乱流とは本来、多数の自由度が互いに無相関に揺らぐ状態を指すが、実際のプラズマ乱流では、非線形過程が特定の空間パターンを長時間維持することがある。これがコヒーレント構造である。磁化プラズマでは、密度揺らぎと電位揺らぎが電場を介して強く結合しており、例えばドリフト波乱流では密度の塊がそのまま電位の構造、ひいては E × B 渦として現れる。構造の空間スケールは乱流の最不安定モードの波長程度から、プラズマ断面のかなりの部分を覆う大規模なものまで及ぶ。単純磁化トーラスでの条件付き平均観測では、構造はポロイダル断面内を周期およそ100 μsで回転しながら時間発展することが示されている。
物理的には、構造の維持は非線形項と線形駆動・散逸のバランスによる。密度擾乱が電位を断熱的に追従する場合、ドリフト波は安定化するが、抵抗や磁気曲率による分極が応答を遅らせると波は不安定化し、非線形に自己組織化して渦を形成する。渦の内部では E × B 回転がさらに周囲の揺らぎを巻き込み、構造としての同一性が保たれる。このためコヒーレント構造は、単なる「大きい揺らぎ」ではなく、位相が揃った密度・電位・流れの場のパッケージとして定義される。
条件付き平均で得られた像は、構造が実際に「存在する」ことの証拠とみなせる。ただし平均像は個々のイベントの平均であり、実際の構造は時間とともに回転・変形・減衰する。観測では、構造の発生時に相関長が増大して断面の大部分を覆い、寿命はむしろ短くなるという性質が報告されている。これは、強い E × B 剪断が広帯域揺らぎを抑制した結果として大規模コヒーレント構造が支配的になるという遷移と結びついており、剪断が乱流のカスケードを断ち切る一方で、残った大スケール成分を目立たせるという逆説的な効果を示している。
間欠的乱流輸送との関係
コヒーレント構造が重要なのは、それが間欠的な輸送イベントの実体だからである。プラズマの粒子輸送は密度揺らぎと E × B 速度の揺らぎの相関(クロスフェーズ(cross-phase)に依存する)で決まるが、コヒーレント構造が通過する際、この相関が短時間だけ強まる。条件付き平均された輸送の時間分解観測では、電位に二重渦が形成されるタイミングで、渦セパラトリクス上に大きなバースト的なフラックスイベントが生じることが示されている。つまり輸送は定常ではなく、構造の通過に同期した突発的なイベントとして起こる。
閉じ込め領域の外側、すなわちスクレイプオフ層(SOL)では、この構造が「ブロブ」と呼ばれる高密度のプラズマ塊として分離して伝搬する。ブロブは内部分極と交換(interchange)機構によって半径方向に加速され、粒子とパワーの損失のかなりの割合を担う。したがって、壁面負荷や閉じ込め性能の評価において、コヒーレント構造の生成・伝搬の理解は中心的な課題である。構造の生成はエッジのポロイダル E × B 剪断層で起こることが観測されており、剪断層の構造が輸送イベントの統計的性質を規定する。
ゾーナルフローとの相互作用
エッジ乱流では、コヒーレント構造はゾーナルフロー(帯状の E × B せん断流)と密接に結びついている。乱流のレイノルズ応力が半径方向に局在化した運動量輸送を行うと、ポロイダル・トロイダル波数がゼロの帯状の流れ、すなわちゾーナルフローが励起される。ゾーナルフローはドリフト波からエネルギーを奪って乱流を抑制する調節機構として働き、このエネルギー授受は捕食・被食関係のサイクルとして記述される。低閉込めから高閉込め状態への遷移における輸送障壁形成は、まさにこの機構によるものである。
Spatio-temporal evolution of the density (top) and potential (bottom) fluctuations in the poloidal cross-section as snapshots at consecutive time lags τ around the occurrence of a ZF event detected at the innermost flux surface. The separatrix is shown as a dashed line.
Poloidal potential fluctuations in the same representation as in figure 5, but sampled with respect to zonal potential events. Small-scale variations are superimposed by a zonal structure with k_\theta = 0 m−1 and a lifetime of ≈ 50 µs.