タンデムミラー(Tandem mirror)は、核融合・プラズマ物理学の装置。両端のミラー部に電位プラグと熱障壁を形成し、中心セルからの軸方向損失を静電的に抑える開放磁場型の磁気ミラー装置である。単純ミラーより一桁以上高い閉じ込め性能を実現し、GAMMA10などの実験装置で研究が進められている。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは90本ある。比重が最も大きかったのは1980–1984年で、その期間の論文の2.45%を占めた。直近の2025–2029年では0.02%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1975年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
タンデムミラーとは、磁場による開端閉じ込め(ミラー閉じ込め)を基本としながら、その最大の弱点である端部からのプラズマ漏れを電位で塞ぐ、直列に接続した鏡磁場装置の一群である。単純なミラー装置では磁力線が両端で開いており、そこを通り抜ける粒子の損失が避けられないが、タンデムミラーでは中央の長い閉じ込めセル(セントラルセル)の両端に短い鏡セルを置き、そこに正の電位障壁(プラグ電位)を形成することでイオンの軸方向流出を抑える。1970年代後半に提案されて以来、米国と日本で一連の装置が建設され、電位形成・閉じ込めスケーリング・安定性の各問題が系統的に検証されてきた。
原理と幾何配置
ミラー閉じ込めでは、両端で強くなる磁場中の荷電粒子は磁気モーメントを保存するため、速度空間で「損失円錐」に入る成分だけが端から逃げる。単一のミラーではこの損失が大きく、閉じ込め性能の上限を決めてきた。タンデムミラーの発想は、この端損失を磁場ではなく電位で抑える点にある。セントラルセルのイオンは両端の正電位障壁を越えられず、鏡での反射と電位障壁による反射の二重の壁の間に閉じ込められる。電子は質量が小さく電位をほぼ素通りするため、系全体としては準中性を保ちながら、イオンの閉じ込め時間だけが電位の高さに応じて指数関数的に延びる。
電位障壁を維持するには、障壁付近の電子を加熱して冷たい電子が障壁を埋めないようにする必要がある。このため端部では電子サイクロトロン加熱(ECRH)や中性粒子ビーム入射が用いられ、電子の分布関数を操作して電位を「彫り込む」。電位形成は本質的に電子の分布関数の問題であり、これがタンデムミラー物理の中心課題となる。
磁場配置の面では、セントラルセルを軸対称にすることが輸送の面で決定的に重要である。鏡装置で伝統的に用いられてきたヨーヨー型(最小B)磁場は端部の安定化には有効だが、セントラルセルで磁力線のドリフト面が乱れ、共鳴的な横方向輸送を引き起こす。セントラルセルを軸対称にすればこの共鳴輸送が消え、しかも高磁場・高鏡比のプラグ磁体という技術的負担も軽減できる。ただし軸対称化はMHD安定性を失わせるため、安定化を別の手段で確保する必要が生じる(後述)。
電位形成:プラグと熱障壁
タンデムミラーの電位分布は、単純な一様な障壁ではなく、複数の電位段差を組み合わせて構成される。基本形では各端に一つのプラグ電位を置くが、より進んだ形として「熱障壁(サーマルバリア)」の概念がある。これはプラグの手前に電子温度の高い領域(障壁)を作り、そこを通る冷たいイオンの密度を下げることで、プラグ電位をより低い投入電力で高く維持できるようにするものである。障壁の深さ(電位のくぼみ)が大きいほど、セントラルセルに形成されるイオン閉じ込め用の電位が高くなる。
この電位形成の理論は、ECRHによる電子分布の制御を記述する強加熱理論・弱加熱理論として体系化された。実験的には、イオン閉じ込め電位が熱障壁の深さに対して示すスケーリングが測定され、これらの理論と整合することが確認されている。さらに、形成された電位と軸方向粒子閉じ込め時間の関係は、パストゥホフ理論(電位障壁を越えて逃げる粒子の衝突による損失率を与える理論)の修正版とよく一致し、電位形成に伴う閉じ込め時間の劇的な改善が示された。このスケーリングは放電の各段階・コア領域の任意の半径位置で検証されている。
熱障壁を単一セルでプラグと兼ねる構成では、磁場中に閉じ込められた高温電子がプラグ・障壁間の電位差形成に影響を与える。障壁電子の分布関数と通過粒子の分布を考慮した衝突損失率の解析により、この効果が定量的に評価され、MFTF-BやTMX-Uのパラメータに対する数値計算が行われた。また、障壁へのイオン捕獲率(障壁を越えて端部に流入するイオンの割合を決める量)も理論・実験の両面で研究された。電位形成のスケーリングは後に一般化され、電子のエネルギー収支を通じて電位形成スケーリングと電子温度スケーリングを統一的に整理する枠組みが構築されている。
閉じ込めスケーリングと輸送
軸方向の閉じ込めはパストゥホフ型のスケーリングに従う。すなわち閉じ込め時間はイオン温度と電位障壁の高さで決まり、障壁が高いほど急激に改善する。一方、横方向(半径方向)の輸送がタンデムミラーの寿命を決めるもう一つの軸である。初期の実験では、電位障壁によるプラグ効果によって軸方向の閉じ込め時間が半径方向のそれを大きく上回る状況が観測され、このとき半径方向損失が非アンビポーラ(イオンと電子で損失速度の異なる)輸送として現れることが確認された。これは電位形成が半径方向の輸送にも影響する、タンデムミラー特有の現象である。
半径方向輸送の理論では、温度勾配が存在する場合の新古典(古典衝突に基づく)輸送のスケーリングや、共鳴輸送の衝突による制限が解析された。軸対称でない磁場配置ではドリフトモードによる共鳴的な横方向拡散が支配的になりうるため、前節の軸対称化の議論と直接つながる。また、乱流揮発性(密度揺らぎ)と半径方向電場の制御も研究対象であり、電場を制御することで乱流輸送を抑えられるかが調べられた。密度揺らぎを診断するためのマイクロ波反射計の数値設計なども行われている。
安定性:MHDアンカーと微視的安定性
軸対称な鏡磁場は磁気流体力学(MHD)的に不安定になりやすい。これを防ぐため、端部に「アンカー」と呼ばれる最小B構造のセルを置き、そこにプラズマを保持してセントラルセルのプラズマをMHD的に固定する方式が採られた。アンカーは外側に磁場最小点を持つ構造で、端部の安定性を全体に与える。一方、プラグやアンカー領域の微視的不安定性(サイクロトロン系の不安定モードなど)については、ミッドプレーンで密度のくぼんだイオン分布を注入することで安定化できることが設計研究で示された。実際、ICRF加熱されたプラズマ中でAICモード(電磁的なサイクロトロン不安定モード)の観測が報告されており、微視的不安定性が実在の制約要因であることがわかる。このように、タンデムミラーの安定性問題は「MHD安定性はアンカーで、微視的安定性は分布関数の制御で」という二層構造で扱われた。
実験と炉の展望
タンデムミラーの実験は1970年代末に始まった。最初期の装置(GAMMA 6)はタンデムミラー電位構成の実現とパストゥホフ・スケーリングの検証を行い、続くTMXでは中性粒子ビームで駆動されるプラグによるセントラルセルの閉じ込みが示された。TMX-UpgradeではECRHと斜め入射の中性ビームを併用した熱障壁実験が行われ、低密度プラズマながら強いプラグ効果と、フォッカー・プランク計算と整合する高温イオン・高温電子の蓄積が確認された。この時期には軸方向閉じ込め時間が半径方向を大きく上回る一方、非アンビポーラなイオン輸送が半径方向損失を支配していることも明らかになった。大型装置として計画されたMFTF-Bは、ドリフト軌道や新古典輸送の理論研究に重要な対象を与えた。
日本では筑波大学のGAMMA 6に続き、GAMMA 10が軸対称端鏡を持つ熱障壁型タンデムミラーとして建設され、プラグ・熱障壁電位分布の実現、パストゥホフ・スケーリングの確認、軸対称化による半径方向閉じ込めの改善を示した。GAMMA 10はその後も長期にわたり運用され、電位形成スケーリングの一般化、ICRFによる熱障壁形成、電荷交換中性粒子によるイオン温度診断、さらに端部開放系としての転向層(ディバータ)シミュレーションや、窒素・水素シードガスを用いたプラズマ・ディタッチメントの研究へと主題を広げている。開放磁場系が端部プラズマと壁との相互作用を制御できるという点は、閉鎖系トカマクのディバータ研究とも共通する。
炉の観点からは、ミラー閉じ込めは核反応率が高い高温イオン領域で有利であり、定常運転が原理的に可能である点が長所とされてきた。一方、熱障壁やヨーヨー磁体を含む従来設計は複雑で、半径方向損失が炉成立性を最終的に左右するという課題を抱えていた。近年の再評価では、超伝導磁体とジャイロトロンの進歩を前提に、ヨーヨー磁体も熱障壁も用いない対称な端プラグに強力なECRHを投入する簡素化された構成(運動学的に安定化されたタンデムミラー)が提案され、端損失だけを見ればDTおよび触媒DD燃料サイクルで定常トカマクに匹敵する増倍率Qに達しうるとされる。ただしこの見通しにおいても、半径方向損失が炉の実現可能性を決める未解決の問題として残されており、これがタンデムミラー研究の一貫した主題であり続けている。
この解説が根拠にした論文から
- Observation of scaling laws of ion confining potential versus thermal barrier depth and of axial particle confinement time in the tandem mirror GAMMA 10Nuclear Fusion 1988
- A tandem mirror with axisymmetric central-cell ion confinementNuclear Fusion 1982
- Generalization and consolidation of scaling laws of potential formation and associated effects in the GAMMA 10 tandem mirrorNuclear Fusion 2001
- A new simpler way to obtain high fusion power gain in tandem mirrorsNuclear Fusion 2017
- Effect of magnetically trapped electrons on the plug potential in thermal-barrier tandem mirrorsNuclear Fusion 1983
- Contribution on tandem mirrors at the University of Tsukuba (GAMMA 6 and GAMMA 10)Nuclear Fusion 1985
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研究の変遷
1970–198430本 · 1.22%
閉じ込め理論と輸送解析の基盤形成
軸対称中心セル閉じ込めや共鳴プラトー輸送係数の解析的近似など、理論・解析研究が中心であった。電子サイクロトロン加熱やイオンサイクロトロン加熱、中性粒子入射といった加熱手法と並んで、径方向輸送の評価が行われた。
同時に語られた主題電子サイクロトロン加熱、捕捉電子、イオンサイクロトロン加熱、燃料供給、電子サイクロトロン共鳴、サイクロトロン共鳴
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文78本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、7本の論文(うち全文0本)と0枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
