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固体増殖材

Solid breeder

固体増殖材(Solid breeder)は、核融合・プラズマ物理学の材料。核融合炉のブランケット内部で中性子とリチウムの核反応によりトリチウムを生産するセラミックス材料であり、Li2TiO3やLi4SiO4などのペブル状で用いられる。固体増殖材ブランケットの中核をなし、ベリリウム等の中性子増倍材やヘリウムパージガスと組み合わせて機能する。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは73本ある。比重が最も大きかったのは2005–2009年で、その期間の論文の0.30%を占めた。直近の2025–2029年では0.04%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1985年以降で、それ以前の収録論文には現れない。

目次

  1. 1解説
  2. 2推移
  3. 3研究の変遷
  4. 4よく登場する装置
  5. 5この数字の作り方

解説

固体増殖材(こたいぞうしょくざい、solid breeder)とは、核融合炉のブランケット内でリチウムを含む固体化合物の形でトリチウムを生成させる材料であり、固体増殖ブランケットの中核をなす物質である。核融合炉が自らの燃料であるトリチウムを炉内で生産する「トリチウム自給」を実現するためには、増殖材が炉心由来の中性子とリチウム核との反応を効率よく起こす必要があり、その材料選定、充填形態、トリチウムの放出・回収の挙動がブランケット設計全体を左右する。液体リチウムやリチウム鉛合金を用いる液体増殖方式に対し、固体増殖方式は化学的安定性や構造材料との適合性に優れる一方、ペブル(小球)充填層の熱・力学特性やトリチウム放出の制御といった固有の課題を抱える。以下では、その原理、材料、充填層の挙動、トリチウム回収、そして炉設計への反映を順に述べる。

固体トリチウム増殖の役割と原理

トリチウム増殖の基本反応は、リチウムの二つの同位体による中性子捕獲である。^6Li(n,α)t 反応は熱中性子で断面積が大きく発熱を伴い、^7Li(n,n′α)t 反応は高エネルギー中性子で起こり、こちらも発熱する。つまり増殖材はトリチウムの生成場所であると同時に、中性子の運動エネルギーを熱として回収する媒体でもあり、ブランケットの発熱の相当部分がこの増殖材層内で生じる。設計上の最重要指標はトリチウム増殖比(TBR)であり、消費するトリチウムに対して炉内で再生産される割合を表す。プラズマ炉心での損失や回収系のロスを見込むと、実効TBRは1を確実に上回る必要があり、設計計算では1.05程度の正味TBRを目標とする例が示されている。

固体増殖材そのものは中性子増倍作用を持たないため、中性子経済を確保するにはベリリウムのような中性子増倍材を併用するのが通例である。ただし増殖材の選定によっては増倍材なしでも成立し得ることが中性子計算によって示されており、例えば酸化リチウム Li2O は増倍材を用いない場合でも実現可能なTBRを与え得る唯一の候補と評価されてきた。また冷却材の選択も中性子経済に影響し、水冷却ではヘリウム冷却に比べてTBRが5〜10%高くなるという計算結果がある。一方、^6Li濃縮度を高めるとトリチウム生成は増えるが、構造材料での放射化捕獲が減るため出力増倍率はむしろ低下する、といった中性子学的なトレードオフも知られている。

増殖材・増倍材の材料

増殖材候補としては、Li2O、Li2TiO3(チタン酸リチウム)、Li4SiO4(ケイ酸リチウム)、Li2ZrO3、LiAlO2 などのリチウム系セラミックスが検討されてきた。中性子学的なTBR評価では Li2O が最も高い増殖性能を示す一方、実用面ではリチウムの蒸発や水分との反応性、トリチウム放出特性、ペブル製造の容易さなどが重視され、日本では湿式法で作製する Li2TiO3 ペブルが参照材料とされてきた。ただし Li2TiO3 は高温での安定性に課題があり、DEMOのような高中性子束・高温環境に向けて TiO2 をドープした改良材が開発されている。Li4SiO4 は欧州で主に用いられる候補である。

中性子増倍材にはベリリウム金属が最も優れた性能を示すが、資源量が限られ、中性子照射によるへリウム生成で膨潤し、高温での化学的安定性にも限界がある。このため Be12Ti に代表されるベリリウム化合物(ベリリド)が次世代候補として研究されており、ベリリウム金属に比べて膨潤とトリチウム滞留量が小さく、融点が高いことが確認され、ペブルの製造にも成功している。BeO や鉛系化合物(PbO、Pb-Bi など)も増倍材候補として比較検討の対象となってきた。なお、増殖材と増倍材を均一混合する形態と、増倍材を独立した層として配置する形態のいずれでも高いTBRが得られることが示されており、配置形態は熱設計・製造性との兼ね合いで選ばれる。

ペブル床の熱力学特性

固体増殖材は、ペブルと呼ばれる直径1mm前後の小球として充填層(ペブル床)の形でブランケットに収められるのが標準的である。これは、中性子照射による膨潤や熱膨張をペブルの再配列で吸収させ、脆いセラミックスを塊のまま使うときの熱応力割れを回避するためである。しかしペブル床は固体粒子の集合体であり、その有効熱伝導率はペブル材料そのものの伝導率よりはるかに低く、粒子間接触点を通る熱の通り道が律速となる。したがってペブル床の有効熱伝導率は設計上の最重要データの一つであり、圧縮荷重がかかると接触面積が増えて伝導率が上昇することなどが測定により明らかにされている。溶膠・ゲル法で作製した Li2TiO3 ペブル床の伝導率測定に基づき相関式が検証され、設計解析に用いられている。

力学的には、ペブル床は粒子の再配列と弾性変形によって外部荷重と熱膨張に応答する「粒状体」として振る舞う。ペブル材料の熱膨張が拘束されると床内に熱応力が発生し、これが周囲の構造材を押す荷重となる。この挙動を予測するため、粒子個々の接触力の解放を繰り返す微視力学モデルによる数値解析と、アルミニウムや Li2ZrO3 のペブル床を用いた熱応力測定実験が行われ、変形係数の経験相関式が整備されて実験結果と整合することが示されている。近年では、ペブル床内のパージガス流れを粒子運動と流体挙動を同時に扱う数値手法(DEM-CFD)で解析する研究も進められており、充填構造の不均一性がガスの通り道に与える影響が調べられている。さらに、ペブル床をそのまま用いる代わりに低気孔率の多孔質体(フォーム)状の増殖材を用いる提案もあり、伝熱とトリチウム回収の両立を図る新しい形態として注目されている。

トリチウムの放出とパージガス化学

生成したトリチウムを炉外へ取り出すため、ペブル床には少量の水素を含むヘリウムなどのパージガスを流す。トリチウムは増殖材の結晶粒内で生成した後、粒界を拡散し、表面で脱離してガス相に移るという多段階の過程を経て回収される。この過程はパージガスの化学組成に強く依存し、ガス中の水素分圧や酸素分圧が表面での化学形(HT か HTO か)と放出速度を決める。各種パージガス条件で放出されるトリチウムの化学形が調べられており、化学形の制御は回収系の設計だけでなく、構造材料への透過や安全評価にも直結する重要事項である。また、パルス運転のような非定常中性子照射下での Li2TiO3 ペブル床からのトリチウム放出率が実測されており、定常評価に加えて運転履歴を反映した在庫評価が可能になっている。

トリチウムの滞留(インベントリ)と透過も安全上の鍵である。増殖材から構造材へ透過したトリチウムは冷却材中に移行し、系外への漏えい経路となる。これを抑えるため、構造材表面に酸化ジルコニウムなどのコーティングを施す防食・トリチウム遮蔽層が研究されており、固体増殖材ペブルに暴露された後のコーティングの重水素透過特性が評価されている。増殖材・増倍材・構造材・コーティングという多層系全体でのトリチウムの移行を積分的に評価することが、固体増殖ブランケットの安全設計の基礎となっている。

ブランケット設計とITER試験モジュール

固体増殖ブランケットは、増殖材ペブル床と増倍材ペブル床を鋼製の構造容器内に収め、ヘリウムまたは水・過熱水で冷却する構成が基本である。日本では水冷却固体増殖ブランケットを長期開発計画の柱とし、F82H 低放射化フェライト鋼を構造材料とするモジュールの製造技術が開発されてきた。熱間静水圧接合による冷却流路埋め込み第一壁の試作体は 2.7 MW/m2 級の高熱流束試験に耐え、タングステン装甲の固相接合技術も確立されている。さらに過熱水(超臨界圧水)冷却を採用すれば発電効率41%超が見込めるという設計評価もあり、冷却材の選択が炉全体の魅力を左右することが示されている。

ITERでは各国が試験ブランケットモジュール(TBM)を通じて自国のブランケット概念を実機環境で検証する枠組みが設けられ、日本の水冷却固体増殖TBM、韓国のヘリウム冷却固体増殖TBM、中国のヘリウム冷却固体増殖TBMなどが提案・開発されてきた。これらの設計では、中性子学的解析における均質化モデルの妥当性評価、TBMと炉外トリチウム回収系との界面設計、冷却材喪失事故(LOCA)を想定した安全解析などが共通の課題となっており、日本のTBMではITERへの設置マイルストーンに向けた要素研究開発の成果が積み重ねられてきた。DEMOに向けた設計研究では、増殖材・増倍材・構造材の改良材(TiO2ドープ Li2TiO3、ベリリドなど)を組み合わせて高温・高中性子束に耐えるブランケットを実現することが当面の開発目標とされており、固体増殖方式はトリチウム自給と発電の両立を狙う現実的な選択肢として、各国の研究開発の中心に置かれ続けている。

この解説が根拠にした論文から

  • [1]Design and technology development of solid breeder blanket cooled by supercritical water in JapanNuclear Fusion 2003
  • [2]Development of advanced blanket materials for a solid breeder blanket of a fusion reactorNuclear Fusion 2003
  • [3]Key achievements in elementary R&D on water-cooled solid breeder blanket for ITER test blanket module in JAERINuclear Fusion 2006
  • [4]Impact of neutronics considerations on the selection of solid breeder and multiplier materials and configurationsFusion Engineering and Design 1989
  • [5]Numerical and experimental prediction of the thermomechanical performance of pebble beds for solid breeder blanketFusion Engineering and Design 2000

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推移

0.00.20.3固体増殖材197019801990200020102020%
図1 — 固体増殖材が、5年ごとにその期間の全論文に占めた割合。コーパスは2010年代が1970年代の9倍あるため、件数のままでは何もかもが増加して見える

研究の変遷

1985–19948本 · 0.15%

固体増殖材ブランケット設計の始動

この時期は固体増殖材がBreeder blanketやTritium recoveryと併記され、ITER/NET向けの試験モジュール設計や電磁力、自然対流の検討が行われた。論文数は8本で全体の0.15%を占める。

同時に語られた主題増殖ブランケット、トリチウム回収、トリチウム、プラズマディスラプション、中性子工学、ヘリウム

この時代の論文から

  • [1]Impact of neutronics considerations on the selection of solid breeder and multiplier materials and configurationsFusion Engineering and Design 1989
  • [2]The Karlsruhe solid breeder blanket and the test module to be irradiated in ITER/NETFusion Engineering and Design 1991
  • [3]Electromagnetic forces caused by disruptions in the Karlsruhe demo solid breeder blanket and in the test module for NET/ITERFusion Engineering and Design 1991
  • [4]Experimental studies of active temperature control in solid breeder blanketsFusion Engineering and Design 1991

1995–200410本 · 0.10%

EUと日本のDEMO設計とR&D

固体増殖材ブランケットの設計とR&Dが中心で、超臨界水冷却、MANET構造材、ITER水冷却固体増殖材ブランケット提案などが議論された。Pebble bedが併記され始め、論文数は10本、全体の0.1%と微減した。

同時に語られた主題増殖ブランケット、ペブルベッド、プラズマディスラプション

この時代の論文から

  • [1]Design and technology development of solid breeder blanket cooled by supercritical water in JapanNuclear Fusion 2003
  • [2]Development of advanced blanket materials for a solid breeder blanket of a fusion reactorNuclear Fusion 2003
  • [3]Status of EC solid breeder-blanket designs and R&D for DEMO fusion reactorsFusion Engineering and Design 1995
  • [4]Analysis of mechanical effects caused by plasma disruptions in the European breeder out of tube solid breeder blanket design with MANET as structural materialFusion Engineering and Design 1995

2005–201435本 · 0.23%

ITERテストブランケットモジュール開発の進展

固体増殖材はTest blanket module、Helium、Blanket moduleと強く結びつき、日本や中国のITER TBM設計、水冷却・ヘリウム冷却固体増殖材概念、先進材料開発が報告された。論文数は35本、全体の0.23%と増加した。

同時に語られた主題テストブランケットモジュール、ヘリウム、ブランケットモジュール、増殖ブランケット、トリチウム、トリチウム透過

この時代の論文から

  • [1]Development of advanced tritium breeders and neutron multipliers for DEMO solid breeder blanketsNuclear Fusion 2007
  • [2]Achievements in the development of the Water Cooled Solid Breeder Test Blanket Module of Japan to the milestones for installation in ITERNuclear Fusion 2009
  • [3]Safety assessment of Chinese ITER TBM design with helium-cooled solid breeder conceptNuclear Fusion 2007
  • [4]Key achievements in elementary R&D on water-cooled solid breeder blanket for ITER test blanket module in JAERINuclear Fusion 2006

2015–202620本 · 0.08%

CFETRへ向けた数値解析と材料開発

この時期は固体増殖材がBreeder blanket、Helium、Pebble bed、Neutronicsと併記され、CFETRのヘリウム冷却固体増殖材ブランケットにおける電磁-機械連成、DEM-CFDシミュレーション、新しい細胞状固体増殖材の開発などが扱われた。論文数は20本、全体の0.08%と減少した。

同時に語られた主題増殖ブランケット、ヘリウム、ペブルベッド、中性子工学、数値流体力学、垂直変位

この時代の論文から

  • [1]Electromagnetic-mechanical coupling method and stress evaluation of the Chinese Fusion Engineering Test Reactor helium cooled solid breeder under a vertical displacement event scenarioNuclear Fusion 2019
  • [2]Development of a new cellular solid breeder for enhanced tritium productionFusion Engineering and Design 2016
  • [3]Numerical study on influences of bed resettling, breeding zone orientation, and purge gas on temperatures in solid breedersFusion Engineering and Design 2016
  • [4]DEM-CFD simulation of purge gas flow in a solid breeder pebble bedFusion Engineering and Design 2016

よく登場する装置

iter13

この数字の作り方

数え方 —
同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
割合 —
その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
記述 —
その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
冒頭の定義 —
用語そのものの説明だけは、論文22本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
解説 —
では、5本の論文(うち全文0本)と0枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
範囲 —
収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない

固体増殖材

種別
材料
論文数
73 本
初出
1985–1989 年(4本)
最盛期
2005–2009 年0.30%
直近
2025–2029 年0.04%
主な装置
iter

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