ペレット入射(Pellet injection)は、核融合・プラズマ物理学の手法。固体の水素や重水素、不純物の小球をプラズマ中へ高速で入射し、その昇華・電離により粒子源や摂動を与える手法である。燃料供給、密度分布制御、ELMの誘発・緩和、ディスラプション緩和などに用いられ、入射後のアブレーション雲やMHDダイナミクスが重要な研究対象となる。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは197本ある。比重が最も大きかったのは2020–2024年で、その期間の論文の0.63%を占めた。直近の2025–2029年では0.52%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1975年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
ペレット入射(pellet injection)とは、水素同位体や不純物ガスを凍らせた固体の粒(ペレット)を高速でプラズマ中に打ち込み、粒子を供給する(燃料供給、fuelling)あるいはプラズマの状態を意図的に変化させる手法である。磁場閉じ込め核融合プラズマでは、ガスを吹き込むだけでは粒子はプラズマ縁でしか電離せず、中心部への燃料供給は輸送に頼るしかない。一方ペレットは固体としてプラズマ内部まで飛翔し、そこで昇華・電離するため、密度分布を直接かつ急速に制御できる。この特徴を生かして、現在では通常の燃料供給に加え、縁局在モード(ELM)のペーシングや、入射時にペレットを意図的に破砕してプラズマを急速冷却するディスラプション緩和(破砕ペレット入射、shattered pellet injection、SPI)へと用途が広がっている。
原理とハードウェア
ペレットは、低温の銃身(パイプガン)内で低圧のガスを冷凍機の冷頭で凝縮・昇華凝固させて円柱状の氷を作り、高圧のヘリウムガスなどで一気に押し出して加速する。打ち出し方式には、遠心機で連続的に加速する方式とガスガン方式があり、燃料供給用には数十ヘルツの繰り返し入射が可能な系が超伝導トカマク装置に整備されている。ペレットの直径は装置の規模に応じて数ミリメートルから十数ミリメートル、速度は数百メートル毎秒から千米毎秒のオーダーである。破砕ペレット入射では、銃口の先に障害物(シャッターチューブ)を置き、飛翔中のペレットを意図的に小片に砕いてから入射する。破砕片のサイズはペレット速度に強く逆相関して小さくなることが確認されており、この破砕粒の分布がプラズマへの取り込み効率を左右する。
EASTに導入された破砕ペレット入射システムの全体像を図に示す。ペレット注入器、推進ガス系、シャッターチューブからなる注入ラインが装置のポートを通じて配置され、冷頭の内部には熱を逃がすためのヒートシンクとヒートワイヤが組み込まれている。

fig.1 First results of Ne shattered pellet injection for mitigating plasma disruption with full metal wall in EAST tokamak (2023) · CC BY 4.0
Images of the shattered pellet injection system (a) and the shatter tube (b) in EAST; (c) the structure of the cold head in the pellet injector and the location of the heat sinks and heat wire.
図は(a)破砕ペレット入射システム全体、(b)シャッターチューブ(-2°の屈曲を持つ)、(c)注入器冷頭の構造とヒートシンク・ヒートワイヤの位置を示す。このようにペレットの生成・加速・破砕を一連の機械系で行うことが、この手法のハードウェア上の基本構成である。
燃料供給と密度制御
ペレット入射の第一の目的は深い中心燃料供給である。ペレットがプラズマ中を進みながら周囲の高温電子によって表面から昇華・電離していく過程で、密度の高い冷たい塊(プラズモイド)が磁力線に沿って形成される。トカマクやヘリオトロンのようなトロイダル閉じ込めでは、磁場の曲率に起因する ∇B ドリフトによってプラズモイド内に電荷分離と垂直電場が生じ、その結果 E×B ドリフトが弱磁場側へ向かう。このドリフトは粒子を外へ逃がす方向に働くため、磁場の強い側(高磁場側)から入射すれば粒子は中心部へ沈み込み、燃料供給効率が大きく向上する。この高磁場側入射の有利さはトカマクで広く利用されてきた。
一方、非軸対称な磁場配置を持つヘリオトロン型装置ウェンデルシュタイン7-Xでは、背景プラズマの径向電場 E_r による E_r×B 回転が最終的な堆積位置を左右するため、状況が異なる。同装置での約1000発のペレット入射データの統計解析では、弱磁場側入射の供給効率が予測(約50%)を上回る約70%となり、高磁場側入射は予測(最大98%)を下回る約88%にとどまる、という結果が得られた。つまり高磁場側と弱磁場側の効率差は予測よりはるかに小さい。これはトカマクより ∇B が小さい磁場構造が昇華・堆積過程を変えているためと考えられており、ペレット供給理論と将来の注入器設計への示唆となっている。
密度制御の面では、ペレット入射を繰り返すことでグリーンウォルド密度限界を超える中心密度での運転が、エネルギー閉じ込めを損なわずに可逆的に達成できることが全金属壁トカマクで示されている。また電流分布の制御(電流プロファイル修正)や、運転領域の拡大への寄与も、トカマクおよびヘリオトロン型装置の実験で確認されている。
ELMペーシングとプラズマ性能
高閉じ込め(Hモード)運転では、縁の圧力勾配が臨界に達するごとにELMと呼ばれる爆発的な縁不安定が起こり、プラズマ面材料に大きな熱負荷を与える。小さなペレットを周期的に入射して縁の密度・圧力を擾乱すると、ELMを意図的に小さく早く誘発できる(ELMペーシング)。これにより1回のELMあたりのエネルギー損失を許容レベルまで下げられる可能性が、ITERの運転シナリオを対象とした輸送シミュレーションでも示されている。ペレット燃料供給と組み合わせれば、分離面を横切る出力をL-H遷移しきい値以上に保ちながら、密度をグリーンウォルド密度以下に抑え、Q ≈ 20 程度の増倍率を持つシナリオが描ける。
ただしELM誘発は壁材に敏感である。全タングステン壁のトカマクでは、炭素壁時代には有効だった磁気的ELM誘発が効かなくなることがあり、ペレットによるELM誘発にも遅延時間(ラグタイム)が現れることが確認された。ラグタイムの長さはHモードのシナリオによって異なるが、ペレット擾乱の大きさには依存しない。また補助加熱出力を下げるとELM誘発の効率は落ちる代わりに燃料供給としては有利になる、というトレードオフがある。ペレット入射はまた、アルフベン波スペクトルの変化に見られるようにプラズマ中の波動・不安定構造にも影響を与え、性能改善の手段として多面的に研究されている。
ディスラプション緩和としての破砕ペレット入射
トカマクのディスラプション(急激な閉じ込め喪失)は、プラズマ面への巨大な熱負荷、真空容器への電磁力、そして相対論的電子(逃走電子)の生成という三重の脅威をもたらす。破砕ペレット入射(SPI)は、凍結ペレットを飛翔中に破砕して小片の群れとして入射することで、大量の粒子をプラズマの広い領域に短時間で取り込む手法である。取り込まれた不純物(ネオン、アルゴンなど)は希釈と放射冷却によってプラズマを急速に冷却し、熱クエンチを制御された形で進行させる。従来の大量ガス入射(MGI)と比べ、SPIは密度擾乱が強く、粒子の侵入が深く、伝導されるエネルギーが小さいという利点が実験で示され、ITERのディスラプション緩和システムの基本技術に選定された。
SPIの物理は単純ではない。純粋な重水素SPIでは、熱クエンチ開始までの時間(pre-TQ時間)が数十ミリ秒に及ぶ一方、わずか1%程度のネオンを混ぜるだけでpre-TQ時間が一桁短くなる。この性質を利用して、まず純重水素SPIでプラズマを冷却・高密度化して逃走電子の生成を抑え、続いてネオン混合SPIで熱エネルギーを放射させる、という時間差入射(staggered scheme)がITERの基本戦略として検討されている。ただし不純物の投入量には上限がある。多すぎると電流クエンチ時の電磁力が増大し、逃走電子の局所的な損傷リスクが生じるためである。また高性能プラズマではあらかじめ不純物シードが行われるため、シードされたプラズマへのSPIの挙動も研究課題となっている。J-TEXTではアルゴンペレットの速度調整によって熱クエンチと電流クエンチの規模を制御し不純物取り込み率を高められることが示されるなど、入射パラメータ・位置・方向の最適化が各装置で進められている。
破砕されたペレット断片がプラズマに入り冷却が進む様子を、高速撮影でとらえた例を図に示す。

fig.7 First results of Ne shattered pellet injection for mitigating plasma disruption with full metal wall in EAST tokamak (2023) · CC BY 4.0
The penetration process of pellet fragments in plasma during cooling time phase.
図は冷却時間帯における断片の侵入過程の連続撮影で、数ミリ秒の間に断片の雲がプラズマ縁から内部へ進み、輝度分布の変化として冷却の進行が見える。このような断片群の侵入と取り込み(assimilation)の過程が、熱クエンチの制御性を決める。
昇華・プラズモイドドリフトとモデリング
ペレット入射の予測精度を支えるのが、昇華から堆積までの物理モデルである。入射後まず約1ミリ秒のオーダーで氷が昇華して中性の高密度雲ができ、電離されて冷たいプラズモイドとなる。プラズモイドは磁力線に沿って膨張しつつ、前述の ∇B ドリフトによる分極で弱磁場側へ E×B ドリフトする。このドリフトは燃料供給では堆積位置を、SPIでは中心密度の上昇量を左右する。実際、JETの重水素SPIに対する三次元非線形MHDコードJOREKによる解析では、プラズモイドの弱磁場側へのドリフトが逃走電子回避に必要な中心密度上昇を大幅に制限しうることが示された。これに対し、微量ネオンを混ぜて局所放射を強め、プラズモイドと背景プラズマの圧力不平衡を減らしてドリフトを抑制する方案が提案され、JETの最終実験キャンペーンで検証された。
ドリフトはさらに固体ペレット自体の軌道にも影響する。弱磁場側ではプラズモイドのシールドが強くなって表面への熱流が減り、昇華が弱まるため、ペレットは弱磁場側へ押される「ロケット効果」を受ける。破砕片の軌道がそれによって曲がることは、SPIの取り込み分布の予測に組み込むべき効果である。
数値モデリングの側面では、中性ガス・プラズマシールド(NGPS)モデルが昇華雲の遮蔽と横方向移動を記述し、JOREKなどの三次元MHDコードがプラズモイドドリフトやMHD応答を扱う。ただし計算資源の制約からプラズモイドのトロイダル寸法を実物より大きく取らざるを得ず、過大なプラズモイドは圧力不平衡の減少と三次元電流によるドリフト制動の高速化のためにドリフトを過小評価する傾向がある。このため、昇華物を主半径方向に外側へ移す「テレポーテーション」モデルでドリフトの効果を補う手法も用いられている。破砕片の破壊過程自体もペリダイナミクスなどの手法でモデル化が進んでおり、ペレット材料の物性・生成・放出の理解とともに、ITER規模の大型ペレット(直径28.5ミリメートル程度)への技術展開が進められている。
この解説が根拠にした論文から
- Shattered pellet injection technology design and characterization for disruption mitigation experimentsNuclear Fusion 2019
- ELM pacing and high-density operation using pellet injection in the ASDEX Upgrade all-metal-wall tokamakNuclear Fusion 2014
- Pellet injection as a possible tool for plasma performance improvementNuclear Fusion 2003
- Recent progress in shattered pellet injection technology in support of the ITER disruption mitigation systemNuclear Fusion 2021
- First results of Ne shattered pellet injection for mitigating plasma disruption with full metal wall in EAST tokamakNuclear Fusion 2023
- Impact of impurity seeding on shattered pellet injection mitigations on the Joint European TorusNuclear Fusion 2025
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推移
研究の変遷
1970–19846本 · 0.24%
初期トカマクへの水素ペレット入射
ISX-B、Ormak、PDXなどのトカマク装置で水素ペレット入射実験が行われ、燃料供給と炉心プラズマパラメータへの影響が調べられた。T-10では表面分析ステーションによるペレット入射の同定がなされ、炉設計における入射速度の検討も開始された。
この時代の論文から
- Results of hydrogen pellet injection into ISX-BNuclear Fusion 1980
- Solid hydrogen pellet injection into the Ormak tokamakNuclear Fusion 1977
- Pellet injection into PDX diverted plasmasNuclear Fusion 1982
- Effect of fuel pellet injection velocity on the energy parameters of a tokamak reactorNuclear Fusion 1979
1985–199426本 · 0.48%
閉じ込め改善と輸送モデリングの進展
ASDEXやTFRでペレット入射により閉じ込めが改善され、Heliotron EのNBI無電流プラズマでも実験が行われた。Onsager対称な輸送関係を用いたモデリングや炉心密度分布制御の検討が進み、不純物や電流駆動など他のテーマと併せて議論された。
同時に語られた主題不純物、中性粒子入射、電流駆動、トリチウム、プラズマ診断、オーミック加熱
この時代の論文から
- Pellet injection with improved confinement in ASDEXNuclear Fusion 1988
- Pellet injection experiments on the TFR tokamakNuclear Fusion 1987
- Pellet injection experiment on NBI current-free plasmas in Heliotron ENuclear Fusion 1985
- Density profile control in a fusion reactor using pellet injectionNuclear Fusion 1994
1995–200431本 · 0.31%
ELM制御とアブレーション物理の展開
LHDやASDEX Upgradeでペレット入射によるELM周波数制御と運転領域拡大が実証された。Tore Supraで観測されたスネーク現象をはじめ、アブレーション機構や粒子輸送の研究がMHDやプラズマ診断と関連して進められた。
同時に語られた主題電磁流体力学、周辺局在モード、アブレーション、逃走電子、プラズマ電位、プラズマディスラプション
この時代の論文から
- ELM pace making and mitigation by pellet injection in ASDEX UpgradeNuclear Fusion 2004
- ELM frequency control by continuous small pellet injection in ASDEX UpgradeNuclear Fusion 2003
- Impact of pellet injection on extension of the operational region in LHDNuclear Fusion 2001
- Pellet injection as a possible tool for plasma performance improvementNuclear Fusion 2003
2005–201420本 · 0.13%
ITERを見据えたELM緩和と破砕ペレットの登場
DIII-Dで大型の破砕重水素ペレット入射による急速シャットダウンが実証され、入射位置の比較やITERへの適用を視野に入れた非線形MHDモデリングが行われた。ASDEX Upgradeでは全金属壁環境でELMペーシングと高密度運転が実現された。
同時に語られた主題周辺局在モード、燃料供給、重水素、壁コンディショニング、定常状態、逃走電子
この時代の論文から
- Demonstration of rapid shutdown using large shattered deuterium pellet injection in DIII-DNuclear Fusion 2010
- Comparison of deuterium pellet injection from different locations on the DIII-D tokamakNuclear Fusion 2007
- Non-linear MHD modelling of ELM triggering by pellet injection in DIII-D and implications for ITERNuclear Fusion 2014
- High-density H-mode operation by pellet injection and ELM mitigation with the new active in-vessel saddle coils in ASDEX UpgradeNuclear Fusion 2012
2015–2026114本 · 0.46%
破砕ペレット入射によるディスラプション緩和の主流化
ネオン破砕ペレット入射による熱クエンチ緩和の実証がDIII-Dで行われ、ITER、EAST、KSTAR、JETで技術設計やMHD応答シミュレーションが精力的に進められた。W7-Xでは高性能プラズマ生成への寄与が報告され、逃走電子の消散や密度増加の機構解明が進んだ。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題破砕ペレット入射、プラズマディスラプション、電磁流体力学、ディスラプション緩和、不純物、周辺局在モード
この時代の論文から
- First demonstration of rapid shutdown using neon shattered pellet injection for thermal quench mitigation on DIII-DNuclear Fusion 2016
- High-performance plasmas after pellet injections in Wendelstein 7-XNuclear Fusion 2020
- Shattered pellet injection technology design and characterization for disruption mitigation experimentsNuclear Fusion 2019
- Dissipation of post-disruption runaway electron plateaus by shattered pellet injection in DIII-DNuclear Fusion 2018
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文120本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、8本の論文(うち全文4本)と2枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
