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トール・シュプラ

Tore Supra

トール・シュプラ(Tore Supra)は、核融合・プラズマ物理学の装置。フランスのCEAに建設された超伝導トカマクで、長時間パルス運転と定常的な非誘導電流駆動を実現するために設計された。超流動ヘリウム冷却のニオブチタン磁場コイルと能動冷却されたプラズマ対向機器を備え、1GJを超える注入エネルギーを達成した後、WESTトカマクへ改修された。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは256本ある。比重が最も大きかったのは2000–2004年で、その期間の論文の1.38%を占めた。直近の2025–2029年では0.00%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1990年以降で、それ以前の収録論文には現れない。

Former name of the WEST tokamak.

目次

  1. 1解説
  2. 2推移
  3. 3研究の変遷
  4. 4よく登場する装置
  5. 5関連項目
  6. 6この数字の作り方

解説

トール・シュプラ(Tore Supra)は、フランス・カダラッシュの原子力庁(CEA)が建設したトカマク型核融合実験装置であり、1988年4月1日の運転開始から2010年代の改修まで、世界で最も長時間のプラズマ放電を実現してきた装置である。トロイダル磁場コイルに超伝導磁体を採用し、プラズマ対向壁をすべて能動冷却とするという、将来の定常運転炉に不可欠な二つの技術要素を早期から備えていた点で特異な存在であり、「長パルス・定常運転の物理と技術」を主研究課題として位置づけていた。2010年代にタングステン製ダイバータを備えるWESTへと改修され、トール・シュプラという名称は旧名となった。

装置とその設計特徴

トール・シュプラは主要半径 2.4 m、プラズマ小半径 0.72 m、プラズマ電流 1.7 MA 以下、トロイダル磁場 4.5 T 以下という、当時世界第三位の規模を持つトカマクであった。その設計を特徴づけるのは、トロイダル磁場コイルをニオブチタン超伝導導体とし、超流動ヘリウムで 1.8 K まで冷却した点である。超伝導コイルは定常的に磁場を維持できるため、パルス長が磁場の持続時間によって制限されることがない。これは一見地味な選択だが、長時間放電を研究課題の中心に据える以上、前提となる装備であり、後述する数分から数百秒に及ぶ放電はすべてこの上で実現された。

もう一つの設計上の決定は、真空容器内壁をプラズマから受ける熱流と粒子流に対して全面的に保護し、その保護材をすべて水冷することだった。従来のトカマクの多くは、プラズマが限られた固体面(リミタ)に触れる構成で、その面は熱容量で短時間の熱を吸収する「使い捨て」に近いものであった。トール・シュプラは逆に、熱を壁の内部で連続的に除去する構成を採り、これにより放電時間の上限が壁の熱容量ではなく冷却能力で決まる装置となった。さらに低域混成波を用いた非誘導電流駆動装置と、プラズマ位置や高周波入射電力をリアルタイムで制御するフィードバック系を当初から整備しており、これら三要素――超伝導磁場、能動冷却対向壁、電流駆動――の統合こそが装置のアイデンティティであった。

プラズマの端の制御については、内壁リミタとモジュール型リミタに加え、エルゴディックダイバータと呼ばれる独特の装置を備えていた。これは磁力線に共鳴する摂動磁場を加えて端の磁場構造を確率的にし、プラズマ表面の熱・粒子流を広い面積に分散させるとともに、粒子排出の経路を作るものである。エルゴディックダイバータ下での不純物輸送、乱流、粒子回収は、トール・シュプラの端プラズマ研究の主要なテーマとなった。

能動冷却プラズマ対向壁

定常運転を狙う装置にとって、プラズマ対向壁は単なる「壁」ではなく、炉心から連続的に 10 MW/m² 級の熱流密度を取り去る熱交換器である。トール・シュプラは1988年の運転開始当初から、能動冷却された高熱流束部材(モジュール型リミタ、内壁)を設置した先駆的存在であり、1996年には循環エネルギー 280 MJ の2分間放電を達成した。この数値の意味は、壁が短時間の熱を蓄えてしのぐのではなく、数分間にわたり数十メガワット級の熱流を冷却水へ連続的に移し続けたことにある。

この実績を支えたのは、対向材を熱シンクに確実に接合する技術の開発であった。タングステンやカーボンファイバー複合材のような耐熱材を銅製冷却構造に接合する際、熱膨張の違いから接合部に大きな応力が生じ、ボルト締結や鋳込みなど多様な概念が欧州の産業界との協力で試験された。低い接触圧力下での伝熱係数の測定、能動冷却部材の漏洩気密試験といった、一見地味な工学的検証の蓄積が、後の大型装置の対向壁設計に直接引き継がれることになる。1990年代後半に進められたCIEL計画では容器内機器が更新され、装置全体の入熱処理能力は約 25 MW、対向壁の許容熱流密度は 10 MW/m² 級へと引き上げられ、パルス長能力は 1000 秒を目標に据えた。

長時間運転は壁の側にも新しい問題を持ち込んだ。数分から数時間に及ぶ重水素放電を重ねると、壁に重水素が蓄積し(滞留)、それがどこに、どの機構で溜まるかが炉の燃料管理と安全評価の直結する問題となった。トール・シュプラでは総計5時間に及ぶプラズマを用いたキャンペーンで重水素インベントリと炭素の移動が系統的に調べられ、スクレイプオフ層の外側赤道面近くで生じる長距離輸送事象が壁の粒子供給に関与するという描像など、長パルス特有の粒子収支の理解が進められた。

長パルス・非誘導運転と電流駆動

トカマクのプラズマ電流は通常、トロイダル磁場コイル電流を変化させて誘起する変圧器(一次巻線としての中心ソレノイド)で駆動される。この方式は本質的にパルス運転であり、電流を維持できる時間に上限がある。定常炉を実現するには、プラズマ電流を非誘導的に、すなわち高周波波やブートストラップ電流(圧力勾配が自発的に作る電流)で維持する必要がある。トール・シュプラはこの課題に装置全体で取り組んだ数少ない装置であり、低域混成波電流駆動を主軸に、高周波加熱と電子サイクロトロン加熱を組み合わせた。

成果は段階的に積み上がった。1990年代後半には、ブートストラップ電流割合が全電流の50%を超える定常放電が5秒以上維持され、非誘導駆動による2分間放電でプラズマへ最大 280 MJ が結合された。2003年には、プラズマ位置を数ミリメートル精度に制御し、共有メモリーネットワークを基盤とするリアルタイム制御系で高周波電力や各種アクチュエータを管理することにより、完全非誘導の定常放電を6分間にわたり持続させ、入出力エネルギーが 1 GJ を超える記録を打ち立てた。この「循環エネルギー1ギジュール」という数値は、単なるパルス長の記録ではなく、対向壁・制御系・電流駆動系が一体として長時間の高熱負荷に耐えたことの証明であり、ITER以降の定常運転に向けた技術統合の実証と評価された。

電流駆動の技術面でも、ITERに関わる開発がこの装置で行われた。低域混成波加熱のアンテナには、受動的な導波路構造で電力を分配するパッシブ・アクティブマルチジャンクション(PAM)方式のITER類似型ランチャーが搭載され、実機環境での性能が検証された。また、高電力・長パルス運転では、低域混成波電流駆動と高周波加熱を併用し、グリーンウォルド限界に近い密度で電子・イオン温度が接近した条件下の放電が実現され、7 MW の総入射電力を60秒間、MHD的に安定な領域で制御することができた。電流分布そのもののフィードバック制御も行われ、非誘導放電の立ち上げ段階で(2,1)テアリングモードの安定性が問題となることなど、電流プロファイル形成とMHD安定性の結合が定常運転設計の鍵であることが示された。

定常プラズマ物理

数秒から数分に及ぶ放電が可能になると、短パルスでは観測できなかった現象が現れる。トール・シュプラの定常運転研究がもたらした物理的知見の代表が、完全非誘導放電で観測された中心電子温度の大きな正弦波振動である。これは熱輸送とプラズマ電流の非線形結合による捕食者・被食者型の機構で支配されるもので、電流分布が変化すると熱輸送が応答し、それがまた電流分布を変えるというフィードバックが自励振動を生む。定常状態を狙って作った放電が、実は準定常的に振動する動的平衡であるという発見は、長パルス運転の制御設計に直接影響する知見であった。

密度分布についても、乱流が自発的に粒子を内側へ運ぶ「内側ピンチ」によって中心密度が尖った分布が定常的に形成されることが示された。粒子が乱流によって外向きにのみ拡散するのではなく、定常的な内向き流れを伴うという描像は、炉心の密度制御や燃料供給の設計に関わる。また、低域混成波と電子サイクロトロン波の間の強い相乗効果――一方の波が作る高速電子に対してもう一方の波が効率よくエネルギーを与える――が定常放電条件下で確認され、電流駆動の効率向上の道を開いた。

輸送と乱流の研究では、無次元化した物理量でスケーリングを行い、測定した乱流とジャイロ運動論的シミュレーションを突き合わせる手法が取られた。反射計測システムを用いた揺動計測は、閉じ込めのベータ依存性が弱いことを揺動の側から裏付けるなど、輸送の物理的起源の同定に寄与した。端プラズマでは、エルゴディックダイバータ下での乱流や低密度Lモード・スクレイプオフ層における静電的輸送が調べられ、外側赤道面近傍で生じる大規模な輸送事象がスクレイプオフ層に沿った大きな平行流を駆動するという、粒子供給の描像が提案された。さらに、高速イオンが関与する高周波不安定性の相関電子サイクロトロン放射計測、電子サイクロトロン電流駆動によるサワートゥースのリアルタイム制御、高速粒子駆動のMHD現象など、定常運転に付随するMHD・高速粒子物理も広く扱われた。

トール・シュプラからWESTへ

トール・シュプラは運転期間を通じて、ITERの建設期に先立って長パルス技術を実機環境で検証する役割を担い、対向壁の経時変化のその場監視、超高真空・高温環境下で動作する検査ロボット、診断窓の設計手法、光ファイバー電流センサの試験など、運転技術の幅広い開発を行った。これらは個々には小さな要素技術だが、長時間・高電力運転を「日常」として行った装置でなければ検証できない類のものであり、ITERへの技術移転の実績として評価された。

2010年代に入り、装置は大規模な改修を受けた。真空容器内をタングステン製の能動冷却ダイバータへと更新し、装置名もWEST(定常状態トカマクにおけるタングステン(W)環境、Tungsten (W) Environment in Steady-state Tokamak)へと改められた。この改修は、トール・シュプラが培った超伝導磁場・能動冷却・長パルス運転の基盤の上に、ITERや将来炉で重要となるタングステン対向壁の環境を付加するものであり、装置の研究課題は「定常運転の物理と技術」から「定常運転環境下でのタングステン対向壁の物理」へと継承・発展した。トール・シュプラという名称は、この改修以前の装置とその時代の成果を指す歴史的名称となっている。

この解説が根拠にした論文から

  • [1]Recent fully non-inductive operation results in Tore Supra with 6 min, 1 GJ plasma dischargesNuclear Fusion 2004
  • [2]Steady-state operation of tokamaks: key experiments, integrated modelling and technology developments on Tore SupraNuclear Fusion 2005
  • [3]Investigation of steady-state tokamak issues by long pulse experiments on Tore SupraNuclear Fusion 2009
  • [4]Integration of high power, long pulse operation in Tore Supra in preparation for ITERNuclear Fusion 2007
  • [5]Ten years of operation and developments on Tore SupraFusion Engineering and Design 1999
  • [6]Actively cooled plasma facing components in Tore SupraFusion Engineering and Design 2001

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推移

0.00.81.6トール・シュプラ197019801990200020102020%
図1 — トール・シュプラが、5年ごとにその期間の全論文に占めた割合。コーパスは2010年代が1970年代の9倍あるため、件数のままでは何もかもが増加して見える

研究の変遷

1985–199419本 · 0.35%

低ハイブリッド駆動と定常運転の開始

この時期のタイトルは、低ハイブリッド波を用いた電流駆動と定常状態の達成に焦点を当てており、マルチジャンクションランチャーや1分間パルス運転が報告されている。同時に、エルゴディックダイバータの予備実験やオーミック放電の乱流・エネルギー閉じ込めも扱われ、JETとの比較が見られる。

同時に語られた主題低域混成波、ペレット消滅、低域混成波電流駆動、イオンサイクロトロン加熱、電流駆動、アブレーション

この時代の論文から

  • [1]Improved confinement in high li lower hybrid driven steady state plasmas in TORE SUPRANuclear Fusion 1994
  • [2]Lower hybrid wave coupling in TORE SUPRA through multijunction launchersNuclear Fusion 1992
  • [3]Turbulence and energy confinement in TORE SUPRA Ohmic dischargesNuclear Fusion 1992
  • [4]One minute pulse operation in the TORE SUPRA tokamakNuclear Fusion 1993

1995–2004118本 · 1.19%

エルゴディックダイバータと長時間パルス運転の進展

この時期、タイトルはエルゴディックダイバータと定常・非誘導運転に集中し、6分間・1GJ放電やCRONOSコードによる定常シナリオ解析が現れる。イオンサイクロトロン加熱やリミター、プラズマ対向機器との関連が強く、ITERやTEXTORとの比較研究が行われた。

同時に語られた主題エルゴディックダイバータ、イオンサイクロトロン加熱、リミッター、プラズマ対向機器、不純物、定常状態

この時代の論文から

  • [1]Recent fully non-inductive operation results in Tore Supra with 6 min, 1 GJ plasma dischargesNuclear Fusion 2004
  • [2]Simulations of steady-state scenarios for Tore Supra using the CRONOS codeNuclear Fusion 2003
  • [3]Progress in ergodic divertor operation on Tore SupraNuclear Fusion 2002
  • [4]Stability analysis of improved confinement discharges: internal transport barriers in Tore Supra and radiative improved mode in TEXTORNuclear Fusion 2002

2005–2014110本 · 0.71%

ITERを見据えた統合研究とMHD・対機器研究

この時期はITER関連のタイトルが最多となり、受動能動型マルチジャンクションLHCDランチャーの長パルス検証や disruption緩和実験が行われる。MHD・スクレイプオフ層・Thomson散乱といった診断・現象が並び、Doppler後方散乱や重水素インベントリなどプラズマ対向機器の研究も含まれる。

同時に語られた主題電磁流体力学、低域混成波、低域混成波電流駆動、イオンサイクロトロン加熱、定常状態、スクレイプオフ層

この時代の論文から

  • [1]Fluctuation spectra and velocity profile from Doppler backscattering on Tore SupraNuclear Fusion 2006
  • [2]Experimental study of disruption mitigation using massive injection of noble gases on Tore SupraNuclear Fusion 2010
  • [3]Validation of the ITER-relevant passive-active-multijunction LHCD launcher on long pulses in Tore SupraNuclear Fusion 2010
  • [4]Deuterium inventory in Tore Supra: reconciling particle balance and post-mortem analysisNuclear Fusion 2009

2015–20269本 · 0.04%

トロイダル回転と周辺プラズマの局所計測

この時期、タイトル数は極めて少なく、低ハイブリッド電流駆動とトロイダル回転、鋸歯状振動が主な題材となる。オーミックLモードの局所的流速反転や、BAEによるq決定、ランチャー近傍の電場測定など、限られたプラズマ物理の詳細解析に特化している。

同時に語られた主題低域混成波電流駆動、トロイダル回転、鋸歯状振動、プラズマ回転、プラズマ対向機器、オーミック加熱

この時代の論文から

  • [1]Determination of q during sawtooth from inverse evolution of BAEs in Tore SupraNuclear Fusion 2018
  • [2]Localized reversal of the perpendicular velocity in Tore Supra ohmic, L-mode, limited plasmasNuclear Fusion 2017
  • [3]Investigations of LHCD induced plasma rotation in Tore SupraPlasma Physics and Controlled Fusion 2015
  • [4]Density impact on toroidal rotation in Tore Supra: experimental observations and theoretical investigationPlasma Physics and Controlled Fusion 2015

よく登場する装置

iter19jet4textor2nstx-u1mast1jt-60sa1asdex-upgrade1

関連項目

  • ·ウェストWEST

この数字の作り方

数え方 —
同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
割合 —
その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
記述 —
その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
冒頭の定義 —
用語そのものの説明だけは、論文120本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
解説 —
では、6本の論文(うち全文0本)と0枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
範囲 —
収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない

トール・シュプラ

種別
装置
論文数
256 本
初出
1990–1994 年(19本)
最盛期
2000–2004 年1.38%
直近
2025–2029 年0.00%
主な装置
iterjettextornstx-u

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