JT-60SAは、核融合・プラズマ物理学の装置。日本と欧州が共同で建設した超伝導トカマクであり、ITERやDEMOへ向けた高ベータ定常プラズマの運転研究を担う。2023年に初プラズマを達成し、以降、統合コミッショニングを経てプラズマ性能の検証が進められている。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは243本ある。比重が最も大きかったのは2015–2019年で、その期間の論文の0.76%を占めた。直近の2025–2029年では0.65%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは2005年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
JT-60SAは、日本と欧州が「広域アプローチ(Broader Approach)」協力協定の下で共同建設した世界最大級の完全超伝導トカマク装置である。主要半径3 m、プラズマ電流5.5 MA、トロイダル磁場2.25 Tという大型機であり、最大41 MWの補助加熱を100秒間にわたり注入できる。その使命は、ITERの運転リスクを低減し、定常運転する高ベータ炉(DEMO)に向けたプラズマ物理と運転シナリオを確立することにある。2020年3月に装置本体の建設が完了し、2023年10月に初プラズマを達成した。

fig.1 Performance of the JT-60SA superconducting magnet system during integrated commissioning (2026) · CC BY 4.0
The schematic view of the JT-60SA magnet system and the related equipment.
図はJT-60SAの磁場コイル系と周辺設備の断面模式図である。中心ソレノイド(CS)、平衡磁場コイル(EF)、トロイダル磁場コイル(TF)の超伝導コイル群が熱シールドとクライオスタットに囲まれて配置され、装置全体で高さ15.5 m、幅12 mに及ぶことが分かる。
装置の構成と超伝導磁場系
JT-60SAの最大の特徴は、全磁場コイルを超伝導化した点にある。TFコイルは18基、CSは4モジュール、EFコイルは6基の円形コイルからなり、これらは熱シールドに囲まれクライオスタット内に収められる。液体ヘリウムによる冷却系として、電流リードを収めたコイル端子箱、バルブ箱、冷凍機とトカマクを結ぶクライオラインがクライオスタットの周囲に配置される。TFコイルの定格運転電流は25.7 kAで、これはプラズマ中心で2.25 Tのトロイダル磁場に対応する。極向き磁場コイルは個別に最大20 kAでの運転が想定される。
超伝導化は長パルス運転を可能にする一方、運転を複雑にする。コイルは熱応力を避けるため慎重な温度制御のもとで超伝導状態まで冷却される必要があり、クライオプラント自身もプラズマ運転に伴う熱負荷変動を能動的に制御できることが求められる。これはITERの動的運転にも直結する課題である。統合試験運転では、TF・EF・CSの全コイルで超伝導転移が確認され、TFコイルは定格電流に達した。その一方でEFコイルの過電流と端子接続部の絶縁不良に起因するヘリウム漏れが発生し、絶縁補強とパッシェン試験の繰り返しを経て運転が再開された経緯があり、大型超伝導装置の立ち上げがいかに厳しい試練であるかを示している。
プラズマの立ち上げと平衡制御
超伝導トカマクでは、CSコイルのフラックススイングが制限されるため、プラズマ生成に使えるトロイダル電場が従来型装置よりはるかに小さい。ITERで期待される誘導電場は約0.3 V/m程度とされ、JT-60SAの初プラズマキャンペーンでは安全上の理由からさらに厳しい0.15 V/m以下に制限された。この条件下では、残留極向き磁場(数mT程度)や不純物放出が多い新装置の壁環境が、従来の磁場零点配置(FNC)による立ち上げの障害となった。実際、FNCではタウンゼント降伏は得られても不純物のバーンスルーに至らなかった。これに対し、降伏段階から有限の垂直磁場を印加して電子を鏡像閉じ込めする「トラップト粒子配置(TPC)」に電子サイクロトロン(EC)加熱を組み合わせた手法に切り替えたところ、初プラズマの生成に成功した。低誘導電場での立ち上げはITER以降の装置にとって死活的に重要な課題であり、JT-60SAのこの経験は直接ITERの運転戦略の検証に資する。
プラズマ電流の立ち上がり・平坦部では、形状・位置の高精度制御が不可欠である。JT-60SAでは、真空容器内に生じる渦電流が大きい大型超伝導装置特有の条件下で、プラズマ電流重心(PCC)を制御対象とする方式や、制御ゲインを自動調整して電源の電圧飽和を避ける適応電圧配分方式が開発・適用された。さらに、高細長比プラズマの垂直不安定性(n=0の抵抗壁モード)に対処するため、応答の速い容器内極向き磁場コイル(FPPCコイル)の導入が計画されている。超伝導極向きコイルだけでは、電流制御用電源との容量共有のため、立ち上がり期に実現できる細長比は約1.7に限られるが、FPPCコイルを併用すれば目標の1.9超が視野に入る。制御論理としては、プラズマ中心を制御するPCC方式と、最外殻磁気面の磁束残差を制御するISO-FLUX方式が比較検討されており、非剛体的なプラズマ変位への応答の違いが自由境界平衡計算コードを用いて評価されている。1 MA級ダイバータ配置プラズマは、コーシー条件面(CCS)方式による平衡再構築を用いて3秒間安定に維持された。
研究計画とITER・DEMO関連シナリオ
JT-60SAの科学使命は、電流拡散時間をはるかに超える時間スケールで、壁なしの理想MHD安定性限界を超える完全非誘導定常運転を達成すること、およびITERのシナリオ開発とリスク低減に寄与することである。そのための研究は段階的に進められる。初期研究フェーズIでは水素プラズマを用いて全プラズマ電流までの平衡制御性を確認し、フェーズIIからは重水素プラズマで高閉込め・高ベータプラズマの物理と制御性を評価する。統合研究フェーズでは加熱出力とダイバータ性能を増強し、高密度・高ベータ・高閉込めと放射ダイバータの両立を探る。その後、第一壁とダイバータをタングステンに更新し、ITERの全出力運転を支援する金属壁実験へと移行する計画である。
装置の形状パラメータは、細長比約1.9、三角形状約0.5、アスペクト比約2.7であり、ITERやDEMOに近いプラズマ形状が実現できる。加熱装置としては、82・110・138 GHzの複数周波数に対応した電子サイクロトロン系と、100秒注入を実現した負イオン源中性粒子ビーム系が整備されている。また、ELM制御、ディスラプション制御、ダイバータでの熱・粒子処理といったITER課題への寄与が想定されており、抵抗壁モード制御やティアリングモードのオンライン検出など、運転保護に関わる制御技術の開発も進められている。運転領域の開発は、プラズマ電流と維持時間の平面上で、機器増強に沿って段階的に拡大されることが描かれている。

fig.1 Plasma physics and control studies planned in JT-60SA for ITER and DEMO operations and risk mitigation (2022) · CC BY 4.0
Progress of operation regime development in plasma current and sustained period. Gray arrows show machine capability upgrades. Red circles show the typical operation scenarios with full machine capability. Triangles, diamonds, and squares show the scenarios as examples of possible scenarios within the machine capability in Initial Research Phase II, Integrated Research Phase and Extended Research Phase, respectively.
図は、プラズマ電流と維持時間の平面上での運転領域開発の進展を示す。初期フェーズ、統合フェーズ、拡張フェーズの各段階で想定される運転点が、機器の増強(加熱出力やダイバータの更新)とともに高電流・長パルス側へ広がっていく様子が描かれている。
JT-60SAは、超伝導大型トカマクの建設・統合試験・初プラズマ運転という一連の経験そのものがITERのリスク低減に直結する稀有な装置であり、定常炉に向けたプラズマ物理の実証基盤として位置づけられている。
この解説が根拠にした論文から
- Overview of the JT-60SA projectNuclear Fusion 2011
- Completion of JT-60SA construction and contribution to ITERNuclear Fusion 2022
- Plasma physics and control studies planned in JT-60SA for ITER and DEMO operations and risk mitigationPlasma Physics and Controlled Fusion 2022
- Overview of plasma operation and control studies in the first plasma campaign of JT-60SAPlasma Physics and Controlled Fusion 2025
- Effects of non-rigidity on fast plasma boundary control using in-vessel coils in JT-60SANuclear Fusion 2025
- Performance of the JT-60SA superconducting magnet system during integrated commissioningNuclear Fusion 2026
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推移
研究の変遷
2005–201474本 · 0.48%
設計と運転シナリオの策定時代
JT-60SAの設計最適化と運転領域の評価が中心であり、真空容器、電源、トロイダル磁場コイル、中性粒子入射などと共に論じられた。ITERやJETとの比較・モデリングを通じてJT-60SAの予測性能を検討する論文が見られ、JT-60Uの成果をITERとJT-60SAに結び付ける研究も行われた。代表的な論文として「Design optimization for plasma performance and assessment of operation regimes in JT-60SA」や「Physics comparison and modelling of the JET and JT-60U core and edge: towards JT-60SA predictions」が挙げられる。
同時に語られた主題真空容器、電源、トロイダル磁場コイル、中性粒子入射、磁石システム、中心ソレノイド
この時代の論文から
- Plasma regimes and research goals of JT-60SA towards ITER and DEMONuclear Fusion 2011
- Overview of the JT-60SA projectNuclear Fusion 2011
- Physics comparison and modelling of the JET and JT-60U core and edge: towards JT-60SA predictionsNuclear Fusion 2014
- Design optimization for plasma performance and assessment of operation regimes in JT-60SANuclear Fusion 2007
2015–2026169本 · 0.68%
建設と統合の時代
プロジェクトの進捗報告や建設完了を扱う論文が増え、プラズマ診断、トロイダル磁場コイル、電源、電子サイクロトロン加熱、電流立ち上げ・駆動、MHDなどと共に論じられた。負イオンビームや超伝導磁石システムなど主要コンポーネントの開発・完成に焦点が当てられ、ITERとの連携も維持されている。代表的な論文として「Progress of the JT-60SA project」「Completion of JT-60SA construction and contribution to ITER」「JT-60SA superconducting magnet system」が挙げられる。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題プラズマ診断、トロイダル磁場コイル、電源、電磁流体力学、電子サイクロトロン加熱、電流ランプアップ
この時代の論文から
- Progress of the JT-60SA projectNuclear Fusion 2019
- Progress in long-pulse production of powerful negative ion beams for JT-60SA and ITERNuclear Fusion 2015
- Recent progress of the JT-60SA projectNuclear Fusion 2017
- Completion of JT-60SA construction and contribution to ITERNuclear Fusion 2022
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文64本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、7本の論文(うち全文4本)と2枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
