FusionPapers
図版検索トレンドwiki日本の研究
© 2026 FUSIONPAPERS
About法務情報
Wiki/工学

磁石システム

Magnet system

磁石システム(Magnet system)は、核融合・プラズマ物理学の工学。核融合装置のプラズマ閉じ込め・制御に必要な磁場を発生させるコイル群とその支持構造・電源・保護系を含む総体である。トロイダル磁場コイル、ポロイダル磁場コイル、中心ソレノイドなどから構成され、装置の性能と安全性を左右する。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは85本ある。比重が最も大きかったのは2005–2009年で、その期間の論文の0.27%を占めた。直近の2025–2029年では0.02%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1990年以降で、それ以前の収録論文には現れない。

目次

  1. 1解説
  2. 2推移
  3. 3研究の変遷
  4. 4よく登場する装置
  5. 5この数字の作り方

解説

磁石システム(magnet system)とは、核融合装置においてプラズマを閉じ込め制御するための磁場を発生させるコイル群と、それを支える構造物、冷却系、給電系、保護系をひとまとめにした総体である。トカマクやヘリカル装置の心臓部であり、装置の寸法・性能・運転方式をほぼ決定づける。現代の大型装置では磁場を常伝導銅コイルではなく超伝導コイルで発生させるのが標準となっており、JT-60SA のように 18 基のトロイダル場(TF)コイル、4 モジュールの中心ソレノイド(CS)、6 基の平衡場(EF)コイルからなる完全超伝導システムが典型例である。磁石システムの設計は、プラズマ物理の要求(磁場強度、形状制御精度)と、超伝導・低温・高電流という工学上の制約との接点にあり、核融合工学の中でも最も規模の大きい開発領域の一つである。

The schematic view of the JT-60SA magnet system and the related equipment.

fig.1 Performance of the JT-60SA superconducting magnet system during integrated commissioning (2026) · CC BY 4.0

The schematic view of the JT-60SA magnet system and the related equipment.

図は JT-60SA の磁石システムと関連設備の断面模式図である。中心ソレノイド、平衡場コイル、トロイダル場コイルがクライオスタット(低温容器)内に熱シールドを挟んで収められ、周囲にバルブボックス、コイル端子箱、ヘリウム配管が配置する様子が、全体で高さ 15.5 m、幅 12 m のスケールとともに示されている。

コイル構成と装置方式

磁石システムの構成は閉じ込め方式によって異なる。トカマクでは、プラズマ電流が生む磁場の「骨格」を外部が補う形で、三系統のコイルを使い分ける。プラズマを環体の周りで閉じ込める強い縦場を発生させるのが TF コイルで、環状に多数(JT-60SA で 18 基、KSTAR で 16 基)並べる。プラズマ電流を誘起する変圧器として働くのが中心軸上の CS であり、一次巻線としてフラックススイングを供給する。KSTAR の CS は 8 コイルで 17 V·s のフラックススイングを持つ。プラズマの位置・形状を制御する垂直場・平衡場を担うのが EF(PF)コイル群で、JT-60SA では 6 基の円形コイルが外周に置かれる。CS のフラックス容量がプラズマパルスの持続時間を直接決めるため、JT-60SA では限られた中心空間を有効に使うためのコンパクトな接合構造が開発され、定常運転志向の装置では TF・PF コイルの細身化と大口径診断ポートの確保が構造設計の要点となっている。

一方、ヘリカル装置(ステラレータ)ではプラズマ電流に頼らないため変圧器としての CS を必要とせず、主磁場を三次元ねじれたコイルで直接作る。大型ヘリカル装置 LHD は 2 基の超伝導ヘリカルコイルと 6 基の超伝導ポロイダルコイルからなり、磁場エネルギー 960 MJ を蓄える。ヘリカル方式は定常運転に本質的に適う一方、コイル形状が複雑で、巻線精度が磁場品質を直接左右する。ヘリカル型炉概念(FFHR、HELIAS 5-B)では、コイル配置パラメータが電磁力に対するコイル系の力学挙動を支配し、また三次元コイルの支持構造と保守概念(コイルを開けずに機器交換できる構成など)が設計の中心課題となる。このようにトカマクとステラレータでは「同じ超伝導技術を、まったく異なるコイル幾何と構造概念に載せる」ことになり、磁石システムの設計思想は装置方式ごとに大きく分かれる。

超伝導導体とコイル技術

大型核融合磁石の導体には、ケーブルインコンジット導体(CICC)が広く用いられる。これは超伝導素線を撫り合わせたケーブルを金属ジャケット(通常はオーステナイト系鋼)に収め、内部を 4.5 K 級の超臨界ヘリウムが流す構成で、機械的強度・冷却安定性・高電流(数万アンペア級)を同時に満たす方式である。KSTAR の TF・PF コイルはいずれも CICC 採用で、TF コイルはプラズマ中心で 3.5 T の磁場を供給する。JT-60SA の TF コイルも公称電流 25.7 kA で運転される。超伝導材料としては NbTi と Nb₃Sn が主で、Nb₃Sn は高磁場下で優位だが、熱処理や機械的ひずみ、さらに不純物蓄積による性能劣化への配慮を要する。より低い冷媒温度で動作し低活性化の利点を持つ MgB₂ 線の開発も、D-T 炉心近傍で運転される低活性化磁石システムを目指して進められている。

コイル単体ではなくシステムとしての検証も重視される。KSTAR では実寸大 TF 模型コイルや背景磁場発生コイル系の開発、大規模な超伝導磁石試験施設の整備が行われ、実機製作前に導体とコイルの性能を実証する手順が確立されている。また TF コイルの巻線パックは、ITER の設計に見られるように円形導体を放射状プレートで支持する構成が採用され、運転中の絶縁信頼性を高める工夫がなされている。

低温・構造・フィーダー

超伝導磁石システムは、コイル本体だけでなく、それを 4 K 級に保つ低温設備と、電磁力に耐える構造物、そして常温の電源からコイルへ大電流を導くフィーダー系の統合体である。冷却系では、クライオスタット内に熱シールド(80 K 級)を置いて侵入熱を遮り、超臨界ヘリウムをコイルへ供給する。LHD の低温システムは 13,400 時間に及ぶ連続運転で高い信頼性を実証した。熱流体的な観点からは、導体内部のヘリウム流量や圧力損失の設計が TF コイルの冷却性能を左右し、流量計測系の設計も磁石システム開発の一部となる。

構造面では、TF コイル間をつなぐ外側構造やコイルケースが巨大な電磁力(TF コイルで数百 MN に達する面内力)を負担する。ITER では一方向ガラス繊維強化プラスチック製のプリコンプレッションリングが TF コイル群を締め付け、コイルケースやコイル間構造の応力を低減する。このような締結構造の信頼性はせん断キーの繰返し載荷試験やリング模型の応力緩和試験で検証される。フィーダー系はコイル端子箱、バルブボックス、クライオライン、そして常温から 4 K への大電流リード(高温超伝導電流リードを含む)からなり、JT-60SA では 5 基のコイル端子箱と 11 基のバルブボックスがヘリウム冷媒を分配する。フィーダーは電気・冷却・計装の通路であり、その絶縁信頼性はシステム全体の稼働率を左右する。

運転:立上げ、クエンチ保護、誤差場

磁石システムの運転は、まず冷却から始まる。JT-60SA では 2020 年 10 月に統合試験運転のための初冷却を開始し、TF コイルを公称電流まで、PF コイルを段階的に(個別に 5 kA、のちに 10 kA)立ち上げた。この過程で EF1 コイル端子部の電気アーク事故が発生し、端子・フィーダー・電流リードの絶縁補強と、クライオスタット内真空度を変えたパッシェン試験(絶縁耐力試験)の繰り返しを経て初プラズマに至った。大型超伝導システムでは、このように絶縁の検証と立上げ試験が数年規模の工程となることが示されている。

超伝導コイルの最大のリスクはクエンチ、すなわち超伝導状態の喪失である。局所的な温度上昇や外乱(ディスターバンス)が生じると、そこで発熱が生じ、導体中を伝搬してコイル全体が常伝導化し、蓄えられた巨大な電磁エネルギー(LHD で 960 MJ)が熱に変わる。これを安全に抜くため、直流遮断器とエネルギー放出抵抗を組み合わせた保護系が必須で、アークを生じない機械式直流遮断器の開発など、大電流遮断技術の改良が続けられている。プラズマのディスラプションも磁石系への外乱であり、急激な磁場変化がコイルに誘導電圧と交流損失をもたらすため、超伝導磁石系のディスラプション耐性は設計条件に含まれる。

もう一つの運転上の鍵は磁場精度である。巻線製作と組立の公差は設計磁場からのずれ(誤差場)を生み、トカマクではわずかな誤差場がロックトモードやプラズマ停止を引き起こしうるため、DTT では巻線・組立公差に基づく誤差場の推定が設計段階で行われる。また W7-X の建設では、設計通りの磁場幾何を実現するため、コイル製作から組立まで幾何を追跡計測する手法が用いられた。誤差場の低減は、コイル精度の管理という製造問題と、運転時に補正コイルで磁場を整えるという運転問題の両面で扱われる。

この解説が根拠にした論文から

  • [1]Status of the KSTAR superconducting magnet system developmentNuclear Fusion 2005
  • [2]JT-60SA superconducting magnet systemNuclear Fusion 2015
  • [3]Achieved capability of the superconducting magnet system for the Large Helical DeviceNuclear Fusion 2001
  • [4]Key features of the ITER-FEAT magnet systemFusion Engineering and Design 2001
  • [5]Performance of the JT-60SA superconducting magnet system during integrated commissioningNuclear Fusion 2026

この解説は役に立ちましたか?

推移

0.00.20.3磁石システム197019801990200020102020%
図1 — 磁石システムが、5年ごとにその期間の全論文に占めた割合。コーパスは2010年代が1970年代の9倍あるため、件数のままでは何もかもが増加して見える

研究の変遷

1985–19944本 · 0.07%

超伝導マグネットシステムの設計と安全解析

この時代の論文は、次世代トカマクの超伝導マグネットシステムの安全解析、NET装置のマグネットシステム、RFXのマグネットシステムについて述べている。また、超伝導マグネットシステムのための機械式直流遮断器も扱われている。全体として、装置全体の設計と安全面に焦点が当てられている。

この時代の論文から

  • [1]A mechanical arcless dc circuit breaker for a superconducting magnet systemFusion Engineering and Design 1993
  • [2]III.2. The NET device—magnet systemFusion Engineering and Design 1993
  • [3]Safety analysis of the superconducting magnet system of a next generation tokamakFusion Engineering and Design 1993
  • [4]The RFX magnet systemFusion Engineering and Design 1994

1995–200418本 · 0.18%

ITER・LHDへの展開と工学課題

この時代はITER-FEATやLHDの超伝導マグネットシステムの工学特徴や達成能力が報告され、体積中性子源や永久磁石システムも扱われている。プラズマ擾乱、ニオブスズ、中心ソレノイドといった関連概念と共に出現し、ITER、LHD、KSTARといった装置と関連付けられている。マグネットシステムの設計と実機開発が進展した時代である。

同時に語られた主題プラズマディスラプション、中性子源、ニオブスズ、不純物、中心ソレノイド

この時代の論文から

  • [1]Key engineering features of the ITER-FEAT magnet system and implications for the R&D programmeNuclear Fusion 2001
  • [2]Achieved capability of the superconducting magnet system for the Large Helical DeviceNuclear Fusion 2001
  • [3]Some aspects of volumetric neutron source based on tokamak with ‘warm’ magnet system and inner radiation shieldFusion Engineering and Design 1996
  • [4]Iron-free permanent magnet systems for charged particle beam opticsFusion Engineering and Design 1996

2005–201435本 · 0.23%

建設段階の技術開発と電源・熱流動

この時代はKSTAR、EAST、ITER、W7-X、JT-60SAといった装置の超伝導マグネットシステムの開発状況や建設進捗が報告されている。電源、熱流動、定常運転、モックアップ、高温超伝導、誤差磁場といった概念と共に現れ、特にITERの建設に関わる技術開発と、W7-Xのマグネット設計が中心となっている。マグネットシステムの実機化が本格的に進んだ時代である。

同時に語られた主題電源、熱水力、定常状態、モックアップ、高温超伝導体、誤差磁場

この時代の論文から

  • [1]Status of the KSTAR superconducting magnet system developmentNuclear Fusion 2005
  • [2]Concept of magnet systems for LHD-type reactorNuclear Fusion 2009
  • [3]Power supply for the superconducting TF magnet system of EASTNuclear Fusion 2006
  • [4]The ITER magnet systems: progress on constructionNuclear Fusion 2014

2015–202628本 · 0.11%

高温超伝導と精密構造・形状追跡

この時代はJT-60SAやW7-Xの超伝導マグネットシステムの具体的な構造や、W7-X建設中の磁場設計のための形状追跡、スライディングウェイト支持などの機械的側面が扱われている。また、核融合炉のための高温超伝導マグネットシステムの設計も現れ、CFETRマグネットシステムの性能解析が行われている。高温超伝導と誤差磁場に関連するが、論文数は相対的に減少している。

同時に語られた主題高温超伝導体、誤差磁場

この時代の論文から

  • [1]Design and development of high-temperature superconducting magnet system with joint-winding for the helical fusion reactorNuclear Fusion 2015
  • [2]Electromagnetic, mechanical and thermal performance analysis of the CFETR magnet systemNuclear Fusion 2015
  • [3]JT-60SA superconducting magnet systemNuclear Fusion 2015
  • [4]Tracking of the magnet system geometry during Wendelstein 7-X construction to achieve the designed magnetic fieldNuclear Fusion 2015

よく登場する装置

iter18wendelstein-7x12jt-60sa6lhd3kstar3east3asdex-upgrade1

この数字の作り方

数え方 —
同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
割合 —
その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
記述 —
その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
冒頭の定義 —
用語そのものの説明だけは、論文27本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
解説 —
では、5本の論文(うち全文1本)と1枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
範囲 —
収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない

磁石システム

種別
工学
論文数
85 本
初出
1990–1994 年(4本)
最盛期
2005–2009 年0.27%
直近
2025–2029 年0.02%
主な装置
iterwendelstein-7xjt-60salhd

索引にもどる