トムソン散乱(Thomson scattering、thomson、thomson scattering diagnostic)は、核融合・プラズマ物理学の計測。プラズマ中の自由電子によるレーザー光の散乱を分光し、電子温度・密度を非接触で測定する診断法である。入射光の波長偏移から電子速度分布を、散乱強度から密度を得る。核融合実験ではコアから周辺・ダイバータまで広く用いられ、集団散乱により高速イオン計測も可能である。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは315本ある。比重が最も大きかったのは1985–1989年で、その期間の論文の0.67%を占めた。直近の2025–2029年では0.65%。
解説
トムソン散乱とは、プラズマ中の荷電粒子、とりわけ電子によるレーザー光などの電磁波の散乱を利用し、電子温度・電子密度、さらには電子速度分布関数そのものを受動的に測定するプラズマ診断法である。散乱光は入射光に対してドップラーシフトしており、そのスペクトル形状が電子の運動を直接反映するため、磁場閉じ込め核融合プラズマの標準的な電子診断として、また低温・大気圧プラズマや宇宙プラズマ研究でも広く使われている。測定が散乱体積の局所情報を与えること、電子密度をプラズマの性質に関する事前知識なしに決定できることが最大の強みであり、一方で散乱信号が極めて微弱であることが常につきまとう課題である。
トムソン散乱の基本概念を図に示す。

fig.2 Conceptual design of Thomson scattering system with high wavelength resolution in magnetically confined plasmas for electron phase-space measurements (2026) · CC BY 4.0
Schematic illustration of (a) the Thomson scattering system and (b) the spatially-resolved spectrometer.
図の(a)は、プローブレーザーをプラズマ(CHD)に入射し、163°の散乱角で散乱光をファイバー越しに分光器へ導く系全体の配置を示す。図の(b)は空間分解分光器の内部で、スリットから入った散乱光がノッチフィルターと回折格子、凹面鏡を組み合わせた光路で波長分解され、検出器に結像する様子を描いている。
トムソン散乱が測るもの
トムソン散乱は古典極限、すなわち光子のエネルギーが電子の静止質量エネルギーより十分低く、散乱過程で光のエネルギーが保存される場合の荷電粒子による光散乱である。入射光の電場に電子が入射光の振動数で強制振動し、その振動電子が双極子放射として散乱光を放つ。静止した電子からの散乱光は入射光と同じ振動数をもつが、動いている電子からの散乱光はドップラーシフトを受ける。したがってトムソン散乱測定は、本質的には電子のドップラー分光である。
単色のプローブ光を用いた場合、観測される散乱スペクトルは散乱体積内の多数の電子からの散乱信号の和であり、その形状は電子速度分布関数の形に直接結びつく。速度分布がマクスウェル分布に従うと仮定すれば、電子温度は散乱スペクトルの幅から、電子密度は散乱光の総強度から決まる。散乱スペクトルの幅は電子の熱速度で決まるため、温度が高いほどスペクトルは大きく広がる。例えばプローブ波長を基準に規格化した波長シフトで見ると、電子温度100 eVではスペクトルはプローブ波長のごく近傍に鋭く集中するのに対し、1 keV、6 keVと温度が上がるにつれて幅は桁違いに広がり、スペクトルの高さは逆に低くなる。このことは、高温プラズマほど単一チャンネルあたりの検出光子数が減り、信号対雑音比の確保が難しくなることを意味する。散乱強度が位相空間密度に比例する以上、高温・では信号が本質的に弱いのである。
推移
他の項目を重ねる
研究の変遷
1970–198410本 · 0.41%
初期のトムソン散乱計測の確立
この時代の論文は、Ormak、Alcator A、2XIIなど各装置での電子密度・閉じ込め計測を通じて、トムソン散乱をプラズマ診断として確立するものであった。同時に、高繰り返し化や速度シアを持つプラズマでの電流生成といった理論的・技術的拡張も現れている。コーパス全体に占める割合は0.41%と小さく、レーザープラズマや散乱診断といった関連語とともに論じられていた。
同時に語られた主題速度シア、定常状態、散乱計測、プラズマ診断、レーザープラズマ
この時代の論文から
- First high-repetition-rate Thomson scattering for fusion plasmasNuclear Fusion 1982
- Electron confinement measurements on the Ormak plasma using Thomson scatteringNuclear Fusion 1974
- Measured sub-millimeter synchrotron background in Alcator A – implications for D2O laser Thomson scatteringNuclear Fusion 1981
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている(Thomson scattering、thomson、thomson scattering diagnostic など)。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文105本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、7本の論文(うち全文4本)と1枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
