\bar{P}_\mathrm{d} from the electrons (curvature dynamics) to the perturbation of the electrostatic potential in velocity space. \bar{P}_\mathrm{d} is here derived from the semi-analytical model. (a) a case where FMW effects are not included (D = 0), and (b) a case where they are included (D = 1). In the latter, the positive contribution to the energy exchange arises from particles with low v_\parallel (deeply trapped).
TEM の駆動源は大きく二つに分けられる。第一は電子密度勾配である。密度勾配があると、捕捉電子の進動ドリフトと擾乱の共鳴を通じて、勾配の自由エネルギーが波に移転する。この駆動は捕捉イオン温度勾配モード(ITG モード)と対をなすもので、電子が非断熱応答を示すことが本質である。密度勾配駆動の TEM は、密度勾配が平坦化されると駆動を失うため、密度勾配のスケール長が成長率を直接支配する。第二は電子温度勾配(ETG)駆動である。温度勾配は捕捉電子のバウンス運動に伴う圧縮・膨張の位相膨張の位相遅れを通じて駆動を与え、密度勾配が弱い条件でも不安定化しうる。どちらが支配的になるかは、密度勾配と温度勾配の相対的な大きさ、衝突頻度、そして磁気シアや形状などの平衡パラメータで決まる。
進動ドリフトの共鳴条件が駆動の鍵を握るという点は、磁気シアやシャフラノフ・シフトが TEM に与える影響からも確認できる。強い負の磁気シアや大きなシャフラノフ・シフトの下では捕捉電子の進動ドリフトが反転しうることが示されており、進動ドリフトの反転は共鳴条件を崩して異常電子熱伝導を大きく低減する。この機構は、負磁気シア配置で電子内部輸送障壁(電子 ITB)が形成される実験的観測――例えば JT-60U の開始条件――と良く整合するとされる。すなわち TEM の安定・不安定は、単なる勾配の大きさだけでなく、捕捉電子の共鳴が成立するかどうかという運動論的な条件で決まるのである。
The precession frequency of trapped particles vs the bounce angle θb for \alpha_{m} = 0, κ = 1.2 for positive δ = 0.5 (blue) and negative \delta = -0.5 (red) triangularities.
TEM は衝突の役割によって二つのレジームに分けられる。第一は無衝突捕捉電子モード(CTEM)である。これは衝突がほぼ無視できる高温プラズマで起こり、前節に述べた進動ドリフト共鳴によって駆動される。衝突はむしろ共鳴する捕捉電子の位相記憶を壊すため、CTEM に対しては衝突は一般に安定化方向に働く。実際、ジャイロ運動論的シミュレーションは、成長率が衝突頻度の増加とともに低下することを示している。第二は散逸的捕捉電子モード(DTEM)である。これは衝突頻度が進動周波数や擾乱周波数と同程度以上の条件下で、衝突による捕捉電子の脱捕捉(トラップからの解放)と再分布が位相遅れを生み、その散逸性が駆動源となるものである。DTEM では衝突が不安定化に必要な要素であり、衝突頻度の増加が成長率を高める方向に働く。同じ「捕捉電子モード」でありながら、衝突に対する応答が正反対になる点がこの分類の本質である。
どちらのレジームが現実の装置で支配的かは自明ではない。例えばトカマク H モードのペデスタル(階段状勾配領域)で観測されるエッジコヒーレントモードの性質をめぐって、散逸的 TEM としての描像と無衝突 TEM としての描像がシミュレーション間で対立しており、衝突頻度、勾配の急峻さ、平衡詳細のどれが支配的かの判定が現在も検討されている。一般には、勾配が中程度の条件では衝突は TEM を強く安定化する方向に働くのに対し、勾配が急峻な条件では性質の異なる二つの不安定分岐が現れ、衝突の効果が分岐ごとにほぼ逆になることが知られている。このように衝突の役割は一意的でなく、勾配レジームと密接に絡み合う。
TEM が非線形段階に達すると、乱流は径方向の粒子・熱輸送を駆動する。この輸送は古典的・新古典的輸送予測を大きく上回る「異常輸送」として現れ、実験で観測されるヘリウム灰や燃料イオンの径方向輸送の主要候補とされる。実際、無衝突 TEM 乱流がヘリウム灰の異常輸送の支配的機構であることを示す観測例があり、理論的にも TEM 乱流によるヘリウム灰と重水素・三重水素イオンの同時輸送が準線形解析で調べられている。それによれば、TEM 駆動の拡散が対流を上回る条件では灰の排出が促進され、電子温度の上昇や密度勾配の平坦化、同位体効果が輸送レベルと灰・燃料の輸送比を変えることが示されている。燃焼プラズマでは灰の濃度を一定以下に保つことが点火の要件であり、TEM 乱流が灰排出に有利に働くかどうかは炉設計に直結する問題である。
Electrostatic potential amplitude e\left| \phi \right|/{T_{\text{e}}} on the poloidal plane with triangular cross-section at ζ = π/5 for (a) linear phase at t = 16 (where a section of the upper panel is enlarged to show mode structure details), and (b) nonlinear phase at t = 32. The left side is facing the geometry center. Color bars are the same as that in figures 1(c) and (d).
TEM の安定性は磁気幾何に強く依存する。断面の伸長は TEM の成長率を下げる方向に働くことが知られる。三角形度については、負の三角形度(逆三角形化)が TEM を安定化することが線形・非線形シミュレーションと実験の双方から示されており、TCV や DIII-D で負三角形度配置が L モードのまま閉じ込めを改善することが確認された。その物理は、モードの空間的な広がり(有限モード幅)を考慮すると理解しやすい。モードが広がると不安定化への寄与は深く捕捉された電子に偏るが、負三角形度では深く捕捉された電子の寄与が正三角形度の場合より不安定化に不利に働くため、全体として安定化される。単純な局所分散関係のモデルでは負三角形度がむしろ不安定化と予測される場合があり、安定化が現れるのは有限軌道幅効果とモード構造、あるいは十分に大きな磁気シアを取り入れた場合である。このように線形成長率の低下だけでは実験で見られる輸送低減量を説明できず、非線形飽和機構――とくに負三角形度で強まるゾーナルフローせん断――が本質的な役割を果たす。また、負三角形度では捕捉粒子の割合そのものはむしろ減少するなど、複数の効果が競合するため、単一の指標では説明がつかない。
幾何依存性はトカマクに限らない。準等ダイナミック(quasi-isodynamic)ステラレータでの全局ジャイロ運動論的シミュレーションは、密度勾配によって強く励起される TEM が、磁気曲率が不利で磁場が弱いトーラス内側(捕捉電子の割合が大きい領域)に局在することを示した。非軸対称系でも TEM 乱流の同位体効果が普遍的であることがシミュレーションで確認されており、TEM の物理が軸対称性に本質的に依存しない側面を持つことが分かる。一方、ヘリカル装置やミラー装置でも捕捉電子は重要な役割を果たす。例えば熱障壁タンデムミラーでは、磁気的に捕捉された電子がプラグポテンシャル(端部の静電障壁)の形成に影響し、またヘリオトロン装置では電子サイクロトロン電流駆動(ECCD)の効率が捕捉電子の存在によって変化する。さらに高周波(RF)注入下では捕捉電子の共鳴ピンチが径方向電場を生成し、輸送制御の手段となりうる。このように捕捉電子の効果は、微視的不安定性から端部ポテンシャルや電流駆動に至るまで、環状・開放系を問わず磁場閉じ込めプラズマの広い現象に及んでいる。
不純物と同位体も TEM に系統的な影響を与える。不純物は有効電荷と密度勾配スケール長を変化させることで TEM の成長率を変え、不純物の密度勾配の向きと大きさが安定化・不安定化を決める。不純物はまた衝突頻度を高めるため、散逸的レジームとの絡みで TEM に影響する。不純物存在下での ITG モードと TEM の結合も調べられており、両モードの競合が輸送チャネル(イオン熱・電子熱・粒子)の配分を決める。同位体効果については、水素の同位体質量を変えると TEM 乱流による輸送レベルが変化し、トカマクとヘリカル系の双方で普遍的な依存性が確認されている。不純物の存在はこの同位体依存性を修飾し、また逆に同位体効果はヘリウム灰と D-T 燃料イオンの輸送比にも影響して、灰を燃料より効率的に排出できるパラメータ領域の存在を示唆する。密度勾配が逆転したプロファイル(逆密度プロファイル)下での TEM の性質、電子内部輸送障壁との関係、三次元磁場擾乱と有限ベータの効果など、TEM の安定性を左右する平衡パラメータの探索は現在も続いており、捕捉電子の運動論は磁気閉じ込め核融合の輸送予測と制御の中核的要素であり続けている。