FusionPapers
図版検索トレンドwiki日本の研究
© 2026 FUSIONPAPERS
About法務情報
Wiki/現象

磁場リップル

Field ripple

磁場リップル(Field ripple)は、核融合・プラズマ物理学の現象。有限個のトロイダル磁場コイルが作る磁場の周方向の周期的な凹凸のこと。このリップルに捕捉された粒子がバナナ軌道やリップルwell内でドリフトし、異常輸送や損失を引き起こす。閉じ込め性能・トロイダル回転・Hモードペデスタル構造に影響し、核融合装置設計で考慮すべき重要な現象である。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは52本ある。比重が最も大きかったのは1970–1974年で、その期間の論文の0.36%を占めた。直近の2025–2029年では0.02%。

目次

  1. 1解説
  2. 2推移
  3. 3研究の変遷
  4. 4よく登場する装置
  5. 5この数字の作り方

解説

トカマクの磁場リップル(磁場リップル、field ripple)とは、トロイダル磁場コイルが有限本数で配置されていることに起因して生じる、トロイダル方向の周期的な磁場強度の変調のことである。理想的なトカマクはトロイダル方向に厳密な軸対称性をもつが、コイルが離散的に置かれているため、コイル面の真下では磁場が強く、コイルとコイルの間では弱くなる。この変調の振幅はリップル振幅と呼ばれ、プラズマ縁で典型的には数パーセント程度であり、例えば実験では境界部で0.5%から5.5%の範囲で意図的に変えて調べられた例がある。軸対称性の破れは、個々の粒子の磁力線に沿った運動にはほとんど影響しないが、バナナ軌道をもつ捕獲粒子や高エネルギー粒子の長時間挙動に系統的なドリフトと拡散を生み、輸送、回転、そして炉設計にまで及ぶ影響をもつ。

トロイダル磁場リップルの起源

トカマクのトロイダル磁場は、環を取り囲む一連のコイルによって作られる。コイル本数が有限である限り、磁場はトロイダル角方向に厳密には一定にならず、コイル本数を N とすれば角方向に N 周期の変調が重畳する。この変調の相対振幅はコイル半径の位置で最も大きく、プラズマ中心では小さく、プラズマ縁、とりわけ最外殻磁気面の近くで最大になる。これは縁ほどコイルに近いためである。

リップルの大きさは装置設計の基本的なパラメータの一つであり、コイル本数を増やせば減るが、装置は大型かつ高価になる。また、コイルの設置誤差やずれも局所的な非軸対称性を追加する。さらに、プラズマの有限ベータ効果によって平衡自体が三次元的に変形し、リップル構造が真空場の予測からずれることもある。このようにリップルは「設計で決まる静的な量」でありながら、運転条件や材料構成によっても変化しうる量である。

リップルによる熱粒子の輸送

リップルが輸送に効く経路は主に二つある。第一は、バナナ軌道をもつ捕獲粒子がリップルの磁場強度変調と共鳴して受けるドリフトである。軸対称トカマクでは捕獲粒子は閉じたバナナ軌道を描くが、リップルがあると軌道の足元で磁場強度の周期的な変調を受け、トロイダル方向の非対称なドリフトが蓄積する。これによって粒子拡散係数とイオン熱伝導係数に追加項が生じ、その大きさは既存のトカマクでは新古典拡散と同程度に達しうる。第二は、リップルの谷、すなわちコイルとコイルの間の磁場が弱い領域に新たに捕獲される粒子によるものである。リップル捕獲粒子は局所的な磁場井戸の中でドリフトし、コイル面に沿った特徴的な損失経路をもつ。

これらの輸送機構は、衝突の有無によってさらに様相が変わる。衝突が支配的な領域ではフォッカー・プランク方程式を解いて捕獲粒子分布を求める新古典的な取り扱いが有効であり、リップル分布の非対称性を正しく入れることで粒子流束とイオン熱流束が定量化される。一方、衝突がほとんどない高エネルギー領域では、粒子の運動とリップル摂動との共鳴が重なり合うことで軌道が確率論的(ストカスティック)化する。共鳴の重なりが生じる臨界リップル値はチャリコフ基準で与えられ、リップルが弱い領域と強い領域で異なる拡散則が導かれる。この確率論的拡散は、後述のアルファ粒子閉じ込めにとって特に重要である。

高エネルギー粒子・アルファ粒子の損失

リップルの影響が最も深刻なのは、中性ビーム入射やマイクロ波加熱で生成される高エネルギーイオン、そして燃焼プラズマで生まれる3.5 MeVのアルファ粒子である。これらは衝突が少なく、軌道が大きいため、リップル捕獲損失とバナナドリフト損失という二つの経路で直接プラズマ外へ逃げうる。実験的には、短パルスの中性ビーム入射後の中性子放出の減衰から高速イオン損失が推定され、平行通過粒子の入射では損失がほぼ零であるのに対し、捕獲粒子の入射ではリップル捕獲による対流的損失とリップルバナナ拡散の両方が観測されることが示された。軌道追跡モンテカルロ計算はこの損失を定量的に再現し、リップル損失予測の標準手法となっている。

炉規模の装置では、アルファ粒子の閉じ込めが炉の自己加熱の成否を直接左右するため、リップル損失の評価は設計上の中心的課題である。アルファ粒子の損失は臨界エネルギー以下の粒子でも生じうること、またリップルによる確率論的領域の形成が損失の空間構造を決めることが調べられてきた。なお、新古典的テアリングモードのような軸対称的でない磁気擾動とリップルの重畳については、両者の相乗効果は小さく、リップルの影響を受けるのは主として捕獲粒子であるため、モードによる損失増加はほとんど生じず、通過粒子の分布平坦化が主な効果であるとする数値的評価がある。損失した高エネルギー粒子は第一壁・ダイバータに局所的な熱負荷を与えるため、損失量だけでなく損失位置の予測も炉設計上重要である。

回転・ペデスタル・閉じ込めへの影響

リップルによる粒子損失は、損失した粒子が運ぶ角運動量を通じてプラズマ回転そのものに作用する。リップル誘起の熱粒子損失はトロイダル方向の摩擦として働き、外部から運動量を入力しないオーミックプラズマでは、リップル振幅が大きい場合にトロイダル流速が反電流方向の新古典予測値へと漸近することが観測されている。リップル振幅が小さい場合は乱流輸送が回転を支配し、リップルが大きい場合はリップル誘起摩擦が支配的になるという転換が見られる。一方、半径方向電場はリップル振幅を変えてもほとんど変化せず、新古典予測でよく記述される。高速イオンの損失が回転に及ぼす影響も数値的に調べられている。

閉じ込め性能の面では、リップルはHモードの性能や内部輸送障壁の形成に影響しうることが大型装置の実験で示されている。リップル振幅を変えた同一条件放電の比較により、ペデスタル特性や輸送障壁形成への感度が評価されてきた。また、リップルは電子サイクロトロン加熱・電流駆動の共鳴層近傍での平行電子輸送を変化させるなど、加熱・電流駆動の効率にも接点をもつ。これらの効果はいずれも、リップルが軸対称性の破れとして輸送の非対称性と運動量収支に系統的な偏りを持ち込むことの現れである。

緩和策:コイル設計とフェライト挿入

リップルの低減は炉設計の要請であり、主に二つの方向から行われる。第一はコイル設計によるもので、コイル本数を増やす、コイル位置や形状を最適化する、あるいは補正コイルを用いることで真空磁場の変調を小さくする。ただしコイル本数増加は装置コストに直結するため、どこまで低減すべきかは高速イオン損失の許容量との兼ね合いで決められる。第二の方向は磁性材料の利用である。強磁性体(フェライト鋼)を真空容器内側に配置すると、その透磁率がコイル間の弱磁場領域を補い、リップル振幅を実効的に下げられる。強磁性挿入によるリップル低減は中型装置で実証され、高速イオン閉じ込めの改善が熱負荷測定から確認された。フェライト鋼は核融合炉の構造材料候補でもあるため、この手法は原型炉・発電炉への応用が期待されている。

強磁性体の挿入には代償もある。磁性体が作る非線形磁場はプラズマ制御用の磁気センサや平衡計算に影響するため、制御系の較正と計算の修正が必要になる。また、リップルを完全に零にする必要はなく、損失の許容値に応じた最適な低減量を軌道追跡計算で見出す設計手法が実用化されている。リップルは離散コイル構造に本質的に伴う現象であり、その評価と緩和はトカマク型炉の設計において今後も中心的な課題であり続ける。

この解説が根拠にした論文から

  • [1]Effect of the magnetic field ripple on diffusion in TokamaksNuclear Fusion 1972
  • [2]Neoclassical diffusion arising from magnetic-field ripples in TokamaksNuclear Fusion 1973
  • [3]Fast ion losses due to toroidal field ripple in JT-60UNuclear Fusion 1994
  • [4]Ferritic insertion for reduction of toroidal magnetic field ripple on JT-60UNuclear Fusion 2007
  • [5]Effect of toroidal field ripple on particle and energy transport in a tokamakNuclear Fusion 1976
  • [6]On plasma rotation with toroidal magnetic field ripple and no external momentum inputNuclear Fusion 2011

この解説は役に立ちましたか?

推移

0.00.20.4磁場リップル197019801990200020102020%
図1 — 磁場リップルが、5年ごとにその期間の全論文に占めた割合。コーパスは2010年代が1970年代の9倍あるため、件数のままでは何もかもが増加して見える

研究の変遷

1970–19847本 · 0.28%

トカマク輸送におけるリップル拡散の理論的基礎

磁場リップルによる新古典拡散や粒子・エネルギー輸送への影響がトカマク配位で理論的に検討され、中性粒子入射との関連も現れた。装置名はまだ登場せず、基礎的な解析が中心である。例えば「Effect of the magnetic field ripple on diffusion in Tokamaks」(1972) や「Enhanced penetration of neutral-beam-injected ions by vertically asymmetric toroidal-field ripple」(1976) が代表的な論文である。

同時に語られた主題高エネルギーイオン

この時代の論文から

  • [1]Effect of the magnetic field ripple on diffusion in TokamaksNuclear Fusion 1972
  • [2]Neoclassical diffusion arising from magnetic-field ripples in TokamaksNuclear Fusion 1973
  • [3]Effect of toroidal field ripple on particle and energy transport in a tokamakNuclear Fusion 1976
  • [4]Enhanced penetration of neutral-beam-injected ions by vertically asymmetric toroidal-field rippleNuclear Fusion 1976

1985–19948本 · 0.15%

高速イオン損失と核融合生成物への応用

リップルに起因する高速イオン損失やアルファ粒子の損失が、TFTR、JET、ITER、JT-60Uといった各装置で評価された。プラズマ回転やHモード、核融合生成物との共起が見られ、実験と設計課題が結びついた。「Toroidal field ripple loss of alphas below the critical energy in ITER」(1990) や「Study of stochastic toroidal field ripple losses of charged fusion products at the midplane of TFTR」(1993) が代表例である。

同時に語られた主題プラズマ回転、イオン損失、Hモード、核融合生成物、高エネルギーイオン

この時代の論文から

  • [1]Fast ion losses due to toroidal field ripple in JT-60UNuclear Fusion 1994
  • [2]Study of stochastic toroidal field ripple losses of charged fusion products at the midplane of TFTRNuclear Fusion 1993
  • [3]Self-consistent, three-dimensional equilibrium effects on tokamak magnetic field rippleNuclear Fusion 1988
  • [4]Collisionless diffusion regimes of trapped particles in a tokamak induced by magnetic field ripplesNuclear Fusion 1990

1995–20045本 · 0.05%

DT実験とリップル誘起粒子損失の定量化

TFTRの重水素-トリチウム実験で閉じ込めアルファ粒子へのリップル効果が調べられ、Tore SupraではICRF加熱中の高速イオン計測が行われた。有限ベータ効果や3次元平衡の影響、ロックドモードの密度閾値との関係も検討されている。「The effect of toroidal field ripple on confined alphas in TFTR DT plasmas」(1997) や「Energy measurement of fast ions trapped in the toroidal magnetic field ripple of Tore Supra during ICRF heating」(1995) が代表例である。

同時に語られた主題高エネルギーイオン、トカマク平衡、イオンサイクロトロン加熱、重水素-トリチウム

この時代の論文から

  • [1]The effect of toroidal field ripple on confined alphas in TFTR DT plasmasNuclear Fusion 1997
  • [2]Finite beta effects on the toroidal field ripple in three-dimensional tokamak equilibriaNuclear Fusion 2003
  • [3]Energy measurement of fast ions trapped in the toroidal magnetic field ripple of Tore Supra during ICRF heatingNuclear Fusion 1995
  • [4]Effect of up-down asymmetric toroidal field ripple on fast ion loss in JT-60UNuclear Fusion 1997

2005–201419本 · 0.12%

プラズマ回転とHモードペデスタルへの影響

JT-60UやJETでトロイダル回転やHモードペデスタル構造に及ぼすリップルの影響が調べられ、フェライト鋼挿入によるリップル低減の試みも行われた。径電場計測や外部運動量入力なしの回転変化も議論され、ITER設計とも関連している。「H-mode pedestal structure in the variation of toroidal rotation and toroidal field ripple in JT-60U」(2007) や「Effect of toroidal field ripple on plasma rotation in JET」(2008) が代表的である。

同時に語られた主題プラズマ回転、ペデスタル、Hモード、径方向電場、Hモードペデスタル、輸送障壁

この時代の論文から

  • [1]H-mode pedestal structure in the variation of toroidal rotation and toroidal field ripple in JT-60UNuclear Fusion 2007
  • [2]Ferritic insertion for reduction of toroidal magnetic field ripple on JT-60UNuclear Fusion 2007
  • [3]Effect of toroidal field ripple on plasma rotation in JETNuclear Fusion 2008
  • [4]Radial electric field measurement in a tokamak with magnetic field rippleNuclear Fusion 2008

2015–202613本 · 0.05%

逃走電子・NTMとの結合と多様な装置への展開

TCVで逃走電子とリップルの共鳴相互作用が調べられ、CFETRでは新古典テアリングモードとリップルによるアルファ粒子閉じ込めが数値的に検討された。J-TEXTではリップルとイオン軌道損失がエッジ回転に及ぼす影響、EASTでは中性粒子入射下のプロンプト損失とリップル損失が計算されている。「Resonant interaction between runaway electrons and the toroidal magnetic field ripple in TCV」(2024) が代表例である。

この記述以降に論文が追加されている

同時に語られた主題トロイダル回転、テアリングモード、新古典的テアリングモード、トロイダル磁場コイル、スクレイプオフ層、逃走電子

この時代の論文から

  • [1]Collisionless losses of fast ions in the divertor tokamak test due to toroidal field rippleNuclear Fusion 2021
  • [2]Numerical investigation of alpha particle confinement under the perturbation of neoclassical tearing modes and toroidal field ripple in CFETRNuclear Fusion 2021
  • [3]Toroidal magnetic field ripple and ion orbit loss effects on edge toroidal rotation in J-TEXT Tokamak plasmasNuclear Fusion 2018
  • [4]Resonant interaction between runaway electrons and the toroidal magnetic field ripple in TCVNuclear Fusion 2024

よく登場する装置

jet7iter4tftr2east1

この数字の作り方

数え方 —
同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
割合 —
その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
記述 —
その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
冒頭の定義 —
用語そのものの説明だけは、論文40本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
解説 —
では、8本の論文(うち全文0本)と0枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
範囲 —
収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない

磁場リップル

種別
現象
論文数
52 本
初出
1970–1974 年(2本)
最盛期
1970–1974 年0.36%
直近
2025–2029 年0.02%
主な装置
jetitertftreast

索引にもどる