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プラズマフォーカス

Plasma focus

プラズマフォーカス(Plasma focus、focus、focus device)は、核融合・プラズマ物理学の装置。パルス放電で同軸電極間に電流シースを形成し、軸方向へのピンチ圧縮によって高温高密度プラズマを生成する装置である。加速されたイオン・電子ビームやX線、核融合中性子をパルス放射線として発生し、材料照射や小型中性子源への応用が進められている。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは256本ある。比重が最も大きかったのは1980–1984年で、その期間の論文の0.66%を占めた。直近の2025–2029年では0.33%。

目次

  1. 1解説
  2. 2推移
  3. 3研究の変遷
  4. 4よく登場する装置
  5. 5関連項目
  6. 6この数字の作り方

解説

プラズマフォーカス(plasma focus、密集プラズマフォーカス、dense plasma focus)は、同軸電極間の大電流パルス放電を用いてプラズマを自磁場で圧縮し、高密度・高温のピンチ(緊縛)プラズマを瞬間的に形成するZピンチ系の装置である。数キロジュールから数メガジュール級のコンデンサバンクで駆動され、重水素ガス中での放電では核融合反応によるパルス中性子、さらに軟・硬X線や高速イオン・電子を短時間(数十ナノ秒程度)に強く放出するため、安価で構造の単純なパルス放射線源として、また高電流密度プラズマ物理の研究手段として広く研究されてきた。

A schematic of the mobile-head miniature plasma focus device (drawing not to scale; all dimensions are in cm).

fig.1 Development of a portable pulsed fast ⩾106 neutron generator based on a flexible miniature plasma focus tube (2023) · CC BY 4.0

A schematic of the mobile-head miniature plasma focus device (drawing not to scale; all dimensions are in cm).

図は小型のプラズマフォーカス装置全体の構成を示したものである。陰極とプラズマ室を兼ねる筒状電極、中心の陽極、両者を隔てる絶縁スリーブからなる放電ヘッドが、トリガ式スパークギャップを介してコンデンサバンクに接続されており、装置がいかに単純な部品の組み合わせで成り立つかが分かる。

放電の各相:ランダウンと半径方向インプロージョン

プラズマフォーカスの動作は、いくつかの相に分けて理解される。まずスイッチの閉鎖により電極間に大電流が流れると、絶縁スリーブに沿って形成されたプラズマシース(電流シース)が、自己磁場のJ×B力によって陽極に沿って軸方向に加速される。これがランダウン相であり、典型的な軸方向速度は毎秒10 cm前後(すなわち10⁵ m/sのオーダー)に達する。シースが陽極端に到達すると今度は半径方向に内側へ絞り込まれ、いわゆるラジアルインプロージョン相を経て、軸上に高密度のピンチ柱が形成される。この圧縮過程は、雪押し(スノープラウ)モデルとして知られる二次元解析モデルや、放射磁気流体シミュレーションによって解析されており、シースの薄さや圧縮速度が中性子収率に影響することが示されている。

圧縮の最終段階では、ピンチ柱は密度の高い細い柱となり、しばしばホットスポットと呼ばれる局所的な高密度・高温領域を複数形成する。またm=0型の不安定性による局所的なくびれが生じると、それが崩壊する際にさらに強い電場が誘起され、重陽子などの高速イオンが軸方向に加速される。ピンチ形成後のプラズマ柱の時間発展は、軟X線・真空紫外線ピンホールカメラによる多フレーム撮影など、時間分解イメージングで直接観測されており、数ナノ秒間隔で進行する半径方向圧縮の様子や最小ピンチ半径の決定が行われている。

Analysis of four-frame image (VUV/SXR pinhole camera) from an exemplary discharge #22113002 in 280.3 Pa of 98.9%D2 + 1.1%Ar (in relation to the total mass) gas mixture in the PFZ-200 device. The first frame (#1) of the image was captured 13(±5) ns before tp1 and 25(±5) ns before tp (see figure 3). Successive frames were registered with a delay of approximately 5 ns. At the marked distance ‘d’, the radial compression velocity was determined. The fourth frame allowed the minimum pinch radius to be determined using the successively plotted profiles of plasma emissivity.

fig.4 D–D fusion neutron emission and plasma compression in a small-sized plasma focus operating with D2 and D2+Ar gas mixtures (2026) · CC BY 4.0

Analysis of four-frame image (VUV/SXR pinhole camera) from an exemplary discharge #22113002 in 280.3 Pa of 98.9%D2 + 1.1%Ar (in relation to the total mass) gas mixture in the PFZ-200 device. The first frame (#1) of the image was captured 13(±5) ns before tp1 and 25(±5) ns before tp (see figure 3). Successive frames were registered with a delay of approximately 5 ns. At the marked distance ‘d’, the radial compression velocity was determined. The fourth frame allowed the minimum pinch radius to be determined using the successively plotted profiles of plasma emissivity.

図はピンチ圧縮の最終段階を4フレームの軟X線・真空紫外線像で捉えたものである。重水素に少量のアルゴンを混ぜた放電の例で、約13 ns前から約5 ns間隔で写された各フレームに、圧縮速度を決定した距離dや、第4フレームから求めた最小ピンチ半径が示されている。

核融合機構と粒子放出

重水素ガスを用いたプラズマフォーカスでは、D–D反応による2.45 MeV中性子が主要な生成物である。その生成機構としては、ピンチ内の熱プラズマによる熱核融合と、ピンチから加速された数十から数百keVの重陽子が周囲の冷たいガスや電極と衝突して反応を起こすビーム・ターゲット機構の二つが考えられており、実験的に得られる中性子スペクトルの異方性や非熱的成分の観測は、後者の寄与が支配的であることを示唆している。これはピンチ温度が典型的には1 keV未満にとどまる一方、誘起電圧によって生じる重陽子ビームのエネルギーがそれをはるかに上回るためである。中性子はパルス幅数十ナノ秒の短いバーストとして全方向に放出され、その収率は装置の蓄積エネルギーや放電電流に対して経験的なスケーリング則にほぼ従う。高速重陽子の一部は自己組織化した磁場構造の中で閉じ込められることも示唆されており、非熱的過程の理解は現在も続く研究課題である。

スケーリング、最適化とモデリング

中性子収率は蓄積エネルギーE₀や放電電流に対して増加するが、その挙動は単純ではない。大型装置での実験比較では、高エネルギー・大電流域で収率の飽和傾向が観測されており、これを電気力学的考察から予測する立場と、数値実験では飽和なしに増加が続くとする立場が対立してきた。数値モデリングでは、リー・モデル・コードと呼ばれる回路・プラズマ結合モデルが広く用いられ、数百ジュールから数メガジュールに及ぶ幅広い装置でD–D中性子収率の最適充填圧力や、収率のピンチ電流・蓄積エネルギーに対するスケーリング則が導かれている。例えば数メガジュール級の重水素プラズマフォーカスでは、10¹³発程度の中性子収率が3 MJの蓄積エネルギーで到達可能とする数値実験結果が報告されている。また陽極先端を円錐状にテーパ化するとピンチの開始半径が減って温度が上昇し、熱核融合成分が支配的になり得るという解析もあり、ビーム・ターゲット型から熱核融合型への機構転換を狙った装置改良が試みられている。さらに重水素にクリプトンやネオンなどの希ガスを少量混ぜると放射冷却によって圧縮が強まる可能性が指摘され、混入ガス種・濃度によって中性子収率が増減する複雑な挙動が、小型から大型まで多くの装置で報告されている。ただしその効果は装置の最適化状態に依存し、最適化された装置では増加が見られない場合もある。

パルス中性子源・X線源としての応用

プラズマフォーカスが実用上特に重要なのは、パルス中性子源としての利用である。加速器型の密封中性子管と同じD–DおよびD–T反応を用いながら、イオンが装置の幾何構造自身によって数keVから数百keVまで自己加速される点が異なり、構造が単純で経済的、かつ部品の多くが低コストで交換可能である。サブジュール級から数百ジュール級の小型・可搬型装置では10⁴から10⁶中性子/パルス程度、数キロジュール級のコンパクトな装置では10⁸中性子/パルス超のD–D中性子収率が報告されており、パルス幅は数十ナノ秒ときわめて短い。このような特性から、安全性検査や物質分析、ボーリング孔内調査用の中性子プローブ、生物・医学研究など、従来のPu–Beや²⁵²Cf線源に代わる可搬型パルス高速中性子源としての開発が進められている。中性子に加えて、軟・硬X線のパルス源としてリソグラフィやラジオグラフィ、材料照射への利用も行われており、放電ごとに放射線が強く出るという特性は、第一壁材料の核融合炉環境照射試験のような短パルス・高強度照射を要する用途に適している。

この解説が根拠にした論文から

  • [1]Comparative analysis of large plasma focus experiments performed at IPF, Stuttgart, and IPJ, ŚwierkNuclear Fusion 1989
  • [2]Current and neutron scaling for megajoule plasma focus machinesPlasma Physics and Controlled Fusion 2008
  • [3]High yield (⩾108/pulse) DD neutron generator based on a compact, transportable and low energy plasma focus devicePlasma Physics and Controlled Fusion 2021
  • [4]Thermonuclearizing the plasma focus—converting plasma focus fusion mechanism from beam-gas target to thermonuclearPlasma Physics and Controlled Fusion 2022
  • [5]Numerical experiments on the total D–D fusion neutron yield versus deuterium pressure for different energy plasma focus devices using the Lee model codePlasma Physics and Controlled Fusion 2023
  • [6]Development of a portable pulsed fast ⩾106 neutron generator based on a flexible miniature plasma focus tubePlasma Physics and Controlled Fusion 2023

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推移

0.00.40.8プラズマフォーカス197019801990200020102020%
図1 — プラズマフォーカスが、5年ごとにその期間の全論文に占めた割合。コーパスは2010年代が1970年代の9倍あるため、件数のままでは何もかもが増加して見える

研究の変遷

1970–198413本 · 0.53%

中性子収量と高速重陽子の基礎過程

この時代のplasma focus研究は、Neutron yieldと高速重陽子の挙動を中心に進められた。Thomson scatteringやPlasma diagnosticsと並んで、非熱過程の証拠や粒子ビーム発生が報告され、1-MJ級装置やNeutron pinhole cameraによる時空間構造の解明が試みられた。総タイトルに占める割合は0.53%であり、基礎過程の解明が主眼であった。

同時に語られた主題中性子収量、トムソン散乱、プラズマ診断、中性子源

この時代の論文から

  • [1]Particle beams generated by a 6–12.5 kJ dense plasma focusNuclear Fusion 1982
  • [2]Similarity theory and increased neutron yield in a plasma focusNuclear Fusion 1973
  • [3]Evidence of non-thermal processes in a 1-MJ plasma focus device by analysing the neutron spectraNuclear Fusion 1978
  • [4]Neutron pinhole camera investigations on temporal and spatial structures of plasma focus neutron sourceNuclear Fusion 1982

1985–199429本 · 0.53%

イオンビームと加速機構の比較検討

この時代は、Fast ion kineticsと核融合反応機構の考察が進み、軸方向イオンビームの時間分解エネルギー計測が行われた。また、シュトゥットガルトとシフィエルクの大型実験の比較分析や、上限圧力限界に基づく設計の臨界解析が現れ、1988年のWorkshop on Z-Pinch and Plasma Focusの報告がまとめられた。総タイトルに占める割合は前期と同じ0.53%で、プラズマ診断とイオン加速の理解が深まった時期である。

同時に語られた主題プラズマ診断、散乱計測、プラズマシース、中性子収量、中性子源、イオンビーム

この時代の論文から

  • [1]Fast ion kinetics and fusion reaction mechanism in the plasma focusNuclear Fusion 1987
  • [2]Comparative analysis of large plasma focus experiments performed at IPF, Stuttgart, and IPJ, ŚwierkNuclear Fusion 1989
  • [3]Time resolved energy spectrum of the axial ion beam generated in plasma focus dischargesNuclear Fusion 1993
  • [4]Critical analysis of Plasma Focus design based on the implications of an upper pressure limitNuclear Fusion 1985

1995–200421本 · 0.21%

軟X線・不安定性と多様化する研究

この時代のplasma focus研究は、Soft x-rayやStimulated Raman scattering、Rayleigh-Taylor instabilityといった現象と並行して進められた。Particle-in-cell法による建模や、球状収束イオンフォーカスの核融合反応性の特性評価、低エネルギー装置でのイオンビーム・中性子生成の計測が行われた。総タイトルに占める割合は0.21%に低下し、X-ray偏光によるhot spots研究など、関心が多様なテーマへ広がった。

同時に語られた主題軟X線、誘導ラマン散乱、レイリー・テイラー不安定性、ラマン散乱、プラズマシース、粒子セル法

この時代の論文から

  • [1]Fusion reactivity characterization of a spherically convergent ion focusNuclear Fusion 1998
  • [2]Measurements of charged particle beams from plasma focus dischargesNuclear Fusion 2001
  • [3]X-ray polarization studies of plasma focus experiments with a single hot spotsNuclear Fusion 2004
  • [4]Ion-beam and neutron production in a low-energy plasma focusPlasma Physics and Controlled Fusion 1996

2005–201475本 · 0.49%

モデル化と応用への展望

この時代は、Sing LeeのモデルをFilippov型geometryに適応するなど理論モデルの発展が顕著であった。Plasma sheathやHard X-ray、Neutron emissionの研究が増加し、New trends and future perspectivesやProgress in plasma focus research and applicationsという総説的なタイトルも現れた。総タイトルに占める割合は0.49%に回復し、予備電離による再現性のあるNeutron emissionの実現も報告された。

同時に語られた主題プラズマシース、中性子放出、硬X線、中性子源、イオンビーム、重水素

この時代の論文から

  • [1]New trends and future perspectives on plasma focus researchPlasma Physics and Controlled Fusion 2005
  • [2]Adaptation of Sing Lee's model to the Filippov type plasma focus geometryPlasma Physics and Controlled Fusion 2005
  • [3]Progress in plasma focus research and applicationsPlasma Physics and Controlled Fusion 2006
  • [4]Enhanced and reproducible neutron emission from a plasma focus with pre-ionization induced by depleted uranium (U238)Plasma Physics and Controlled Fusion 2006

2015–2026118本 · 0.47%

核融合材料照射とプラズマ・壁相互作用

この時代のplasma focus研究は、DeuteriumやTungstenといった核融合材料との相互作用に焦点が移った。WEST deviceのdivertor設計のための数値モデルや、table top plasma focusによるタングステンターゲットへの照射実験、dense plasma focus 'Bora'装置での核融合関連材料の照射試験が報告された。また、ITERに関連する研究が1件現れ、Fusion neutronやHard X-rayの時間相関も調べられた。

この記述以降に論文が追加されている

同時に語られた主題重水素、タングステン、プラズマシース、硬X線、高エネルギーイオン、中性子収量

この時代の論文から

  • [1]Numerical modelling for divertor design of the WEST device with a focus on plasma–wall interactionsNuclear Fusion 2015
  • [2]Morphological and structural effects on tungsten targets produced by fusion plasma pulses from a table top plasma focusNuclear Fusion 2015
  • [3]Experimental results on the irradiation of nuclear fusion relevant materials at the dense plasma focus 'Bora' deviceNuclear Fusion 2015
  • [4]Neutron energy distribution and temporal correlations with hard x-ray emission from a hundreds of joules plasma focus devicePlasma Physics and Controlled Fusion 2015

よく登場する装置

iter1

関連項目

  • ·高密度プラズマフォーカスDense plasma focus

この数字の作り方

数え方 —
同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている(Plasma focus、focus、focus device など)。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
割合 —
その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
記述 —
その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
冒頭の定義 —
用語そのものの説明だけは、論文104本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
解説 —
では、7本の論文(うち全文2本)と2枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
範囲 —
収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない

プラズマフォーカス

種別
装置
論文数
256 本
初出
1970–1974 年(2本)
最盛期
1980–1984 年0.66%
直近
2025–2029 年0.33%
ほかの綴り
focus、focus device、plasma focus device
主な装置
iter

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