図は装置の垂直断面模式図であり、中央に真空容器(主半径 75 cm、容器小半径 30.5 cm)、容器内側にポロイダルリミッター、外側にトロイダルリミッター、さらに上下の BV コイル(垂直場コイル)、OT コイル、容器内側の AD(ダイバータ)コイルや MD、FFFB コイル群、そして TF(トロイダル場)コイルが描かれている。このように多種のポロイダル場コイルを容器の内外に分散配置することが、円形プラズマの位置制御とダイバータプラズマ形成の両方を支える磁場構造の基盤となっている。
ADITYA-U への改修:ダイバータとプラズマ形状制御
ADITYA の最大の改修点は、円形リミッタープラズマから非円形のダイバータプラズマへの移行である。ADITYA-U では真空容器が長方形断面から円形断面に交換され、容器体積は 1.6 m³ から 1.4 m³ へと減少した(ポート延長部を除く)。一方、プラズマの主半径 75 cm・小半径 25 cm という基本パラメータは元の ADITYA から変更されていない。容器内壁のうち黒鉛のプラズマ接機器が占める割合は 3% から 15% へと増え、これに伴いプラズマと壁との相互作用が強まり、ステンレス鋼壁由来の高 Z 不純物(Fe、Cr、Ni)と黒鉛由来の炭素不純物の濃度が相対的に高くなった。この不純物放射損失が電子温度の上昇を制限するため、ADITYA-U では不純物制御が一層重要な運転要件となっている。
ダイバータ配置は、真空容器の外側・トロイダル場コイル内側に設置した三組のポロイダル場コイルによって実現された。バッフル板を持たない開放型ダイバータ板を用い、単一 X 点および双 X 点(single null / double null)の両配置での形状プラズマ運転が可能である。平衡磁場の最適化では、垂直場コイルを直列ではなく並列に駆動して応答を速める工夫がなされ、平衡場電流の事前プログラム制御とリアルタイム水平位置制御の導入により、形状プラズマの放電長が延長された。ダイバータコイル通電時のプラズマ形状は平衡計算コードによって事前に検証されており、次の図はその一例である。
図はダイバータコイル通電下の ADITYA-U 放電(ショット番号 35306)について、放電開始から 130 ms 時点のプラズマ形状を平衡計算で求めたものであり、円形リミッター配置のプラズマ境界と、下方に引き伸ばされたダイバータプラズマの形状、および周囲のコイル位置が重ねて描かれている。このように計算と実機コイル配置を突き合わせることで、単一 X 点・双 X 点プラズマの生成に必要なコイル電流パターンが事前に確定される。
運転は段階的に進められた。2016 年 12 月に黒鉛トロイダルベルトリミッターを用いた第 I 期運転が開始され、プラズマ電流 80–95 kA、放電時間 80–180 ms、最大トロイダル場約 1 T、線平均電子密度約 2.5×10¹⁹ m⁻³ のオーミック放電が得られた。真空容器を約 135 ℃ でベーキングした後の 2018 年 2 月以降の第 II 期運転では、リアルタイム位置制御の下でプラズマ電流が約 135 kA まで引き上げられ、密度は約 4×10¹⁹ m⁻³ に達した。その後の運転で、円形プラズマは設計値に近いプラズマ電流約 210 kA、放電時間約 400 ms、中心電子温度約 500 eV、蓄積エネルギー約 3 kJ、エッジ安全因子 qₐ ≈ 3–4.5、最大トロイダル場約 1.5 T(設計値の 100%)に達している。重水素(D₂)プラズマ運転も実施され、同程度の運転パラメータでの水素・重水素放電比較によりエネルギー閉じ込め時間の同位体依存性が調べられた。これは、大型装置で広く研究されてきた同位体効果を中型装置で検証する試みである。
プラズマ運転と診断
ADITYA/ADITYA-U では、中型オーミック装置として標準的な診断体系が整備されてきた。電子温度の断面分布は電子サイクロトロン放射を用いたスーパーヘテロダイン放射計によって測定され、プラズマの回転は紫外・可視分光によるドップラー計測で、可視連続放射の半径分布は専用の診断装置で求められる。可視光トモグラフィーは二方向からの撮像によってエッジプラズマの構造を可視化し、高速可視カメラはペレット注入の挙動追跡に用いられた。中性圧力は ASDEX 型圧力計で測定され、その計測・制御系は装置のデータ収集・制御システムに組み込まれている。運転側面では、プラズマ位置制御用直流電源の自動化、垂直位置制御の設計解析、そしてペレット注入器の開発など、装置運転に必要な工学要素も継続的に整備されている。
運転の信頼性を示す指標として、第 I 期と第 II 期を通じ 2000 回以上の放電で水素ガスによるプラズマ生成が一度の失敗もなく達成されたことが挙げられる。また、ECRH(電子サイクロトロン共鳴加熱)を用いた低ループ電圧のプラズマ生成・電流立ち上げ実験により、ボルト秒の回収が実現され、放電時間の延長につながった。高速波を用いたイオンサイクロトロン周波数帯の直接電子加熱実験も行われており、補助加熱による運転範囲の拡大が進められている。今後は下部混合波電流駆動(LHCD)によるパルス長延長と、ECRH・ICRH による補助加熱が計画されている。
エッジ・SOL・壁コンディショニング物理
ADITYA の円形リミッター配置は、エッジ・スクレイプオフ層(SOL)物理の研究に特有の利点を持つ。リミッターがトロイダル方向に不連続な配置では、SOL の磁場構造が三次元的になり、プラズマ流やそのシアー生成にポロイダル方向の非対称性が現れる。実際、ADITYA の円形プラズマの三次元 SOL において流れ構造とシアーの生成が観測され、モンテカルロ計算による SOL のモデル化と併せて、リミッター配置がエッジ輸送に与える影響が調べられた。また、エッジプラズマでは渦状の凝集構造(コヒーレント構造)が観測されており、エッジ乱流輸送の研究の対象となった。中性粒子の温度にもポロイダル非対称性が観測されるなど、円形リミッター配置の三次元性がエッジプラズマの各所に反映されている。マイクロ乱流については、アルゴン不純物を含む ADITYA-U プラズマに対するジャイロキネティック・シミュレーションにより、静電的マイクロ乱流の性質が解析されている。
壁コンディショニングは、ADITYA/ADITYA-U の運転性能を左右する中心的な技術である。真空容器のベーキングと水素グロー放電クリーニング(GDC)は、H₂O、CO、CO₂、CH₄ などの揮発性不純物を除去するためにほぼすべての核融合装置で行われる日常作業であり、ADITYA-U でも放電の前後に定期的に実施される。しかし水素 GDC には二つの限界が知られている。壁への水素保持量の増大と、炭素・酸素系不純物の除去がある閾値に達した後進まなくなることである。水素保持の制御にはヘリウム GDC が用いられるが、ヘリウムはクライオポンプで捕集しにくいという運転上の難点がある。
これらの問題を克服するため、ADITYA で世界に先がけて開発・実装されたのがアルゴン–水素混合ガス GDC である。その原理は、低温プラズマ中でアルゴンと水素から生成するアルゴンヒドリドイオン(ArH⁺)の化学に基づく。ArH⁺ の生成反応速度係数は他の希ガス–水素系より一桁以上大きく(H₂⁺ + Ar 反応で 2.0×10⁻⁹ cm³ 分子⁻¹ s⁻¹、Ar⁺ + H₂ 反応で 1.2×10⁻⁹ cm³ 分子⁻¹ s⁻¹)、また ArH⁺ の解離エネルギーは 3.0 eV 超と、ArH 分子の 0.17 eV に比べてはるかに高い。その結果 ArH⁺ は大量に生成され、水素 GDC の主イオン(H⁺、H₂⁺、H₃⁺)よりも長寿命のプラズマ成分として残る。質量の大きい ArH⁺ は壁に吸着した不純物分子へより多くの運動エネルギーを伝達でき、水素イオンでは切れない硬い化学結合を破壊できる。さらに、アルゴンイオンと水素原子の同時照射は化学スパッタリング効果を生み、炭化水素膜のスパッタリング閾値をアルゴンイオン単独の 58 eV から 1.3 eV へと下げる。実際、ADITYA での検証では、50%–50% の Ar–H₂ 混合 GDC が通常の水素 GDC に比べ一時間あたり 5 倍の H₂O 除去効果を示した。ADITYA-U では、この混合 GDC が放電性能の向上と不純物制御に日常的に活用されている。これに加えて、リチウム壁コンディショニングによる不純物・燃料制御、ネオンガスパフを併用した放射改善閉じ込めモード、電子サイクロトロン共鳴プラズマを用いた局所壁クリーニングなど、多様なコンディショニング手法が試みられている。
ディスラプションと逃走電子緩和
ADITYA/ADITYA-U の研究活動の最前線にあるのが、ディスラプション(プラズマ電流の急速喪失)の制御と逃走電子(RE)の緩和である。エネルギー規模が小さい中型装置では、これらの現象が装置を破壊する恐れなく安全に研究でき、ITER など大型装置のために各種緩和手法の有効性を実証試験する場として適している。
ディスラプション研究では、水素ガスパフによって意図的に誘起したディスラプションを、バイアス電極やイオンサイクロトロン共鳴パルスの技術で緩和することに成功した。数百回に及ぶディスラプション放電の詳細な解析から、電流クエンチ時間がエッジ安全因子 q に反比例するという経験則が導かれ、分類に基づく詳細なディスラプションデータベースが構築された。さらに、ADITYA/ADITYA-U の放電アーカイブを用いた深層学習(LSTM を含むリカレントニューラルネットワーク)によるディスラプション予測モデルも開発されており、データ駆動型手法が中型装置の研究に取り入れられている。
逃走電子の緩和については、ADITYA で独自の手法が実証された。真空容器の上下に一対の電磁コイルをヘルムホルツ配置で一つのトロイダル位置に設置し、短い局所垂直磁場(LVF)パルスを印加する方法である。このパルスによって逃走電子が効果的に緩和されることが示され、ADITYA-U でもこの手法が引き継がれている。また、電流フラットトップ中の超音速分子ビーム注入や音速水素ガスパフによる逃走電子制御、MHD 不安定性によって変調される逃走電子損失の観測、電子サイクロトロン放射診断を通じたピッチ角散乱事象と密度依存性の研究など、逃走電子の生成・輸送・損失に関わる多面的な実験が行われている。大量ガス注入(MGI)や、より ITER に関連の深い破砕ペレット注入(SPI)が DIII-D や J-TEXT で実証されているのに対し、ADITYA-U の LVF 法は共鳴磁場擾乱(RMP)を用いる TEXTOR・JT-60U の実績と並ぶ、異なる物理原理に基づく緩和手法の実証例として位置づけられる。このほか、ガスパフによるソートゥース周期の変調、MHD 誘起のジオデシック音響モード(geodesic acoustic mode, GAM)様振動、MHD による急速熱パルス伝播、冷パルスのピンチ駆動伝播、アルゴン不純物の輸送とコア蓄積、RICE スケーリングとトロイダル回転の質量依存性といった、大型装置の物理予測に資する基礎的発見が相次いでおり、中型オーミック装置が現代の核融合研究に果たす役割の広さを示している。