プラズマ源(Plasma source)は、核融合・プラズマ物理学の装置。気体を電離してプラズマを生成・供給する装置で、励起方式は高周波誘導結合、ヘリコン波、マイクロ波、レーザーなど多岐にわたる。核融合用負イオン源から材料プロセシング、電気推進まで応用に応じて磁場配位や圧力領域が設計され、波動吸収とプラズマ輸送の制御が性能を左右する。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは242本ある。比重が最も大きかったのは1990–1994年で、その期間の論文の0.61%を占めた。直近の2025–2029年では0.33%。
解説
プラズマ源とは、気体中に持続的なプラズマを生成・維持するための装置である。プラズマは自然界にも存在するが、実験や産業・加速器・核融合などの用途で使うには、必要な密度・温度・大きさ・時間構造を持つプラズマを制御して作り出す必要があり、その入口となるのがプラズマ源である。多くのプラズマ源は、容器内に導入した作動ガスに電界を印加して最初の放電を起こし(ブレークダウン)、生成された電子が電界や高周波からエネルギーを得て電離を繰り返すことで定常状態を保つ。図は、核融合の中性粒子入射装置(NBI)用の負水素イオン源として用いられる2種類の構成を示したもので、(a)は平面状の多極カスプ磁場で円弧放電プラズマを閉じ込める直流型の「カマボコ」源、(b)は円筒状の金属シールド内で高周波コイルにより放電を駆動するRFドライバ型源であり、いずれも赤い矢印の方向にイオンが引き出される。

fig.1 A novel plasma source concept for negative ion generation in neutral beam injectors for fusion applications (2024) · CC BY 4.0
(a) Kamaboko plasma source, which is a planar multi-cusp, magnetic DC configuration; (b) the cylindrical RF-driver plasma source, which is an axially symmetric magnetic configuration. The red arrows indicate the direction of ion extraction.
プラズマ源の性能は、到達可能な電子密度と電子温度、生成プラズマの均一性、そして入力電力に対するプラズマ生成効率で評価されることが多い。例えば核融合用の負イオン源では数eVの低温プラズマから水素・重水素イオン電流として約50Aを取り出すことが求められ、引き出し口での電流密度は200〜300A/m²程度に達する。一方、プラズマウェークフィールド加速器用のヘリコン源では、電子密度7×10²⁰m⁻³を長さ10m以上にわたり0.25%以下のむらで維持することが要求されるなど、用途によって求められるパラメータは大きく異なる。
励磁方式:直流アーク、高周波、マイクロ波、ヘリコン
プラズマ源の分類は、まずプラズマにエネルギーを供給する手段によって行われるのが普通である。最も単純なのは直流放電で、陰極と陽極の間に電圧を印加してグロー放電やアーク放電を起こす。特に熱陰極を用いたアーク放電は、タングステンフィラメントや六ホウ化ランタン(LaB₆)陰極を加熱して十分な電子を供給することで、高密度のプラズマを安定に維持できる。核融合用の負イオン源で長く使われてきたフィラメントアーク型はこの代表例であり、ホローカソード放電も陰極の空洞内で放電を閉じ込めて電離効率を高める方式として、水素負イオン生成や金属イオン流の生成などに広く用いられている。
高周波(RF)を用いる方式では、電極を容器に直接さらさないため、直流放電で問題になる陰極のスパッタリングや不純物混入を避けられる。周波数が低い場合には容量結合型、コイルの誘導電界でプラズマを駆動する誘導結合型(ICP)に分けられ、後者は大面積のエッチング処理など産業用途で広く使われている。複数のICP源を組み合わせて密度を非線形に高める試みや、共振を利用して大面積の均一性を制御する研究もある。
マイクロ波を用いる方式は、2.45GHzなどの周波数の電磁波を導入してプラズマを生成する。電子サイクロトロン共鳴条件を利用すれば磁場の局所で効率よく吸収させることができ、上部混成共鳴を利用したマルチカスプ型の負イオン源のように、共鳴点をプラズマ閉じ込め構造と組み合わせる例もある。
ヘリコン波加熱は、RF(典型的には13.56MHz)のらせん状電磁波を軸方向磁場中のプラズマに注入する方式で、少ない入力電力で非常に高い密度のプラズマを得られることで知られる。例えば永久磁石リングで軸磁場を作った装置では、RF入力約700W付近で誘導結合モードからヘリコンモードへの遷移が観測され、ヘリコンモードでは10¹⁸〜10¹⁹m⁻³の密度と下流で約1eVという低い電子温度が得られる。この「高密度かつ低温」という性質は、負水素イオンの生成条件と好相性であり、核融合用負イオン源研究やプラズマ推進、宇宙プラズマの模擬など幅広い応用で開発が進んでいる。またRFアンテナを用いるため原理的に長尺化・モジュール化が容易であり、加速器用の長尺プラズマ源の候補としても注目されている。
磁場閉じ込めと源の構成
プラズマ源の設計では、生成したプラズマをどう閉じ込め、必要な場所へどう導くかが本質である。最も広く使われるのがマルチカスプ磁場で、容器壁面に永久磁石を交互に並べることで壁近傍に強い磁場の「くぼみ」を作り、磁力線が壁に突き抜けて失われる粒子を減らす。カマボコ型負イオン源はこの構成の代表例である。一方、RFドライバ型では閉じ込め磁場を金属箱の外側に置き、渦電流によるRF電力の損失を避ける工夫がなされている。
磁場は閉じ込めだけでなく、プラズマの質を制御する手段にもなる。負イオン源では、引き出し領域に高エネルギー(1eV以上)の電子が流入すると負イオンを破壊してしまうため、磁場フィルタと呼ばれる横磁場で低温の電子だけを抽出領域に通す。しかしこの横磁場は粒子のドリフトを生み、引き出されるビームの均一性を損なうというジレンマがある。ヘリコン源では軸磁場が波の伝搬と閉じ込めの両方を担い、下流の膨張室ではマルチカスプ磁場と組み合わせて密度分布を整える。近年提案された双極子磁場を用いる構想では、磁場を源の内部に閉じ込めることでRF電力の損失を避け、高い効率を目指している。
核融合中性粒子ビーム用のプラズマ源
磁場閉じ込め核融合炉では、プラズマを中性粒子ビーム(NBI)で加熱する。中性粒子は磁場の影響を受けないため炉心まで侵入できるが、加速できるのは荷電粒子だけなので、イオンを加速した後に中性化セルで中性粒子に変換する。このとき高エネルギー領域では正イオンの中性化効率が下がるため、大電力加熱が求められる炉では負イオンを用いることが標準となっている。
負水素イオンの生成には二つの経路がある。一つはプラズマ中の電子が水素分子に付着する体積生成、もう一つはプラズマグリッド表面で水素原子や正イオンが変換される表面生成である。現在の大型源では、グリッドにセシウムを蒸着して仕事関数を下げ、表面生成を促進する「セシエーション」が不可欠である。生成された負イオンはグリッドの孔から引き出されるが、引き出し部のガス圧は加速器への中性ガス流を抑えるため0.3Pa未満に保たれ、この低圧環境で負イオン密度を維持するために、源は数メガワット毎平方メートル規模の入力電力密度を必要とする大型装置となる。
現行の二方式にはそれぞれ課題がある。フィラメントアーク型(カマボコ型)はタングステンフィラメントの寿命が短く、定期的な保守アクセスが必要である。RFドライバ型では、磁力線がプラズマ室の壁に交差することによる粒子損失、ドライバ金属構造への渦電流損失、そして前述の磁場フィルタに起因するビームの不均一性が問題となる。これらの制約を克服するため、双極子構成をはじめとする新たな磁場構成や、ヘリコン波加熱を用いた負イオン源の研究開発が進められている。負イオン源の効率は、NBI加熱に基づく核融合装置のエネルギー利得Q=P_核融合/P_加熱に直接響くため、源の改良は炉の成立性そのものに関わる要素技術である。
この解説が根拠にした論文から
- Characterization of hydrogen plasma in a permanent ring magnet based helicon plasma source for negative ion source researchPlasma Physics and Controlled Fusion 2019
- First Thomson scattering results from AWAKE's helicon plasma sourcePlasma Physics and Controlled Fusion 2024
- A novel plasma source concept for negative ion generation in neutral beam injectors for fusion applicationsPlasma Physics and Controlled Fusion 2024
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推移
研究の変遷
1970–19849本 · 0.37%
多様なプラズマ源方式の登場
この時期のタイトルでの割合は0.37%と小さく、負イオン源、大直径プラズマ柱、ダイバータ型イオン源、同軸低混成波源など方式が分散していた。表面-プラズマ負イオン源やホローカソードなど、後のビーム源へつながる要素が既に見られる。
同時に語られた主題負イオン、低域混成波、レーザー生成プラズマ、イオンビーム、ホローカソード
この時代の論文から
- A powerful injector of neutrals with a surface-plasma source of negative ionsNuclear Fusion 1974
- Plasma source for producing a large diameter plasma column in a magnetic fieldReview of Scientific Instruments 1974
- Extraction of an ion beam from a diverter‐type plasma sourceReview of Scientific Instruments 1977
- Conical slow wave antenna as a plasma sourceReview of Scientific Instruments 1978
1985–199429本 · 0.53%
イオンビーム源とヘリコン源への収束
割合は0.53%へ増え、イオンビーム、負水素、ホローカソード、電子サイクロトロン共鳴が併記された。1994年のヘリコン波プラズマ源に関する論文が現れ、高周波プラズマ源の研究が進んだ。
同時に語られた主題イオンビーム、負水素、ホローカソード、電子サイクロトロン共鳴、タングステン、トムソン散乱
この時代の論文から
- Possibilities for direct optical observation of negative hydrogen ions in ion beam plasma sources via Rayleigh or Thomson scatteringPlasma Physics and Controlled Fusion 1985
- Resonance wave discharge and collisional energy absorption in helicon plasma sourcePlasma Physics and Controlled Fusion 1994
- Lanthanum hexaboride tapered filament in a plasma sourceReview of Scientific Instruments 1985
- High‐resolution VUV spectrometer/detector investigations of rare‐earth pulsed plasma source (abstract)Review of Scientific Instruments 1985
1995–200438本 · 0.38%
ヘリコン源と波動加熱の研究
割合は0.38%に低下したが、併記対象はヘリコンプラズマが10件と最多で、誘導結合プラズマ、軟X線、パラメトリック減衰が続いた。ループアンテナ、m=0アンテナによる放電モードやHELIX源でのパラメトリック不安定性が論じられた。
同時に語られた主題ヘリコンプラズマ、誘導結合プラズマ、軟X線、パラメトリック崩壊、磁化プラズマ、レーザー生成プラズマ
この時代の論文から
- Excitation, conversion and damping of waves in a helicon plasma source driven by an m = 0 antennaPlasma Physics and Controlled Fusion 1997
- Modelling of microwave plasma sources: potential and applicationsPlasma Physics and Controlled Fusion 1999
- Discharge modes and wave structures using loop antennae in a helicon plasma sourcePlasma Physics and Controlled Fusion 2000
- Parametric decay instabilities in the HELIX helicon plasma sourcePhysics of Plasmas 2003
2005–201468本 · 0.44%
ビーム源と大面積化への展開
割合は0.44%へやや回復し、ヘリコンプラズマ、中性粒子ビーム、誘導結合プラズマ、イオンビーム、レーザープラズマ、アークプラズマと並んだ。ITERへの言及が現れ、負イオンビーム引き出しの解析や大面積ヘリコン源の研究が行われた。
同時に語られた主題ヘリコンプラズマ、中性ビーム、誘導結合プラズマ、イオンビーム、レーザープラズマ、アークプラズマ
この時代の論文から
- Analysis of the factors determining the extraction of negative ion beams from plasma sourcesNuclear Fusion 2011
- High intensity laser-plasma sources of ions—physics and future applicationsPlasma Physics and Controlled Fusion 2005
- Diagnostics of microdischarge-integrated plasma sources for display and materials processingPlasma Physics and Controlled Fusion 2005
- Large-area helicon plasma source with permanent magnetsPlasma Physics and Controlled Fusion 2007
2015–202697本 · 0.39%
核融合ビーム源と多様な応用
割合は0.39%で、ヘリコンプラズマが22件、負イオン、イオンビーム、中性粒子ビームが続く。ITERおよびEASTが機種として現れ、核融合中性粒子ビーム用ヘリコン源での負イオン計測や、大面積源からの正負イオンビーム引き出しが検討された。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題ヘリコンプラズマ、負イオン、イオンビーム、中性ビーム、誘導結合プラズマ、定常状態
この時代の論文から
- ITER plasma source and building modelling to produce radiation mapsNuclear Fusion 2018
- Negative ion characterization in a helicon plasma source for fusion neutral beams by cavity ring-down spectroscopy and Langmuir probe laser photodetachmentNuclear Fusion 2020
- Characterization of a planar 8 mm atmospheric pressure wide radiofrequency plasma source by spectroscopy techniquesPlasma Physics and Controlled Fusion 2016
- Physics of the Advanced Plasma Source: a review of recent experimental and modeling approachesPlasma Physics and Controlled Fusion 2016
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文22本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、3本の論文(うち全文2本)と1枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
