負水素(Negative hydrogen、negative hydrogen ion、negative hydrogen ions)は、核融合・プラズマ物理学の現象。水素原子が電子を一つ余分に持つ負イオン(H⁻)を指し、核融合炉の追加熱用中性粒子ビーム(NBI)源で生成・加速されて、中性化後にプラズマへ入射される。その生成には体積過程と表面過程があり、輸送や引き出し効率が研究の主要課題である。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは49本ある。比重が最も大きかったのは1975–1979年で、その期間の論文の0.24%を占めた。直近の2025–2029年では0.21%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1975年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
負水素(負水素イオン、H⁻)とは、水素原子が余分な電子を1つ受け取って形成する陰イオンである。原子核と電子2つという単純な系でありながら、追加の電子は原子の正電荷にわずかにしか束縛されておらず、その結合エネルギーは約0.754 eVと小さい。このため負水素は高温プラズマ中では電子との衝突によって容易に破壊され、安定に存在できるのは比較的低温で電子密度の高い条件に限られる。中性子星大気や太陽の不透明度における主要な連続吸収体として天体物理学で古くから知られる一方、現代の核融合研究においては、負水素イオンを意図的に大量に生成・引き出す技術が主役となっている。負水素イオンを高エネルギーで加速してから中性化すると、効率よく高エネルギー中性子線(正確には中性原子ビーム)が得られるためである。図は、この分野で中心的な役割を果たす大型試験施設ELISEのイオン源部の写真と断面模式図であり、4基の高周波ドライバと引き出し系、セシウムオーブンの配置が示されている。以下では、核融合の中性粒子入射(NBI)における負水素イオンの役割、その生成機構、輸送と電子の共引き出しの制御、そして大型源の開発状況を概観する。

fig.1 ITER-relevant 600 s steady-state extraction of negative hydrogen ions at the test facility ELISE (2025) · CC BY 4.0
(a) Photograph of the ion source end of the ELISE test facility. The four RF drivers are enclosed in a vacuum containment. (b) Schematic view. The position of one of the caesium ovens at the left vertical side wall is indicated, the second oven is located at the right source wall.
負水素イオンと中性粒子入射における役割
磁場閉じ込め核融合装置では、プラズマを加熱し電流を駆動する主要な手段の一つとして、高エネルギーの中性水素(または重水素)原子ビームを装置内に注入するが用いられる。中性原子は磁場の影響を受けずに閉じ込め磁場を貫通してプラズマ中で電離し、そのエネルギーをプラズマに渡す。ビームを中性化するには、まずイオンを加速した後に中性化セルを通す必要があるが、ここで正イオンとの違いが決定的になる。正の水素イオン(陽子)の中性化は数十keVのエネルギーでは効率が高いが、1 MeV級のエネルギーでは中性化効率がほぼゼロに落ちる。一方、負水素イオンは電子を1つ外れて中性原子になる過程が高エネルギーでも効率が高く、約60%の中性化効率が維持される。以降の装置が要求する1 MeV級の入射を実現するには、負イオンを用いることが本質的に不可欠なのである。
推移
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研究の変遷
1970–19842本 · 0.08%
初期の散発的報告
負水素イオンビームのプラズマ標的による原子化や、加速クラスターイオンからの生成を扱う初期研究である。この時期はごく少数の報告にとどまり、主題としての体系的な展開はまだ見られない。
この時代の論文から
1985–19945本 · 0.09%
ビーム源としての模索
イオンビーム源における負水素イオンの診断や、ホローカソード・ペニング表面プラズマ源による高密度生成が研究されている。トムソン散乱や陰極プラズマといったプラズマ診断・生成機構と結びつき、ビーム源としての応用が模索された時代である。
同時に語られた主題イオンビーム、トムソン散乱、ホローカソード、ビームプラズマ
この時代の論文から
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている(Negative hydrogen、negative hydrogen ion、negative hydrogen ions など)。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文19本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、8本の論文(うち全文3本)と2枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない

