KSTAR(kstar tokamak)は、核融合・プラズマ物理学の装置。韓国が建設した完全超伝導トカマク装置で、定常運転と先進トカマク物理の実証を使命とする。主半径1.8m、プラズマ電流2MA級の設計で、ELM抑制や高ベータ運転などITER・K-DEMOへ向けた研究に使われている。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは407本ある。比重が最も大きかったのは2020–2024年で、その期間の論文の1.30%を占めた。直近の2025–2029年では0.90%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1995年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
KSTAR(Korea Superconducting Tokamak Advanced Research、韓国超電導トカマク先進研究装置)は、大韓民国の国家核融合計画の中核施設である超電導コイルを用いた中型トカマクである。主要半径1.8~2 m、副半径0.5 m、最大トロイダル磁場3.5 T、プラズマ電流2 MAという設計値を持ち、強く整形されたプラズマ断面形状と上下二重のダイバータを備える。その使命は、定常状態で運転可能な先進トカマクの物理と技術の基盤を確立し、ITERおよび韓国が構想するK-DEMOにつながる炉心プラズマの知見を得ることにある。2008年の初プラズマ以来、長パルス運転、高ベータ化、エッジ局在モード(ELM)制御、タングステン壁への移行など、定常燃焼プラズマに不可欠な課題を中型装置で検証する役割を担ってきた。

fig.4 Development of high-performance long-pulse discharge in KSTAR (2024) · CC BY 4.0
Analysis of nonlinear signal drift from magnetic probes located on the outboard side of the plasma in the high-temperature long-pulse plasma operation. Figure (a) describes a schematic cross-section of the KSTAR device, including the vessel, PFCs, and magnetic probes. In the KSTAR configuration, the PFC on the outboard side of the plasma in the midplane is open to the vessel. Figure (b) presents the signal drift S analysis obtained from magnetic probes, MPZ and MPR, on the plasma outboard side at the midplane. Figure (c) presents ΔRout obtained from EFIT analyses in long-pulse discharges.
図はKSTARの断面模式図と長パルス運転で生じた計測上の問題を示す。(a)は真空容器、プラズマ対向機器(PFC)、磁気プローブの配置を示す断面図であり、(b)(c)はアウトボード側中間面の磁気プローブ信号のドリフト量と、それを補正した場合としない場合の平衡再構成における外側半径のずれの時間発展を示す。このようにKSTARでは、数十秒を超える放電が装置側の計測・制御系にも長時間の安定性を要求することになる。
装置の設計:超電導磁石、真空容器、プラズマ整形
KSTARの設計思想の中心には「定常運転能力」と「先進トカマク物理」の二つの使命がある。定常運転のために、トロイダル磁場コイルとポロイダル磁場コイルの双方に超電導磁石が採用された。銅コイルでは磁場コイル自身のジュール加熱がパルス長を数秒から数十秒に制限するのに対し、超電導コイルは磁場を準定常的に維持できる。設計当初、ポロイダル磁場系が誘導的に供給できるパルス長は20 s程度とされ、非誘導電流駆動と組み合わせることで300 s級の運転を目標とした。このため容器内機器はすべて能動冷却され、極低温システムと脱イオン水冷却系が装置の一部として設計された。
先進トカマク物理の側では、柔軟なプラズマ整形、二重ヌルダイバータ、受動安定器、容器内制御コイルが設計に組み込まれた。プラズマ断面を上下に引き延ばし、三角形度を持たせる整形は、プラズマ圧力に対する安定性限界(正規化ベータ)を高め、高ベータ運転の窓を広げる。容器内制御コイルは、後述する共鳴磁気摂動(RMP)によるELM制御や、抵抗壁モードの能動制御に用いられる。この磁場制御の自由度の高さが、KSTARを3次元磁場物理の実験場として特徴づけている。
加熱、電流駆動と計測
プラズマの加熱と電流駆動は、中性ビーム入射(NBI)、イオンサイクロトロン波、下混成波、電子サイクロトロン波(ECH/ECCD)という複数の系で構成される。目的は単なる加熱ではなく、電流分布と圧力分布の柔軟なプロファイル制御にある。特に電子サイクロトロン電流駆動は局所的な電流プロファイル制御を可能にし、高ベータ長パルス放電では磁気流体(MHD)不安定の制御手段としても機能する。NBIは高速イオンを供給するため、燃焼プラズマ中のアルファ粒子に相当する高速イオンの閉じ込め研究の手段にもなる。
計測については、プラズマ制御・性能評価・物理理解を目的とした包括的な計測体系が当初から計画された。干渉計による密度計測、トムソン散乱、電子サイクロトロン放射計測、荷電交換分光、ビーム放射分光(BES)などの空間分解計測が整備され、特に乱流揺らぎを直接観測する先進的揺らぎ診断は、輸送と乱流の物理研究の強みとなっている。放電制御システムも開発段階から統合的に構築され、実時間平衡制御と実時間プロファイル制御を長パルスにわたって支えている。
長パルス先進トカマク運転
トカマクのパルス長は本質的にポロイダル磁場コイルのフラックス供給能力で制限されるため、長パルス化の鍵は非誘導電流割合を高めることにある。非誘導電流はブートストラップ電流(圧力勾配が自発的に駆動する電流)と外部駆動電流の和であり、いずれもプラズマの正規化ベータを高めることで増える。したがって長パルス高性能運転とは、高ベータ状態を電流分布の崩壊時間(KSTARのような中型装置では約10~100 s)とプラズマ・壁平衡時間(約10~100 s)にわたって維持する問題である。
KSTARは2015年頃から長パルス運転を本格化し、NBIと電子サイクロトロン加熱を主軸として約90 s級の高性能長パルス放電を実現してきた。正規化ベータ3程度の放電が低q最小値シナリオで12 s維持され、10 keV級のイオン温度が30 sにわたって達成されている。KSTARが採用した高ポロイダルベータ運転では、DIII-Dなどで見られる内部輸送障壁(ITB)形成によらず、電子サイクロトロン波の入射位置を制御してトロイダル・アルフベン固有モード(TAE)を抑制し、高速イオン閉じ込めを改善することで高ベータ状態を保つ点が特徴である。

fig.3 Overview of the KSTAR experiments toward fusion reactor (2024) · CC BY 4.0
A hybrid scenario with βN ⩾ 2.4 for > 20 s targeting quasi-steady state long-pulse operation.
図は20 sを超えるハイブリッドシナリオ長パルス放電の時間波形である。プラズマ電流、NBIと電子サイクロトロンの加熱パルス、正規化ベータ(2.4以上を20 s以上維持)、ループ電圧、線平均密度、Dα光、ダイバータ部材温度、超電導コイル電流が並べて表示されている。ループ電圧が放電後半でほぼ零に漸近し、非誘導状態に近づいていること、またダイバータ温度が数十秒かけて単調に上昇する様子が読み取れる。後者は長パルス運転で排熱管理が本質的な制約になることを示している。
長パルス化が明らかにした工学的課題も多い。ビーム駆動高速イオンの軌道損失によるPFCの急速な温度上昇、磁気プローブ信号の非線形ドリフト、100 s級の放電で不足するポロイダルフラックス、そして数10 sの時間スケールで進行する性能劣化(最大で約2割)である。性能劣化はエネルギー閉じ込め時間の約1000倍の時間スケールで現れる現象であり、短パルスでは見えない物理・工学の相互作用を長パルス放電が露呈させた例といえる。この種の課題への対処は、DIII-Dとの共同実験によるシナリオ移転を通じて進められ、超電導コイル環境とタングステンダイバータの下でのハイブリッドシナリオの成立性が示された。
エッジ・ダイバータ物理:ELM制御、RMP、タングステンダイバータ
Hモードプラズマのエッジには圧力の急峻なペデスタルが形成され、高閉じ込めをもたらす一方、ペデスタルが周期的に崩壊するELMがダイバータに大きな熱パルスを打ち込む。炉規模装置ではこの熱パルスが材料損傷の脅威となるため、ELM制御は定常運転の必須要件である。KSTARは容器内制御コイルを用いた共鳴磁気摂動(RMP)によるELM制御で国際的に先行する成果を上げてきた。制御コイル電流の位相を変えることでELMの応答が抑制にも緩和にも変わること、最も共鳴に近い位相配置ではタイプI ELMの完全抑制が達成されることが示された。ITER類似の三列コイル配置を用いた実験では、ELM抑制状態を維持したままダイバータ熱流束制御が行われ、抑制状態の定常化には機械学習を用いたコイル位相の最適化も導入されている。RMP以外の手法として、超音速分子ビーム入射、プラズマ柱の高速上下振動、ペデスタル部への電子サイクロトロン電流駆動なども検証され、それぞれELMのペースメーキングや緩和に有効なことが確認された。
熱排気のもう一つの柱がダイバータのデタッチメントである。スクレイプオフ層に不純物気体(窒素、ネオン、アルゴンなど)をシードして放射損失を増やし、プラズマのエネルギー・運動量を散逸させると、プラズマとターゲット板の相互作用が板から離れ、熱負荷が下がる。ただし不純物の過剰注入はペデスタルやコアへの侵入を招き、閉じ込めの劣化やディスラプションのリスクとなるため、リアルタイムのフィードバック制御が要る。KSTARではダイバータのラングミュアプローブによるイオン飽和電流を、付着状態で期待される値で規格化した「付着率」という制御変数を用い、不純物ガス注入のフィードバック制御によってデタッチメント状態の長時間維持を実現した。さらに、多数の二次元輸送シミュレーションから訓練した機械学習サロゲートモデルをリアルタイムに走らせ、ダイバータ熱流束を直接推定して制御に用いる試みも行われ、この種のモデルによる熱排気制御の初の実証となった。RMPによるELM抑制とアルゴンシードによるデタッチメントの両立も示され、ELM抑制状態でも放射デタッチメントが可能なことが確認された。
装置材料の面では、長年のカーボン壁運転の経験を経て、ダイバータがタングステンモノブロックに更新された。タングステンは融点が高くエロージョンに強くトリチウム保持が低い一方、原子番号が大きいためわずかなコア侵入でも放射損失が大きい。ターゲット板の電子温度をスパッタリング閾値(重水素イオンで約8 eV)以下に保つことがコア汚染防止の条件となる。このため、ホウ素化による壁コンディショニングが重要となるが、超電導装置では磁場中でグロー放電を維持できないため、放電中にホウ素粉末を投入して壁をその場で被覆する手法が開発された。ホウ素粉末注入は酸素のゲッターとして働き、放射損失と不純物侵入を低減する効果がLモード・Hモードの双方で確認され、運転を中断せずに壁条件を回復できる手法として長パルス超電導装置に適合するものと位置づけられている。プラズマ対向部の全面タングステン化は段階的に進められており、K-DEMOを念頭に置いた高ベータ定常運転シナリオの開発が現在の中心課題となっている。
この解説が根拠にした論文から
- The KSTAR project: An advanced steady state superconducting tokamak experimentNuclear Fusion 2000
- Design and construction of the KSTAR tokamakNuclear Fusion 2001
- An overview of KSTAR resultsNuclear Fusion 2013
- Argon–seeded detachment during ELM control by RMPs in KSTARNuclear Fusion 2023
- Development of high-performance long-pulse discharge in KSTARNuclear Fusion 2024
- Enhancement of detachment control with simplified real-time modelling on the KSTAR tokamakPlasma Physics and Controlled Fusion 2022
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推移
研究の変遷
1995–200418本 · 0.18%
KSTAR計画の設計と建設
この時代の論文はKSTARトカマクの設計と建設に焦点を当てており、真空容器、磁石システム、イオンサイクロトロン加熱などの要素技術が議論されている。超伝導トカマクとしての定常運転やプラズマ平衡、MHD安定性に関する数値的研究も含まれる。
同時に語られた主題真空容器、磁石システム、イオンサイクロトロン加熱、熱シールド、定常状態、軟X線
この時代の論文から
- The KSTAR project: An advanced steady state superconducting tokamak experimentNuclear Fusion 2000
- Design and construction of the KSTAR tokamakNuclear Fusion 2001
- Development of a KSTAR ICRF antenna for long pulse operationNuclear Fusion 2003
- A predictive study of non-inductive current driven KSTAR tokamak discharge modes using a new transport/heating simulation packageNuclear Fusion 2000
2005–2014107本 · 0.69%
初期運転と周辺プラズマ研究
KSTARの初期運転結果が報告され、ECHを用いた予備電離やスタートアップ、ELM緩和、高速粒子分布などの研究が進められた。ITERやDIII-D、EASTとの比較研究も行われ、プラズマ診断や中性粒子ビーム加熱が重要なテーマとなっている。
同時に語られた主題イオンサイクロトロン加熱、周辺局在モード、容器内機器、テアリングモード、プラズマ診断、中性粒子入射
この時代の論文から
- Overview of KSTAR initial operationNuclear Fusion 2011
- ECH pre-ionization and assisted startup in the fully superconducting KSTAR tokamak using second harmonicNuclear Fusion 2009
- ELM mitigation by supersonic molecular beam injection: KSTAR and HL-2A experiments and theoryNuclear Fusion 2014
- An overview of KSTAR resultsNuclear Fusion 2013
2015–2026282本 · 1.13%
ELM制御と先進運転シナリオ
KSTARはELM緩和のための共鳴磁場摂動やペレット入射の研究を中心に、周辺プラズマの詳細な計測と制御が行われた。タングステンやプラズマ disruptionの研究も増え、ITERやK-DEMOへの展開を視野に入れた成果が報告されている。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題周辺局在モード、共鳴磁場摂動、ペレット入射、電子サイクロトロン加熱、タングステン、Lモード
この時代の論文から
- Extremely low intrinsic non-axisymmetric field in KSTAR and its implicationsNuclear Fusion 2015
- Overview of KSTAR research progress and future plans toward ITER and K-DEMONuclear Fusion 2019
- Helicon wave coupling in KSTAR plasmas for off-axis current drive in high electron pressure plasmasNuclear Fusion 2017
- Control of core argon impurity profile by ECH in KSTAR L-mode plasmasNuclear Fusion 2015
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている(KSTAR、kstar tokamak など)。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文120本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、10本の論文(うち全文7本)と2枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
