レーザー生成プラズマ(Laser-produced plasma、laser produced、laser-produced)は、核融合・プラズマ物理学の現象。レーザー光を固体ターゲットなどの物質に集光した瞬間に生成される高温高密度のプラズマであり、レーザー核融合、X線源、宇宙プラズマ現象の実験室再現など幅広い研究で利用される。その性質はレーザー強度・波長・ターゲット材質に強く依存する。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは301本ある。比重が最も大きかったのは1975–1979年で、その期間の論文の1.06%を占めた。直近の2025–2029年では0.23%。
Laser-produced plasma; 'laser-produced' is an adjectival form.
解説
レーザー生成プラズマとは、高出力レーザー光を固体・気体・液体の標的に集束させることで生成されるプラズマである。パルスレーザーのエネルギーは数ナノ秒からフェムト秒という極短時間に微小領域へ注入されるため、標的表面は瞬時に電離し、電子温度が数百電子ボルトからキロ電子ボルト級に達する高温高密度状態が実現する。1960年代のレーザー発明直後にその発光が観測されて以来、レーザー生成プラズマはレーザー核融合の研究対象であると同時に、X線や極端紫外線(EUV)の光源、宇宙物理の模型実験の場として、プラズマ物理学の中でも応用範囲の広い分野に成長した。
生成と加熱の機構
レーザー生成プラズマの形成は、標的表面での吸収から始まる。集束されたレーザー光はまず標的を加熱・融解・蒸発させ、生じた蒸気をさらに電離して初期プラズマを作る。いったんプラズマが形成されると、その後のレーザーエネルギーの吸収は主に逆制動放射(自由電子がイオンのクーロン場中で光子を吸収する過程)によって行われる。吸収効率は密度と温度に依存し、短波長レーザーほど高密度域まで光が侵入して効率よく加熱できる。
吸収されたエネルギーは電子に渡り、電子の熱伝導によってレーザー光が直接届かない高密度領域(いわゆる過剰密度領域)へも運ばれ、そこで標的物質をさらに蒸発・電離させる。この一連の過程を「アブレーション」と呼び、アブレーション圧力は数十メガバール(数千万気圧)に達しうる。レーザー核融合ではこの圧力を利用して燃料カプセルを内側へ爆縮する。
高強度域では吸収機構が様変わりする。光の電場が電子の熱運動に比べて無視できなくなると、共鳴吸収や真空加熱など電場が直接電子を引きずり出す機構が支配的となり、数メガ電子ボルト級の高速電子が発生する。こうした高速電子は高速点火の概念(後述)の鍵となる一方、非局所的な熱輸送を通じて爆縮の安定性にも影響する。実際、アブレーション面におけるレイリー・テイラー不安定の成長が電子の非局所熱輸送によって部分的に抑制されることが、理論と多次元シミュレーションの両面から示されている。
プルームの膨張動力学
生成されたプラズマは、周囲が真空であればほぼ一方向に加速されて膨張する。膨張の駆動力はプラズマ自身の熱圧力であり、その自己相似な膨張は断熱指数(比熱比)に敏感である。電離度が高いプラズマでは自由度が多く断熱指数が小さくなるため、膨張するプルームの温度低下と放射の時間変化が単純な理想気体の描像とは異なってくる。プルーム内部では密度・温度の勾配に沿って電子とイオンが空間的に分離し、その結果生じる静電場がイオンを電子とともに加速する。この機構により、イオンは熱運動をはるかに超える速度まで加速され、高速のプラズマジェットが形成される。
膨張するプルームは必ずしも一様ではない。レーザー光の強度分布の不均一や、プラズマ中での光の屈折・細線化(フィラメンテーション)不安定によって、密度に短い波長の揺らぎが生じる。こうした短スケール長の密度変動は、レーザー光の散乱やパラメトリック不安定の発生に直接関わるため、精密な計測と理論の両面から研究されてきた。また、プルーム中ではイオン音波の強振幅の二重層が形成されてイオンを衝撃的に加速しうること、電子の二流体不安定(二つの電子ビームの相互作用)から磁気再接続に由来すると解釈される高速電子ジェットが生じうることも報告されており、レーザー生成プラズマは微小なスケールで多様な非平衡・非線形現象を再現できる場となっている。
放射と診断
高温高密度のレーザー生成プラズマは強力な放射源である。放射は主に三つの機構で生じる。高速電子がイオン場で減速される際の制動放射(連続スペクトル)、束縛状態間の遷移による特性X線(線スペクトル)、そしてイオンへの電子の再結合に伴う放射である。電離度が高いアルミニウムなどの標的では、水素様・ヘリウム様イオンの特性線が鋭く輝き、これらの線の強度比や広がりから電子温度・電子密度・電離度分布を推定できる。多元素標的ではイオンと中性原子の生成・消滅の時間発展が元素ごとに異なることも分かっており、空気中で生成したプラズマの温度依存の化学種分布や平衡条件の評価も行われている。
時間・空間分解診断の進歩がこの分野の発展を支えてきた。ピコ秒級のゲート動作を持つX線フレーミングカメラは、プルームや爆縮コアの時間分解像を得る標準的手段となった。また、メガジュール級レーザー実験のために、絶対校正された広帯域・時間分解軟X線分光器が開発され、放射の全収支を測定できるようになった。可視・紫外域ではレーザー誘起蛍光法による炭素プラズマの原子・イオン分布のマッピングや、トムソン散乱による電子・イオン温度の直接計測が用いられる。ブラッグ散乱(誘導ブリルアン散乱)の前方散乱観測のように、レーザー光とプラズマ波の相互作用そのものを診断対象とする研究も盛んである。
周囲気体と磁場の効果
真空中とは異なり、周囲に気体があるとプルームの膨張は大きく変化する。プルームが周囲気体を押し縮めて衝撃波を形成し、気体側の衝撃波とプルーム側の接触面からなる「プラズマ・アンビル」構造ができて、プルームの膨張が制限される。気体圧力が高いほどプルームは短く太くなり、放射の再吸収によって冷却も促進される。このため分光分析への応用では、周囲条件がプラズマの温度・電離度・発光強度を左右する重要な制御パラメータとなる。中性子照射を受けた標的では材料の格子欠陥がアブレーション特性を変え、生成プラズマの性質にも影響しうることが示されている。
外部磁場の効果も顕著である。強い横向き磁場中では、プルームの膨張が磁場に垂直な方向で抑えられ、ジェットがコリメートされる。同時に、膨張する導電性プラズマと磁場の相互作用によってレイリー・テイラー型あるいはカインド・ヘルムホルツ型の不安定が誘起され、ジェット表面に変形が生じる。この種の実験は、磁場中を進む天体ジェットの安定性を地上で調べる手段としても利用されている。さらに、キネティック・アルフヴェン波の非線形発展とそれに伴う乱流スペクトルをレーザー生成プラズマで再現し、宇宙空間の現象を模型実験として検証する試みも進んでいる。
応用:核融合、光源、宇宙物理
レーザー生成プラズマ最大の応用は慣性核融合である。ミリメートル級の燃料カプセルをレーザーで一様に爆縮し、中心に高密度の高温コアを形成して熱核融合反応を起こす。このためには爆縮の球対称性と流体不安定の抑制が決定的に重要であり、非局所熱輸送や放射流体の統合シミュレーションによる設計、分光診断との突き合わせによる検証が進められてきた。また、爆縮とは別のアプローチとして、爆縮で作った高密度コアに超短パルス・超高強度レーザーが加速した高速電子を打ち込んで局所的に点火する「高速点火」の概念が研究されており、点火条件の明確化が数値シミュレーションによって進められている。
放射源としての応用も広い。レーザー生成プラズマはナノ秒以下の時間で強いX線を放つため、ナノ秒時間分解のX線回折やX線吸収微細構造(EXAFS)測定のプローブ光源として利用されてきた。レーザー生成プラズマを利得媒質とするX線レーザーの研究も1980年代から続けられている。産業的には、リソグラフィ用の13.5ナノメートル帯EUV光源として、レーザー生成スズプラズマが量産装置に実装されており、この分野でレーザー生成プラズマは現在最も経済的価値の大きい応用となっている。高平均出力・高輝度の軟X線源として分光分析に用いる試みも進んでいる。
さらに、レーザー生成プラズマは「実験室天体物理学」の場を提供する。レーザーが作り出す巨大なエネルギー密度は、超新星爆発やその残骸の衝撃波、天体ジェットなどとスケール変換された類似の無次元パラメータを持つ流れを実現できる。例えば、超新星1987Aで観測された放出物質とリングの衝突を模した実験が数値計算と比較しながら設計されており、天体観測では検証できない物理過程を地上で調べる道が開かれている。このようにレーザー生成プラズマは、生成方法の単純さと到達条件の極端さの両方を兼ね備え、基礎研究から産業・エネルギー開発までを結ぶ分野として発展を続けている。
この解説が根拠にした論文から
- Some aspects of laser-produced plasmasPlasma Physics and Controlled Fusion 1984
- Progress and prospects in the applications of laser produced plasmasPlasma Physics and Controlled Fusion 1984
- Recent studies of laser produced plasmasPlasma Physics and Controlled Fusion 1999
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推移
研究の変遷
1970–198419本 · 0.77%
核融合と基礎過程の時代
レーザー生成プラズマは、アルファ粒子の飛程や高速電子・X線・高速イオンの生成など、核融合応用と基礎物理の両面から研究された。ステラレータ磁場中での膨張など磁場閉じ込めとの関連も見られる。
この時代の論文から
- On the range of alpha-particles in laser-produced superdense fusion plasmaNuclear Fusion 1976
- Expansion of laser-produced plasmas in stellarator fieldsNuclear Fusion 1977
- Fast electrons, X-rays, and fast ions in laser-produced plasmasNuclear Fusion 1979
- Laser-Produced Plasmas, (Report on the I.P. Conference held at Ferens Hall, The Univerisy of Hull, United Kingdom, 17–18 April 1973)Nuclear Fusion 1973
1985–199447本 · 0.86%
診断法とパラメトリック不安定性の時代
プラズマ診断法の開発が進み、密度スケール長の推定や3/2ω0発光の波長シフトを用いた温度・乱流診断が行われた。同時に、誘導ラマン散乱・誘導ブリルアン散乱・二プラズモン崩壊などのパラメトリック不安定性とその閾値・成長率が理論と実験で調べられた。
同時に語られた主題プラズマ診断、誘導ラマン散乱、ラマン散乱、誘導ブリルアン散乱、ブリルアン散乱、崩壊不安定性
この時代の論文から
- A new technique for estimating the density scale-length of laser produced plasmasNuclear Fusion 1988
- Temperature and turbulence diagnostics of laser produced plasmas from the wavelength shifts of 3/2ω 0 emissionPlasma Physics and Controlled Fusion 1987
- Parametric instabilities and plasma turbulence in laser-produced plasma experimentsPlasma Physics and Controlled Fusion 1990
- Effect of collisional damping on the threshold and growth rate of absolute two-plasmon decay instability in laser-produced plasmasPlasma Physics and Controlled Fusion 1991
1995–200455本 · 0.56%
高強度・相対論的効果への展開
フェムト秒レーザーや高強度レーザーに伴い、相対論的電子流のワイベル不安定性や自己生成高調波を用いた診断が現れた。CO2レーザー生成プラズマのイオン角度依存性や高パルス磁場との相互作用も研究された。
同時に語られた主題フェムト秒レーザー、軟X線、プラズマ診断、ワイベル不安定性、導波管、トムソン散乱
この時代の論文から
- Recent studies of laser produced plasmasPlasma Physics and Controlled Fusion 1999
- Laser-produced plasmas interaction with high pulsed magnetic fieldPlasma Physics and Controlled Fusion 1999
- Weibel instability of relativistic electron flows in a laser produced plasmaPlasma Physics and Controlled Fusion 2002
- Using self-generated harmonics as a diagnostic of high intensity laser-produced plasmasPlasma Physics and Controlled Fusion 2002
2005–201472本 · 0.47%
輸送現象と応用・統合の時代
強レーザー生成電子ビームの物質中輸送や、中性子照射・軽ガス原子混入がプラズマ特性へ与える影響が調べられた。軟X線源やプラズマジェット、磁気核融合領域へのシールディング機構のスケーリングなど応用志向の研究も増えた。
同時に語られた主題軟X線、トムソン散乱、プラズマジェット、点火、フェムト秒レーザー、電子輸送
この時代の論文から
- Scaling mechanisms of vapour/plasma shielding from laser-produced plasmas to magnetic fusion regimesNuclear Fusion 2014
- Effect of neutron irradiation on the characteristics of laser-produced plasmaNuclear Fusion 2010
- Conditions defining the mechanisms of the formation of light gas ions in multicomponent laser-produced plasmasNuclear Fusion 2010
- Effect of light gas atom inclusions on the characteristics of laser-produced plasma ionsNuclear Fusion 2011
2015–2026108本 · 0.43%
超高速熱力学と宇宙物理接続の時代
トムソン散乱によるピコ秒熱力学の解明や、3/2倍高調波・誘導ラマン側方散乱の精密計測が行われた。運動論的アルフベン波の非線形発展や螺旋磁場構造の生成など、宇宙物理現象の実験室シミュレーションへの利用が目立つ。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題プラズマ診断、銅、トムソン散乱、軟X線、フェムト秒レーザー、磁気リコネクション
この時代の論文から
- Spectrally and angularly resolved measurements of three-halves harmonic emission from laser-produced plasmasPlasma Physics and Controlled Fusion 2017
- Stimulated Raman sidescattering in intense laser produced plasmas with steep density gradientsPlasma Physics and Controlled Fusion 2019
- Investigation of picosecond thermodynamics in a laser-produced plasma using Thomson scatteringPlasma Physics and Controlled Fusion 2020
- Nonlinear evolution of Kinetic Alfvén Wave and the associated turbulence spectra in laser produced plasmas and laboratory simulation of astrophysical phenomenaPlasma Physics and Controlled Fusion 2021
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている(Laser-produced plasma、laser produced、laser-produced など)。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文38本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、3本の論文(うち全文0本)と0枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
