JT-60Uは、核融合・プラズマ物理学の装置。トカマク型の大型核融合実験装置で、高ベータHモードや内部輸送障壁、新古典ティアリングモードの制御など先進トカマク研究を推進し、ITERへ向けた物理基盤を築いた。高エネルギー負イオンNBIや電子サイクロトロン電流駆動など多様な加熱・電流駆動手段を備えていた。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは354本ある。比重が最も大きかったのは1995–1999年で、その期間の論文の2.08%を占めた。直近の2025–2029年では0.06%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1990年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
JT-60Uは、日本原子力研究所(現・量子科学技術研究開発機構)が那珂研究所で運用した大型トカマク装置であり、日本の核融合研究の主力装置として1991年から2008年まで実験が行われた。名称は「ジャパン・トーラス60・アップグレード(Japan Torus-60 Upgrade)」に由来する。原型装置JT-60を大改造したもので、プラズマ電流は最大約3.5 MA、主要半径は約3.3 m、磁場は最大約4 Tという、当時の欧米の大型トカマク(JET、TFTR、DIII-D)に匹敵する規模を持ち、重水素プラズマを用いた高閉じ込め性能実験と、将来の炉に直結する定常運転シナリオの開発を主目的とした。JT-60Uで得られた知見はITERの設計と運転計画に直接反映され、後継装置JT-60SAへの橋渡しとなった。
装置とその歴史
JT-60Uは、1985年から運転を始めた原型装置JT-60を、閉じ込め性能の飛躍的向上と高ベータ運転拡大を目的として改造した装置である。改造の中心は真空容器とポロイダルコイルの小型化による主要半径の縮小と磁場の増強であり、これにより同じ装置建屋でより高い性能のプラズマを実現した。運転は1991年に開始され、当初は円形断面から変形断面への移行、高三角形状配置の導入など、H-mode閉じ込めの安定獲得に向けた運転領域の拡張が進められた。
装置の歴史における大きな節目の一つが、1997年に完成したW型ポンプ付きダイバータへの改造である。それまでの開放型ダイバータに代わり、ターゲット板・ドーム・バッフルをW字型のポロイダル配置に配した構造を採用し、ターゲットへの熱流束低減と中性粒子の逆流抑制、すなわち排気による粒子制御の両立を狙った。ターゲット部には熱負荷の大きい部分に炭素繊維複合材(CFC)タイルが用いられ、外側バッフル下の三つの排気ポートには可変シャッター弁が設けられ、放電中にポンプ速度を変えられる設計となった。この改造により、ヘリウム排気の効率化や高密度放射ダイバータ運転など、炉に必要な粒子制御実験が本格的に可能となった。
2000年代に入ると、研究の重心は高閉じ込め・高ベータの瞬間記録から、長パルスでの定常維持へと移った。2008年に運転を終了し、その後装置は解体・改修を経て超伝導コイルを備える後継装置JT-60SAへと引き継がれた。放射性部品の安全な解体・保管手法の開発も、JT-60Uの運転終了後に確立された技術的成果の一つである。
加熱・電流駆動システム
JT-60Uの実験能力を特徴づけたのは、多様な加熱・電流駆動システムの組み合わせである。主加熱は中性粒子ビーム入射(NBI)であり、特に1996年に運転を開始した負イオン源NBIは装置の看板設備であった。従来の正イオン源に比べ中性化効率が高エネルギー域でも高く保てるため、350 keV級から最終的に500 keV級の高エネルギー中性粒子をプラズマ中心まで注入でき、コア加熱と高速イオン生成の両方に不可欠であった。長パルス化にあたっては、多孔グリッド間のビームレット同士の空間電荷相互作用による広がり抑制や、加速器内でのストリッピング損失低減が課題となり、電界整形板の取り付けやイオン源圧力の最適化を経て、1基のイオン源で360 keV・1.5 MW級の入射を19秒間継続するまでに改善された。負イオンNBIと正イオンNBIを合わせた入射パワーは20 MWを超え、これが高閉じ込めプラズマ実験の基盤となった。
電波加熱としては、電子サイクロトロン加熱(ECRF)と低域混成波系(LHRF)、イオンサイクロトロン系(ICRF)が備えられた。ECRFは低磁場側から基本Oモードで入射する局所加熱・局所電流駆動(ECCD)手段として発展し、システムは最終的に3 MW級に達した。その最も重要な応用が、新古典ティアリングモード(NTM)のリアルタイムフィードバック抑制である。磁島の位置を計測し、共鳴面に合わせてECビームを当てることで電流分布を局所的に修復するこの制御は、ベータの上限を実運転で引き上げる手段として確立された。LH波は電流プロファイル制御の主役であり、内部輸送障壁を持つ反転シアプラズマを全電流駆動で数秒間維持する実験に用いられた。ICRFは中心加熱のほか、放電前の壁処理(電子サイクロトロン共鳴放電クリーニングのLHRF系による実施など)にも寄与した。
ダイバータとエッジ・粒子制御
炉として成立するためには、コアの高閉じ込めと、ダイバータでの熱・粒子処理を同時に満たす必要がある。JT-60Uはこの両立を系統的に調べた数少ない装置である。W型ポンプ付きダイバータでは、内側ダイバータでのポンピングにより、リサイクリングが高い条件下で効率的なヘリウム排気が実証された。一方で、中性粒子の逆流を抑えてもエネルギー閉じ込めそのものは開放型ダイバータと同程度であり、閉じ込めを犠牲にせずに粒子制御を加えられることが示された。
高密度運転では、ダイバータプラズマのデタッチメント(プラズマとターゲットの接触が切れて熱負荷が放射・再結合で運ばれる状態)が鍵となる。JT-60Uではデタッチしたダイバータプラズマ中での炭素イオンの体積再結合が分光診断で確認され、不純物シード(アルゴン等)を用いた放射ダイバータ運転でグリーンワルド密度の95%近くまで密度領域を拡張しつつ、閉じ込め改善係数0.9程度を保つことができた。エッジの物理としては、ELM(エッジ局在モード)のダイナミクスやスクレイプオフ層の流れの専用計測が進められ、高三角形状配置でペデスタル圧力がベータpとともに増大すること、ペデスタル幅が無次元パラメータに依存することなどが明らかにされた。また、放電終了時の制御として高原子番号貴金属ガスのパフによるプラズマ終息手法も研究された。ディスラプションについては、垂直変位イベント(VDE)時のエッジ安全因子やハロ電流による電磁力の評価が行われ、装置設計の信頼性確保に結びついた。
閉じ込め領域:H-mode、高βpモード、反転シアと内部輸送障壁
JT-60Uの物理的成果の中心は、コア輸送の制御可能性の実証である。標準的な高閉じ込めモードであるELMy H-modeについては、高三角形状配置での熱エネルギー閉じ込めの系統的評価が行われ、ITERの閉じ込めスケーリングに対する改善係数(HH因子)が約1から1.3程度の領域で安定に運転できることが示された。高βp H-modeはJT-60Uが見出した特徴的な領域であり、強い内部輸送障壁(ITB)をコアに持ち、ブートストラップ電流割合が高い。この領域で、閉じ込め改善係数2.5超、正規化ベータβN = 2.4程度、かつ非誘導駆動電流割合がITER要件に近いという統合性能が1.5 MAで達成された。
反転シアプラズマは、電流分布が中心で窪んだ(安全因子qが極小を持ちシアが負となる)配置であり、中心部にITBを形成して輸送を劇的に抑制する。JT-60Uではこの領域で、重水素等価の核融合増倍率Q_DT等価 = 1.25という装置記録が2.6 MAで達成された。ITB内では変調ヘリウムガスパフ実験により内向き粒子ピンチの存在が確認されるなど、粒子輸送係数の決定も進んだ。ITBは必ずしも静的でなく、電子温度勾配のフィードバック制御系が開発され、障壁の強さを能動的に制御する道が開かれた。一方で、強いITBに伴う不純物蓄積や、電子加熱によるITB劣化、Te > Tiとなる高電子温度反転シアプラズマの実現など、障壁の形成・維持を支配する物理の多様な側面が明らかにされた。電流分布が大きく窪んだ「カレントホール」の安定な存在も観測されている。また、JETと同一パラメータの同一性プラズマ比較実験により、コア輸送の装置間スケーリングが検証された点も特筆される。高速粒子物理では、アルフベン固有モードの観測と周波数チャーピングを説明する新モードの提案など、燃焼プラズマ中のアルファ粒子物理につながる研究が行われた。
定常運転と炉への意味
JT-60Uの後期の主眼は、炉が要求する「高ベータ・高ブートストラップ電流・全非誘導駆動」の状態を長時間維持することであった。OHコイル(誘導電流駆動コイル)を使わずに高ブートストラップ電流・ITBプラズマを立ち上げる新運転シナリオが確立され、これは電流変圧器を持たない球状トカマク炉への道を示すものとなった。反転シアプラズマでは、貯蔵エネルギーのフィードバック制御によりベータを調節しながらDT等価核融合増倍率0.5をエネルギー閉じ込め時間に相当する0.8秒間維持すること、LHCDにより全電流駆動の準定常状態でITBを4.7秒間維持することが実証された。高βp H-modeでは、DT等価核融合利得0.8を0.55秒間維持し、核融合三重積は3.1×10^20 m^-3 keV sに達した。βN = 2.7を7.4秒間維持した運転も行われている。さらに、コアとダイバータを同時にフィードバック制御する模擬炉運転のデモンストレーションも行われた。
これらの成果は、個々の記録というより「圧力・電流・粒子の各プロファイルを同時に制御しながら炉相当の状態を維持する」という運転概念の実証として意味を持つ。JT-60Uで確立されたITB制御、NTM抑制、負イオンNBI、W型ダイバータの知見は、ITERの運転計画と後継装置JT-60SAの設計目標に直接引き継がれた。
この解説が根拠にした論文から
- High performance experiments in JT-60U reversed shear dischargesNuclear Fusion 1999
- Present status of the negative ion based NBI system for long pulse operation on JT-60UNuclear Fusion 2006
- Overview of JT-60U results leading to high integrated performance in reactor-relevant regimesNuclear Fusion 2003
- High performance and prospects for steady state operation on JT-60UNuclear Fusion 2000
- Latest plasma performance and experiments on JT-60UPlasma Physics and Controlled Fusion 1999
- Development of a compact W-shaped pumped divertor in JT-60UFusion Engineering and Design 1998
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推移
研究の変遷
1985–199426本 · 0.48%
高ベータ・高閉じ込め実証と電流駆動
JT-60U単独での実験が中心であり、低域混成波による非誘導電流駆動や高βp Hモードなど、高ベータ・高閉じ込め性能の実証が行われた。トロイダル運動量フラックスやリップル損失といった輸送・損失機構の解明も進められている。
同時に語られた主題電流駆動、低域混成波電流駆動、低域混成波、Hモード、輸送障壁、イオンサイクロトロン加熱
この時代の論文から
- Experimental determination of non-diffusive toroidal momentum flux in JT-60UNuclear Fusion 1994
- Non-inductively current driven H mode with high beta N and high beta p values in JT-60UNuclear Fusion 1994
- Fast ion losses due to toroidal field ripple in JT-60UNuclear Fusion 1994
- The softening of current quenches in JT-60UNuclear Fusion 1993
1995–2004178本 · 1.80%
逆磁気シアと内部輸送障壁の時代
逆磁気シア配位における内部輸送障壁と高性能プラズマの実証が中心課題となり、Alfvén固有モードや逃走電子といった高エネルギー粒子・過渡現象の研究も行われた。DIII-D、TFTR、LHD、JET、ITERなど他装置・将来装置と比較・関連付けられるようになった。
同時に語られた主題内部輸送障壁、輸送障壁、Hモード、周辺局在モード、逆磁気シア、中性粒子入射
この時代の論文から
- Generation and termination of runaway electrons at major disruptions in JT-60UNuclear Fusion 1999
- Achievement of high fusion triple product, steady-state sustainment and real-time NTM stabilization in high-βp ELMy H-mode discharges in JT-60UNuclear Fusion 2003
- Alfvén eigenmode and energetic particle research in JT-60UNuclear Fusion 1998
- Characteristics of internal transport barriers in JT-60U reversed shear plasmasNuclear Fusion 2001
2005–2014116本 · 0.75%
ペデスタル・ELM制御と周辺物理
ELM・ペデスタル物理やトロイダル回転・運動量輸送、不純物シーディング、電子サイクロトロン電流駆動によるNTM制御など、定常運転と周辺プラズマの制御に関する研究が中心である。JET、LHD、ASDEX-Upgradeなどとの比較研究やJT-60SAとの連携が進んだ。
同時に語られた主題Hモード、周辺局在モード、ペデスタル、トロイダル回転、輸送障壁、内部輸送障壁
この時代の論文から
- Energy loss for grassy ELMs and effects of plasma rotation on the ELM characteristics in JT-60UNuclear Fusion 2005
- Investigations of impurity seeding and radiation control for long-pulse and high-density H-mode plasmas in JT-60UNuclear Fusion 2009
- Neoclassical tearing mode control using electron cyclotron current drive and magnetic island evolution in JT-60UNuclear Fusion 2009
- Momentum transport and plasma rotation profile in toroidal direction in JT-60U L-mode plasmasNuclear Fusion 2007
2015–202634本 · 0.14%
モデリング予測とJT-60SAへの接続
ジャイロ運動論的乱流検証や高速イオン・エネルギー粒子モードの長時間シミュレーションなど、モデリングとシミュレーションによる理解が深められた。JT-60SAの高ベータ定常シナリオ予測やJETプラズマとの輸送モデリング比較など、次期装置への展開を意識した研究が行われている。
同時に語られた主題輸送障壁、Hモード、磁気シア、内部輸送障壁、テアリングモード、ペデスタル
この時代の論文から
- Roles of argon seeding in energy confinement and pedestal structure in JT-60UNuclear Fusion 2015
- Self-consistent long-time simulation of chirping and beating energetic particle modes in JT-60U plasmasNuclear Fusion 2017
- Validation studies of gyrokinetic ITG and TEM turbulence simulations in a JT-60U tokamak using multiple flux matchingNuclear Fusion 2016
- Transport modelling of JT-60U and JET plasmas with internal transport barriers towards prediction of JT-60SA high-beta steady-state scenarioNuclear Fusion 2017
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文120本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、6本の論文(うち全文0本)と0枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
