中性子源(Neutron source)は、核融合・プラズマ物理学の工学。核融合反応で生じる高エネルギー中性子を利用するため、プラズマ閉じ込め装置や加速器・レーザー駆動標的など様々な方式で実現される工学的装置である。主に核融合炉構造材料の照射損傷試験やブランケット開発を目的とし、D-T反応による14 MeV中性子を高フラックスで供給する。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは171本ある。比重が最も大きいのは直近の2025–2029年で、その期間に発表された論文の0.58%を占める。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1975年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
核融合開発における中性子源とは、炉心プラズマそのものではなく、核融合炉に固有の中性子環境を人工的に作り出して材料・機器の試験に供する装置の総称である。重水素と三重水素の核融合反応が放出する約14 MeVの中性子は、第一壁やブランケット材料中に原子変位を生み、水素・ヘリウムを核変換生成として蓄積させる。この照射環境を炉の稼働前に再現・加速試験できる施設がなければ、デモ炉や商用炉の構造材料の設計・認可は成立しない。以下では、この中性子源が核融合開発で担う役割、加速器を用いたD-Li源、プラズマを用いた体積型中性子源、その他の概念と応用、そして中性子工学データの検証という順に述べる。
核融合開発における中性子源の役割
核融合炉の材料が直面するのは、高速中性子による格子欠陥の生成と、核変換で生じたヘリウム・水素ガスによるふくらみや脆化の相乗効果である。この効果を定量的に予測するには、核融合と同じ中性子スペクトル・同じ損傷速度での照射データベースが不可欠だが、核分裂炉やスパレーション源、イオンビーム照射ではスペクトルも損傷様式も異なり、代用には限界がある。このため材料分野では30年以上前から、核融合固有の中性子場を供給する専用施設の必要性が合意されてきた。要求は大別して二つある。第一に、核融合特性の中性子スペクトルを、想定寿命を超える加速照射が可能な強度で、温度やガンマ線発熱を制御された条件下で供給すること。第二に、材料の巨視的物性評価に必要な十分な照射体積を確保することである。
必要な照射線量の目安は、デモ炉初期段階で約20 dpa(displacements per atom、原子あたりの変位回数)、第二段階で約50 dpa、商用炉では100 dpa超とされる。この規模の照射を短期間に達成するには、第一壁換算で数 MW/m² の中性子壁負荷に相当する線量率が事実上必須であり、これが中性子源設計の出発点となる。また材料だけでなく、ブランケットのような核融合炉固有機器の開発には、複数の効果が統合された環境での試験が不可欠との認識から、プラズマ装置そのものを試験体積として使う体積型中性子源の構想も生まれた。信頼性成長試験の解析では、ブランケット概念ごとに6〜12基の試験モジュールを約6 MW・年/m² のフルエンスまで試験することが、デモ炉の稼働率を40〜50%の水準で高信頼に達成する条件と見積もられている。
加速器型D-Li源:IFMIF-DONES
加速器型源の主流は、40 MeV級の重陽子ビームを液体リチウムの流れに衝突させ、⁷Li(d,n)反応で広いエネルギー分布(約15〜20 MeV付近に及ぶ)の中性子を発生させる方式である。この反応が選ばれたのは、生成中性子のスペクトルがD-T核融合のそれに近く、しかも三重水素を扱わずに済むためである。国際核融合材料照射施設(IFMIF)の構想では、2基の線形加速器がそれぞれ125 mAのビーム電流を全デューティサイクルで供給し、リチウムターゲット上で約10¹⁸〜10¹⁹ n/m²/s の中性子束密度を実現する。IFMIFの設計と工学検証は1990年以降、日欧米露の国際協力、のちに日欧間の広範囲アプローチ(Broader Approach)枠組みのIFMIF/EVEDA段階を経て進められた。
その欧州側の後継が、デモ炉指向の中性子源IFMIF-DONES(DEMO Oriented Neutron Source)である。欧州の核融合ロードマップではITERに続きDEMOの建設が予定され、材料の照射検証が核融合電力早期実用化のクリティカルパスと認識されたことから、EUROfusionの作業パッケージで予備工学設計が進められ、スペイン・グラナダが候補地とされた。DONESはIFMIFの縮小・段階化版として、まずデモ炉初期段階に必要な約20 dpaまでの照射データを供給し、将来的にフルIFMIFへ拡張する位置づけにある。

fig.1 The IFMIF-DONES fusion oriented neutron source: evolution of the design (2021) · CC BY 4.0
IFMIF-DONES schematic plant configuration.
図はDONESプラントの構成を示す。左側に100 keVの注入器から高周波四重極(RFQ)、超伝導リニアックを経て40 MeVまで加速する加速器系、中央にリチウムターゲットと試験セル、右側にリチウム主ループから熱交換器・冷却水系までを含む除熱系、さらに不純物制御系や計測制御系が描かれている。加速器系の心臓部は超伝導リニアックであり、複数のクライオモジュールに空洞とソレノイド磁石を収めて連結した構成で、連続運転での高電流ビーム加速を実現する。リチウムループ側では、ターゲットアセンブリを流れる液体リチウムがビームの熱負荷を受け止め、主ループから二次・三次ループを経て外部へ熱を運ぶ。ビームの熱負荷は極めて局所的であるため、ターゲット部のリチウムは高速の薄膜流として流され、壁面せん断応力や自由表面挙動が水モデル実験などで評価されている。回転三重水素ターゲットのように、D-T反応を直接使う別方式のターゲット技術も小型中性子発生装置の延長として研究されてきたが、大強度・長寿命の材料照射源としてはD-Li方式が有力視されてきた経緯がある。
プラズマ型体積中性子源
加速器型源が材料の単純照射に優れるのに対し、ブランケットや第一壁のような核融合炉固有機器は、中性子照射とプラズマ面への熱負荷・粒子負荷が同時に作用する統合環境でしか検証できない。そこで、小型の核融合装置そのものを中性子源として運転し、その周囲に試験体積を設ける体積型中性子源(VNS)の構想が提案されてきた。非核融合施設では複数効果の統合模擬も試験体積も不十分で、核融合技術のクリティカルな課題は解決できない、というのがその論拠である。
構想の多くはトカマクを基礎とし、銅ノーマルコンダクティングトロイダルコイルとQ≈1〜3の駆動定常プラズマで小型装置を実現する案が示されてきた。ITERだけを材料・機器試験に頼る戦略はデモ炉へのリスクと遅延が過大であるため、ITERと並行して運転する専用のVNSを建設する方が総開発コストでも有利と評価された。球状トーラス(低アスペクト比トカマク)を用いた案では、中心ソレノイドの制約を回避しつつコンパクトな体積源を構成する代替設計が検討され、ヘリカル装置を用いた体積源(FFHR系の案)や、最適化されたステラレータ型中性子源(Eos)の設計研究も現れている。ステラレータは電流駆動を不要とできるため定常運転に有利で、中性子源としてのプラズマ物理最適化が行われている。一方、プラズマ中に中性子ビームを注入してビーム・プラズマ反応で中性子を発生させる案では、不純物放射損失が源の性能を制限する要因として解析されている。トカマク型源の設計では、閉じた核燃料サイクルに必要な三重水素増殖を担う源としての要求や、閉込めモード(LモードかHモードか)に応じた中性子源分布のモデル化、EASTのような実機プラズマ形状を用いた源モデルの構築などが進められており、小型装置TUMAN-3Mでの中性子生成実験がトカマク型源の検証に寄与している。
その他の概念と応用
材料照射を主目的としない中性子源にも幅広い展開がある。レーザー駆動の短パルス中性子源は、高繰り返しレーザーで圧縮ターゲットを照射して発生する中性子パルスを利用するもので、パルス幅が極めて短いため時間分解中性子分光や、ピンホール・ペヌンブラ絞りを併用した小スケール中性子源のイメージングなど、慣性核融合実験の診断に向く。加速器プラズマターゲット型の源は、重陽子ビームをプラズマターゲットに当てることで固体ターゲットの熱損傷問題を回避し、高繰り返し・短パルス運転を可能にする。ミラー装置の一種であるガスダイナミックトラップ(GDT)は、長いソレノイド中の高密度プラズマに中性ビームを注入して維持する構成で、大電力の14 MeV中性子源として提案されている。
応用面では、小型核融合中性子源を用いたブランケット模型試験体での三重水素生成率評価のように、核データや増殖性能の実証に中性子源が使われる。また、モジュール輸送を前提としたDONES機器の輸送概念の検討や、100 MWe級モジュール型発電プラントと核融合中性子源のコスト感度分析のように、中性子源はシステム・コスト評価の対象にもなっている。
中性子工学とデータ検証
中性子源の設計・利用には、中性子が物質中でどう散乱・吸収・エネルギーを失うかを記述する中性子工学(輸送計算)が不可欠である。材料照射量(dpa)、ガンマ線発熱、三重水素生成率、遮蔽性能といった設計量はすべて、核データライブラリと輸送計算コードから求められる。核融合特有の14 MeV中性子域を正しく扱うため、国際反応・線量ファイル(IRDFF)のような核融合向け核データファイルが整備され、JAEAのFNSのようなD-T中性子発生装置で酸化リチウム集合体を用いた積分試験により、三重水素生成率などの計算値が実験で検証されてきた。モンテカルロコードOpenMCが加速器型中性子源の解析に適用され、ベンチマークと検証が行われるなど、計算手法の信頼性確保も進んでいる。これらの検証データベースの上に初めて、DONESのような大型照射施設の設計や、デモ炉・商用炉の材料・遮蔽・ブランケット設計の認可が成り立つ。中性子源は、核融合の炉心物理から一歩離れた場所で、炉を成立させる材料と核工学の基盤を供給する装置なのである。
この解説が根拠にした論文から
- The European approach to the fusion-like neutron source: the IFMIF-DONES projectNuclear Fusion 2019
- The IFMIF-DONES fusion oriented neutron source: evolution of the designNuclear Fusion 2021
- An intense DT neutron source and test conditions for fusion nuclear technology researchFusion Engineering and Design 1989
- A volumetric neutron source for fusion nuclear technology testing and developmentFusion Engineering and Design 1995
- Preface to the Special Issue on the IFMIF-DONES fusion neutron sourceNuclear Fusion 2025
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推移
研究の変遷
1970–19842本 · 0.08%
黎明期のプラズマフォーカスと慣性核融合
この時代は、プラズマフォーカス装置や慣性核融合方式に中性子源を求める研究がごくわずかに見られる。中性子ピンホールカメラによる時間・空間構造の計測や、イオンビーム方式の炉心概念が扱われており、Fusion neutron という概念と並んで現れる。
同時に語られた主題核融合中性子
この時代の論文から
1985–19949本 · 0.16%
ミラー型と逆転磁場ピンチ型の設計研究
ミラー型中性子源や逆転磁場ピンチ型の中性子源の概念設計が行われた。高フルエンスの中性子源や時間分解中性子分光法の研究もあり、Fusion neutron、Fusion blanket、Deuterium-tritium といった概念と関連づけられている。
同時に語られた主題核融合中性子、逆磁場ピンチ、中性子工学、核融合ブランケット、重水素-トリチウム
この時代の論文から
- A linked mirror neutron sourceNuclear Fusion 1993
- A method for time resolved neutron spectroscopy on short pulsed fusion neutron sourcesPlasma Physics and Controlled Fusion 1987
- Mirror type neutron sourcePlasma Physics and Controlled Fusion 1990
- A high-fluence fusion neutron sourceFusion Engineering and Design 1989
1995–200428本 · 0.28%
多様なプラズマ型中性子源と材料研究への応用
レーザー駆動マイクロ中性子源や慣性静電閉じ込め、ビーム・プラズマ型中性子源など、多様な方式が研究された。核データやトリチウム増殖、定常運転、中性粒子入射といった概念と並び、材料研究やビーム最適化の視点が現れる。
同時に語られた主題核融合中性子、核データ、トリチウム増殖、トリチウム、定常状態、中性子工学
この時代の論文から
- The investigation of high intensity laser driven micro neutron sources for fusion materials research at high fluenceNuclear Fusion 2000
- Measurements of strongly localized potential well profiles in an inertial electrostatic fusion neutron sourceNuclear Fusion 2001
- Impurity radiation from a beam-plasma neutron sourceNuclear Fusion 1995
- Plasma based neutron sourcesNuclear Fusion 1997
2005–201420本 · 0.13%
トカマク型コンパクト中性子源と燃料サイクルへの展開
トカマク型のコンパクト融合中性子源や、D-T 中性子源による核燃料サイクル閉鎖の検討が行われた。ITER 中性粒子入射試験施設の中性子源予測や、プラズマフォーカスにおける中性子生成のガス条件の研究も見られる。ITER という装置名が現れる。
同時に語られた主題核融合中性子、トリチウム生成、トリチウム、ピンチプラズマ、中性ビーム、ITER中性粒子ビーム
この時代の論文から
- The super X divertor (SXD) and a compact fusion neutron source (CFNS)Nuclear Fusion 2010
- Tokamak D–T fusion neutron source requirements for closing the nuclear fuel cycleNuclear Fusion 2007
- A 14 MeV fusion neutron source for material and blanket development and fission fuel productionNuclear Fusion 2013
- Prediction of neutron source, tritium production and activation for long-pulse operation of the ITER neutral beam test facilityNuclear Fusion 2006
2015–2026112本 · 0.45%
IFMIF/DONES型融合中性子源の設計と較正研究
IFMIF/EVEDA や IFMIF-DONES の設計に関する研究が中心となり、Li(d,xn) 反応に基づく融合中性子源の概念が確立される。JET の中性子検出器較正や T-11M トカマクのリチウムリミター実験も行われ、定常運転、遮蔽、ニュートロニクス、トリチウムといった概念と強く関連している。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題核融合中性子、リチウム、中性子工学、中性ビーム、トリチウム、重水素-トリチウム
この時代の論文から
- The accomplishment of the Engineering Design Activities of IFMIF/EVEDA: The European–Japanese project towards a Li(d,xn) fusion relevant neutron sourceNuclear Fusion 2015
- The European approach to the fusion-like neutron source: the IFMIF-DONES projectNuclear Fusion 2019
- The IFMIF-DONES fusion oriented neutron source: evolution of the designNuclear Fusion 2021
- 14 MeV calibration of JET neutron detectors—phase 1: calibration and characterization of the neutron sourceNuclear Fusion 2018
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文77本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、5本の論文(うち全文2本)と1枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
