IFMIF-DONES(DONES、Demo Oriented Neutron Source)は、核融合・プラズマ物理学の装置。重陽子ビームを液体リチウムに衝突させて、核融合炉第一壁に近いスペクトルの中性子を発生させる加速器駆動型中性子源である。DEMO炉向け材料の照射試験とデータ取得を目的とし、欧州を中心に設計・建設が進められている。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは121本ある。比重が最も大きいのは直近の2025–2029年で、その期間に発表された論文の0.86%を占める。この用語集がこの主題を最初に拾うのは2015年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
IFMIF-DONES(International Fusion Materials Irradiation Facility–DEMO Oriented Neutron Source、略称DONES)は、核融合炉の構造材料を炉環境に近い中性子場で照射・評価するために建設中の加速器駆動型中性子源施設である。スペイン・グラナダに建設されており、欧州の核融合ロードマップにおいて、ITERに続く原型炉DEMOの設計・建設を支える材料認証施設の位置づけを持つ。40 MeV・125 mAの重陽子ビームを液体リチウム標的に連続入射することで、D-T核融合反応に類似したエネルギースペクトルを持つ強力な中性子場を発生させる。
目的と由来:DEMO材料認証とIFMIFからDONESへの系譜
核融合炉ではD-T反応によりピークエネルギー約14.1 MeVの中性子が発生し、第一壁や増殖ブランケットなどの炉内機器は年間10 dpa(displacement per atom、原子当たりの変位量)を超える照射損傷を受ける。このような中性子照射による材料劣化——寸法安定性、機械特性の変化、水素・ヘリウムガスの材料内生成——を定量的に理解し、炉の設計・許認可・信頼性評価に結びつけることが、核融合エネルギー開発の長年の懸案であった。核分裂炉の中性子はエネルギーが低くスペクトルも全く異なるため、既存の照射環境では融合炉相当の損傷評価はできず、専用の中性子源が不可欠とされてきた。
リチウム標的に重陽子を当てて中性子を発生させるというLi(d,xn)概念は1976年に提唱され、米国のFMIT(Fusion Materials Irradiation Test)施設がその実現可能性の最初の実証を行った。FMITの早期中止後も国際エネルギー機関(IEA)の枠組みで材料科学コミュニティの合意形成が進み、国際計画としてのIFMIFの概念設計(1996年)と包括設計報告(2004年)がまとめられた。2007年からは日欧の広域アプローチ協定の下でIFMIF-EVEDA(工学検証・工学設計活動)が実施され、設計の工学統合と主要システムの実証が行われた。この段階で、DEMOの必要照射量を段階的に設定し(初期段階で約20 dpa、第二段階で約50 dpaを目標)、施設を段階的に建設する「段階的アプローチ」が採用されることになり、IFMIFのフル仕様をDEMOのニーズに絞って簡素化したものがIFMIF-DONESである。2015年以降はEUROfusionの作業計画の下で建設開始可能な設計レベルまで開発が進められ、現在グラナダで建設が進行している。

fig.1 Safety engineering approach and licensing strategy of IFMIF-DONES (2025) · CC BY 4.0
Descriptive lay-out of the facility with the distribution of its main Group of Systems: (i) Accelerator, (ii) Lithium Target and Systems, (iii) Test Cell and Irradiation Modules.
図は施設全体の配置を示す。約100 mに及ぶ重陽子線形加速器が主建屋を貫いて走り、その先端のリチウム標的・照射モジュール・試験セル(Test Cell)の断面、および一次リチウムループと油冷却ループの配置が描かれている。加速器・リチウム標的系・試験セルという三つの主要システム群の空間的関係が一目で分かる。
なお、DONESの照射能力は核融合材料研究に限定されず、核物理、医用同位体、産業利用などへの波及的利用も想定されている。
中性子生成:d-Liストリッピング反応とビーム条件
中性子の生成原理は、40 MeVに加速した重陽子が液体リチウムの核に衝突するストリッピング反応Li(d,xn)である。重陽子はリチウム核に近接して中性子を叩き出し、最大約55 MeVまでの広いエネルギー分布を持つ中性子が放出される。このスペクトルは約14 MeV付近に広いピークを持ち、D-T融合炉の第一壁で材料が受ける中性子スペクトル、すなわち原子変位の一次反跳原子スペクトルやヘリウム・水素のガス生成率がよく似ている。これが、核分裂炉では再現できない「融合炉類似の照射環境」の本質である。
ビーム条件は中性子束の最大化を目的に最適化されてきた。重陽子エネルギー40 MeV、平均電流125 mA、すなわち連続波で5 MWのビーム出力を標的に入射する。ビームは水平約200 mm×垂直50 mmの準長方形フットプリントに整形され、厚さ25 mm、流速15 m s⁻¹の液体リチウムのカーテンに当たる。総中性子発生率は約6.8×10¹⁶ n s⁻¹に達し、標的直後の高フラックス領域ではピーク約10¹⁵ n cm⁻² s⁻¹(約5×10¹⁴ n cm⁻² s⁻¹の設計値が引用されることもある)の中性子場が得られる。この結果、標的直後に置かれた試料には年間20 dpa以上の損傷速度が与えられ、0.3 dm³の体積に2.5年以内で20 dpa、あるいは0.1 dm³に3年で50 dpaの照射を達成することが施設の性能要求とされている。この照射量は、DEMO初期段階の部材が受ける年間損傷量を数年で再現できる水準である。
施設システム:加速器、リチウム標的、除熱
施設は大きく加速器システム、リチウムシステム、試験システム、そして中央計装・制御・建屋系から構成される。加速器は100 keVのイオン源から出発し、RFQ(高周波四重極)で5 MeVまで加速、中エネルギー輸送線(MEBT)を経て超伝導高周波加速腔(SRF)で40 MeVまで加速し、高エネルギー輸送線(HEBT)でリチウム標的に導く。運転開始前の調整段階では、ビームは標的の代わりに低出力・高出力のビームダンプに受け止められる。5 MW級の連続波陽子・重陽子加速器の運転実績は世界的に乏しく、本施設の前端部を1対1で模した原型加速器LIPAc(日本・六ヶ所)が9 MeV・約120 mAの検証運転を行うなど、各要素の工学検証が設計を支えている。

fig.2 The lithium systems of the IFMIF-DONES facility (2025) · CC BY 4.0
IFMIF-DONES facility schematic drawing.
図は施設のシステム構成を模式的に示したものである。左に加速器系(入射器からRFQ、MEBT、SRFリニアック、HEBT、ビームダンプまで)、中央に試験セルと標的システム、右にリチウムシステム(主ループ、一次・二次・三次熱交換を経て冷却水へ至る熱除去ループ、不純物制御系)が描かれ、下部に中央計装制御系と建屋・サイト系が配置されている。
リチウムシステムは、安定な高速自由表面流をビーム前面に維持すること、ビームが堆積する5 MWの熱を除去すること、液体リチウム中の不純物を制御することを役割とし、標的システム、熱除去ループ、不純物制御システム、補助系からなる。熱はリチウム主ループから熱交換器を介して二次・三次ループへと伝えられ、最終的にプラントの放熱系へ捨てられる。不純物制御系では、水素(三重水素)を捕集するトラップや冷温トラップによりリチウム中の不純物濃度を管理する。リチウムは化学的に活性で発火性があるため、漏洩・火災の防止と緩和が設計上の重要課題であり、受動的要素(金属製受皿、回収・排出系)と能動的消火系を組み合わせた多層防御の火災防護方針が採られている。信頼性・可用性・保全性・検査性(RAMI)の観点からは、定期保全を挟む運転サイクルを想定した解析により、リチウムシステムの可用性94.5%が見込まれ、要求値94%を満たすと評価されている。標的・熱除去系の構造は定常および過渡の熱荷重に対して熱・構造解析で検証されており、ビームダンプの遮蔽やクエンチタンクなど、ビーム受け止め系の設計も個別に進められている。
試験セルと照射モジュール
試験セル(TC)は、ストリッピング反応が起きる重遮蔽された空洞であり、リチウム標的アセンブリと各種照射モジュールが収められる。標的直後の試験セル内に置かれる照射モジュール群が試験ペイロードを中性子・ガンマ場に晒す。照射領域は中性子束の大きさで分類され、高フラックス領域(10¹⁴–10¹⁵ n cm⁻² s⁻¹)、中フラックス領域(10¹³–10¹⁴)、低フラックス領域(10¹³未満)が標的後方に定義され、それぞれ異なる目的の照射に使われる。
最初の運転期に用いられるのが高フラックス試験モジュール(HFTM)で、低活性化フェライト・マルテンサイト鋼を中心とする約千個の小型試験片を収める。試験片は照射カプセル内の試料ビンに収められ、カプセルはヘリウムで冷却され、ヒーター線により試料温度を約250 ℃から550 ℃の範囲で制御する。試験片はミニチュア化された引張・疲労・クリープ試験片であり、一つのモジュールで多数の材料・温度条件の照射を並行して行える。調整運転の最終段階では、起動・監視用モジュール(STUMM)が標的直後に置かれ、中性子場の実測による特性確認を行う。その後、運転計画に応じて各照射領域に異なるモジュールが装着される。試験セルの下流や加速器周辺の部屋も実験利用のための機能付き実験室として整備される計画である。

fig.06 The IFMIF-DONES project: preliminary engineering design (2018) · CC BY 4.0
From left to right: high-flux test module, irradiation capsule with thin-walled sleeve, specimen bin with helix grooves for heater wires, cut of capsule assembly.
図はHFTM用照射カプセルの構成を示す。左から、配管と支持トラスを備えた容器アセンブリ、薄肉スリーブ付き照射カプセル、ヒーター線用の螺旋溝を持つ試料ビン、カプセル断面(試料スタック容積と膨張容積が注記されている)である。小型試験片を高密度に収めつつ温度制御と計測を両立させるカプセル設計の実像が分かる。
中性子学、放射線防護、遠隔保全、安全
DONESの中性子は材料試験の道具であると同時に、強力な放射線源である。この二面性が施設設計を貫く主題となっている。材料照射の側では、d-Li反応の正確なモデル化、試験システムの高精度なCADベースの幾何モデル、信頼できる核データに基づき、試料位置での損傷量(dpa)とガス生成量を計算して照射性能を評価する。遮蔽の側では、鋼・コンクリート・冷却水による試験セルの遮蔽に加え、ビーム通路、ブロック間の隙間、リチウム配管、他の実験ステーションへの中性子導管といった貫通部を通じた漏洩線量の評価が不可欠である。ビーム損失に伴う加速器各部の放射化、標的近傍構造物・冷却水・空気の放射化による崩壊ガンマ、リチウムループ中の⁷Be・三重水素・放射化腐食生成物のインベントリと崩壊熱、水素トラップへの線量評価など、運転中の即発線源と運転後の残存線源の両方が解析対象となる。照射済み試料の搬出、放射性廃棄物の解体・貯蔵・輸送に至るまで、廃棄物管理戦略が線源評価と一体で進められている。
施設の可用性は全体で70%以上、各システムで90%以上が要求され、これを達成する鍵の一つが遠隔保全である。標的アセンブリや照射モジュールなど、強い放射化を受ける機器は人の手では保守できず、遠隔操作システムによる点検・交換が設計の当初から組み込まれている。遠隔操作は試験システム、加速器システム、リチウムシステムのそれぞれに必要とされ、操作の視認のための視覚系と専用の制御系を伴う。標的アセンブリの接続系など、実際の保守動作の検証実験も進められている。
安全工学の面では、5 MW級加速器の運転、放射化生成物を含む15 m³の液体リチウムループの管理、照射キャンペーンと照射後試料の取り扱いという、従来の核燃料施設とは異なる固有のハザードに対し、核融合施設に即した段階的(graded)アプローチが採られている。危険物量の評価、ハザード分類、地震戦略を基礎として、参照事故シナリオを設定したリスク解析が行われ、閉じ込め障壁、安全インターロック、放射線モニタリングなどの安全系が設計に実装される。職業被曝はALARAの原則に基づき設計段階から最小化が図られる。施設の許認可に向けた安全評価とライセンス戦略は、建設・運転・廃止措置を通じた横断的課題として位置づけられている。
この解説が根拠にした論文から
- The IFMIF-DONES project: preliminary engineering designNuclear Fusion 2018
- The lithium systems of the IFMIF-DONES facilityNuclear Fusion 2025
- Remote maintenance in IFMIF-DONES: current status and future development programNuclear Fusion 2025
- Safety engineering approach and licensing strategy of IFMIF-DONESNuclear Fusion 2025
- Update on the status of the IFMIF-DONES test systemsNuclear Fusion 2025
- Overview and current status of the IFMIF-DONES accelerator systemsNuclear Fusion 2025
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推移
研究の変遷
2015–2026121本 · 0.48%
核融合中性子源IFMIF-DONESの設計と照射応用
この時期の論文は、IFMIF-DONESの予備的工学設計および設計進化を中心としており、リチウム標的、遮蔽、遠隔操作、中性子工学などと関連して論じられている。また、銅合金やタングステン材料の照射可能性を評価する研究も見られ、中性子源としての応用に焦点が当てられている。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題リチウム、遠隔操作、中性子源、リチウム標的、遮蔽、中性子工学
この時代の論文から
- The IFMIF-DONES project: preliminary engineering designNuclear Fusion 2018
- The European approach to the fusion-like neutron source: the IFMIF-DONES projectNuclear Fusion 2019
- The IFMIF-DONES fusion oriented neutron source: evolution of the designNuclear Fusion 2021
- Sensitivity of IFMIF-DONES irradiation characteristics to different design parametersNuclear Fusion 2015
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている(IFMIF-DONES、DONES、Demo Oriented Neutron Source など)。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文25本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、7本の論文(うち全文7本)と3枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
