IFMIFは、核融合・プラズマ物理学の装置。加速器駆動のD-Li(重陽子-リチウム)中性子源で、液体リチウム標的に重陽子ビームを入射して核融合炉第一壁相当の高フラックス中性子を発生させ、炉材料の照射試験を行う国際施設である。IFMIF-DONESはその設計を簡略化・最適化した施設で、DEMO炉材料の健全性評価に資する。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは295本ある。比重が最も大きかったのは2010–2014年で、その期間の論文の0.99%を占めた。直近の2025–2029年では0.72%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1995年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
International Fusion Materials Irradiation Facility
解説
国際核融合材料照射施設(IFMIF、International Fusion Materials Irradiation Facility)は、核融合炉の第一壁に当たる14 MeV程度の高速中性子による材料損傷を実験室で再現するために構想された加速器駆動の中性子源である。40 MeV・125 mAの重陽子(D⁺)ビームを高速の液体リチウム流に衝突させ、Li(d,xn)ストリッピング反応によって核融合炉に類似したスペクトルを持つ中性子を大量に発生させる。当初は二本のビームを備えた大規模施設として構想されたが、欧州の核融合ロードマップではDEMOの材料要件に合わせて段階化され、単一ビームの縮小版であるDEMO指向中性子源(IFMIF-DONES)が現在スペイン・グラナダで建設中である。施設全体の配置を示した次の図は、約100 mの直線加速器、リチウムループ、試験セルという三つの主要系の関係を示すものである。

fig.1 Safety engineering approach and licensing strategy of IFMIF-DONES (2025) · CC BY 4.0
Descriptive lay-out of the facility with the distribution of its main Group of Systems: (i) Accelerator, (ii) Lithium Target and Systems, (iii) Test Cell and Irradiation Modules.
図は主建屋の断面に沿って、重陽子を加速するリニアック、その先端のリチウムターゲットと照射モジュールを納める試験セル、一次リチウムループと油冷却ループの配置を描いたものである。
目的と歴史:IFMIFからIFMIF-DONESへ
核融合材料開発の中心課題は、D-T核融合反応から生じるピークエネルギー約14.1 MeVの中性子が第一壁やブランケット構造材に与える損傷を、実機運転前に定量的に評価することである。DEMO級の炉では中性子束が10¹⁸ m⁻²s⁻¹のオーダーに達し、炉内機器は年間10 dpa(displacement per atom、原子あたり変位回数)を超える損傷を受ける。このような損傷は、ヘリウムや水素の核変換生成を伴うという点で核分裂炉の照射とは本質的に異なり、材料の照射データを核分裂炉で代用することはできない。このため、核融合に適合した中性子源の必要性は1976年のLi(d,xn)反応を用いる提案にまで遡る。米国のFMIT(Fusion Materials Irradiation Test)施設がこの概念の実現可能性を示したが1984年に中止され、その後国際エネルギー機関(IEA)の枠組みで材料科学コミュニティの合意を経てIFMIFの概念設計(1996年報告)と統合設計報告(2004年)がまとめられた。
2007年には、ITER協定と同時に日欧の広域アプローチ協定の下でIFMIF工学検証・工学設計活動(EVEDA)が承認された。この活動は、設計の工学統合とともに主要システムの実証を目的とし、三つの原型試験が行われた。第一に、日本・六ヶ所に建設されたリニアック原型装置LIPAcは、IFMIF加速器の前端部を1対1で再現し、9 MeV・125 mA級の連続波重陽子ビームの安定輸送を実証した。第二に、日本・大洗のEVEDAリチウム試験ループは、ターゲットを構成する液体リチウム噴流の長時間安定性を実証し(2011年運転開始、2014年に試験完了)、併せてイタリア・ブラシモーネのリチウムループLifus6で腐食試験が行われた。第三に、高束照射モジュール(HFTM)の試験片カプセルの原型がベルギーのBR2核分裂炉で照射され、カールスルーエのヘリウムループHELOKAによる設計条件での試験に成功した。
こうした設計検証の成果を踏まえ、欧州核融合ロードマップはDEMOの中性子線量要求を段階的に設定する方針(初期段階で約20 dpa、第二段階で約50 dpa)を採り、これに応じて施設を段階建設する方式が採られた。その第一段階に当たるのがであり、2015年からEUROfusionの活動として一般サイト向けの工学設計が進められ、2020年代初頭の建設開始を目標にスペイン・グラナダでの建設が進んでいる。なお、核融合材料照射以外にも、医学応用、原子核物理、放射性核種ビーム、産業利用といった分野への科学利用の拡張が検討されている。

fig.2 The lithium systems of the IFMIF-DONES facility (2025) · CC BY 4.0
IFMIF-DONES facility schematic drawing.
図はこの三要素の関係を模式的に示したものである。左から40 MeV・125 mAの重陽子加速器、15 m/sで流れるリチウムスクリーンとカーブド・バックプレートからなるリチウムループ、そしてその背後に置かれる高束試験モジュール(10 dpa/年を300 cm³で、約20 dpa/年を100 cm³で達成)が描かれ、ビーム足跡や冷却温度範囲(約250 ℃から550 ℃)も併記されている。
重陽子エネルギー40 MeVと電流125 mA、そしてビームのターゲット上での足跡(標準で水平20 cm×垂直5 cm)は、中性子束を最大化するよう長年の設計最適化で定められた値である。リチウムの自由表面はビームの熱負荷を直接受けるため、その安定性が中性子場の品質を左右する。発生した中性子は等方的に飛散するが、ビーム進行方向後方の試験セル側が最も高束であり、照射領域はターゲット背後の位置に応じて高束(10¹⁴–10¹⁵ n cm⁻²s⁻¹)、中束(10¹³–10¹⁴)、低束(10¹³未満)に分けられる。
重陽子加速器
加速器は、イオン源と100 keV級の注入器、RFQ(Radio Frequency Quadrupole)リニアック、中エネルギービーム輸送系(MEBT)、超伝導リニアック(SRF)、高エネルギービーム輸送系(HEBT)からなる。RFQで数MeVまで加速された重陽子は、超伝導空洞の列で40 MeVまで加速され、HEBTを経てリチウムターゲットに導かれる。連続波運転での平均ビーム電力は5 MWに達し、これは世界の高電力ハドロン加速器の中でも最上位級であり、運転実績のあるSNS超伝導リニアックの1.7 MWを大きく上回る設計である。このため、ビーム損失の厳しい制御、高信頼性の設計(FMEAやフォールトツリー解析に基づくRAM解析)、そして異常ビームを受ける高電力ビームダンプの整備が設計の要となっている。
前端部の実証は前述のLIPAcが担い、9 MeVまでの加速で約120 mAの重陽子を平均出力約50 kWでビームダンプまで輸送することに成功している。この実績は、注入器、RFQ、MEBT、高周波電源系、HEBTとビームダンプというIFMIF-DONES前端部システムの設計妥当性を裏付けるものである。

fig.2 Overview and current status of the IFMIF-DONES accelerator systems (2025) · CC BY 4.0
Layout and mockup of the IFMIF-DONES accelerator beamline.
図は加速器ビームラインの構成を示すものである。上段の模式図は100 keVの注入器から5 MeVのRFQ、超伝導リニアックを経て40 MeVに至る加速段階と、終端のリチウムターゲットおよびビームダンプの位置を示し、下段の写真は注入器、RFQ、MEBT、SRFリニアック、HEBTの実機レイアウトを描いている。
液体リチウムターゲットと除熱
液体リチウム系(Lithium Systems)は、ターゲット系(TSY)、除熱ループ(HRL)、不純物制御系(ICS)、付帯設備(LSA)の四つのサブシステムからなる。ターゲット系の役割は、ビームが当たる位置に高速かつ安定な自由表面流を形成し、ビームが注入する5 MWの熱をリチウムの流れそのもので受け止めて運び去ることである。リチウムは固体の窓を持たない「リキッドメタルウォール」として働くため、真空容器とビームの間に固体の隔膜がなく、ビーム窓の破損という問題を原理的に回避できる一方、高速自由噴流の表面波や流れの安定性が中性子場の均一性に直結する。このため、高速液体リチウム噴流の表面波計測技術の開発や、ITHEXと呼ばれる熱流動実験施設でのミニチャネル流れの実験とCFD検証が進められてきた。
除熱ループは、ターゲット系にリチウムを供給し、ビームで加熱されたリチウムの熱を一次リチウムループから中間の油ループを介してプラント全体の放熱系へ伝達する多段構成をとる。不純物制御系は、リチウム中の酸素や窒素などの不純物、および照射で生成される放射性生成物を除去・管理する。リチウムは化学的に活性で可燃性であるため、漏洩時の火災安全が設計上の重要課題であり、受動的対策(金属製受け皿、回収・排水系)と能動的な消火系を組み合わせた多層防御(Defense-in-Depth)戦略が採られている。大規模漏洩時のリチウム火災の挙動を研究するため、専用実験施設LiFIREが整備された。EVEDAリチウム試験ループでの安全性概念の実証もこの分野を支えている。信頼性の面では、FMEAと信頼性ブロック線図に基づくRAMI解析により、171日運転と予防保守を繰り返す運転方針の下でリチウム系の稼働率94.5%が見込まれ、要求値94%を満たすと評価されている。

fig.9 The lithium systems of the IFMIF-DONES facility (2025) · CC BY 4.0
Illustrative 3D model of the Lithium Systems.
図はリチウム系全体の三次元モデルである。一次リチウムループ、二次・三次の油ループからなる除熱ループ群、ターゲット系、不純物制御系の各サブシステムの配管と機器の配置が色分けして描かれている。
試験システム、照射モジュールと運転
試験システムは、重陽子ビームとリチウムターゲットのストリッピング反応が行われる遮蔽された空洞である試験セル(TC)を中核とする。試験セルの背後にはターゲットアセンブリ(TSY)が置かれ、その後方の中性子束に応じた複数の照射領域に、照射モジュールが照射キャンペーンごとに交換されながら設置される。最初に運転されるのは高束試験モジュール(HFTM)であり、低活性フェライト・マルテンサイト鋼(RAFM鋼)を中心とする約1000本の小型試験片を高束領域で照射する。HFTMはヘリウム冷却とされ、試験片カプセルの流動・伝熱特性の実験やCFDによる温度制御の検討が行われてきた。このほか、中束試験モジュール、プラント総合試運転の最終段階で重要な役割を担うSTUMM、液体増殖材検証モジュールなどが、照射領域の違いを活かして運転期間中に順次装荷される。試験セルの雰囲気の熱流動制御、真空性能、計測・制御系も設計課題である。
運転上の特質は、極めて高い照射場の下で高い稼働率を維持することにある。各システムは90%超の稼働率を保証するよう設計され、プラント全体で70%の総合稼働率を目標とする。このため、試験セル内機器、加速器、リチウム系の主要機器は遠隔保守(RH)を前提に設計されており、遠隔操作システム、視認システム、保守手順の検証が進められている。安全性の面では、5 MW級加速器の運転管理、放射性生成物を含む約15 m³のリチウムループの管理、照射済み材料の取り扱いといった固有の危険に対し、原子力発電所の原則を機械的に適用するのではなく、リスクに見合った段階的アプローチ(graded approach)に基づく安全設計と認可戦略が採られている。具体的には、危険源の量(MAR)とハザードカテゴリの設定、参考事故シナリオの解析、閉じ込め障壁、インターロック、放射線モニタリングなどの安全系の整備、そして職業被ばくを低減するALARA原則の設計への組み込みが進められている。
なお、IFMIF-DONESの能力は核融合材料照射に限定されず、医学応用、原子核物理、放射性核種ビーム、中性子の産業利用などへの展開も想定されており、これらは施設の科学使命を広げる補完的利用として位置づけられている。
この解説が根拠にした論文から
- The IFMIF-DONES project: preliminary engineering designNuclear Fusion 2018
- The lithium systems of the IFMIF-DONES facilityNuclear Fusion 2025
- Remote maintenance in IFMIF-DONES: current status and future development programNuclear Fusion 2025
- Safety engineering approach and licensing strategy of IFMIF-DONESNuclear Fusion 2025
- Update on the status of the IFMIF-DONES test systemsNuclear Fusion 2025
- Overview and current status of the IFMIF-DONES accelerator systemsNuclear Fusion 2025
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研究の変遷
1995–200413本 · 0.13%
施設概念の成立可能性と核設計の検討
この時代のIFMIF関連論文は13本と少なく、全タイトルに占める割合は0.13%に留まる。内容は核融合材料照射施設としての適合性とユーザー面の概観、D-Li中性子源の核特性計算、高中性子束試験モジュールのレイアウト設計などが中心であり、Lithium、Lithium target、Neutronics、Liquid lithiumといった語と共に現れる。施設概念の成立可能性と核設計上の課題を検討する段階だった。
同時に語られた主題リチウム、リチウム標的、中性子工学、液体リチウム、熱水力、定常状態
この時代の論文から
- Suitability and feasibility of the International Fusion Materials Irradiation Facility (IFMIF) for fusion materials studiesNuclear Fusion 2000
- Impact of source term uncertainty on neutronics analysis of D-Li neutron irradiation facility (IFMIF)Fusion Engineering and Design 1998
- The international fusion materials irradiation facility IFMIF — an overview of user aspects
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文39本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、6本の論文(うち全文6本)と4枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
