SPIDERは、核融合・プラズマ物理学の装置。イーター中性粒子入射装置用の原型負イオン源であり、パドヴァのRFXで建設・運転される試験装置である。水素・重水素負イオンビームの引き出しと加速を100 keV級で検証し、Cs蒸着や磁気フィルタによる負イオン生成最適化やビーム計測が行われる。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは85本ある。比重が最も大きかったのは2020–2024年で、その期間の論文の0.41%を占めた。直近の2025–2029年では0.19%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは2010年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
SPIDER(Source for the Production of Ions of Deuterium Extracted from an RF plasma)は、イタリア・パドヴァの コンソルツィオ RFX(Consorzio RFX) に建設された中性粒子入射(ニュートラルビーム)用負イオン源の実験装置である。ITER 中性粒子入射試験施設(NBTF, PRIMA)を構成する二つの実験装置の一つで、ITER 加熱用中性粒子入射装置(NBI)に用いられる全スケールの高周波(RF)負イオン源のプロトタイプとして、負イオンビームの生成・抽出・加速の物理と技術を実証する役割を担う。
ITER 中性粒子入射試験施設における役割
ITER のプラズマはその巨大なサイズと高温のために、従来の陽イオンでは効率よく生成できない約 1 MeV の高エネルギー中性粒子ビームを必要とする。このエネルギー域で中性化効率が高いのは負イオン(H⁻ または D⁻)を前駆体とするビームであり、ITER の加熱用 NBI は 1 台あたり最大 16.5 MW、最長 3600 秒のパルス運転が求められる。このような条件を同時に満たす運転はそれまで実績がなく、実機と同一のイオン源を地上で検証するための専用施設として NBTF が設けられた。
NBTF は二つの実験装置からなる。一つが低い加速電圧で全スケール負イオン源を試験する SPIDER であり、もう一つが全ビーム出力での実機型入射装置のプロトタイプ MITICA である。SPIDER が先に建設・運転され、2018 年に第一次運転を開始した。その主な要求値は、H⁻/D⁻ の抽出電流密度がそれぞれ 355/285 A m⁻² 以上、ビームエネルギー 100 keV、パルス長最大 3600 秒であり、ITER と同様の磁気フィルタ配置とセシウムオーブンを備える。これらの条件を再現できる装置は他になく、SPIDER の成果は ITER NBI の設計と運転に直接反映される。運転開始後 3 年余りの間に多くの技術的課題が解決され、得られた知見は MITICA の建設と統合試験にも生かされている。

fig.1 Numerical reconstruction of Langmuir probe measurements obtained from the negative ion source for ITER (SPIDER) (2025) · CC BY 4.0
Design of SPIDER source (left) and schematic layout of Langmuir probe positions in SPIDER (right).
図は SPIDER イオン源の設計全体(左)と、8 本の RF ドライバに対するラングミュアプローブの配置(右)を示す。左図には抽出・加速部、8 本の RF ドライバ、3 つのセシウムオーブンが見て取れ、右図はドライバ円筒の間に配置された複数のプローブ位置を示す。
運転を通じて、マルチドライバ構成の源でプラズマグリッド面を一様に照らすことが難しいという物理的課題が明らかになり、測定と数値モデル(二次元流体シミュレーションなど)に基づいて磁気フィルタの最適化やプラズマ閉じ込めを改善するための追加磁石の導入、ガスコンダクタンスと容器内圧力を下げるためのプラズマグリッドマスキングなど、元の設計に対する改修が進められた。セシウムを用いた最初の運転では、RF 入力 400 kW、充填圧力 0.4 Pa 未満の短パルス条件で、抽出アパーチャを一部に限り、約 200 A m⁻² の負イオン電流密度が水素で達成されている(ビームエネルギーは 60 keV 未満)。これは目標値には及ばないが、個別ビームレットの加速によってビーム光学系と一様性を評価し、一様なビームを加速する手順を実証するなど、大型負イオン源の運転指針を与える結果となった。
ビームの加速と抽出
加速器は、プラズマグリッドから負イオンを引き出し、静電場で 100 keV まで加速する多段のグリッド系である。源は ITER 実機と同様に多数のアパーチャを開けたグリッドを用い、各アパーチャから「ビームレット」と呼ばれる細いイオンビームが抽出される。設計では、電場・磁場の解析、ビームの狙い精度、加速器内部の圧力とストリッピング反応、電極の熱応力など、物理と工学の両面を多数のコードで評価する統合的なアプローチが取られ、感度解析によって設計選択が運転パラメータに与える影響が調べられた。加速器内部では共通の静電場が各ビームレットに横方向の偏向を与えるため、その補償に新しい手法が導入され、また加速器から漏れる電子を受け止める電子ダンプにも新概念が採用された。
ビーム性能の評価には、個々のビームレット電流を測るビームレット電流モニタなどが用いられ、ビームに含まれる交流成分の初回特性評価も行われた。ビームを受け止めるビームダンプには高出力の熱負荷が集中し、そのハイパーバポトロン(hypervapotron、強制沸騰冷却構造の熱交換器)におけるビームの「シャインスルー」(冷却構造を透過して別の部材を加熱する現象)への対策も運転上の課題となった。イオン源と加速器の熱は一次冷却回路で除去され、ドライバの RF 誘導加熱による発熱は熱量計測と数値評価で監視される。
計測と第一次運転の結果
この解説が根拠にした論文から
- Physics and engineering design of the accelerator and electron dump for SPIDERNuclear Fusion 2011
- First operations with caesium of the negative ion source SPIDERNuclear Fusion 2022
- The ITER Neutral Beam Test Facility towards SPIDER operationNuclear Fusion 2017
- Numerical reconstruction of Langmuir probe measurements obtained from the negative ion source for ITER (SPIDER)Plasma Physics and Controlled Fusion 2025
この解説は役に立ちましたか?
推移
他の項目を重ねる
研究の変遷
2005–201415本 · 0.10%
設計・エンジニアリングの時代
SPIDERは実験装置の設計と工学検討を中心として現れ、炭素繊維複合材料、真空容器、プラズマ診断、負イオン、データ収集系などと共に論じられた。具体的には加速器と電子ダンプ、ビーム源、CFCカロリメータ、真空容器、伝送線路の設計が報告されている。
同時に語られた主題炭素繊維複合材料、真空容器、プラズマ診断、負イオン、データ収集システム、データ収集
この時代の論文から
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文9本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、4本の論文(うち全文1本)と1枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
