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核融合中性子源

Fusion neutron source

核融合中性子源(Fusion neutron source)は、核融合・プラズマ物理学の装置。核融合反応によって生じる中性子を利用するための装置であり、特に重水素-トリチウム反応で発生する14MeVの中性子を材料照射試験や核変換などの応用に供する。トカマク、慣性静電閉じ込め、ガス動的トラップなど多様な方式が研究されている。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは63本ある。比重が最も大きかったのは2020–2024年で、その期間の論文の0.25%を占めた。直近の2025–2029年では0.23%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1975年以降で、それ以前の収録論文には現れない。

目次

  1. 1解説
  2. 2推移
  3. 3研究の変遷
  4. 4関連項目
  5. 5この数字の作り方

解説

核融合中性子源(fusion neutron source)とは、核融合反応で生じる中性子を工学的に安定して発生させる装置であり、将来の核融合炉に必要な材料やブランケットの開発・試験、中性子工学の研究に用いられる中性子照射施設である。核融合炉そのものが発電を目的とするのに対し、中性子源は中性子そのものを「道具」として供給することを目的とする点が特徴である。

Conceptual image of the liquid Li target loop and heat removal systems with HX1–3.

fig.1 Radiological safety assessments for fusion neutron source in engineering design activities under IFMIF/EVEDA project (2026) · CC BY 4.0

Conceptual image of the liquid Li target loop and heat removal systems with HX1–3.

図は液体リチウム標的を用いた代表的な中性子源の概念を示したもので、重水素ビームが標的アセンブリに入射し、主リチウムループが熱交換器(HX1)を介して二次・三次オイルループへと熱を運び、最終的に冷却水で除熱される構成が描かれている。このように中性子源は「中性子を発生させる部分」と「その際に生じる大量の熱や放射化生成物を扱う部分」からなる一つの総合プラントであり、単一の装置というより一連の系として設計される。

なぜ14 MeV中性子なのか

核融合炉の燃料として最も現実的な重水素-三重水素(D-T)反応は、約14 MeVの中性子を放出する。この高エネルギー中性子は炉心近傍の第一壁やブランケット構造材料に原子を弾き出す(原子変位)ことで材料を劣化させるため、実炉に耐える材料は14 MeV中性子による照射データなしには評価できない。しかし、既存の核融合実験装置は照射量が足りず、核分裂炉の中性子はエネルギースペクトルが全く異なるため代用にならない。そこで、D-T反応と同等の中性子を高強度・長時間で供給できる専用施設が求められる。

代表的な計画が国際材料照射施設(IFMIF)系譜の中性子源であり、日本では先進的核融合中性子源(A-FNS)の概念設計が進められている。これは40 MeV・125 mAの連続重水素ビームを約250 ℃の高速液体リチウム噴流(厚さ25 mm、幅260 mm、流速15 m/s)に衝突させ、D-Li反応で発生する中性子を標的背後の試験モジュールに当てて材料照射データを取得するものである。液体リチウムを標的にするのは、ビームが持つ数百kW級の熱負荷を固体では受け止めきれないためで、流れる液体表面でビームを止め、熱をループで運び去る方式が採られている。

中性子源の諸方式

中性子源の実現方式は大きく分けて三つある。

第一が加速器駆動型で、上記のA-FNSやEUのIFMIF/DONESがこれに当たる。重水素をリチウムに衝突させるD-Li反応を利用するため、D-T反応そのものを起こす必要がなく、トリチウムを炉内で循環させないという運転上の利点がある。中性子スペクトルはD-Tと完全に一致しないが、材料試験に必要な照射条件を模擬できるよう設計される。

第二が鏡場型プラズマを用いる方式で、ガスダイナミックトラップ(GDT)型中性子源が代表例である。これは磁気ミラーで閉じ込めた高密度プラズマ中でD-T反応を起こすもので、炉としての増倍率は低くても中性子源としては十分な強度が出せる。材料試験に加え、ブランケット部分モジュールの熱疲労試験や、核融合-核分裂ハイブリッドによる核燃料生産への応用も検討されており、ロシアと中国の研究所が共同でプロジェクトを進めるなど国際的な検討が続いている。

第三が小型放電型の装置である。慣性静電閉じ込め(inertial electrostatic confinement)を利用したもので、真空容器内の中心陰極と接地陽極の間に放電を生じさせ、重水素ガス中でD-D反応により2.45 MeV、D-T混合ガスで14.1 MeVの中性子を発生させる。40 cm角程度の可搬型であり、中性子収量は加速器型より桁違いに小さいが、照射配置を自由に変えられる手軽さから、ブランケット模型を用いたトリチウム増殖率測定など、中性子学実験の教育・検証用途で活用が広がっている。D-T運転ではD-D反応より断面積が大きいため中性子収量が二桁増えることが知られており、検出器側には単結晶ダイヤモンド検出器など超高感度の計測が要求される。

施設工学:リチウム標的と除熱・遮蔽

加速器駆動型中性子源の技術的な核心は液体リチウム標的系にある。ビームの熱負荷を連続的に受け止めるため、リチウムは高温で高速の自由表面噴流として流され、その安定性が長期運転の前提となる。日本の検証ループで2012~2014年にかけて長時間安定な自由表面噴流が実証され、この方式の実現性が確かめられた。一方で、高速噴流の上流側ではキャビテーションの発生が観測されており、噴流表面の挙動と内部流れの相互作用、イオンビーム照射下での乱流熱伝達など、流体力学的な課題の解明が進められている。

除熱系は多段の熱交換器で構成される。リチウムループの熱はまずリチウム-オイル熱交換器で中間媒体のオイルに渡され、さらに二次・三次ループを経て最終的に冷却水で大気へ捨てられる。放射性物質を含むリチウムと直接触れる機器は遮蔽セル内に置かれ、遠隔保守を前提とした設計がなされる。

リチウム中の不純物制御も重要な設計課題である。酸素などの非金属不純物は構造材料の腐食や照射特性に影響するため、許容濃度の見直しが行われている。浄化系としては、ワイヤメッシュで不純物を析出させるコールドトラップ(200 ℃)、窒素を吸収するFe-Ti合金ペブル(600 ℃)、トリチウムをゲッターするイットリウム(300 ℃)が用意され、運転段階に応じて段階的に併用される。不純物濃度の監視にはプラッギングゲージなどが用いられ、1/10スケールのパイロットリチウムループで検証が続けられている。

放射線安全とトリチウム管理

中性子源施設では、運転に伴い必然的に放射性核種が生成する。液体リチウム標的ループが主な発生源であり、主要な核種はトリチウムと、D-Li反応で生成されるベリリウム7(Be-7)である。トリチウムは最も移動しやすい核種であり、リチウムループから熱交換器のオイル側への移行量の評価、オイル中トリチウム濃度の分析手法の確立、施設全体でのトリチウム移行の把握が設計活動の中心課題となっている。さらに、大気拡散計算により施設から放出されるトリチウムとBe-7に起因する公衆の線量評価が行われ、作業者と公衆双方に対する放射線防護策が設計に組み込まれている。

また、中性子照射によりリチウムループ内で生成・移行する放射化不純物の挙動も評価対象であり、これらの知見は中性子源施設の安全設計のみならず、将来の核融合炉の燃料循環・安全設計にも共通する基盤技術となっている。

この解説が根拠にした論文から

  • [1]Conceptual design progress of advanced fusion neutron sourceNuclear Fusion 2021
  • [2]A 14 MeV fusion neutron source for material and blanket development and fission fuel productionNuclear Fusion 2013
  • [3]Evaluation of tritium production rate in a blanket mock-up using a compact fusion neutron sourceNuclear Fusion 2021
  • [4]Summary of the 2nd International Workshop on Gas-Dynamic Trap based Fusion Neutron Source (GDT-FNS)Nuclear Fusion 2020
  • [5]Radiological safety assessments for fusion neutron source in engineering design activities under IFMIF/EVEDA projectNuclear Fusion 2026

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推移

0.00.10.3核融合中性子源197019801990200020102020%
図1 — 核融合中性子源が、5年ごとにその期間の全論文に占めた割合。コーパスは2010年代が1970年代の9倍あるため、件数のままでは何もかもが増加して見える

研究の変遷

1970–19841本 · 0.04%

慣性閉じ込め方式の初期提案

この時代は単発の論文であり、慣性閉じ込めイオンビーム方式による核融合中性子源が論じられている。中性子源および核融合中性子という概念と共に現れる。

同時に語られた主題中性子源、核融合中性子

この時代の論文から

  • [1]Inertial-confinement ion-beam wet-wood-burner fusion neutron sourceNuclear Fusion 1979

1985–19943本 · 0.05%

概念設計と計測法の登場

核融合中性子源の概念設計や、短パルス中性子源の時間分解分光法が現れる。逆転磁場ピンチ装置に基づく設計も論じられ、中性子源・核融合中性子と共に扱われる。

同時に語られた主題中性子源、核融合中性子、逆磁場ピンチ

この時代の論文から

  • [1]A method for time resolved neutron spectroscopy on short pulsed fusion neutron sourcesPlasma Physics and Controlled Fusion 1987
  • [2]A high-fluence fusion neutron sourceFusion Engineering and Design 1989
  • [3]Conceptual design of a reversed-field pinch fusion neutron sourceFusion Engineering and Design 1989

1995–20043本 · 0.03%

多様な方式の検討

慣性静電閉じ込め、トカマク型、加速器プラズマ標的型など、異なる方式の核融合中性子源が検討される。重水素-トリチウム反応や使用済み核燃料の核変換利用と関連づけられている。

同時に語られた主題中性子源、核融合中性子、重水素-トリチウム

この時代の論文から

  • [1]Measurements of strongly localized potential well profiles in an inertial electrostatic fusion neutron sourceNuclear Fusion 2001
  • [2]Capabilities of a DT tokamak fusion neutron source for driving a spent nuclear fuel transmutation reactorNuclear Fusion 2001
  • [3]Accelerator plasma-target-based fusion neutron sourceFusion Engineering and Design 1998

2005–20145本 · 0.03%

応用指向の設計研究

材料・ブランケット開発や核燃料サイクル閉鎖、核変換ミッションを指向した設計検討が中心となる。IFMIF/EVEDA加速器原型やスーパーXダイバータを備えたコンパクト核融合中性子源など、具体的な装置概念が現れる。

同時に語られた主題中性子源、核融合中性子、EVEDA

この時代の論文から

  • [1]The super X divertor (SXD) and a compact fusion neutron source (CFNS)Nuclear Fusion 2010
  • [2]Tokamak D–T fusion neutron source requirements for closing the nuclear fuel cycleNuclear Fusion 2007
  • [3]A 14 MeV fusion neutron source for material and blanket development and fission fuel productionNuclear Fusion 2013
  • [4]Transmutation missions for fusion neutron sourcesFusion Engineering and Design 2007

2015–202651本 · 0.20%

研究の急増と多様な応用展開

この時代には論文数が急増し、タイトル全体に占める割合も0.21%に上昇する。リチウム、中性子工学、中性粒子ビーム、定常状態、プラズマ計測、モックアップといった語と共に現れ、T-11Mトカマクのリチウムリミター実験、先進核融合中性子源の概念設計、NIFでの高利得偏光直接駆動、DEMOハイブリッド炉の統合モデリング、ブランケットモックアップでのトリチウム生成率評価など、多様な装置と応用が扱われる。

この記述以降に論文が追加されている

同時に語られた主題中性子源、核融合中性子、リチウム、中性子工学、中性ビーム、定常状態

この時代の論文から

  • [1]Experimental test of the system of vertical and longitudinal lithium limiters on T-11M tokamak as a prototype of plasma facing components of a steady-state fusion neutron sourceNuclear Fusion 2015
  • [2]Conceptual design progress of advanced fusion neutron sourceNuclear Fusion 2021
  • [3]High yield polar direct drive fusion neutron sources at the National Ignition FacilityNuclear Fusion 2021
  • [4]Integrated modelling of core and divertor plasmas for the DEMO Fusion Neutron Source hybrid facilityNuclear Fusion 2019

関連項目

  • ·IFMIFIFMIF
  • ·IFMIF-DONESIFMIF-DONES

この数字の作り方

数え方 —
同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
割合 —
その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
記述 —
その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
冒頭の定義 —
用語そのものの説明だけは、論文24本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
解説 —
では、5本の論文(うち全文2本)と1枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
範囲 —
収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない

核融合中性子源

種別
装置
論文数
63 本
初出
1975–1979 年(1本)
最盛期
2020–2024 年0.25%
直近
2025–2029 年0.23%

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