電源(Power supply、power supplies)は、核融合・プラズマ物理学の工学。核融合実験装置のコイルや中性粒子入射装置、ジャイロトロンへ大電力を供給する変換・制御系で、直流・交流、低圧大電流からMV級超高圧まで多岐にわたる。プラズマの生成・加熱・位置形状制御の要で、超伝導コイルの保護や高電圧絶縁・サージ抑制が設計課題となる。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは224本ある。比重が最も大きかったのは2020–2024年で、その期間の論文の0.65%を占めた。直近の2025–2029年では0.38%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1985年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
核融合研究における電源とは、トカマクなどの磁気閉込め装置の磁場コイル、およびプラズマ加熱装置に電力を供給し、その電流・電圧を高精度で制御する大電力電気システムの総称である。核融合装置は数十メガワットから数百メガワット規模の電力をパルス的に消費するため、電源は単なる付属設備ではなく、プラズマの閉込め性能と装置の安全を直接左右する中核的なサブシステムとして設計される。
核融合装置における電源の役割
磁気閉込め核融合装置では、プラズマを閉じ込める磁場をすべて電磁石で作る。トロイダル場コイル、ポロイダル場コイル、中心ソレノイド、さらにプラズマの位置や形状を制御するための補助コイルなど、それぞれが異なる電流波形と精度を要求する。例えばトロイダル場コイルは長時間一定の大電流を流し続ける必要があり、ポロイダル場コイルは放電の立ち上げから終息までの数秒から数十秒の間に大きく変化する電流を追従させなければならない。垂直位置制御用のコイルはさらに速い応答が求められ、プラズマの垂直方向の不安定成長を数ミリ秒の時間スケールで抑え込む。このため電源系は、装置の運転計画とプラズマ制御の要求を直接反映して設計され、大型装置では電源と配電系そのものが独立した設計課題となる。
電源の負荷側は純粋な抵抗ではなく、超伝導コイルや銅コイルという大きなインダクタンスである。大電流をインダクタンスに流すには高電圧を長時間印加する必要があり、逆に電流を変化させるときにはコイルに蓄えられた磁気エネルギーをどこかで吸収しなければならない。この「エネルギーの出入り」をどう扱うかが、核融合装置電源設計の本質的な難しさである。
磁場コイル用電源とクエンチ保護
超伝導トカマクでは、コイル系に蓄えられる磁気エネルギーがギガジュール規模に達する。このエネルギーは通常、サイリスタ(半導体スイッチ素子)を用いた整流器によって交流系から供給され、変流比の異なる複数の変圧器と整流ブリッジを組み合わせて広い電流範囲での制御を実現する。超伝導コイルは極低温で運転されるため、何らかの異常で超伝導状態が破れて常伝導に転じるクエンチが起きると、コイル内部でジュール発熱が生じ、最悪の場合コイルの損傷につながる。そこでコイル両端に直流遮断器と放電抵抗を設け、クエンチ検出から数十ミリ秒以内にコイル電流を抵抗側へ迂回させ、蓄積エネルギーをコイルの外で熱に変換して放出する保護回路が必須となる。このクエンチ保護用の直流遮断器は、商用の交流遮断器を直流で開放できるよう工夫した専用の構成であり、電源設計の中でも信頼性要求が最も厳しい部分の一つである。
ポロイダル場コイル系では、一つのコイル電流を複数の電源ユニットで共有し、切替回路によって電流の向きや帰路を放電の位相に応じて変える構成が広く用いられる。これにより装置全体の電源容量を抑えつつ、立ち上げ・加熱・維持・終息の各段階で必要とされる電流パターンを実現する。また、電源系から漏れ出る交番磁場や高調波が測定系や隣接機器に混入するのを防ぐ電磁両立性の設計も、設計の初期段階から考慮される。
プラズマ加熱システム用高電圧電源
磁場コイルが直流・大電流を扱うのに対し、プラズマ加熱装置の電源は高電圧・高速スイッチングを特徴とする。電子サイクロトロン加熱(ジャイロトロン)では、マイクロ波を発生する電子ビームを作るために数十キロボルトから百キロボルト超の高電圧を安定供給する必要があり、陽極電源やカソード(フィラメント)電源など、複数の電源が組み合わされて一つのジャイロトロンを駆動する。中性粒子入射(NBI)ではさらに厳しく、加速電源として直流で百キロボルトから一メガボルト級の超高電圧が要求される。直流超高電圧の伝送では、絶縁体表面の電界や導体表面の電界を数キロボルト毎ミリメートル以下に抑えて絶縁破壊を防ぐ設計が不可欠であり、実際にメガボルト級の直流高電圧を数百秒にわたり維持する技術が開発されてきた。
これらの高電圧電源に共通する課題は、絶縁破壊(アーク)への対処である。加速電極間やジャイロトロン内で絶縁破壊が起きると、蓄積された静電エネルギーが一気に放電され、機器を破壊しかねない。そこで、サイリスタ逆変換器を用いて低圧交流側で電流を高速に遮断する方式や、半導体素子による固体式クラウバー、鉄系ナノ結晶軟磁性材料を用いたコアスナバーなど、破壊時にビーム源へ流れ込むサージエネルギーを抑制・吸収する技術が発展してきた。パルス段変調(パルス・ステップ・モジュレーション)方式は、複数の電圧段を高速に切り替えて高電圧を合成する方式で、ジャイロトロン陽極電源などに採用されている。また、高周波スイッチング素子の進歩により、逆変換器の動作周波数を上げてフィルタ容量を小さくでき、電圧調整精度と装置の小型化・効率が同時に改善されてきた。
制御・調整・保護
核融合装置の電源では、制御性能がそのままプラズマ性能に結びつく。位置制御用電源では、電源が供給できる電圧には上限があるため、プラズマの急激な揺らぎに対して電圧が飽和し、制御が追従できなくなる瞬間が生じる。この飽和を織り込んだ制御系の設計、すなわち飽和が起きる前の動作を予見して制御入力を調整する手法が、垂直位置制御の信頼性向上のために研究されてきた。また、大電力磁場電源の負荷特性をモデル化し、制御設計や運転計画に用いる試みも行われており、ニューラルネットワークを用いた負荷モデルの構築などがその例である。
保護の面では、過電流・過電圧・絶縁破壊の検出から遮断までの時間が機器の寿命を直接決める。高電圧電源では破壊発生から数マイクロ秒以内に電流を遮断することが要求され、これを実現するため、遮断動作を高圧側ではなく低圧側で行う回路構成が好んで用いられる。さらに、電源系の運転は装置全体の配電系統と協調して行われる必要があり、大型装置では電源・配電系の全体設計が装置建設の初期段階から行われる。このように核融合における電源は、パワーエレクトロニクス、高電圧工学、制御工学が交差する分野であり、装置の性能と安全の両方を支える基盤技術である。
この解説が根拠にした論文から
- Development of a dc 1 MV power supply technology for NB injectorsNuclear Fusion 2006
- Power supply for the superconducting TF magnet system of EASTNuclear Fusion 2006
- The design of power supply system of HT-7U super-conductive TokamakFusion Engineering and Design 2001
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推移
研究の変遷
1985–19947本 · 0.13%
超伝導コイル電源と装置設計の時代
この時期の論文は、コンパクトヘリカルシステムやLHDの超伝導マグネット用電源、RFXの電源システム、ITERマグネット電源の開閉機器など、主にコイル電源の設計・解析を扱っている。JT-60SAも登場し、プラズマ実験装置の電源基盤を固める時期であった。
この時代の論文から
- Dynamic analysis of Compact Helical System power supply and designs of its upgradeFusion Engineering and Design 1992
- Design study of power supplies for LHD superconducting magnetsFusion Engineering and Design 1993
- Characteristics of a dc 75 kA power supply in the superconducting magnet test facilitiesFusion Engineering and Design 1993
- Switching devices for the ITER magnet power supply systemFusion Engineering and Design 1994
1995–200422本 · 0.22%
加熱システムと結合する電源開発
この時期はITERのECRF電源やジャイロトロン用直流電源など、電子サイクロトロン加熱・中性粒子入射といった加熱システムとの関連が目立ち、TEXTORやWENDELSTEIN-7X、ASDEX-Uの装置名が現れる。またRFXのトロイダル回路の新しい給電方式も検討された。
同時に語られた主題プラズマ加熱、中性ビーム、MHDモード、電磁流体力学、エルゴディックダイバータ、電子サイクロトロン加熱
この時代の論文から
- Development of d.c. power supply for gyrotron with energy recovery systemFusion Engineering and Design 1997
- The JA home team design of the ITER ECRF power supply systemFusion Engineering and Design 1999
- Design and tests of 168-GHz, 500-kW gyrotrons and power supply systemFusion Engineering and Design 2001
- ITER R&D: Auxiliary Systems: Coil Power Supply ComponentsFusion Engineering and Design 2001
2005–201458本 · 0.38%
大電力・高電圧化と制御の両立
この時期はITER向け中性粒子入射用の1 MV直流超高圧電源やEASTの超伝導TFマグネット電源など、大電力・高電圧化が進み、中性粒子入射・電子サイクロトロン加熱と並んで論じられる。さらにプラズマ位置制御における電源電圧飽和の影響を扱う制御論文も現れる。
同時に語られた主題中性ビーム、ITER中性粒子ビーム、電子サイクロトロン加熱、中性粒子入射、電流駆動、磁石システム
この時代の論文から
- Development of a dc 1 MV power supply technology for NB injectorsNuclear Fusion 2006
- Design of a −1 MV dc UHV power supply for ITER NBINuclear Fusion 2009
- Power supply for the superconducting TF magnet system of EASTNuclear Fusion 2006
- Collection and analysis of component failure data from jet systems: neutral beam injectors and power supplyNuclear Fusion 2007
2015–2026137本 · 0.55%
現行トカマクの運転制御と電源の一体化
この時期にはEASTやKSTAR、JT-60SAなど現行トカマクでの運転・制御と結びつき、プラズマ位置制御や電流変調のための電源制御、EPICSを利用したデータ管理などが論じられる。中性粒子入射と電子サイクロトロン加熱が引き続き主要な併記対象であり、装置数と論文数が増加している。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題中性粒子入射、中性ビーム、電子サイクロトロン加熱、オーミック加熱、EPICS、定常状態
この時代の論文から
- Development of JT-60SA equilibrium controller with an advanced ISO-FLUX control scheme in the presence of large eddy currents and voltage saturation of power suppliesNuclear Fusion 2021
- Design of the power supply system for the plasma current modulation on J-TEXT tokamakFusion Engineering and Design 2016
- The new control system of J-TEXT divertor power supply system using J-TEXT real-time frameworkFusion Engineering and Design 2016
- Automation of Aditya tokamak plasma position control DC power supplyFusion Engineering and Design 2016
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている(Power supply、power supplies など)。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文23本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、3本の論文(うち全文0本)と0枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
