抑制窓を拡大したことが報告されており、低トルク入力というEASTの運転条件がITERの想定と類似していることから、ITERのELM制御戦略を支える重要な知見となっている。また、高頻度・小振幅のグラッシー(grassy)ELMと呼ばれるHモード領域は、過渡熱負荷がtype-I ELMの約20分の1と小さく、粒子排出能力が高いため、長パルスの定常放射ダイバータ運転に適した台座として注目されている。
一方、長パルス運転では熱の蓄積が徐々に境界条件を悪化させる問題も顕在化する。下部黒鉛ダイバータ時代の61秒Hモード放電では、約30秒からターゲット表面のホットスポットが発生し、炭素不純物の増加、ダイバータでの重水素再循環の低下、制御不能な密度上昇を経てループ電圧が増加し、ボルト秒を消費してパルス長が制限される様子が観測されている。この経験が、下部ダイバータのタングステン化と熱除去能力向上の直接の動機となった。
ダイバータ、熱排出とプラズマ対向部材
定常炉の成立を左右する最大の物理・工学課題の一つが熱排出である。プラズマ対向部材が定常的に耐えられる熱流束は10–20 MW m⁻²程度であり、これは将来炉で予想される非緩和のダイバータ熱流束より一桁以上小さい。このためダイバータプラズマをデタッチメント(ターゲット板からのプラズマの離脱)させて放射・再結合で熱を分散させる必要があり、ターゲット板の電子温度を5 eV以下に保つことが求められる。しかし従来の垂直ターゲット板型ダイバータでは、ストライク点近傍のみがデタッチする「部分デタッチメント」が現実的な運転点となり、外側スクレイプオフ層では高温のまま残るため、高稼働率炉では遠SOL領域の侵食が問題となる。完全デタッチメントを狙うと放射フロントが閉じた磁束面内のX点近くまで侵入してX点MARFEを形成し、台座温度と閉じ込め性能を低下させる。この狭い運転窓を如何に制御するかが本質的難問である。
EASTではこの課題に対して、不純物シード(ネオン、アルゴン等)による放射冷却とフィードバック制御で取り組んでいる。従来の放射パワー制御やダイバータプローブのイオン飽和電流制御には、部分デタッチメント状態での制御信頼性や、長パルス・高出力放電でのプローブ先端の侵食・信号劣化という問題があった。そこで最近のEASTでは、ダイバータの電子温度計測で部分デタッチメントの開始を検出した後、X点近傍のAXUV放射チャンネルへのフィードバックに切り替える二段構えの制御方式が開発され、グラッシーELMのHモードにおいて優れた全エネルギー閉じ込め(H98,y2 > 1)を維持したまま定常的な部分デタッチメントを実現している。大型ELM制御とネオン・アルゴンシードによる安定部分デタッチメントの両立も示されており、グラッシーELM領域の高い不純物ふるい分け能力が低い台座密度でのデタッチメント達成に寄与している。
さらに、ダイバータ磁場配置の工夫も進められている。準スノーフレーク配置の実証や、閉鎖型ダイバータとXダイバータを組み合わせた新下部ダイバータの設計は、より低い上流密度・不純物注入量で安定な完全デタッチメントに到達することを狙ったものである。また、スクレイプオフ層の密度肩構造とダイバータ中性粒子圧の関係、Lモード・Hモードでのデタッチメント密度閾値、SMBIと低域混成波が誘起する磁気摂動を用いた能動的なダイバータ磁束制御など、境界プラズマの輸送と制御に関する幅広い研究が進められている。
長パルス・高出力運転に伴う部材損傷も重要な研究主題である。ディスラプションや垂直変位イベント、ELMに伴うミリ秒級の過渡熱負荷は数千MW m⁻²に達し得るため、タングステン表面の粗面化、割れ、溶融といった損傷が懸念される。EASTでは運転キャンペーン後の検査でダイバータドーム、バッフル板、リミタ表面に溶融・割れの損傷が確認されており、ランナウェイ電子が関与する過渡熱負荷によるものと同定されている。このような実機でのin-situ損傷データは、ITER以降の装置の部材設計に不可欠な知見を与えるものである。
この解説が根拠にした論文から
- Progress of long pulse and H-mode experiments in EASTNuclear Fusion 2013
- Advances in H-mode physics for long-pulse operation on EASTNuclear Fusion 2015
- Physics design of new lower tungsten divertor for long-pulse high-power operations in EASTNuclear Fusion 2021
- Divertor impurity seeding with a new feedback control scheme for maintaining good core confinement in grassy-ELM H-mode regime with tungsten monoblock divertor in EASTNuclear Fusion 2020
- Extension of ELM suppression window using RMPs in EASTNuclear Fusion 2023
- Progress of physics understanding for long pulse high-performance plasmas on EAST towards the steady-state operation of ITER and CFETRPlasma Physics and Controlled Fusion 2020
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推移
研究の変遷
2005–2014151本 · 0.98%
EAST装置実験の開始とHモード・長時間パルス研究
2005-2014年の論文では、超伝導トカマクEASTにおけるHモード達成と長時間パルス実験が主要な主題であり、リチウム被覆、低域混成波加熱・電流駆動、イオンサイクロトロン加熱などと関連づけて報告されている。また、ITERやKSTAR、DIII-Dとの比較や共同研究も見られ、特に2007年の論文ではITERとEASTの両方におけるリチウム鉛試験ブランケットモジュールの設計と試験戦略が議論されている。
同時に語られた主題Hモード、周辺局在モード、リチウム、イオンサイクロトロン加熱、電流駆動、プラズマ制御
この時代の論文から
- Conceptual design and testing strategy of a dual functional lithium–lead test blanket module in ITER and EASTNuclear Fusion 2007
- Recent experiments in the EAST and HT-7 superconducting tokamaksNuclear Fusion 2009
- Progress of long pulse and H-mode experiments in EASTNuclear Fusion 2013
- Study on H-mode access at low density with lower hybrid current drive and lithium-wall coatings on the EAST superconducting tokamakNuclear Fusion 2011
2015–2026864本 · 3.45%
定常運転シナリオ開発とITER・CFETR支援研究
2015-2026年の論文では、高性能な長時間パルス運転シナリオの開発に焦点が移り、タングステン壁、不純物輸送、中性粒子入射、周辺局在モード制御などと関連して研究が進展している。ITERやCFETRとの連携が顕著になり、複数装置(DIII-D、Alcator C-Mod、ASDEX-Upgradeなど)との比較研究や機械学習によるディスラプション予測も登場している。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題Hモード、周辺局在モード、タングステン、中性粒子入射、不純物、低域混成波
この時代の論文から
- Overview of EAST experiments on the development of high-performance steady-state scenarioNuclear Fusion 2017
- Advances in H-mode physics for long-pulse operation on EASTNuclear Fusion 2015
- Recent advances in EAST physics experiments in support of steady-state operation for ITER and CFETRNuclear Fusion 2019
- Machine learning for disruption warnings on Alcator C-Mod, DIII-D, and EASTNuclear Fusion 2019
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている(EAST、east tokamak など)。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文120本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、7本の論文(うち全文4本)と2枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
