プラズマ加速器(Plasma accelerator)は、核融合・プラズマ物理学の装置。プラズマ中に励起される強い電場を用いて電子やイオンを加速する装置を指す。レーザー駆動やビーム駆動の航跡場加速により、従来の高周波加速器に比べ桁違いに大きな加速勾配を実現し、また核融合材料試験用のプラズマ流生成にも用いられる。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは89本ある。比重が最も大きかったのは2010–2014年で、その期間の論文の0.27%を占めた。直近の2025–2029年では0.13%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1990年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
プラズマ加速器とは、固体加速器の金属空洞ではなく電離した気体(プラズマ)そのものを加速媒体とする装置の総称である。プラズマは完全電離しているため真空絶縁破壊の制約を受けず、従来の高周波加速空洞の限界を大きく超える電場を保持できる。相対論的なプラズマ波が持つ電場の大きさは理論上およそ10^8 V/cm、すなわち1 TV/mのオーダーに達し、これは従来加速器の数10 MeV/mという勾配の数千倍に相当する。この巨大勾配を利用して、レーザー光や高エネルギー粒子ビームを「くさび」としてプラズマ中に波を駆動し、その波に乗せて電子やイオンを加速する。今日では、次世代高エネルギー加速器の候補としてのレーザー駆動・ビーム駆動のウェークフィールド加速器から、核融合研究における過渡熱負荷試験装置としてのパルス電極式プラズマ加速器まで、目的も原理も異なる一連の装置群を指す言葉となっている。
プラズマ加速の概念とウェークフィールド物理
プラズマ加速器の物理的な核は、プラズマ中の電子がイオンに対して示す巨大な集団応答にある。強度の変調を受けたレーザー光、あるいは密集した電荷の塊がプラズマを通過すると、その圧力(ポンデラモチーブ力)や空間電荷力によって電子が押しのけられ、はるかに重いイオンはほぼ動かずに残る。変位された電子はイオンの正電荷に引かれて戻ろうとし、その結果、電子密度の疎密波、すなわちプラズマ波(ラングミュア波)が後方に「航跡(ウェーク)」として立ち上がる。この波の電位は電子とイオンを分離した分だけ大きく、その縦電場が加速場として働く。
この方式の決定的な利点は位相速度にある。駆動源が光速に近いレーザーパルスや相対論的ビームであれば、生成されるプラズマ波の位相速度もほぼ光速となり、加速される粒子を長い距離にわたって「波の坂」に乗せ続けることができる。加速に使える電場の上限は波の振幅が壊れる(波面が崩れる)限界で決まり、そのスケールはプラズマ密度で設定される。密度を下げれば最大電場は下がる代わりに、許容ビーム電荷量や適合する駆動レーザーの強度などが変わるため、目的に応じた密度の選定が設計の第一歩となる。
一方で、この方式には固有の難しさがある。第一に、加速される粒子が波に対して前へ進みすぎて位相を外れる「デフェージング」があり、これが単一ステージでの加速距離とエネルギー上限を制限する。第二に、プラズマの電場は横方向にも焦点作用を持つが、その強さは縦方向の位置に依存するため、ビーム品質(エミッタンス、エネルギー幅)の制御が難しい。これらの課題に対して、プラズマ密度を空間的にテーパして加速位相を固定する工夫、ビーム自身が引き起こす電場変化(ビームローディング)を利用してエネルギー幅を平準化する工夫、密度を絞ったプラズマチャンネルや波動ガイドでレーザーを長距離伝搬させる工夫などが発展してきた。また、プラズマは加速だけでなくビームを極めて強く集束するレンズとしても機能し、従来の磁石レンズでは到達できないエネルギー密度での集束が可能である。
レーザー駆動プラズマ加速器(LWFA)
レーザー駆動型は、短パルス高強度レーザーをガスジェットやキャピラリー(細管)に集光してプラズマ波を直接駆動する方式である。1990年代の実験で、ミリメートル規模のガスターゲット内で自発的に捕獲された電子が最大で100 GeV/m級の勾配で加速されることが示され、プラズマ加速が「卓上加速器」たり得ることが実証された。その後、加速電荷量の増大(数ナノクーロン級)、正規化エミッタンスの改善(mm・mrad級)、そして高パワーレーザーによる新しい物理領域へのアクセスが進んだ。
現在のLWFA研究の中心課題は、ビームの質と加速長の両方にある。エネルギー幅の低減には、上述のビームローディングの制御やデフェージング位置の管理が効く。加速長の延伸には、レーザーがガス中で回折してしまう問題を克服する必要があり、これに対して低密度プラズマをあらかじめ形成した波動ガイド(キャピラリー、プリフォームドチャンネル)中で駆動する手法が確立されつつあり、マルチGeV電子ビームの生成とその射出方向の安定化が報告されている。さらに、加速と集束の力を位相同期させるテーパードプラズマチャンネルや、焦点がビームとともに移動する「フライングフォーカス」駆動といった概念は、単一ステージで100 GeV級に達する道として検討されている。電子捕獲の方法も重要で、レーザー強度の立ち上がりで電子が自発的に波に乗る自己捕獲に加え、ガスに混ぜた高イオン化エネルギー元素の選択的イオン化を利用して位相空間の決まった位置に電子を注入するイオン化注入が理論・実験の両面で発展した。
LWFAの副産物として、加速された電子がプラズマチャンネル中で振動(ベータトロン振動)するときに放つX線や、逆コンプトン散乱による可変X線源の研究も盛んである。これらは加速器そのものの診断としても使え、ビームのエネルギーや品質を非破壊で知る手がかりとなる。駆動レーザーの波長も設計変数であり、従来の0.8〜1.1 μmの固体レーザーに対し、9〜11 μmのCO2レーザーを用いればポンデラモチーブエネルギーと臨界プラズマ密度が波長の二乗に比例して変わるため、同じ出力でも体積で千倍の「バブル」を駆動できると計算され、中赤外領域での新展開が期待されている。ターゲット側の工夫、例えば3Dプリンティングによるガスジェットノズルの製作のように、装置技術の進歩も進展を支えている。
ビーム駆動および段階化加速器(PWFA)
粒子ビーム駆動型(PWFA)は、レーザーの代わりに既存加速器からの高エネルギー電子ビームを駆動源とする方式である。駆動源が加速器の技術で用意できるため、レーザーの集光・伝搬に伴う制約がなく、長いプラズマ中をビームが進む間、持続的にウェークを駆動できる。スタンフォード線形加速器の30 GeVビームを用いた一連の実験では、メートル規模のプラズマ中で電子・陽電子の両方を高勾配で加速すること、および「プラズマアフターバーナー」——既存高エネルギー衝突型加速器のエネルギーを数十メートルのプラズマで倍増させる構想——に必要なスケーリング則を実証した。
PWFAの利点は、駆動ビームの電荷量と形状を精密に制御できる点にある。駆動ビームを縦方向に整形してウェークを平坦化すれば、後続の加速ビームに低いエネルギー幅を与えられる。また、レーザー駆動と同様にデフェージングとビームローディングの制御がビーム品質を左右し、チャンネルの有無によっても電子バンチの品質が変わることが知られている。
将来の高エネルギー加速器としての展望では、単一ステージの限界(デフェージング、レーザーエネルギーの枯渇)を、複数ステージの連結で超える構想が中心にある。電磁粒子シミュレーションコードをGPU上で大規模に走らせ、三段のプラズマ加速ステージを連結した系のモデル化が行われるなど、ステージ間でビームを引き渡す際のビーム輸送・同期・位相整合が数値的に検証される段階に進んでいる。ステージ間の結合は、プラズマ加速器が実用加速器になるための最重要課題の一つである。
パルス電極式プラズマ加速器(同軸型・準定常型装置)
ウェークフィールド加速器とは目的を異にするが、同じ「プラズマ加速器」の名で呼ばれる装置群に、電極間放電と電磁力でプラズマ塊を機械的に射出するパルスプラズマ加速器がある。平行平板型や同軸型の電極対に高電圧パルスを印加すると、電流シートが形成され、その自己磁場と電流の相互作用(ローレンツ力)によってプラズマが加速・射出される。小型の電磁式装置では電流シートの構造や伝播が光学分光で調べられ、円筒形のホール型加速器では回転する「スポーク」と呼ばれるプラズマ構造と電子輸送の関係が三次元数値解析で研究されている。これらの装置は推進やプラズマ流の生成を目的とするもので、加速の対象は荷電粒子のエネルギーではなくプラズマ流そのものである。
核融合研究では、この種の装置が重要な役割を果たす。準定常状態で持続的にプラズマ流を射出する同軸型・準定常型プラズマ加速器は、高速の高温プラズマ流を安定に供給できるため、核融合炉のダイバータ表面が受ける過渡熱負荷(ELMやディスラプションに相当する短時間の巨大熱流入)を模擬する試験源として用いられている。ITERのダイバータ材料が繰り返し熱衝撃に耐えられるかを調べるには、実炉に近い時間構造と熱流束を持つプラズマ流が必要であり、パルス電極式加速器はその供給源として実績を積んでいる。核融合関連材料の照射・損傷研究向けに同軸型加速器の設計が行われるなど、この系統の装置はプラズマ加速器の応用面での重要な一支流をなしている。
応用・診断と展望
プラズマ加速器の応用は、高エネルギー物理学の未来加速器という遠い目標と、卓上規模の放射線源という近い目標とに大別される。後者では、LWFAが作るフェムト秒・低エミッタンスの電子ビームを用いたコンパクトなX線源、特にプラズマミラーと組み合わせた可変逆コンプトン光源や、ピコ秒レーザー駆動のX線源が提案・開発されている。これらは従来のシンクロトロンに比べてはるかに小型であり、時間分解が優れるため、物質科学や医学イメージングへの展開が期待される。
この発展を支えているのが診断技術である。プラズマ加速器が作るビームはフェムト秒オーダーの長さで、単発ごとに変動するため、従来の加速器診断をそのまま転用できない。レーザーの波面センサーを用いた電子密度分布の計測、加速過程に伴うX線・光学放射の観測、マクロなプラズマダイナミクスとビームパラメータの相関の解明など、超高速かつ単発計測に対応する診断法の開拓が「プラズマ加速器のビーム診断の最前線」として一つの研究分野を形成している。ビームの超短パルス長と超低温(低エネルギー幅)を測ることは、加速機構の理解と安定化の両方に直結する。
展望として、LWFAでは波動ガイドやフライングフォーカスによる加速長の延伸、PWFAではステージ連結と駆動ビーム整形によるエネルギー幅の制御が、それぞれエネルギーフロンティアへの道を切り開いている。駆動レーザーの波長域の拡張(中赤外CO2レーザー)やイオン加速への展開も含め、電子・イオン・放射線源のすべてで、プラズマ加速器は「巨大勾配」と「コンパクトさ」を武器に、従来加速器を補完し、一部を置き換える技術として位置づけられつつある。
この解説が根拠にした論文から
- Plasma accelerators and lensesPlasma Physics and Controlled Fusion 1992
- Progress on plasma accelerators: from the energy frontier to tabletopsPlasma Physics and Controlled Fusion 2004
- Extending laser plasma accelerators into the mid-IR spectral domain with a next-generation ultra-fast CO2 laserPlasma Physics and Controlled Fusion 2016
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推移
研究の変遷
1985–19941本 · 0.02%
概念の端緒
1992年の「Plasma accelerators and lenses」が唯一の論文であり、プラズマ加速器とレンズの関係を扱っている。この時期はまだ概念的な考察の段階にあり、後の応用や実験的展開は見られない。
この時代の論文から
- Plasma accelerators and lensesPlasma Physics and Controlled Fusion 1992
1995–20046本 · 0.06%
応用とモデリングへの展開
准定常プラズマ加速器(QSPA)やホール電流型加速器のモデリング、エネルギー沈着シミュレーションなど、応用と理論の両面が現れる。MagnetohydrodynamicsやPlasma disruptionと並んで論じられ、先進製造やディスラプション模擬実験といった実用的関心が特徴的である。
同時に語られた主題プラズマディスラプション、電磁流体力学
この時代の論文から
- Quasi-stationary plasma accelerators (QSPA) and their applicationsPlasma Physics and Controlled Fusion 1995
- Modelling the behaviour of a Hall current plasma acceleratorPlasma Physics and Controlled Fusion 1999
- Progress on plasma accelerators: from the energy frontier to tabletopsPlasma Physics and Controlled Fusion 2004
- Energy deposition during disruption simulation experiments in a plasma acceleratorFusion Engineering and Design 1995
2005–201432本 · 0.21%
レーザープラズマ加速器の隆盛
Laser plasmaとの共起が最多となり、レーザープラズマ加速器が主流となる。制御された電子入射、導波路駆動によるGeV加速、社会への応用といった論文が並ぶ一方、ITERのダイバータ熱負荷模擬にQSPAを用いる研究もあり、核融合との結びつきが顕著になる。
同時に語られた主題レーザープラズマ、電子輸送、導波管、定常状態、遮蔽、相対論的電子ビーム
この時代の論文から
- Laser-plasma accelerators: a new tool for science and for societyPlasma Physics and Controlled Fusion 2005
- Controlled electron injection in a laser-plasma acceleratorPlasma Physics and Controlled Fusion 2007
- GeV plasma accelerators driven in waveguidesPlasma Physics and Controlled Fusion 2007
- Application of powerful quasi-steady-state plasma accelerators for simulation of ITER transient heat loads on divertor surfacesPlasma Physics and Controlled Fusion 2007
2015–202650本 · 0.20%
レーザー駆動と核融合材料試験の並行
Laser plasmaおよびElectron beamsと強く共起し、レーザープラズマ加速器の産業応用や計算法の進展が中心となる。同時に、核融合炉条件でのPSI試験施設などQSPAに基づく研究も継続し、レーザー駆動と核融合材料試験の二つの流れが併存している。
同時に語られた主題レーザープラズマ、電子ビーム、導波管、壁コンディショニング、プラズマジェット、プラズマ流
この時代の論文から
- Novel test-bed facility for PSI issues in fusion reactor conditions on the base of next generation QSPA plasma acceleratorNuclear Fusion 2017
- Laser-driven x-ray and neutron source development for industrial applications of plasma acceleratorsPlasma Physics and Controlled Fusion 2016
- The International Laser Plasma Accelerators Workshop 2015 (Guadeloupe, May 10–15)Plasma Physics and Controlled Fusion 2016
- Extending laser plasma accelerators into the mid-IR spectral domain with a next-generation ultra-fast CO2 laserPlasma Physics and Controlled Fusion 2016
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文23本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、3本の論文(うち全文0本)と0枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
