ADITYA-U(aditya-u tokamak)は、核融合・プラズマ物理学の装置。インドのトカマク装置であり、従来のADITYAを円形リミター配置から単一・二重ヌル配位の開ダイバータ配備へと改造した後継機である。オーム加熱円形プラズマから非誘導電流駆動・乱流輸送・逃走電子の制御に至る幅広い実験とシミュレーションに供されている。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは61本ある。比重が最も大きいのは直近の2025–2029年で、その期間に発表された論文の0.48%を占める。この用語集がこの主題を最初に拾うのは2015年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
ADITYA-U(ADITYA Upgrade)は、インドのグジャラート州アーメダバードにあるプラズマ研究所が運用する中型トカマクであり、インド初のトカマクADITYAを、円形プラズマに限られた運用からダイバータ付きの非円形プラズマ運用へと拡張するために改修した装置である。主要半径75 cm、プラズマ小半径25 cmというコンパクトな装置でありながら、最大トロイダル磁場1.5 T、プラズマ電流約210 kA、放電持続時間約400 msという設計値に近い運転を実現しており、MHD活動、乱流輸送、ランナウェイ電子、ディスラプション緩和といった、より大型の装置で扱われる物理課題を、低エネルギーで安全に検証する場として位置づけられている。装置の全体構成を示したものが次の断面図である。

fig.1 Overview of physics results from the ADITYA-U tokamak and future experiments (2024) · CC BY 4.0
A schematic of ADITYA-U coils, vacuum chamber, and other machine components in a vertical cross-section.
図はADITYA-Uのコイル系、真空容器、リミタ配置を縦断面で示したものである。トロイダル磁場コイル(TF)の内側に円形断面の真空容器が収められ、容器の外側・TFコイルの内側にポロイダル磁場コイル群(AD、MD、FFB、OD、BV、OT)が配置されている。容器内側のトロイダルベルトリミタ(IBL)と上下のダイバータタイル(DT)、外側のトロイダルリミタの位置も示されている。
ADITYAトカマクとその改修
ADITYAは1980年代末から20年以上にわたり運用された、インド国産の最初のトカマクである。円形プラズマを単一のポロイダルリングリミタで制限する構成で、主にエッジ乱流、MHD活動、ランナウェイ電子の研究に用いられた。改修の目的は、プラズマ形状の制御、すなわち単一ヌルおよび複ヌルのダイバータ配置を持つ非円形プラズマの実現にある。そのため真空容器は長方形断面から円形断面に置き換えられ、容器の体積は1.6 m³から1.4 m³へと減少した。プラズマの主要半径・小半径は改修前後で変わっていない。
改修に伴い、プラズマ向き部材(PFC)として黒鉛製のトロイダルベルトリミタと上下ダイバータタイルが新たに設置された。ADITYAでは容器壁の97%がステンレス鋼で残り3%が黒鉛であったが、ADITYA-Uでは黒鉛の占める割合が15%まで増えており、これはプラズマ・壁相互作用の形態を変える要因となっている。
装置構成と改修の工学
ADITYA-Uの特徴的な点は、ダイバータ形状を実現するためのポロイダル磁場コイル3組が、真空容器の外側かつトロイダルコイル組立の内側に設けられたことである。主ダイバータコイル(AD)と補助ダイバータコイルを別々のコンデンサバンク電源で励磁することで複ヌル配置が試みられ、垂直磁場コイル(BV)は直列ではなく並列モードで駆動して応答を速めた。平衡磁場電流の事前プログラム制御とリアルタイム水平位置制御により、非円形プラズマの放電長の確保が図られている。ダイバータおよび位置制御コイルの設置にあたっては、熱硬化処理と資格試験が実施された。
真空容器の改修後にはベーキング系が整備され、約135 ℃までの繰り返しベーキングが行われた。壁調整(ウォールコンディショニング)はADITYA-Uの運用の中核的な要素であり、水素グロー放電クリーニング(GDC)が日常的に実施されるほか、水素滞留の抑制と炭素・酸素系不純物除去の限界突破を目的として、アルゴン・水素混合ガスを用いたGDCが開発・実装された。混合グロー放電中ではArH⁺イオンが優勢なイオン種となり、その質量ゆえに壁面吸着不純物分子へ大きな運動エネルギーを伝達できることが、この手法の原理である。リチウム化も高温プラズマ達成のために併用されている。
運転段階とプラズマパラメータ
ADITYA-Uの運転は段階的に進められた。第1段階(Phase-I)は2016年12月に黒鉛トロイダルベルトリミタを用いて開始され、オーミック加熱の円形プラズマでプラズマ電流80–95 kA、持続時間80–180 ms、最大トロイダル磁場約1 T、弦平均電子密度約2.5×10¹⁹ m⁻³が得られた。2017年3月に終了した後、磁気診断の校正、主要診断の調整、ベーキング系の設置を経て、2018年2月から第2段階(Phase-II)が開始された。Phase-IIではリアルタイムプラズマ位置制御を用いて電流135 kA、密度約4×10¹⁹ m⁻³まで引き上げられた。
その後の運転拡大により、水素および重水素燃料の両方で、プラズマ電流100–210 kA、持続時間300–400 ms、密度3–6×10¹⁹ m⁻³、中心電子温度300–500 eV、蓄積エネルギー約3 kJ、エッジ安全係数3–4.5という、円形プラズマの設計値に近い領域が定常的に達成されている。42 GHzの電子サイクロトロン波を1回の放電で2パルス投入する方式(1パルス目を予備電離、2パルス目を加熱に使用)による電子サイクロトロン共鳴加熱(ECRH)の運転も開始され、イオンサイクロトロン共鳴加熱のシナリオ解析も進められている。重水素プラズマでは同条件の水素プラズマよりエネルギー閉じ込め時間が長くなる、いわゆる同位体効果が観測されている。
ダイバータと非円形プラズマ運用
ADITYA-Uのダイバータは開放型であり、バッフルを持たない。容器外のポロイダル磁場コイルの励磁によって単一ヌル配置の形状化プラズマが初めて実現され、さらに主・補助ダイバータコイルを独立励磁する複ヌル運転も水素・重水素の両燃料で試みられた。平衡磁場の最適化とリアルタイム位置制御の導入により、形状化運転での放電長が改善されている。

fig.3 Overview of physics results from the ADITYA-U tokamak and future experiments (2024) · CC BY 4.0
IPREQ simulation presents the plasma shape at t = 130 ms for ADITYA-U shot (#35306) during the divertor coils charging.
図はダイバータコイル励磁時の放電(#35306)について、t = 130 msにおける平衡コードIPREQによるプラズマ形状の計算結果である。円形のリミタ配置に対して、下側にX点を持つ非円形断面が形成されている様子が分かる。
ダイバータ運転への移行はプラズマ・対向壁相互作用の低減をもたらした。ダイバータコイル励磁に伴い、HαおよびC-III等の不純物輝線放射が減少し、軟X線強度が増大しており、閉じ込め改善とPFC・プラズマ柱間相互作用の低減の証拠とされている。また、短いガスパフ注入時にプラズマ剥離(デタッチメント)を示唆する兆候が観測されており、複数ガスパフによる過渡的な剥離現象の研究も行われている。
物理研究:MHD、乱流、輸送
ADITYA-Uの物理プログラムは、中型装置のパラメータ領域で閉じ込めを支配する物理の解明に重点を置いている。乱流輸送の分野では、鋭い密度・温度勾配を持つこの装置の特性を生かし、短波長イオン温度勾配モード(SWITG)の研究が進められている。ジャイロ運動論的シミュレーションにより、ADITYA-Uの実験パラメータでは短波長ITGモードが従来型のITGモードと自然に共存することが示され、さらに非円形平衡と運動論的電子を取り入れた拡張計算では、伸長率や三角率といった磁気形状効果がITG乱流の成長率とゾーナルフローに影響を与えることが評価されている。アルゴン不純物を含む静電マイクロ乱流のジャイロ運動論的解析も行われている。
MHD活動については、ガスパフによるティアモード(撕裂モード)の変調、MHD誘起の測地音響モード(GAM)様振動、MHDによる急速な熱パルス伝播などが報告されている。周期的ガスパフや電極バイアスを用いてプラズマ回転を制御し、ドリフト・ティアモードの回転を変化させる実験も行われている。分光診断の整備も進んでおり、可視連続放射の半径分布測定、高分解能可視分光による不純物トロイダル回転分布の測定、接線方向X線結晶分光計の設計などが行われている。Oモード反射計、金属箔赤外ボロメータ、LaBr検出器に基づく硬X線分光計など、幅広い診断系がこの装置の研究を支えている。
ランナウェイ電子とディスラプション緩和
ADITYA-Uの研究課題の中で特に国際的に位置づけが明確なのが、ランナウェイ電子(RE)の生成・輸送・緩和とディスラプション緩和である。この装置ではディスラプション時に放出されるエネルギーが破滅的レベルに達しないため、大型装置では危険を伴うRE緩和手法の検証を安全かつ制御された形で行える。これは、ITERに関連する緩和技術を異なる規模・パラメータの装置で実証するという、世界的な研究需要に応える位置づけである。
実装された緩和手法は多岐にわたる。マッシブガスインジェクション(MGI)に代わる手法として、超音速分子ビームインジェクション(SMBI)が導入され、注入時に硬X線のバーストが観測された。これはREの急速な損失を示し、その後長い緩和相が続く。緩和の機構としては、SMBIが引き起こす小規模ディスラプションが磁力線の確率的化をもたらし、RE損失を加速した後、磁束面の再編成により大きなアイソランルが形成されて残存REを閉じ込める、という描像が最も妥当とされている。また、真空容器の上下に一対の電磁コイルをヘルムホルツ配置で設け、一つのトロイダル位置に局所垂直磁場(LVF)摂動を印加する手法も実装され、RE緩和に有効であることが示されている。

fig.7 Overview of physics results from the ADITYA-U tokamak and future experiments (2024) · CC BY 4.0
(a) A schematic of a pair of REs extraction coils (b) and (c) images of upper and lower LVF coils in ADITYA-U, respectively.
図はRE抽出用コイル対の概念図と、容器上下に実際に設置されたLVFコイルの写真である。上下のコイルはそれぞれ直径約33 cm、間隔820 mmに配置され、容器中心から870 mm離れた一つのトロイダル位置に設けられている。
さらに、誘導駆動の粒子注入(IPI)がディスラプション緩和研究のために開発・運用され、固体粒子をプラズマコアに注入することで急速な電流クエンチが得られている。放電終了後に正バイアス電極を用いてREを閉じ込める新しい手法も試みられた。ディスラプション予測の分野では、ADITYA/ADITYA-Uの運転アーカイブを用いたLSTM型リカレントニューラルネットワークによるデータ駆動型予測モデルが開発されている。ボロメータによるトロイダル放射非対称性の測定は、ディスラプション緩和実験中の放射分布の評価に用いられている。
今後の計画としては、下部混合波電流駆動(LHCD)によるパルス長の延伸、ECRHおよびICRHによる補助加熱の本格化、Ar・Ne・N₂の個別注入がトロイダル回転分布に与える影響の系統的解析などが掲げられている。
この解説が根拠にした論文から
- Overview of operation and experiments in the ADITYA-U tokamakNuclear Fusion 2019
- Overview of recent experimental results from the ADITYA-U tokamakNuclear Fusion 2022
- Runaway electron mitigation with supersonic molecular beam injection (SMBI) in ADITYA-U tokamakNuclear Fusion 2021
- Magnetic shaping effects on turbulence in ADITYA-U tokamakNuclear Fusion 2024
- Plasma performance enhancement and impurity control using a novel technique of argon–hydrogen mixture fueled glow discharge wall conditioning in the ADITYA-U tokamakNuclear Fusion 2024
- Overview of physics results from the ADITYA-U tokamak and future experimentsNuclear Fusion 2024
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推移
研究の変遷
2015–202661本 · 0.24%
ADITYA-Uトカマクの実験と計測の進展
この時期の論文群は、ADITYA-Uトカマクにおける実験運転の概要報告や、プラズマ診断・不純物・ジャイロ運動論的シミュレーションなどと関連づけながら、トロイダル回転の反転や中性粒子温度のポロイダル非対称性といった物理的観測、さらにはリチウム壁調整による不純物・燃料制御の試みを扱っている。具体的には、2019年のOverview of operation and experiments in the ADITYA-U tokamakや2022年のOverview of recent experimental results from the ADITYA-U tokamakが代表的であり、プラズマ位置制御やアルゴンガス入射、壁調整、ティアリングモードといった機器・現象とともに論じられている。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題プラズマ診断、不純物、ジャイロ運動論、プラズマ位置、イオン温度勾配、アルゴン
この時代の論文から
- Overview of operation and experiments in the ADITYA-U tokamakNuclear Fusion 2019
- Observations of toroidal plasma rotation reversal in the Aditya-U tokamakNuclear Fusion 2019
- Overview of recent experimental results from the ADITYA-U tokamakNuclear Fusion 2022
- Observation of poloidal asymmetry in measured neutral temperatures in the Aditya-U tokamak plasmaNuclear Fusion 2019
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている(ADITYA-U、aditya-u tokamak など)。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文26本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、6本の論文(うち全文3本)と3枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
