TEXTは、核融合・プラズマ物理学の装置。米国テキサス大学オースティン校に建設された中規模トカマクで、乱流輸送やミクロ不安定性、周辺プラズマの揺動計測に広く用いられた。後に中国へ移設されJ-TEXTと改名され、摂動磁場やディスラプション制御の研究に供されている。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは227本ある。比重が最も大きかったのは2020–2024年で、その期間の論文の0.67%を占めた。直近の2025–2029年では0.52%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1980年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
Tokamak at University of Texas
解説
TEXT(後にTEXT-U、さらにJ-TEXT)は、もともとアメリカ・テキサス大学オースティン校で建設・運転された中型トカマク装置であり、2004年に中国へ移設されて「ジョイントTEXT(J-TEXT)」として再建された。装置本体は円環状の真空容器とトロイダル磁場コイルからなる標準的なトカマクで、図に示すように容器の周囲には十数個の計測ポートが等間隔に配置され、そこから各種診断装置がプラズマにアクセスする構造をしている。

fig.1 Dynamic evolution of periodic collapse and carbon impurity distribution at the plasma boundary with magnetic islands on J-TEXT (2026) · CC BY 4.0
Layout of plasma diagnostics on J-TEXT.
図はJ-TEXTの診断装置配置を上から見たもので、ポート01からポート13までのポートのほか、ミルノフコイル、ドップラー反射計(DBS)、電子サイクロトロン放射計測(ECE)、偏光・干渉計(POLARIS)、往復型ラングミュアプローブ、リミタや対称ターゲットの位置が示されている。このように一つの中型装置に多様な境界・コア診断を集中させ、閉じ込め、磁気流体力学(MHD)、ディスラプション、三次元磁場制御という幅広い研究を同一装置上で行うのが、この装置の運用思想である。
歴史:テキサスのTEXTから中国のJ-TEXTへ
TEXTは1970年代にテキサス大学で建設されたオーミック(誘導電流のみの)トカマクで、主にプラズマ輸送、特に乱流による異常輸送の実験的研究の拠点として知られた。高密度オーミック放電における密度揺動の分光測定から、イオン反磁性方向へ伝搬する揺動モード、すなわちイオン圧力勾配駆動(ηi)不安定性に起因する乱流の存在が示され、エネルギー閉じ込め時間の飽和がこのイオン乱流の発生と対応することが報告された。またペレット注入で密度分布を急峻にするとこのイオン成分が抑制されることも観測され、乱流スペクトルの変化と閉じ込め特性の変化を直接結びつける研究スタイルが確立された。エルゴディック磁気リミタ(動的エルゴディックダイバータ)による境界磁場の三次元制御の先駆的実験もTEXTで行われている。
装置はその後TEXT-Uとして改造され、2004年に解体されて中国・華中科技大学へ移送された。再組み立てと周辺機器の開発を経て2007年春に再建が完了し、同年末に最初のプラズマが得られた。以降、J-TEXTは中国国内の主要な中型トカマク研究拠点の一つとして、大学主導の装置ならではの柔軟な実験計画と、学生教育を兼ねた診断・電源系の自前開発を特徴として運転されている。
装置設計と運転パラメータ
J-TEXTは中型トカマクであり、再建直後の標準的なオーミック放電では、プラズマ電流は最大約220 kAのフラットトップを約300 ms維持し、トロイダル磁場は2.2 T、線平均密度は2×10^19 m^-3以上、電子温度は約800 eVに達する。この規模は、閉じ込め物理やMHDの研究に十分なプラズマ条件を、比較的短いサイクルと低コストで提供するものである。
再建後の運転の中で装置は段階的に拡張されている。真空容器内のリミタ配置を変更してダイバータ配置を取れるようになり、リミタ配置とダイバータ配置の両方でのプラズマ水平位置制御が課題となった。また電子サイクロトロン加熱(ECH)を起動時の補助に用いる実験や、プラズマ電流変調用電源、磁場摂動コイル用の急峻な立上がり・立下りを持つパルス電源など、運転シナリオを支える電源系の開発も進められた。電極バイアスシステムも整備されており、境界に電極を介して電流を注入することでプラズマ閉じ込めやトロイダル回転を能動的に変化させる実験が可能である。
診断システム
J-TEXTの研究を特徴づけているのは、高時間・高空間分解能の診断系を装置と一体で開発してきた点である。中核となるのは遠赤外レーザを用いた三波方式の偏光・干渉計で、電子密度とファラデー回転角(したがって電流密度分布)を同時に、時間応答1 µs、位相分解能0.1°未満、空間分解能約3 cmで測定できる。この分解能により、ソートゥース崩壊やティアリングモードに伴う高速な平衡動態や密度・磁場摂動を追うことができ、電流密度分布の再構成も行われている。
境界診断としては、多チャンネルのドップラー反射計がオーミック閉じ込め領域の広い半径範囲(r/a ≈ 0.3–0.8)で30–140 kHzの準コヒーレントモードを電子反磁性方向の伝搬として検出し、微細乱流の測定に用いられている。往復型ラングミュアプローブアレイは境界の電位・流速・揺動を多点で計測し、静電的揺動の条件付き解析やゾーナルフロー、磁気島周辺の流れの研究に使われる。その他、ガスパフイメージング診断、ソフトX線アレイによる逃走電子ビームの直接観測、Ar XVIIのKα線を用いたX線結晶分光計(電子温度約750 eV、ドップラー幅からイオン温度約330 eVを得る)、電子・イオン温度を同時に測れる阻止電場分析器、ECE計測、CHIとHαの観測などが整備され、図のポート配置に沿ってプラズマの周方向をカバーしている。高速データ収集とリアルタイム処理にはFPGAベースのシステムが用いられ、ディスラプション予測への応用も行われている。
磁場摂動と配置制御
J-TEXTの研究プログラムの柱の一つは、共鳴磁場摂動(RMP)による三次元磁場トポロジーの制御である。RMPコイル系は最大回転周波数6 kHzの回転螺旋磁場摂動を発生でき、主な共鳴成分としてm/n = 2/1、3/1、1/1(mは極方向、nは環方向のモード数)を選べる。摂動コイルが作る半径方向磁場の二次元フーリエスペクトルと、それに基づくポアンカレープロットから、プラズマ境界に磁気島鎖と確率的(エルゴディック)領域が形成される様子が予測・検証されている。

fig.1 Dynamic characteristics of edge plasma profiles during the opening of edge islands on the J-TEXT tokamak (2024) · CC BY 4.0
(a) Layout of the RMP coils in J-TEXT, and the position of the reciprocating Langmuir probe. (b) 2D Fourier (m, n) spectrum of the radial magnetic field {B_r} generated by RMP coils at the plasma edge. (c)–(d) Poincaré plots of the plasma cross-section {\phi _{{\text{tor}}}} = {337.5^\circ } for first and second RMP configurations, with three limiters at {\phi _{{\text{tor}}}} = {337.5^\circ } indicated by black rectangles. The real parameter settings used in the prediction of magnetic topology are from discharges 1056901 and 1056898.
図はJ-TEXTのRMPコイル配置と、コイル電流が作る半径方向磁場のモードスペクトル、および境界磁場トポロジーのポアンカレープロットを示す。下段の二つのパネルでは、リミタ位置(下部・内側・上部)を黒帯で示しつつ、摂動の設定の違いによって境界に磁気島や確率化領域がどう現れるかが対比されている。
RMPとプラズマの相互作用については、適度な振幅の摂動が密度限界をグリーンウォルド密度の0.7倍未満から0.85倍程度へ引き上げたり、端部安全係数qaを2.15からほぼ2.0まで下げたりする効果が観測された。m/n = 3/1が支配的な摂動では、電子密度がまず3/1有理面の内側で増加し(その外側では減少し)、その後端部リサイクリングの増強とともに全体的に増加する。また十分に大きな摂動ではm/n = 2/1ティアリングモードのロッキングが起こり、逆に適度な振幅では同モードの抑制が観測され、これらは縮約MHD方程式に基づく非線形シミュレーションで再現されている。摂動コイル電流が5 kA以下の範囲ではトロイダル速度が増加して半径方向電場が減少し、6 kAに達すると最後の閉じた磁気面近くでトロイダル速度分布が平坦化する。磁気島の内部では低周波ゾーナルフローが減衰する一方、島の境界では増大し、測地音響モード(GAM)は境界領域の大部分で減衰する。境界乱流、GAM、ティアリングモードの間の多スケール相互作用、すなわちマクロMHDが乱流を変調し、乱流がゾーナルフローやシード磁気島を駆動しうる因果関係の解明も、ウェーブレット・バイスペクトルや転移エントロピーを用いて進められている。
RMPで形成された端部磁気島は、ダイバータ研究の舞台にもなった。J-TEXTではRMPコイルを用いて端部のm/n = 3/1磁気島をターゲット板に接続するアイランドダイバータ配置が初めて実現された。アイランドダイバータは元来ステラレータ(W7-AS、LHD、W7-Xなど)で発展した概念で、磁力線のピッチが小さく接続長が長いため有効な半径方向輸送が増大し、ターゲットのピーク熱負荷が下がるのが特徴である。J-TEXTでは3/1および4/1配置での不純物輻射構造、排熱能力、不純物遮蔽効果が調べられ、磁気島とリミタの位相関係が炭素不純物の遮蔽に影響すること、島が開く過程で境界平衡プロファイルが動的に変化することが観測された。さらにRMP印加下のオーミック放電では、境界の三次元磁気トポロジー自体が不安定化し、磁気島を伴う周期的崩壊イベントが起こることが見いだされている。これはペデスタルのない境界でも崩壊が起こりうることを示すもので、ステラレータで観測された境界磁気島の自励振動・周期崩壊と共通の現象と考えられている。
研究プログラム:閉じ込め、MHD、ディスラプション
閉じ込め研究では、TEXT時代からの輸送解析の伝統がJ-TEXTに引き継がれている。ガスパフによる密度変調実験から粒子拡散係数と対流速度が評価され、ソートゥース崩壊はコア密度分布を部分的にしか平坦化せず、崩壊間の回復から中心まで及ぶ内向きピンチ速度の存在が示された。ネオン注入では一定量を超えた場合にのみ逆ソートゥース様の活動が誘発され、ヘリウムやアルゴンでは起こらないという不純物依存性が確認された。電極バイアスによる閉じ込め改善や、バイアス下でのトロイダル回転変調を用いた運動量輸送の研究も行われている。
MHDとディスラプション研究はJ-TEXTのもう一つの中心課題である。ソフトX線アレイによりディスラプション後の逃走電子ビームが直接可視化され、高密度放電でのディスラプションではMARFE(端部の多面非対称放射)に伴う局所電流収縮が放電を直接終端させうることが確認された。逃走電子対策として、ディスラプション時にm/n = 2/1支配のRMPを印加すると逃走電子の生成が減り、ディスラプション前に印加すれば逃走電流の振幅と持続時間の両方が短縮される。またモードロッキングによっても逃走電子が抑制される。RMPによる逃走電子輸送への影響は数値シミュレーションでも調べられている。ディスラプション予測にはニューラルネットワークと異常検知を組み合わせた手法が適用され、初期放電相で逃走電子が励起する高周波不安定性の特性も調べられている。このように、中型装置で得られた知見が、ディスラプション緩和、逃走電子抑制、境界の熱・粒子排気という将来炉の主要課題に直接結びつけられているのが、TEXTからJ-TEXTへと続くこの装置系の研究の位置づけである。
この解説が根拠にした論文から
- The reconstruction and research progress of the TEXT-U tokamak in ChinaNuclear Fusion 2011
- Experimental evidence for ion pressure gradient driven turbulence in TEXTNuclear Fusion 1989
- Recent research work on the J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2013
- Overview of the recent research on the J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2015
- Progress of recent experimental research on the J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2017
- Dynamic characteristics of edge plasma profiles during the opening of edge islands on the J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2024
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推移
研究の変遷
1970–19841本 · 0.04%
TEXTトカマクにおける輸送研究の端緒
この時代の論文は1件のみであり、TEXTトカマクにおける輸送研究を扱っている。コーパス全体に占める割合は極めて小さく、主題は萌芽的な段階にある。
この時代の論文から
- Transport studies in the TEXT TokamakPlasma Physics and Controlled Fusion 1984
1985–199426本 · 0.48%
TEXTトカマクの乱流・輸送研究の展開
この時代の論文は、微視的乱流のスペクトルと空間分布、共鳴磁場印加による電子熱輸送および粒子輸送、イオン圧力勾配駆動乱流、ペレットアブレーションのダイナミクスなどを扱っている。同時に、サテライト振動、反射計測、重イオンビームプローブなどの診断技術や不純物、周辺プラズマの話題と関連づけられており、JETとの比較も見られる。
同時に語られた主題鋸歯状振動、リフレクトメトリー、粒子輸送、イオンビーム、イオンビームプローブ、不純物
この時代の論文から
- The spectrum, spatial distribution and scaling of microturbulence in the TEXT tokamakNuclear Fusion 1987
- Electron thermal confinement studies with applied resonant fields on TEXTNuclear Fusion 1989
- Particle transport studies with applied resonant fields on TEXTNuclear Fusion 1990
- Experimental evidence for ion pressure gradient driven turbulence in TEXTNuclear Fusion 1989
1995–200412本 · 0.12%
診断技術と周辺プラズマ物理への移行
この時代の研究は、2MeV重イオンビームプローブによる密度揺動のバルーニング特性、MHD力学からの誤差磁場測定、スクレイプオフ層の上下非対称性、ダイバータへの熱流束の正確な測定など、プラズマ周辺部の物理と診断技術に焦点を当てている。また、ニューラルネットワークによるディスラプション予測も登場している。
同時に語られた主題イオンビーム、イオンビームプローブ、重イオンビーム、スクレイプオフ層、プラズマ乱流、プラズマ電位
この時代の論文から
- Forecast of TEXT plasma disruptions using soft X rays as input signal in a neural networkNuclear Fusion 1999
- Ballooning characteristics in density fluctuations observed with the 2 MeV heavy ion beam probe on the TEXT-U tokamakNuclear Fusion 1996
- TEXT-U error field measured from MHD dynamicsNuclear Fusion 1998
- Investigation of scrape-off layer up-down asymmetries in diverted plasmas in TEXT-UpgradeNuclear Fusion 1999
2005–201429本 · 0.19%
J-TEXTトカマクとしての再構築と共鳴磁場摂動研究
この時代は、中国におけるTEXT-Uの再構築とJ-TEXTトカマクとしての研究再開を背景に、共鳴磁場摂動の浸透、粒子輸送の促進、磁気島の回転加速などの研究が行われている。干渉計、X線イメージング、EPICS制御システムなどが併せて議論されている。
同時に語られた主題共鳴磁場摂動、磁場摂動、干渉計、X線イメージング、EPICS、CODAC
この時代の論文から
- The reconstruction and research progress of the TEXT-U tokamak in ChinaNuclear Fusion 2011
- Recent research work on the J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2013
- Study of the penetration of resonant magnetic perturbations in J-TEXTNuclear Fusion 2014
- Enhanced particle transport caused by resonant magnetic perturbations in the J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2014
2015–2026159本 · 0.64%
ディスラプション制御と3次元磁気摂動の展開
この時代の研究は、J-TEXTトカマクにおけるプラズマディスラプションの予測と回避、ランダウェイ電子の生成、3次元磁気摂動の物理と応用、ティアリングモード、電子サイクロトロン加熱など多岐にわたる。また、ITERやASDEX-Upgradeとの関連も見られる。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題プラズマディスラプション、磁場摂動、共鳴磁場摂動、電子サイクロトロン加熱、逃走電子、テアリングモード
この時代の論文から
- Plasma flows and fluctuations with magnetic islands in the edge plasmas of J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2015
- Overview of the recent research on the J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2015
- Hybrid neural network for density limit disruption prediction and avoidance on J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2018
- Runaway electron generation during disruptions in the J-TEXT tokamakNuclear Fusion 2017
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文120本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、9本の論文(うち全文4本)と2枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
