問題の本質は、不純物が「有害」とも「有益」ともなりうる点にある。コアに高原子番号不純物が蓄積すると、放射損失と燃料希釈によって性能が低下する。例えばタングステンでは、点火条件を満たすためにはコア濃度を10⁻⁵程度以下に保つ必要があるとされる。一方で、ダイバータの熱負荷を放射で軽減するには不純物の注入が不可欠であり、しかもその不純物がコアに侵入しないようにしなければならない。この「コアとエッジの両立」問題を定量的に扱うには、不純物の半径方向の流束を、拡散係数 D と対流速度 v で記述する輸送係数の枠組みで理解し、それを予測する必要がある。
不純物輸送の研究では、レーザーブローオフやペレット注入などで微量の不純物をパルス的にプラズマに加え、その放射や X 線強度の時間・空間変化から輸送係数を逆推定する実験手法が広く用いられてきた。この手法によって、複数の閉じ込めモード(L モード、H モード、I モードなど)での不純物挙動が系統的に比較されてきた。
新古典(衝突)輸送
磁場で閉じ込められたプラズマ中の荷電粒子は、クーロン衝突によって磁面を横切って拡散する。不純物イオンは主イオンより電荷 Z と質量 A が大きいため、その衝突輸送は燃料イオンの輸送と質的に異なる。燃料イオンでは乱流輸送が支配的であるのに対し、不純物では衝突輸送が乱流輸送に匹敵し、Z と A が大きいほど支配的になるのが特徴である。
衝突輸送の理論は、粒子の軌道が磁面内に閉じる「バナナ」軌道を持つかどうか、すなわち衝突頻度と軌道の関係(衝突性)によって区分される。バナナ・プラトー領域とプフィルシュ・シュルター(Pfirsch–Schlüter)領域(高衝突性領域)で輸送係数の式は異なり、後者では磁面内の不純物密度の非一様性(ポロイダル方向の非対称性)が輸送を大きく変えうる。この非対称性は摩擦や強いトロイダル回転、イオンサイクロトロン加熱に起因する温度異方性によって生じ、高 Z 不純物では特に顕著である。そのため、磁面内の非対称性を含めて衝突輸送係数を高速に計算する解析モデルの整備が、全放電の統合シミュレーションに向けて進められている。
実験で得られる不純物の拡散物の拡散係数は、しばしば新古典理論の予測を大きく上回る。これを「異常輸送」と呼ぶ。例えばオーミック L モードの実験では、実効的な不純物拡散係数が新古典値をはるかに超えることが確認されており、その原因はプラズマ中の乱流、とりわけドリフト波乱流であると理解されている。乱流の電場ゆらぎによる E×B ドリフトが粒子を磁面横方向に運ぶことで、衝突によらない拡散が生じる。
乱流輸送の大きさは加熱プロファイルや加熱方式に依存する。イオンサイクロトロン共鳴加熱(ICRH)を受けた L モードでは、入力電力(ひいては電子温度)の増加とともに不純物閉じ込め時間が短くなることが観測されており、電子主導の乱流が不純物輸送を強める様子が示されている。また電子サイクロトロン加熱によってエッジの不純物輸送が強まる観測例もある。一方、負三角形性プラズマでは、閉じ込められた粒子が「良い曲率」領域により長く滞在するため電子温度勾配型(TEM)乱流が安定化され、粒子輸送と熱輸送が分離する。この構成では ELM のない運転でありながらコア不純物蓄積を避けられる可能性が示されており、乱流制御による不純物輸送制御の好例となっている。
不純物蓄積・遮蔽と閉じ込めモード
不純物がコアに蓄積するか排除されるかは、拡散係数 D と対流速度 v の釣り合いで決まる。v が内向きであれば不純物は中心に向かって輸送され蓄積が進む。蓄積は特に H モードのような高閉じ込め運転で深刻な問題となる。エッジの密度勾配が急なペデスタルが形成されると、そこでの対流が不純物を内側へ引き込む方向に働くためである。実際、複数の閉じ込めモードを横断した実験では、コア不純物閉じ込め時間とエッジ密度勾配の間に強い相関があることが示されている。ELM のない高閉じ込めモードの多くは、コアへの不純物蓄積という代償を払ってきた歴史があり、これが「高閉じ込めと不純物排除の両立」という難問の背景にある。
対照的に、遮蔽とは不純物をコアから排除する機構の総称である。主イオン密度勾配による外向きの摩擦力は高 Z 不純物に対して有効な遮蔽を与える。点火炉心の新古典計算でも、平均ドリフト速度は常に外向きであり、高 Z 元素に対して実効的な遮蔽が働くとされる。ヘリカル装置では、正の電場が外向き対流をもたらすことを利用した不純物制御の可能性が議論されている。さらに、高いイオン温度と急峻なイオン温度勾配を持つプラズマでは、負の電場があるにもかかわらず不純物が外向きに強く対流する「不純物ホール」と呼ばれる現象が観測されており、その機構の解明が課題となっている。
スクレイプオフ層の不純物輸送で近年注目されているのが E×B ドリフトの役割である。ドリフトは不純物イオン自身の動きに直接作用すると同時に、背景プラズマの密度・温度分布を変えることで間接的にも作用する。ドリフトはダイバータの内外非対称性やデタッチメント(detachment)の程度を変え、それを通じて不純物の再堆積率や漏れ出しフラックスを変化させる。平行方向の力による不純物イオンの速度は質量に反比例するため、高 Z 不純物ほどドリフトの影響を受けやすい。特にダイバータ領域では磁力線のピッチ角が小さいため、この効果が顕著になる。シミュレーションによれば、ドリフトを含めることで閉じ込め領域への侵入フラックスがトロイダル磁場の向きによらず増大しうることが示されている。
Schematic of the basic flow pattern of W impurity during its transport from the target to the confined plasma (taking the LSN configuration under favorable BT as an example), and the physical mechanisms of the influences of drifts. VE ×B,rad and VE ×B,pol are the radial and poloidal E × B drift velocities of W ions. lstag is the distance between the stagnation points and the target. The yellow, blue, and orange rectangles refer to the divertor SOL, main SOL, and core region, respectively. The transparent and orange thick arrows indicate the basic flow pattern for the cases w/o drift and with drift under favorable BT, respectively. The red and blue thin arrows indicate the direction of VE ×B,rad and VE ×B,pol, respectively. The black and blue dashed lines denote the connection lines of stagnation points for VW,|| w/o drift and VW,pol with the drift. The sequence numbers represent the physical mechanisms of drifts on the W transport from the target to the core, and the process explanation of these mechanisms are listed on the right.