LIPAcは、核融合・プラズマ物理学の装置。国際核融合材料照射施設(IFMIF)の原型加速器であり、ロッカショーで整備・試運転が進む重陽子線形加速器である。連続波で125mA・9MeVの重陽子ビームを生成し、核融合炉材料の照射試験に必要な中性子源の実証を担う。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは32本ある。比重が最も大きかったのは2015–2019年で、その期間の論文の0.12%を占めた。直近の2025–2029年では0.06%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは2010年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
Linear IFMIF Prototype Accelerator.
解説
LIPAc(Linear IFMIF Prototype Accelerator、線形IFMIF原型加速器)は、核融合炉の構造材料開発を目的とした中性子源IFMIF(国際核融合材料照射施設)の低エネルギー部門を1対1の縮尺で検証するための重陽子線形加速器であり、日本と欧州の「広範囲アプローチ(Broader Approach)」協定のもと、青森県六ヶ所村で建設・運転調整が進められている。最終目標は連続波(CW)運転で125 mA・9 MeVの重陽子ビームを安定して加速・輸送できることを実証することであり、これはビーム出力にして約1 MWを超える、核融合分野でも類を見ない高強度イオンビームの取り扱いを実地に確かめる試みである。

fig.1 Design and manufacturing of the combined quadrupole and corrector magnets for the LIPAc accelerator high energy beam transport line (2022) · CC BY 4.0
LIPAc (linear IFMIF prototype accelerator).
図はLIPAc全体の模型を上流から見下ろしたもので、左端のイオン源とLEBT(低エネルギービーム輸送部)から、RFQ(高周波四重極)加速器、MEBT(中エネルギービーム輸送部)、超伝導リニアック(SRF Linac)、HEBT(高エネルギービーム輸送部)を経て右端のビームダンプまで、全長約36 mの加速器列が一望できる。各部は欧州各国の研究機関と日本側が分担して供給しており、建屋・付帯設備・クライオプラントなども併せて示されている。
IFMIFにおける位置づけと使命
IFMIFは、2本の平行な重陽子加速器(各40 MeV、125 mA)からのビームを液体リチウムターゲットに衝突させ、核融合炉壁面と同等の14 MeV中性子場を発生させる施設として構想された。D-Li反応により生じる中性子スペクトルは核融合炉内のものをよく模擬し、将来の炉構造材料の照射損傷データを取得する基盤となる。この加速器駆動部は、空間電荷効果が強く高電流を連続波で運転するという、従来の加速器技術の常識を超える要求を課すため、設計の妥当性を実機規模で検証するプロトタイプが必要であった。LIPAcはそのために建設されたもので、IFMIF本体の低エネルギー部(イオン源から9 MeVまで)をそのままの規模・特性で再現し、高電流・連続波運転の成立性、ビーム損失の制御、機器の信頼性(RAMI性)を実証する役割を担う。
加速器の構成
LIPAcは上流から、イオン源とLEBT、RFQ、MEBT、超伝導リニアック、HEBT、ビームダンプからなる。イオン源はECR(電子サイクロトロン共鳴)方式で、100 keVの重陽子ビームを140 mA以上、低エミッタンス(0.25 π mm mrad以下)で抽出することを要求され、RFQの入口で125 mAのビームがマッチングされる。RFQは5 MeVまで加速を担う主要部門であり、高周波カップラの強化など連続波運転に向けた改良が重ねられてきた。RFQを出たビームはMEBTで整形・マッチングされ、超伝導リニアック(半波長共振器を用いる)で9 MeVまで加速される。HEBTは超伝導リニアック出口からビームダンプ入口までを結び、常電導電磁石群(一つの偏向電磁石と八つの四重極電磁石)で構成される。偏向電磁石はビームを水平に20度曲げることで、ビームダンプで発生する放射線が上流の超伝導リニアック等に直接当たらないようにしている。四重極電磁石は三つのグループに分かれ、第一の三重極は診断プレート前でのビーム条件の整調、二重極(ダブレット)は偏向電磁石入口でのビーム径の絞り込み、第二の三重極はビームダンプ入口でのパワー密度を下げるための意図的なビーム拡大を、それぞれ担う。空間電荷を補償する強い集束要求と建屋の制約から、電磁石は短く密に配置され、四重極コイルと修正コイルを同一鉄心に収める特別な設計が採られた。また大電流連続ビームによるビームダクトの発熱・放射化を避けるためビーム管は大口径となり、電磁石は磁気飽和に近い状態で動作する。
ビームダンプと高出力ビームの処理
LIPAcでは最終段のリチウムターゲットは設けられず、加速された全ビームはビームダンプで停止させる。したがってビームダンプは約1 MW級の熱負荷を受け止める装置であり、LIPAcで最も工学的に厳しい要素の一つである。ダンプは円錐状の銅製構造に水冷を施したもので、ビームを第二の三重極電磁石で拡大してパワー密度を下げた上で受け入れる。冷却水回路では流れ誘起振動による構造安定性の確保、沸騰開始の検知(加速度計による監視)、沸騰気泡の監視など、熱的・構造的な保護手段が開発された。また、重陽子がダンプ材料で停止する際に生じる中性子・ガンマ線により冷却水や構造材が放射化するため、冷却回路の腐食と放射化の評価、水冷系の放射化分析、遠隔切り離し機構の開発なども行われている。ダンプ周囲は厚い遮蔽体で覆われ、運転員の立入管理と機器の保守性を両立する設計が採られている。
ビーム運転調整と連続波運転への道
LIPAcの運転調整は段階的に進められている。2019年にはRFQにより125 mAの重陽子パルスビーム(パルス幅1 ms、1 Hz)の加速に成功し、イオン源は抽出電流160 mAを達成してRFQ透過率90 %超という低デューティ運転での要求を満たした。その後の段階(フェーズB+)では、超伝導リニアックの代わりにMEBT延長線(MEL)を設置した構成で、高デューティから連続波運転への移行を検証しており、約120 mAのピーク電流で5 MeV加速を達成している。イオン源側でも150 mA超の抽出電流を高デューティで安定して得るための調整が進められている。RFQの高周波カップラは連続波定格電圧での運転に向けて強化が図られ、低レベル高周波制御系はEPICSに基づく統合制御として構築された。これらの段階を経て、超伝導リニアックを据え付けた9 MeV・連続波運転(フェーズC/D)へ進む計画である。
放射線防護、放射化と許認可
高電流重陽子ビームの運転では、ビーム損失の制御が中心的な課題である。損失した重陽子はビームライン機器の発熱と放射化を招き、保守性や運転員の安全に直結するため、許容損失は極めて低く抑えられる。フェーズB+の運転では、MEBT・MEL・HEBT沿いに設置された21台の電離箱による損失監視に加え、ニッケル活性化箔やNaI(Tl)サーベイメータ、高純度ゲルマニウム検出器を用いて損失位置と反応率の定量評価が行われ、偏向電磁石下流での低エネルギー重陽子の分散による損失など、複数の局所損失点が特定された。また、ビーム形状診断のためにグラファイトスリットをビームに挿入した際に二次中性子が発生し、スリット位置で高い放射化が観測されるなど、診断機器自体が放射線源となりうることも明らかになった。六ヶ所サイトでは、注入器・RFQの運転調整段階ごとに中性子生成量と線量率の測定、遮蔽要件の評価、運転員防護システムの整備が行われ、放射線施設としての許認可条件を満たす体制が構築されている。これらの知見は、9 MeV・連続波運転に向けた遮蔽・防護設計の基礎となるとともに、IFMIF本体の設計検証にも資するものである。
この解説が根拠にした論文から
- Design and manufacturing of the combined quadrupole and corrector magnets for the LIPAc accelerator high energy beam transport lineNuclear Fusion 2022
- Achievement of high-current continuous-wave deuteron injector for linear IFMIF prototype accelerator (LIPAc)Nuclear Fusion 2024
- Quantitative evaluation of beam loss based on radiation detection in high-duty beam commissioning of LIPAc RFQNuclear Fusion 2026
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推移
研究の変遷
2005–20147本 · 0.05%
工学設計と制御システムの時代
この時期の論文は、LIPAcのビームダンプ冷却回路の腐食・放射化解析や遮蔽設計など、工学設計に焦点を当てている。また、EPICSに基づく低レベル高周波制御システムの開発が行われ、LIPAcの工学進捗が報告されている。
この時代の論文から
- EPICS based low-level radio frequency control system in LIPAcFusion Engineering and Design 2012
- Corrosion and activation analysis of the LIPAC beam dump cooling circuitFusion Engineering and Design 2013
- Engineering progress of the linear IFMIF prototype accelerator (LIPAc)Fusion Engineering and Design 2013
- Detailed mechanical design of the LIPAc beam dump radiological shieldingFusion Engineering and Design 2013
2015–202625本 · 0.10%
ビームコミッショニングと測定の時代
この時期は、LIPAcの高エネルギービーム輸送ラインの設計・製作や、重陽子ビームコミッショニングにおける中性子生成測定が中心となる。EVEDAやプラズマ診断、電子サイクロトロン共鳴、線量率といった関連概念とともに、放射線安全やビームライン機器の開発が進められた。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題遮蔽、EVEDA、プラズマ診断、電子サイクロトロン共鳴、線量率
この時代の論文から
- Design, manufacturing and tests of the LIPAc high energy beam transport lineNuclear Fusion 2021
- Neutron production measurement in the 125 mA 5 MeV deuteron beam commissioning of Linear IFMIF Prototype Accelerator (LIPAc) RFQNuclear Fusion 2021
- Design and manufacturing of the combined quadrupole and corrector magnets for the LIPAc accelerator high energy beam transport lineNuclear Fusion 2022
- Neutron production and dose rate in the IFMIF/EVEDA LIPAc injector beam commissioningFusion Engineering and Design 2016
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文5本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、3本の論文(うち全文3本)と1枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
