中心ソレノイド(Central solenoid)は、核融合・プラズマ物理学の工学。トカマク装置の中心軸に置かれる大型のソレノイドコイルで、プラズマ電流を誘導するための磁束を供給する。中心ソレノイドが蓄える磁束がプラズマ立ち上げと電流維持の限界を決めるため、核融合炉ではその小型化・高効率化が課題となっている。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは44本ある。比重が最も大きかったのは2015–2019年で、その期間の論文の0.15%を占めた。直近の2025–2029年では0.06%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1995年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
中心ソレノイド(central solenoid, CS)は、トカマク型核融合装置の中心軸上に置かれる主磁場コイルであり、プラズマを生成・駆動するための誘導磁束(ボルト秒)を供給する変圧器の一次巻線として機能する。超伝導コイルとして構築される場合、その設計・製作・試験は核融合装置建設における最大の工学的課題の一つとされる。
トカマクにおける役割と機能
トカマクはプラズマを変圧器の二次回路とみなすことで電流を流す。中心ソレノイドに電流を急速に変化させると、その磁束がプラズマを貫いて起電力を生じ、プラズマの初期化(ブレークダウン)と電流駆動が行われる。運転中も、プラズマ電流を一定に保つためにソレノイド電流を徐々に減らし続ける必要があり、装置が長時間運転できるかどうかはソレノイドに蓄えられる磁束の総量(フラックススイング)に強く依存する。このため、定常運転を目指す装置では、電流駆動の負担を減らす観点からソレノイドの寸法や性能が装置全体の設計に影響する。例えば低アスペクト比のコンパクトなDEMO概念では、中心ソレノイドを小型化した設計が検討されており、ソレノイド構成の違いが装置サイズそのものに波及することが示されている。また、ソレノイドの磁場はプラズマの垂直安定性の維持やダイバータ領域の磁力線整形にも寄与しており、単なる電流駆動装置ではない。
図は、このコイル系の全体構成を示したものである。図には上部・下部のロードビームと圧力板、内側・外側の張力ロッド、Nb₃Sn内側モジュールとNbTiモジュールの積層、絶縁やバッファ領域が示されており、中心ソレノイドが単一のコイルではなく、垂直に積層された複数モジュールとそれを締結する予圧構造からなる一体物であることが分かる。

fig.02 Mechanical performance evaluation of the CFETR central solenoid model coil design (2018) · CC BY 4.0
Overview structure of the CFETR CS model coil assembly.
コイル設計と導体技術
中心ソレノイドは、装置内で最も高い磁場にさらされるコイルである。ITERでは最大磁場13 T、CFETRではピーク磁場12 Tが設計目標とされており、この強磁場領域ではニオブチタン(NbTi)では不十分で、ニオブ三錫(Nb₃Sn)超伝導線が用いられる。導体はケーブルインコンジット導体(CICC)と呼ばれる方式で、多数の超伝導素線を撚り合わせたケーブルをステンレス鋼のジャケットに収め、その中を超臨界ヘリウムが流して冷却する。この構造は大電流(ITERのモデルコイルでは46 kA)を運ぶと同時に、電磁力を支える機械強度と冷却安定性を両立する。
ソレノイドはパルス運転、すなわち電流を高速で上げ下げする運転を繰り返すため、導体が交流損失や高速励磁時の安定性といった超伝導パルスマグネット特有の問題に耐える必要がある。磁場の立ち上がり速度はITERのモデルコイルで0.6 T/s(挿入コイルでは1.2 T/s)、CFETRのモデルコイルでは1.5 T/sが目標とされており、これは導体の交流損失特性とクエンチ(超伝導状態の喪失)挙動の設計基準を直接に規定する。クエンチが起きた場合には、蓄えられた莫大な磁気エネルギーを安全に放出する必要があり、ITERでは170 kA級の直流遮断器を用いたクエンチ保護系や、JT-60SAのスイッチングネットワークユニットのような専用電源・保護機器がソレノイド系の一部として設計されている。また、クエンチ検出はプラズマの急速な事象(例えばプラズマ分裂)に起因する急激な電流変化をも見逃さないよう行われる。
機械構造と予圧
中心ソレノイドの機械設計を難しくしているのは、電磁力の向きである。ソレノイドは内側に押しつぶす方向の強大な電磁力(ホープ力)を受けるため、コイルは円周方向の圧縮応力にさらされる。Nb₃Snは焼きなまし後は脆く、ひずみに対して敏感であるため、この圧縮力を制御して導体に加わる応力を管理する必要がある。そこで、積層したコイルモジュールを上下の端板とタイロッドで締め付け、あらかじめ圧縮力(予圧、プレコンプレッション)を与える構造が採られる。KSTARでは軸方向予圧の評価が、欧州DEMOでは予圧構造とコイルの構造解析が行われており、ITERでは予圧構造の大型締結部材の冶金評価や、組立に先立つ実物大モックアップによる検証が進められている。予圧の大きさは、運転時の電磁力と釣り合わせて導体に過大なひずみを与えない範囲で選ばれる。
さらに、ソレノイドはプラズマ運転のたびに励磁・減磁を繰り返すため、構造材は数万回規模の繰り返し荷重に耐える疲労寿命が要求される。ITERの構造解析では、導体内に構造支持を組み込む二つの設計案が比較され、材料品質や検査手順の前提を確認するための研究開発が続けられた。また、ソレノイドの実際の剛性(as-built stiffness)がプラズマの運転領域に影響を与えることも示されており、機械特性は磁気特性と切り離せない。
モデルコイルと検証試験
大型超伝導コイルの性能は、短尺導体試験だけでは予測できない。導体レベルの特性と実際のコイル性能の間には、磁場の不均一性、複雑な機械支持、現実の熱・流体境界条件といった差異があり、さらに製造過程で生じうる欠陥を検出するためにも、実規模に近いコイルを極低温で通電する試験が不可欠とされる。この考え方に基づき、各国の装置計画ではモデルコイルによる検証が行われてきた。
ITERの中心ソレノイド・モデルコイルは国際協力により製作され、2000年前后に世界最大級のパルス超伝導コイルとして試験された。コイルは46 kAまで通電して最大磁場13 Tに達し、蓄積エネルギーは640 MJにのぼった。これはそれまでの超伝導パルスコイルの21倍に相当する。パルス励磁試験では目標の0.4 T/sを上回る0.6 T/s(挿入コイルでは1.2 T/s)で13 Tまで励磁でき、さらに13 Tの背景磁場中で10,003回の充放電サイクルを行っても、運転温度マージンの劣化は見られなかった。これらの結果はCICC技術の実用性とITERコイル設計基準の妥当性を実証した。
中国のCFETRでも2014年からモデルコイル計画が始動し、ピーク磁場12 T、磁場変化率1.5 T/sを設計目標としてNb₃SnとNbTiのモジュールを組みたコイルが製作された。試験では水力特性、絶縁、接続部の抵抗、高速放電、交流損失、電流共有温度など多岐にわたる項目が評価され、試験過程で生じた課題が今後の製造工程改善に反映される。このように、モデルコイル試験は設計基準の確認と製造技術の習得を結びつける、中心ソレノイド開発の中核的な手段となっている。
この解説が根拠にした論文から
- Progress of the ITER central solenoid model coil programmeNuclear Fusion 2001
- Mechanical performance evaluation of the CFETR central solenoid model coil designNuclear Fusion 2018
- First test results for the ITER central solenoid model coilFusion Engineering and Design 2001
- ITER-FEAT central solenoid structural analysis and fatigue life assessmentFusion Engineering and Design 2001
- Performance evaluation of the CFETR central solenoid model coil under operating conditionsNuclear Fusion 2026
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推移
研究の変遷
1995–20047本 · 0.07%
ITER中心ソレノイドモデルコイルの開発期
この時代の論文は、ITER中心ソレノイドモデルコイル計画に関わる超伝導導体とコイルの試作・試験に集中している。ニオブチン(Nb3Sn)導体や磁石システム、クエンチ保護用直流遮断器などが併置され、kstarへの言及も見られる。代表的な論文として、13T-46kA導体開発とモデルコイル試験結果の報告がある。
この時代の論文から
- Progress of the ITER central solenoid model coil programmeNuclear Fusion 2001
- Development of a 13T-46kA Nb3Sn conductor and central solenoid model coils for ITERFusion Engineering and Design 1998
- A 170-kA DC circuit breaker for the quench protection of the central solenoid coil of the ITER tokamakFusion Engineering and Design 2001
- ITER R&D: Magnets: Central Solenoid Model CoilFusion Engineering and Design 2001
2005–201412本 · 0.08%
設計と無ソレノイド立ち上げの検討期
この時代は、ITER中心ソレノイドの詳細設計と、中心ソレノイドを用いないプラズマ電流立ち上げ実験が並行して進められた。ステンレス鋼や電源といった周辺技術と共に論じられ、JT-60SAやTST-2などの装置が登場する。SlimCSのようなコンパクト炉での中心ソレノイド小型化の検討も見られる。
この時代の論文から
- SlimCS—compact low aspect ratio DEMO reactor with reduced-size central solenoidNuclear Fusion 2007
- Plasma current start-up experiments without the central solenoid in the TST-2 spherical tokamakNuclear Fusion 2006
- Detailed design of the ITER central solenoidFusion Engineering and Design 2009
- Impact of ITER PF coils power supplies and central solenoid design changes on plasma operationFusion Engineering and Design 2011
2015–202625本 · 0.10%
制御・CFETR・無ソレノイド立ち上げの展開期
この時代には、中心ソレノイドのフラックス消費を抑えた電流立ち上げ制御や、CFETR中心ソレノイドモデルコイルの機械性能評価・交流損失評価など、対象がITERからCFETR等へ広がっている。無ソレノイド立ち上げ実験はSTOR-MやQUESTで継続され、安全係数や熱流動、電源といったテーマと併置される。機械学習を用いた安全係数プロファイル制御の論文も現れる。
同時に語られた主題電源、熱水力、安全係数、ニオブスズ、モックアップ、電流ランプアップ
この時代の論文から
- Safety factor profile control with reduced central solenoid flux consumption during plasma current ramp-up phase using a reinforcement learning techniqueNuclear Fusion 2019
- Mechanical performance evaluation of the CFETR central solenoid model coil designNuclear Fusion 2018
- Plasma current start-up experiments without a central solenoid in the iron core STOR-M tokamakNuclear Fusion 2015
- Exploration of ITER operational space with as-built stiffness of central solenoid modulesNuclear Fusion 2024
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文12本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、5本の論文(うち全文2本)と1枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
