CAD view of an ITER vessel sector with a poloidal cross-section illustrating the main PFCs (main chamber first wall, baffle, divertor targets, divertor dome) and principal plasma regions (core, pedestal, SOL, far-SOL, inner- and outer divertor).
図はトカマク真空容器内の主要なプラズマ領域と壁構成要素を示す。中心の高温度プラズマ(コア)をペデスタルが囲み、その外側のセパラトリックスと壁の間の薄い領域が SOL であり、さらに外側の遠 SOL(far-SOL)へと続く。下端のダイバータ領域では、開いた磁力線に沿ったプラズマがターゲット板へと流れ込む。以下では、この領域の物理を順に見ていく。
定義と幾何構造
SOL は、閉じた磁気面の内側と異なり、磁力線がどこかの材料表面に「接地」されている領域である。トカマクでは、極方向(poloidal)断面でセパラトリックスを横切ると磁力線の性質が不連続に変化する。内側の磁力線はトロイダル面を無限に周回するが、外側の磁力線は を通ってへ至る。このため、SOL の特徴は平行方向の長さが有限であることにある。接続長さ L∥(中平面(midplane)からターゲットまでの磁力線に沿った距離)は、X 点を持つ配置では典型的に数十メートル程度になり、プラズマがこの距離を音速で流れるのに要する時間 τ∥ が、横方向輸送の特性時間と競合する。
SOL 内の熱は、まず磁力線に沿ってダイバータへと運ばれる。この平行輸送は主に電子の熱伝導(Spitzer–Härm 伝導)と対流であり、ダイバータプラズマの温度は、SOL への入力出力と平行伝導損失の釣り合いから決まる。古典的な二点モデルは、中平面上流の温度とターゲット表面の温度をこの釣り合いで結びつける。
一方、SOL の幅そのものは、平行輸送と横方向輸送の競合で決まる。伝統的な描像では、横方向拡散係数 χ⊥ で SOL 内に供給された熱が、平行方向へ逃げるまでの時間 τ∥ の間に広がる幅として λq ~ (χ⊥τ∥)^1/2 が成り立つとされる。しかし H モードで測定される λq はこの描像から予想されるよりはるかに狭く、これを説明する有力なモデルがヒューリスティック・ドリフト(heuristic drift)モデルである。これは、磁力線の勾配および曲率に起因するドリフト(grad-B と curv-B ドリフト)が SOL 内で外向きの粒子流を作り、それがダイバータへのほぼ音速の平行流出と釣り合うという描像に基づく。この釣り合いから SOL 幅は約 2aρp/R(a は小半径、ρp は極方向イオン・ジャイロ半径、R は主要半径)と見積もられ、これは逆アスペクト比 ε と極方向イオン・ジャイロ半径の積 ερθ,i に等しい。この予測は、低ガスパフ H モードにおける広範な実験データと絶対値およびスケーリングの両面で定量的に良く一致する。問題は、この予測があまりに狭い幅を与えるため、炉規模装置での熱負荷が材料限界を大きく超えてしまう点にある。このため、SOL の幅を広げうる機構、とりわけ乱流の寄与が活発に研究されている。
近年注目されているのが乱流の広がり(turbulence spreading)である。SOL は常に強く乱流的なペデスタルに隣接しており、ペデスタルで生まれた乱流エネルギーがセパラトリックスを横切って SOL 内へと半径方向に伝播することで、SOL 内で局所的に生成される乱流に加えて横方向輸送を強化しうる。実験データを用いて「LCFS を横切る乱流エネルギー流束」と「SOL 内での乱流生成」の比(生成比)を評価すると、多くの場合生成比が 1 を超え、生成比が大きいほど熱流幅 λq が広いという相関が見られる。これは、SOL の幅が SOL 内の局所的不安定性だけでなく、閉じ込め領域側の乱流状態によっても決定されることを示しており、SOL をペデスタルと切り離して扱うことの限界を示唆している。
横方向輸送:フィラメント、ブロブ、近SOL/遠SOL
SOL の横方向輸送を支配するのは、フィラメント(ブロブ(blob)とも呼ばれる)と呼ばれる凝集構造である。これは磁力線に沿って伸びた管状の高密度・高温構造で、セパラトリックス近傍で生成された後、E×B ドリフトによって外向きに対流輸送される。フィラメントは、周囲より密度が高いことで内部に反磁性(diamagnetic)電流ループを持ち、これと背景電場との相互作用で外向きの推力を受ける。この対流的な輸送は、SOL の内側(近 SOL(near SOL))では拡散的な輸送が支配的であるのに対し、外側(遠 SOL(far SOL))では支配的となる。
フィラメント輸送の強さは、プラズマ形状にも敏感である。TCV での研究では、三角形状を負の方向に変えるとブロブの生成頻度が下がり、サイズは大きくなるものの半径速度が低下して粒子輸送への寄与が減ることが示された。負三角形状(negative triangularity)プラズマではエッジ乱流がほぼ完全に抑制される場合があり、これが負三角形状シナリオで ELM フリーかつ良好な閉じ込めが得られる理由の一つとされている。逆に、ダイバータでの粒子源(recycling)の増加は SOL 乱流を強化し、フィラメント活動を活発化させる。
磁場配置と SOL の非対称性
SOL の性質は磁場配置に強く依存する。トカマクの横方向輸送はバルーニング(ballooning)性を持ち、磁場曲率が不利な低磁場側(low-field side、LFS)で強い。このため、セパラトリックスを横切って SOL へ入る粒子の大部分は LFS 側で供給される。一方、平行輸送は磁力線に沿って双方向に粒子を運ぶため、シングルヌル(single-null)配置では LFS 中平面で生じた粒子は磁力線を伝って HFS と LFS の両ダイバータターゲットへ流れる。ダブルヌル(double-null)配置では HFS の SOL と LFS の SOL が磁気的に分離され、両者の間に大きな非対称性が生じる。
Schematic illustration of the different SOL and divertor regions: Confined region (blue); ‘Connected’ region of the SOL (orange); ‘Disconnected’ region of the HFS SOL (green). The ‘connected’ region lies between the primary and secondary separatrices (black solid lines). The high-density region (black dashed ellipses) at ASDEX Upgrade is measured at the HFS divertor using divertor diagnostics and at the midplane using profile reflectometry. The high-density front is most intense near the X-point and expands along the ‘connected’ region of the HFS SOL region at least up to the midplane where is has a lower intensity.
図は、シングルヌル配置における SOL の領域分割を示す概念図である。主セパラトリックスと副セパラトリックスの間の「接続(connected)」領域(橙色)は LFS で生じた粒子が磁力線に沿って HFS ダイバータへ流れる領域であり、その外側の「非接続(disconnected)」領域(緑色)は HFS 固有の SOL である。黒の破線で示した高密度領域は、X 点近傍で最も強く、接続領域に沿って中平面まで広がる。
ASDEX Upgrade などで観測されるこの高密度領域(high-density front)は、SOL 非対称性の顕著な例である。HFS ダイバータでは、LFS 中平面から平行伝導で供給される熱と、E×B ドリフトによる LFS ダイバータからの横方向粒子流の両方によって強い電離領域が形成され、X 点近傍の HFS SOL 密度は LFS 中平面セパラトリックス密度の約一桁に達する。この高密度領域は中性粒子源としても機能し、HFS ダイバータの中性粒子圧力を維持する。不純物シーディングによる放射損失の増大は電離に使える熱を減らし、高密度領域を縮小させる。また、磁場配置を下部シングルヌル(lower single-null)から上部シングルヌル(upper single-null)へ走査してダブルヌルに近づけると、HFS SOL 密度プロファイルは狭まり、密度が低下する。これは、副セパラトリックスの出現が HFS SOL を磁気的に分離し、LFS で生成された熱と粒子が HFS へ流れ込むのを断つためである。
E×B ドリフトは不純物分布にも影響する。SOL 内の電場に起因するドリフトは、不純物のダイバータ内分布や主真空室への侵入を制御し、プラズマ・材料相互作用(plasma–material interaction)の緩和や RF 加熱装置・第一壁への不純物流入の抑制という観点から、高磁場側(high-field side)SOL の不純物遮蔽(screening)特性が研究されている。また、W7-X などのヘリカル装置では、磁気島の SOL 幾何が放射優勢条件下での SOL 挙動に影響しうることが実験的に確認されている。
出力排除、デタッチメント、炉への含意
炉規模装置では、ダイバータターゲットへの熱負荷を材料限界以下に抑えることが最大の課題である。前述のように、H モードの狭い SOL 幅のままで ITER 規模の出力を処理することはできず、セパラトリックスを横切った出力の一部をターゲットに到達する前に体積的に散逸させる必要がある。その中心的手段がダイバータのデタッチメント(detachment)である。これは、ダイバータ領域の密度を上げるか不純物(窒素、ネオン等)を種まきして放射損失を増やし、ターゲット近傍のプラズマを冷却して圧力勾配を作ることで、ターゲットへの熱流束を下げる操作である。炭素壁の装置では、侵食された炭素自体が放射体として自己制御的なフィードバックを提供していたが、全金属壁の装置では金属不純物の放射損失が不十分であり、外部からの不純物種まきと、放射レベルおよびデタッチメント状態を燃焼プラズマと両立するレベルに維持するフィードバック制御が必須となった。
ダイバータプラズマの状態は、SOL 幅や上流プロファイルにも逆に影響する。ダイバータの高衝突性条件での SOL の広幅化(broadening)は、ターゲット上の熱流束フットプリント(footprint)を広げてピーク熱負荷を下げる点で有利であるが、その持続と機構(平行排出の支配か、上流の横方向輸送と中性粒子との相互作用の支配か)はまだ完全には理解されていない。ガスパフ後の SOL 幅の緩和が、類似のダイバータ条件でありながら異なる時間スケールで進行する例は、上流側の輸送変化がデタッチメント遷移の前段階として重要であることを示唆する。
炉への外挿は、単純なスケーリング則と詳細な数値シミュレーションの両方に依拠している。境界プラズマ・中性粒子輸送コード(SOLPS-ITER など、流体プラズマモデルとモンテカルロ中性粒子コードの結合)は、ダイバータプラズマの定量的予測の標準的手段であり、セパラトリックスでの密度・温度条件をペデスタル安定性モデルへ与えることで、閉じ込め領域の予測モデルと接続される。H モードではさらに、ペデスタルのエネルギーが ELM として断続的に放出され、ダイバータと主壁に過渡熱負荷を与えるため、ELM のエネルギー密度のスケーリングと、磁気摂動コイル(RMP)やペレット注入による ELM 制御が、SOL・ダイバータ物理と一体で扱われる。SOL は、閉じ込め・排出・材料相互作用という炉の三つの要求が交わる場所であり、その理解の進展が炉設計の信頼性を直接左右する。