確率的な層の効用は、磁力線の「長い接続長」にある。エルゴディック化された磁力線は、短い距離で壁に当たる開いた磁力線(リミター接続)とは異なり、層内を何周も遍歴した後に最終的に専用のターゲット面へ到達する。この長い経路に沿って粒子は再結合・再電離を繰り返し、運動量と熱は体積的に分散される。その結果、熱負荷が局所のターゲット板に集中せず、放射によって運ばれる割合が大きくなる。Tore Supra では高加熱運転時に排熱の大部分(約80%)が放射で処理されたと報告されており、これがこの手法の中心的な利点である。また、遍歴する磁力線が不純物源の近くのプラズマをターゲット面へ運ぶため、不純物がコアに入り込む前に遮蔽する効果も、X点ダイバータに近い形で得られる。
Tore Supra での一連の実験は、エルゴディックダイバータが「X点ダイバータに匹敵する境界制御」をリミター配置のまま実現できることを示した。すなわち、固有不純物(主に炭素)がコアへ侵入する前に遮蔽され、熱負荷が専用のターゲット面へ迂回され、ポンプによる粒子排気で密度制御が可能になる。ポンプ限界器(スロット型のイオン回収と通気構造の中性粒子回収)との比較実験では、三つの配置それぞれで密度制御の特性が調べられ、エルゴディックダイバータが確率層を経由した排気経路として機能することが確認された。確率層とモジュールの間の領域は比較的よく限定された「ダイバータ体積」として振る舞い、コア(正規化半径 0.8 以内)とは明瞭に分離される。
エルゴディックダイバータ導入の代償として閉じ込めが損なわれないかは、当初の最大の関心事であった。Tore Supra の実験は、コア(ρ ≤ 0.8)の電子密度・温度分布がエルゴディックダイバータなしのリミタープラズマと比べて変化せず、コア閉じ込めが実質的に劣化しないことを示した。一方、電子熱閉じ込めに対する影響を特に調べた研究では、確率層の幅や摂動条件に依存して縁の熱輸送が変化することが示されており、効果は主に縁の輸送障壁の外側に現れると理解される。磁気島や確率層を横切る熱パルス伝播の測定は、縁の局所熱輸送が磁力線の遍歴構造と直接結びつくことを実証した。
最も予想外かった効果の一つは回転への影響である。TEXTOR の DED 実験では、エルゴディック化によってプラズマのトロイダル回転が強く加速される(スピンアップ)ことが観測され、その起源は縁の電場の変化に帰属された。摂動を回転させると低周波の加熱と流れが誘起されることも示され、静的・動的の各運転モードがトロイダル速度分布を大きく変えることが確認された。これは、外部から印加した磁場擾乱が磁力線構造の変形を通じてプラズマの角運動量や電場構造にまで手を届かせられることを意味する。反射計による密度揺動の測定や、摂動に伴う輸送の増減の系統的な評価と合わせて、エルゴディックダイバータは「縁の磁場構造を操作して境界プラズマ全体を制御する」という、現在の共鳴磁場擾乱研究(RMP による ELM 制御など)につながる物理的基盤を提供した。