運転制御の面では、放電コマンドシーケンサの整備、リアルタイム制御フレームワークMARTeへの移行、ウェブサービスによる実験データの即時配信といった、現代のトカマク実験に不可欠な計測・制御基盤の構築も進められており、プラズマ位置・電流制御のためのモデル化も行われている。これらは小型機でありながら炉規模装置に近い運転自動化を先取りする試みである。
第一壁・リミッターと壁コンディショニング
全金属壁の装置では、壁からの不純物混入と水素のリサイクル制御がプラズマ性能を直接左右する。FTUでは各実験キャンペーンの開始時にホウ素コーティング(ボロナイゼーション)を行って酸素を除去する。この効果は顕著で、完全にボロン化された最初の約60放電では、オーミック加熱条件下で放射損失が全入力の80%から40%へ減少し、実効電荷数は6から約1.5まで低下する。その後、トロイダルリミッター表面のホウ素膜が侵食されても壁面には膜が残る第二の段階が500放電以上続き、放射損失の低減(約60%)と実効電荷数≈2.0という改善が保たれる。ホウ素膜のリサイクル特性は安定化されて運転の再現性を高め、ゲッター作用は酸素濃度を0.5%以下に保つ。この「膜が削れても効果が残る」挙動は、金属リミッターとステンレス壁という異種表面の組み合わせならではの知見である。
リミッター材としてのモリブデン(TZM合金)は高熱負荷に耐える一方、高Z不純物として放射損失の主要源になる。モリブデン不純物密度と放射損失のスケーリングは、同様の金属壁装置であるAlcator C-Modとの比較で系統的に調べられ、オーミックおよび高周波加熱プラズマでの定量的な整理が行われた。またインコネル製ポロイダルリミッターからの高Z不純物生成に対するアルゴン注入の影響も研究された。
壁の状態をプラズマ中で直接知る手段として、レーザー誘起ブレークダウン分光(LIBS)が導入された。ロボットアームを真空容器内に挿入し、トロイダルリミッターのタイル表面にレーザーを照射してプラズマ発光を分光することで、真空容器を開けずにタイル表面の組成・堆積物をその場で分析できる。図はその装置がトロイダルリミッターのタイルを測定している様子を示す。先端の測定ヘッドがタイル面に向かって配置され、容器内の狭い空間で自動計測を行う。
液体金属リミッターはFTUの近年の中心テーマの一つである。液体リチウムをリミッター表面に供給する運転では、リチウムが主導する放電において密度プロファイルが中心に尖り(ピーク化し)、それに伴うMHD活動の変化が観測された。密度ピーク化因子(中心密度と平均密度の比)が1.7–1.8という閾値を超えると、閉じ込め性能がITER97-Lスケーリングの1.3–1.4倍に自発的に向上する遷移が確認された。この改善は電子熱伝導率が密度の増加とともに低下することで生じ、イオン熱伝導率は新古典理論値に近いまま保たれる。微視的安定性の線形解析は、リチウムがイオン主導の乱流の成長率と位相を変化させて電子・重水素に乱流的な内向きフラックス(ピンチ)を誘起する一方、リチウム自身のフラックスは常に外向きであることを示した。ペレット入射を併用したリチウム化放電では、粒子拡散係数約0.07 m²/sと内向きピンチ速度約0.27 m/sが推定され、ボーム・ジャイロボーム型の予測と定性的に一致する。ネオン注入でも同様の密度ピーク化が得られ、ピーク化と閉じ込め改善の結びつきが不純物種に依存しない普遍的な傾向であることを示唆する。
高周波加熱と電流駆動
FTUは複数の高周波(RF)システムを持ち、それぞれが異なる物理課題に対応する。電子サイクロトロン加熱(ECRH)は140ギガヘルツで運用され、0.3メガワット級の入射でトカマクプラズマの局所的な電子加熱と電流駆動を行う。その主な用途はMHD制御である。中心または軸外への電力入射によってオシレーションの崩壊周期(ソートゥース周期)を能動的に制御でき、最速の変調方式では8ミリ秒の変調周期にソートゥース周期が同期した。崩壊トリガーを臨界シアモデルで記述する輸送コードによるシミュレーションが観測を再現する。また中心・軸外入射のいずれでも密度限界ディスラプションを回避できた。リアルタイムでビームを偏向できる新型アンテナ(プラグイン式で迅速な着脱が可能)が整備され、ソートゥース周期制御とティアリングモード安定化のリアルタイム系の前端アクチュエータとして位置づけられている。ECRHは起動補助にも使われ、垂直入射が斜め入射より効率的で、ブレークダウンに必要な最小電場を3分の1に低減することが示された。変調入射を用いた電子熱輸送研究では、勾配長が駆動する輸送の性格が調べられ、低衝突性プラズマでは変調電力による密度低下と温度上昇が同期して観測され、電子加熱そのものが両者の共通の原因であることが示された。
低域混成波(LH)システムは電流駆動を担う。高密度プラズマでのLH波の侵入と電流駆動効果は、ITER相当以上の密度で明確に実証された。これは外部ポロイダルリミッターの使用、壁のリチウム化、ペレット入射によるエッジ条件の制御によって波とプラズマの結合を最適化した成果であり、高密度での結合改善とスペクトルの広がり低減の関係は完全運動論的な非線形モデルで解釈された。吸収効率の最適化は数理計画法を用いて系統的に行われた。さらにイオンベルンシュタイン波(IBW)実験のための大電力RF部品の開発も行われた。これらのRF実験は、ボロナイゼーションによる不純物低減によって初めて最大入力(累積2.6メガワット、単位体積あたり約1.6メガワット毎立方メートル)までの運転を可能にした。
高密度運転と閉じ込め
FTUの最も際立った成果は高密度領域の系統的探査である。密度制御系と壁洗浄手順の改善により、広い電流・磁場範囲でディスラプション限界までの密度到達が調べられた。その結果、ディスラプション限界の線平均密度はトロイダル磁場に対して線形以上の増加を示す一方、プラズマ電流への依存性は見られなかった。最大密度4.3×10²⁰ m⁻³は磁場8テスラにおいて最小電流の0.5メガアンペアでも達成されており、グリーンウォルド限界の2倍に相当する。電流依存性がない理由は、安全因子が大きいほど密度ピーク化が進むためである。周辺部と中心部の密度限界をつなぐ解析的関係も導かれている。
高密度電子加熱プラズマでは乱流的粒子輸送のパラメータ依存性が調べられ、密度ピーク化と閉じ込め改善の物理が精緻化された。前述の液体リチウム放電での閉じ込め向上(ITER97-Lの1.3–1.4倍)は、電子熱伝導率の密度依存的低下という機構で説明され、この種の「密度が上がると閉じ込めが良くなる」挙動は高磁場・高密度機に特有の知見として、炉設計における密度限界と閉じ込めの両面に示唆を与える。ペレット入射時のMHD活動と閉じ込めへの影響、ペレット注入後に生じる磁気島構造とその回転も観測・解析されている。
MHD安定性・逃走電子と制御
高密度・高磁場運転ではMHD不安定現象と逃走電子が運転上の中心的課題となる。MHDの面では、高周波エネルギーを持つ電子が駆動するフィッシュボーン様不安定性がハイブリッドMHD-ジャイロ運動論コード(HMGC系)でシミュレーションされ、オーミック放電中の磁気島に誘起されたアルフベン固有モードの特性化も行われた。ECRHによるソートゥース制御とティアリングモード安定化は、前節に述べたとおりリアルタイム制御系の実証へと発展している。
逃走電子は、電場が衝突による摩擦を上回るほど強いとき、電子が相対論的速度まで加速される現象であり、電流立ち上げ時や密度の低い平坦部、そしてディスラプション時に生じうる。ディスラプション時に生成された逃走電子は第一壁部材に重大な損傷を与えうるため、ITER級装置にとっての最重要課題の一つである。FTUでは2003年頃からガンマ線分光と高速電子制動放射モニタによる研究が行われ、逃走電子は放電初期の低密度・高電場の立ち上げ段階でプラズマ中心部に生成され、ドライサー機構(一次生成)で説明できること、生成された集団は電場からのエネルギー獲得と衝突・シンクロトロン放射損失の平衡で決まる限界エネルギーを持つ単色性のビームを形成し、その最大エネルギーは5–35メガ電子ボルトの範囲に及ぶことが明らかになった。近年はシンクロトロン放射の可視域イメージングと、450–4000ナノメートルという広帯域の分光測定を組み合わせ、軌道追跡合成診断コード(SOFT)との比較を通じてエネルギー・ピッチ角・空間分布を同時に推定する手法が確立された。ピッチ角は0.1ラジアン程度、生成しきい値電場は純粋な衝突論の予測より2–5倍大きいが、シンクロトロン放射損失を含む新しい理論しきい値とはよく一致する。逃走電子の消散時間は0.05–0.3秒で、磁気乱流による半径方向拡散損失が有力な説明である。ペレット注入で逃走電子シードを持つ放電をディスラプションさせ、ディスラプション後の逃走電子ビームの緩和を追う実験など、緩和戦略の検証も進められている。
逃走電子は壁との相互作用を通じて新たな運転上の問題を生む。逃走電子ビームがポロイダルリミッターに衝突した際の爆発的イベントが可視カメラで観測され、タイルには爆発的損傷の跡が残った。さらに、逃走電子の衝突によって高速度(毎秒数百メートル以上、極端な場合は毎秒3–5キロメートルの超高速域)の固体ダストが直接生成される機構が提案された。従来のダスト生成機構では加速過程がなく毎秒500メートルを超える衝突速度は達成できないが、この機構は生成時点で高初速を持つため、ダストが壁に衝突してクレーターを掘り、二次的な部材損傷を連鎖させうる点で、剥離や亀裂による従来型のダストより深刻な安全上の懸念となりうる。強磁性ダストの再浮遊がトカマク運転に干渉しうることも指摘されており、金属壁装置におけるダスト管理は炉設計への重要な入力となっている。