NSTX-Uは、核融合・プラズマ物理学の装置。低アスペクト比の球状トカマク装置で、米国PPPLのNSTXを磁場・電流・中性粒子入射の向上により更新した装置である。最大2MA、1T、15MWで、非誘導立ち上げや高ベータ閉じ込め、ダイバータ熱負荷などSTの炉心から周辺までの物理を探る。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは70本ある。比重が最も大きかったのは2015–2019年で、その期間の論文の0.30%を占めた。直近の2025–2029年では0.29%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは2010年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
NSTX-U(National Spherical Torus Experiment-Upgrade、米国プリンストンプラズマ物理研究所の球形トカマク装置)は、低アスペクト比(プラズマ大半径と小半径の比が小さい)トカマクである球形トーラス(ST)の物理基盤を確立するための主要実験装置である。中心柱に空間的余裕の少ないコンパクトな構成でありながら、プラズマ電流2 MA、軸上トロイダル磁場1 T、中性ビーム入射15 MW、高調波高速波加熱6 MWという、球形トーラスとして世界で最も強力な加熱・磁場能力を持ち、高ベータ(プラズマ圧力と磁気圧力の比が大きい)・高ブートストラップ電流割合・低衝突性のプラズマを実現することを使命としている。装置の姿を具体的に示すと、次の図のように細長く高い伸長比を持つ断面を持ち、プラズマの垂直位置を監視する磁気プローブ群と垂直安定化コイルが真空容器内壁に配置されている。

fig.12 A data-driven approach to real-time vertical position estimation for NSTX-U vertical stability control (2026) · CC BY 4.0
The separatrices from a time-series of equilibria are shown from a simulated vertical displacement event. The locations of the flux loops that are used by the vertical position estimator are indicated, and the pair of vertical stability coils are enclosed with red boxes.
図は、垂直変位イベント(プラズマが垂直方向に制御を失って動く現象)のシミュレーションにおける一連のセパラトリックス(プラズマ境界の磁気面)の時間変化を示したもので、垂直位置推定に用いられるフラックスループの配置と、赤枠で囲んだ一対の垂直安定化コイルの位置が併せて描かれている。このようにNSTX-Uでは、高性能化の鍵となる強い伸長比プラズマを安定に保持するための制御系が装置設計の中枢を占めており、後述するように初期運転では垂直安定性制御が実際の課題となった。
NSTX-U装置とその使命
NSTX-Uの使命は、球形トーラス概念を核融合炉へ発展させるために必要な物理基盤と技術的解決策を確立することにある。具体的には、STベースの核融合核科学施設(FNSF)の物理的裏付けの構築、ITERや燃焼プラズマ物理に関わる課題への貢献、そしてコンパクトなSTが核融合実証炉(DEMO)への道筋で持つ魅力の評価である。球形トーラスの利点は、低アスペクト比がもたらす平均磁気曲率の安定化効果と、高い伸長比が可能にする閉じ込め・安定性の向上にあり、これにより高ベータプラズマが実現できる。装置コストがサイズにほぼ比例すると仮定すれば、コンパクトさは発電コストの低減に直結する。一方で課題も明確である。排気熱流束の処理、そして中心柱に誘導コイルを置く空間がないことによるプラズマ立ち上げ・維持の問題である。
NSTX-Uの研究目標は三つに整理される。第一に、低アスペクト比・高ベータプラズマの閉じ込め物理を、燃焼プラズマで関連する低衝突性領域まで拡張すること。第二に、定常運転に必要な、安定で低ディスラプティビティ、大きなブートストラップ電流割合を持つ非誘導シナリオの開発。第三に、高性能シナリオにおけるプラズマ排気を最適化するためのパワー・粒子処理技術の開発である。これらの目標を達成するため、NSTX-Uは高規格化ベータ(5超)、高ブートストラップ電流割合(0.7超)、低電子衝突性(ν*e < 0.01)のプラズマを生成する能力を持つ。
NSTXからNSTX-Uへのアップグレード
NSTX-Uは、元のNSTX装置の大規模アップグレードである。トロイダル磁場は1 T(大半径R0 = 0.93 m)へ、プラズマ電流は2 MAへとほぼ倍増し、中性ビーム入射(NBI)加熱電力は14 MW(後に15 MWと記載される)に増強された。加えて、より接線方向に近い第2NBI系統が新設され、第1系統の2〜3倍の電流駆動効率を持つ。これにより、プラズマの蓄積エネルギーは約4倍、閉じ込め時間は約2倍となり、核融合性能パラメータnτTは5〜10倍の向上が期待された。衝突性は3〜6分の1に低下し、低衝突性FNSF領域へ向けた輸送の好ましい傾向を検証できるようになる。
装置の真空容器はNSTXのものを踏襲するが、プラズマ形状はより小さい体積で運転される。NSTXのH-modeプラズマの平均体積が約13 m³であったのに対し、NSTX-UのH-modeでは約11.5 m³、L-modeでは約9 m³であり、同じ容器内でよりコンパクトなプラズマが高磁場・高電流で保持されることになる。この体積の減少は、同じ加熱電力に対するプラズマの比圧力を押し上げる方向に働く。
2015年に初プラズマが計画され、2016年に研究運転を開始したが、運転開始10週間後にダイバータ磁場コイルの故障が発生し、運転は中断され復旧活動に入った。この期間中、NSTXとNSTX-Uの両方のデータを用いた解析・理論・モデリングが進められ、STおよびより高アスペクト比領域への高信頼度の外挿に使える予測モデルの構築が目指された。また、この復旧期間中に装置の保護システムも強化され、ショートターン保護(STP)システムなど運転安全性の向上が図られた。
球形トーラス物理プログラム:閉じ込め・安定性・高エネルギー粒子
NSTX-Uの物理プログラムの中心は、低アスペクト比・高ベータプラズマに特有の輸送と安定性の理解である。中性ビーム加熱のような高エネルギービームを用いる装置では、ビームエネルギーは主に電子に伝わり、電子チャネルからのエネルギー損失が増大する。これはアルファ加熱が支配的なITERでも同様であり、電子熱輸送の理解と緩和は現在および将来の装置にとって極めて重要である。NSTXでは、高衝突性H-modeにおいてイオン輸送は新古典レベル近くであった一方、電子輸送は異常輸送であった。この説明候補として、低kθρsイオンスケールの不安定(マイクロティアリングモード、運動学的バルーニングモード)や、高kθρs電子スケールの不安定(電子温度勾配(ETG)乱流)が提案されており、NSTX-Uプラズマにおける運動学的バルーニングモードの大域ジャイロキネティックシミュレーションや、マイクロティアリングモードに伴う磁気ゆらぎのミリ波偏光計による測定感度評価などが進められている。
磁気シアーの制御は電子輸送抑制の有力な手段である。磁気シアーは s = (r/q)dq/dr(rは小半径、qは安全係数)で定義され、逆磁気シアー(RMS)は内部ゆらぎの低減、イオン・電子両チャネルの熱輸送抑制、内部輸送障壁(ITB)の形成につながりうることが知られている。NSTXではRMSにより電子内部輸送障壁(eITB)が形成され、その位置は磁気シアー極小位置と相関し、電子乱流は局所シアー値と相関して強く減少した。NSTX-Uでは、トロイダル磁場とプラズマ電流の増強に加え第2ビームラインの追加により、RMSプラズマのより広い(ただしまだ未開拓の)運転空間が開けており、TRANSPコードを用いたシナリオ開発が進められている。RMSの確立には、電流立ち上がり早期の補助加熱で電子を加熱し電流拡散を遅らせ、中空電流分布を作る起動設計が鍵となる。
高エネルギー粒子(EP)物理もNSTX-Uの柱である。ビーム加熱プラズマ中のアルファ速度を超えるイオン(super-Alfvénic イオン)は、アルファ加熱された通常および低アスペクト比燃焼プラズマの両方に関連するEPパラメータ空間にアクセスする。ノイズ駆動のアルフベン固有モード(GAE)の非線形シミュレーションや、セーフィティファクタとβNのフィードバック制御がビーム電力とプラズマ境界形状の変更を通じて行われる際の高速イオン分布への影響、そしてソートゥースクラッシュが高速イオン分布に与える影響などが研究対象である。NSTX-Uは電磁的不安定性が輸送を支配すると期待される領域で運転され、EP駆動の不安定性(イオンサイクロトロン周波数以下)の理解は燃焼プラズマ予測に直結する。
マクロ安定性と3次元場の理解も進められている。誤差場(装置の軸対称性を崩す微小な3次元磁場)はモードロッキングやダイバータ熱流束分布に影響を与えうる。NSTX-Uでは平衡場コイルの位置ずれがダイバータフットプリントに与える影響の評価や、誤差場がモードロッキングとダイバータ熱流束に与える影響の解析が行われており、3次元場の制御は高ベータプラズマの安定運転に不可欠な要素である。
非誘導運転とプラズマ制御
中心柱に誘導コイルを置く空間が乏しい球形トーラスでは、非誘導電流駆動とプラズマ制御が炉成立の鍵となる。NSTX-Uは、高ブートストラップ電流割合の高性能プラズマを完全非誘導的に立ち上げ・維持するための物理理解と制御ツールの開発を目的としている。立ち上げについては、過渡的なCHI(同軸ヘリシティ注入)を用いる非誘導立ち上げがNSTXで実証されており、NSTX-Uへの外挿が評価されている。維持については、第2NBI系統の高い電流駆動効率が100%非誘導運転の実現に寄与する。
制御系の開発は多岐にわたる。TRANSPを用いた閉ループシミュレーションによる中心安全係数とβNのフィードバック制御(ビーム電力と境界形状変更による)、非誘導維持シナリオ向けのフィードバック制御設計、そしてリアルタイム制御のためのモデル構築が挙げられる。後者の例として、中性ビーム入射のリアルタイムモデルをニューラルネットワークで構築する試みや、電子密度・圧力分布形状のニューラルネットワークによる予測がある。制御系のハードウェア面でも、ノード間の決定論的PCIe通信などリアルタイム計算基盤の強化が進められている。
垂直安定性制御はNSTX-Uの初期運転で特に深刻な課題であった。伸長比の高いプラズマは高性能である一方、垂直方向に不安定であり、制御を失えば垂直変位イベントによるディスラプションに至る。NSTX-Uの初期運転では、内壁限定形状からダイバータ形状への遷移時に垂直「ボブル」(約0.05秒周期の上下振動)がしばしば発生し、H-modeへのアクセスを制限したり制御不能な垂直変位イベントを引き起こしたりした。初期運転の727ショット中408ショット(56%)で、10 msに4 cmを超える垂直移動が生じていたと報告されている。この対策として、マルチ入力マルチ出力制御方式の導入や、平衡データベース全体にロバスト回帰を適用したシナリオ非依存のリアルタイム垂直位置推定器の開発などが進められている。
パワー・粒子処理:ダイバータとリチウム
高ベータ・高電力プラズマでは、ダイバータへの熱流束が極めて大きくなる。NSTX-Uは非常に大きなターゲット熱流束を発生させうるため、従来型および革新的な排気・プラズマ対向壁ソリューションの試験場としての役割も担う。ダイバータ領域の物理としては、ダイバータ脚部のフィラメント(プラズマの細い構造)の観測や、真空紫外分光器を用いた放射ダイバータのリアルタイムフィードバック制御の開発が進められている。
リチウムを用いた排気制御はNSTX以来の重要な研究テーマである。リチウム蒸気ボックスダイバータは、ダイバータ近傍にリチウムを蒸発させ、その蒸気がプラズマを冷やして放射により熱を分散させる概念である。ガス注入位置の影響や、SOLPS-ITERを用いたリチウム蒸発器の最適配置の検討が行われており、共通磁束領域(CFR)と私的磁束領域(PFR)のどちらでリチウムを蒸発させるかで放射分布が大きく異なることが示されている。次の図は、その比較を示したものである。

fig.11 NSTX-U research advancing the physics of spherical tokamaks (2024) · CC BY 4.0
Differences in the radiation distribution between common flux region (left) and private flux region (right) evaporation of lithium in a lithium vapor box design for NSTX-U. The active lithium evaporation regions are shown in red, while the orange surfaces represent 500 ∘C lithium walls with considerably smaller evaporation.
図は、14×10²³ Li/s の蒸発レートでリチウムを共通磁束領域(左)と私的磁束領域(右)に蒸発させた場合の全放射の空間分布の違いを示す。赤で示した活性蒸発領域と、500 ℃のリチウム壁(オレンジ)の配置が描かれ、蒸発位置によって放射の局在が変わることがわかる。さらに、液体リチウムダイバータターゲットの予備設計や、燃料供給とELMペーシング用のリチウムペレット生成法の開発も進められている。これらのリチウム技術は、高熱流束排気という球形トーラスの主要課題に対する革新的解決策として、NSTX-Uの第三の研究目標の中核をなしている。
この解説が根拠にした論文から
- NSTX/NSTX-U theory, modeling and analysis resultsNuclear Fusion 2019
- Progress toward commissioning and plasma operation in NSTX-UNuclear Fusion 2015
- NSTX-U theory, modeling and analysis resultsNuclear Fusion 2022
- NSTX-U research advancing the physics of spherical tokamaksNuclear Fusion 2024
- Reversed magnetic shear scenario development in NSTX-U using TRANSPNuclear Fusion 2025
- A data-driven approach to real-time vertical position estimation for NSTX-U vertical stability controlPlasma Physics and Controlled Fusion 2026
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推移
研究の変遷
2005–20146本 · 0.04%
NSTX-U登場期
この時代は6件のみで、全タイトルに占める割合は0.04%である。リチウム、波動加熱、スクレイプオフ層、プラズマ立ち上げ、磁気揺動、ELMといったテーマと並んで論じられており、代表的な論文として「Full wave simulations of fast wave heating losses in the scrape-off layer of NSTX and NSTX-U」や「Recent progress in the NSTX/NSTX-U lithium programme」がある。機械としては専らnstx-uが現れ、加熱損失、リチウム、非誘導立ち上げ、ミリ波偏光計、ペレット生成といったNSTX-Uの初期検討が行われている。
同時に語られた主題リチウム、波動加熱、スクレイプオフ層、プラズマ立ち上げ、磁気揺動、周辺局在モード
この時代の論文から
- Full wave simulations of fast wave heating losses in the scrape-off layer of NSTX and NSTX-UNuclear Fusion 2014
- Recent progress in the NSTX/NSTX-U lithium programme and prospects for reactor-relevant liquid-lithium based divertor developmentNuclear Fusion 2013
- Non-inductive plasma start-up on NSTX and projections to NSTX-U using transient CHINuclear Fusion 2013
- A sensitivity assessment of millimeter-wave polarimetry for measurement of magnetic fluctuations associated with microtearing modes in NSTX-UPlasma Physics and Controlled Fusion 2013
2015–202664本 · 0.26%
NSTX-U運転・統合研究期
この時代は62件へ増加し、シェアも0.26%に上昇する。リチウム、プラズマ対向機器、中性粒子ビーム入射、液体リチウム、ジャイロ運動論、高エネルギーイオン、鋸歯状振動などと共に論じられ、nstx-uに加えてiterやeastとも関連付けられる。代表的な論文として「Real-time capable modeling of neutral beam injection on NSTX-U using neural networks」「Progress toward commissioning and plasma operation in NSTX-U」があり、実時間制御、平衡再構成、ビーム入射モデリング、理論・モデリング・解析結果など、装置運転と統合的な研究が中心となる。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題リチウム、プラズマ対向機器、ジャイロ運動論、中性粒子入射、中性ビーム、液体リチウム
この時代の論文から
- Real-time capable modeling of neutral beam injection on NSTX-U using neural networksNuclear Fusion 2019
- Central safety factor and βN control on NSTX-U via beam power and plasma boundary shape modification, using TRANSP for closed loop simulationsNuclear Fusion 2015
- NSTX/NSTX-U theory, modeling and analysis resultsNuclear Fusion 2019
- Plasma boundary shape control and real-time equilibrium reconstruction on NSTX-UNuclear Fusion 2018
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文45本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、6本の論文(うち全文3本)と2枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
