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QUEST

QUESTは、核融合・プラズマ物理学の装置。九州大学に設置された球状トカマクで、中心ソレノイドを使わない非誘導のプラズマ電流立ち上げや電子サイクロトロン波による加熱・電流駆動、長時間放電時の壁水素制御などの研究に用いられる。将来の定常核融合炉を見据えた運転方法の実証を担う装置である。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは55本ある。比重が最も大きかったのは2015–2019年で、その期間の論文の0.21%を占めた。直近の2025–2029年では0.15%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1995年以降で、それ以前の収録論文には現れない。

Spherical tokamak at Kyushu University

目次

  1. 1解説
  2. 2推移
  3. 3研究の変遷
  4. 4よく登場する装置
  5. 5この数字の作り方

解説

QUEST(Q-shu university experiment with steady-state spherical tokamak、九州大学)は、球状トカマク(低アスペクト比トカマク)を用いて、非誘導的なプラズマ電流の立ち上げと長時間定常運転を実証することを主目的とする磁気核融合実験装置である。装置の全体像を示した図のうち、断面図を見ると、真空容器は中心部の細いスタック(center-stack)を囲むトーラス状で、上下にダイバータ、側壁は高温壁(hot wall)となっており、3基のクライオポンプが排気を担う。トロイダル断面では、中性子線から見て高磁場側の基本波および第二高調波の電子サイクロトロン共鳴層(R = 1.1 m と 0.55 m 付近)に向けてマイクロ波が入射され、トムソン散乱や分光などの診断が中平面に集中して配置されていることが分かる。

(a) Poloidal cross-section of the QUEST vacuum vessel with plasma facing components. (b) Toroidal cross-section on the midplane with an EC injection position, H2 and Ne gas injection positions and diagnostics. The EC injection antenna, the gas injection port and all diagnostics are installed on the midplane. The dashed-line circles indicate the positions of the fundamental and second harmonic resonance layers. The dashed and dotted-line ellipses indicate the position of the cryopumps installed on the oblique ports. The points shown by both open and closed circles represent measurement positions of the Thomson scattering system, and the different marker can be measured in different shots by adjusting the collection optics.

fig.1 Hydrogen removal by electron cyclotron wall conditioning with neon gas and its impact of tokamak plasma start-up on the QUEST spherical tokamak (2024) · CC BY 4.0

(a) Poloidal cross-section of the QUEST vacuum vessel with plasma facing components. (b) Toroidal cross-section on the midplane with an EC injection position, H2 and Ne gas injection positions and diagnostics. The EC injection antenna, the gas injection port and all diagnostics are installed on the midplane. The dashed-line circles indicate the positions of the fundamental and second harmonic resonance layers. The dashed and dotted-line ellipses indicate the position of the cryopumps installed on the oblique ports. The points shown by both open and closed circles represent measurement positions of the Thomson scattering system, and the different marker can be measured in different shots by adjusting the collection optics.

QUESTと球状トカマクのアプローチ

トカマクのアスペクト比 A はプラズマの主半径 R と副半径 a の比で、従来装置の多くは 3 前後である。これに対し A < 2 の球状トカマクは、START(A ≈ 1.3–1.45)以降、従来トカマクを大きく上回る高ベータ(プラズマ圧力と磁場圧力の比で 30 % 級)を長時間維持できることが示され、NSTX や MAST で性能の同等性以上が確認された。小型装置でも Globus-M2 や ST40 が従来装置並みのイオン温度(ST40 で 9.6 keV)に達しており、コンパクトな炉の可能性を示している。一方で球状トカマクには固有の難点がある。中心軸が細いため中心ソレノイドに巻けるフラックスが少なく、誘導だけでは必要なプラズマ電流を立ち上げられない。炉設計の研究では、A = 1.8 のコンパクト炉ではソレノイド単独で必要電流の 3 割程度しか賄えないと見積もられている。したがって非誘導の電流立ち上げと電流駆動の開発が不可欠であり、QUEST はこの課題に電子サイクロトロン電流駆動(ECCD)と同軸ヘリシティ注入(CHI)で取り組む、定常運転能力を持つ数少ない球状トカマクである。

装置構成、高温壁と加熱システム

QUEST の特徴は、連続運転可能なトロイダル磁場コイルと加熱源、そして燃料粒子制御のための金属製高温壁を備える点にある。容器内壁は基本的に金属で構成され、高温壁部には W 系材料、中心スタック保護板はステンレス鋼(SS316)、中平面部は SS316L が用いられ、タングステン製リミッタが中心スタックの前面に置かれている。壁を 200 ℃ 以上に加熱制御することで、水素の壁への吸蔵・放出を管理し、長時間放電での粒子収支を安定させることが狙いである。排気はクライオポンプとターボ分子ポンプの併用で行われる。

加熱・電流駆動の主役は電子サイクロトロン波である。8.56 GHz(基本波)と 28 GHz(第二高調波)のジャイロトロン系が準光学系を介して高磁場側から入射され、連続(CW)運転が可能な 8.56 GHz 系は長パルス放電を支える。球状トカマクではトロイダル磁場の空間勾配が急なため、一つのプラズマ中に複数の共鳴層が共存し、高調波や相対論的ドップラーシフトを利用した吸収制御が可能になる。このため準光学ポラライザや入射モード選択性を持つランチャーの開発が進められてきた。診断としてはトムソン散乱、接線方向の硬 X 線計測、静電プローブ系などが整備され、重イオンビームプローブの概念設計も行われている。

非誘導プラズマ立ち上げと電流駆動

ECH による立ち上げは QUEST の基本手法である。8.2 GHz 帯のマイクロ波注入だけで約 5 kA のプラズマ電流を 1 時間以上維持した実績があり、28 GHz を用いた短パルスでは 66 kA を超える電流駆動が達成されている。電流が流れる仕組みは、共鳴層の位置を調整してトロイダル方向に一方向へ進む高エネルギー電子を選択的に加速することにあり、順方向の電子が逆方向より多くなることで正味の電流が生じる。ただし吸収が高エネルギー電子に偏ると一括(バルク)電子の加熱が非効率になるため、プラズマ電流と逆向きのループ電圧(遅延電場)を印加して高エネルギー電子の過剰な増殖(ドライサー加速やアバランシェ)を抑えつつ電流を維持する実験も行われている。

高密度化した領域では、通常の電磁波がプラズマ中に侵入できない「過密度」状態になるが、このときは静電波である電子バーンスタイン波(EBW)への変換が鍵となる。高磁場側から X モードを入射して EBW に変換する手法が QUEST で検証され、8.2 GHz と 28 GHz の二周波同時注入では、密度の自発的な跳躍(分岐現象)を経て過密度プラズマが非誘導で 25 kA まで立ち上げられ、0.4 秒間平衡を保って維持された。過密度領域では EBW が中程度のエネルギーの電子を加熱し、その熱交換でバルク電子も暖められることが分散解析と硬 X 線計測(接線視野で約 500 keV の放射温度)から示されている。

もう一つの非誘導立ち上げ法がトランジェント CHI である。これはダイバータ板を電極として使い、電極間をつなぐ磁力線に沿って短時間の電流パルスを流すと、J × B 力が磁場圧力を超えて注入磁束が膨張し、磁気再結合によって閉じた磁束面のプラズマが生成されるというもので、全過程は QUEST で約 1.5 ms である。生成電流は注入磁束とトロイダル磁場コイル電流で決まるスケーリングに従い、HIT-II での開発を経て NSTX で 200 kA 超の立ち上げ電流が誘導フラックスを 4 割削減して 1 MA まで増流された実績がある。QUEST では下部外側ダイバータ板のみを絶縁した「単一バイアス電極」構成を採用しており、炉で実現しやすい浮遊バイアス方式として Pegasus-III とともに開発が進められている。CHI で作った低内部インダクタンス・高伸長のプラズマは、その後の非誘導電流増速の好適な標的になると期待される。

長パルス定常運転と壁・燃料粒子制御

磁気核融合装置では一般に、放電が長くなると三重積(密度・温度・エネルギー閉じ込め時間の積)が低下する傾向があり、QUEST はこの問題に定常運転で直接取り組む位置にある。そのためプラズマ制御系の改修、平衡再構成(渦電流の影響を補正するコーシー条件面法など)、ダイバータ配位の制御、高温壁温度制御系の改良が継続的に行われてきた。非誘導立ち上げ後にはオーミック電場を併用でき、中心ソレノイド電流を 50 Hz で往復させることで、ECH で維持された電流の上で加熱とフラックス充電を繰り返す運転も実証されている。

長時間・全金属壁運転の核心は燃料粒子の収支である。壁に吸蔵された水素が放電中に放出されると密度制御が崩れるため、水素障壁モデルと水素状態の速度方程式を組み合わせた粒子収支解析が行われている。また、放電間の壁処理手法として電子サイクロトロン壁コンディショニング(ECWC)が検討されている。ヘリウムガスを用いる ECWC は炭素壁装置で有効だったが、金属壁では He バブルなどの欠陥を作り燃料滞留を増やす懸念がある。そこでネオンガスを用いる ECWC が注目されており、Ne は He に比べて欠陥生成とガス滞留が少なく、グロー放電洗浄よりプラズマ対向材への入射エネルギーが低い利点がある。一方で Ne の放射冷却が大きいため、その後のトカマク立ち上げへの影響を評価することが実用化の前提となっており、QUEST での検証が ITER 等の超伝導装置への適用を見据えて進められている。遠方スクレイプオフ層での熱流束とプラズマ流の計測(内側ポロイダルヌル配位での研究)も、長パルス運転での対向壁熱負荷の理解に寄与している。

この解説が根拠にした論文から

  • [1]Electron heating of over-dense plasma with dual-frequency electron cyclotron waves in fully non-inductive plasma ramp-up on the QUEST spherical tokamakNuclear Fusion 2020
  • [2]Hydrogen removal by electron cyclotron wall conditioning with neon gas and its impact of tokamak plasma start-up on the QUEST spherical tokamakNuclear Fusion 2024
  • [3]Electron cyclotron current start-up using a retarding electric field in the QUEST spherical tokamakNuclear Fusion 2024
  • [4]Design considerations for optimizing the transient CHI injector on QUESTPlasma Physics and Controlled Fusion 2025
  • [5]Experimental progress and future plans on spherical tokamak, QUESTPlasma Physics and Controlled Fusion 2025

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推移

0.00.10.2QUEST197019801990200020102020%
図1 — QUESTが、5年ごとにその期間の全論文に占めた割合。コーパスは2010年代が1970年代の9倍あるため、件数のままでは何もかもが増加して見える

研究の変遷

1995–20042本 · 0.02%

共通名詞としての'quest'の出現

この時代の2件は、慣性核融合と結晶性イオンビームを扱うタイトルに'quest'という語が現れるものであり、装置としてのトカマクQUESTではない。イオンや点火といった主題と並置されている。

同時に語られた主題イオンビーム、慣性核融合、点火

この時代の論文から

  • [1]Inertial confinement fusion:The quest for ignition and energy gain using indirect driveNuclear Fusion 1999
  • [2]The quest for crystalline ion beamsPlasma Physics and Controlled Fusion 2002

2005–20148本 · 0.05%

球状トカマクQUESTの登場

装置名としてのQUESTが現れ、プラズマ制御、オーミック加熱、第一壁、渦電流、電流ランプアップ、電流駆動、コヒーレント構造などの主題とともに論じられた。代表的論文には、非誘導電流駆動、コヒーレント構造の高速イメージング、プラズマ形状再構成などがある。

同時に語られた主題プラズマ制御、オーミック加熱、第一壁、渦電流、電流ランプアップ、電流駆動

この時代の論文から

  • [1]Role of energetic electrons during current ramp-up and production of high poloidal beta plasma in non-inductive current drive on QUESTNuclear Fusion 2014
  • [2]Statistical features of coherent structures at increasing magnetic field pitch investigated using fast imaging in QUESTNuclear Fusion 2012
  • [3]Control system and the controllability of CPD and QUESTFusion Engineering and Design 2008
  • [4]Measurement of hydrogen permeation due to atomic flux using permeation probe in the spherical tokamak QUESTFusion Engineering and Design 2010

2015–202645本 · 0.18%

QUESTによる定常運転研究の拡大

定常状態、スクレイプオフ層、プラズマ平衡、プラズマスタートアップ、電子サイクロトロン波、壁調整などの主題と並置され、完全非誘導のプラズマ立ち上げや水素リサイクリングの長時間放電に関する研究が多数発表された。論文数は42件に増加し、全体に占める割合も0.17%へと上昇した。

この記述以降に論文が追加されている

同時に語られた主題定常状態、スクレイプオフ層、プラズマ立ち上げ、プラズマ平衡、電子サイクロトロン波、電子サイクロトロン加熱

この時代の論文から

  • [1]Fully non-inductive second harmonic electron cyclotron plasma ramp-up in the QUEST spherical tokamakNuclear Fusion 2017
  • [2]Investigation of hydrogen recycling in long-duration discharges and its modification with a hot wall in the spherical tokamak QUESTNuclear Fusion 2017
  • [3]Electron heating of over-dense plasma with dual-frequency electron cyclotron waves in fully non-inductive plasma ramp-up on the QUEST spherical tokamakNuclear Fusion 2020
  • [4]Self organization of high βp plasma equilibrium with an inboard poloidal magnetic field null in QUESTNuclear Fusion 2015

よく登場する装置

quest52

この数字の作り方

数え方 —
同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
割合 —
その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
記述 —
その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
冒頭の定義 —
用語そのものの説明だけは、論文22本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
解説 —
では、5本の論文(うち全文4本)と1枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
範囲 —
収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない

QUEST

種別
装置
論文数
55 本
初出
1995–1999 年(1本)
最盛期
2015–2019 年0.21%
直近
2025–2029 年0.15%
主な装置
quest

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