C-Mod(Alcator C-Mod、alcator c-mod)は、核融合・プラズマ物理学の装置。マサチューセッツ工科大学にあるコンパクトな高磁場トカマクで、最高約8テスラの磁場と高い密度・電力密度で運転される。ELMのない定常HモードやIモードなど、閉じ込め改善状態の研究に重要な役割を果たした。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは293本ある。比重が最も大きかったのは2000–2004年で、その期間の論文の0.89%を占めた。直近の2025–2029年では0.27%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1990年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
アルコーターC-Mod(Alcator C-Mod)は、アメリカ合衆国マサチューセッツ工科大学が運転したコンパクト高磁場トカマク型核融合実験装置である。強磁場と高密度プラズマを組み合わせて磁気閉じ込めの物理を研究し、特に高原子番号金属壁を持つ装置として、プラズマ境界・ダイバータ物理、高周波加熱、閉じ込め様式の研究に多大な貢献をした。1991年に運転を開始し、2013年に運転を終えたが、そのデータは現在もITERやSPARCなど次世代装置の設計に活用され続けている。
装置概要:コンパクト高磁場トカマク
C-Modの最大の特徴は、その名が示す通り「高磁場・小体積」という設計思想にある。Alcatorの名称はイタリア語の「アルト・カンポ・トロイダーレ(alto campo toroidale、高磁場トロイダル)」に由来し、先行装置のAlcator AおよびCから受け継いだものである。C-Modはトロイダル磁場を最大8テスラまで上げることができ、これは大型トカマクの数倍に達する値である。磁場を強くすると、同じプラズマ電流・同じ装置寸法でもプラズマ密度を高く保てる(グリーンワルド密度限界が磁場に比例して上がる)ため、小型の装置でも核融合炉に近い高密度・高圧力のプラズマを実現できる。実際、C-Modは小型装置でありながら、炉心プラズマの圧力や無次元パラメータの多くをITER級の値に近づけた。
プラズマは単一ヌルまたは接続長の短いダイバータ配置で運転され、真空容器内壁とダイバータ板はモリブデンという高原子番号(high-Z)金属で覆われていた。炭素壁が主流だった時代の装置において、金属第一壁での運転を本格的に行った数少ない装置であり、この点が後述のプラズマ・材料相互作用研究の独自性を担っている。また、中性粒子ビーム入射を持たず、補助加熱をイオンサイクロトロン周波数帯(ICRF)波と低域混成波のみに頼っていたことも特徴である。以下に装置の断面を示す。

fig.1 Velocity scaling regimes for blob-like filaments in the Alcator C-Mod scrape-off layer (2026) · CC BY 4.0
Poloidal cross-section of the Alcator C-Mod device showing magnetic flux surfaces for discharge 1160\,616\,022 at time t = 1.3\,\text{s} based on magnetic equilibrium reconstruction. The cutout to the right shows the GPI field of view and the horizontal bar at Z = 11\,\text{cm} represents the scanning MLP diagnostic.
図はC-Modの小断面を示し、再構成された磁気平衡に基づく磁束面(入れ子状の閉じた面とダイバータへの磁力線)が描かれている。右側の拡大図はエッジ診断の観測領域を示す。装置の小型さと、プラズマを囲む金属製真空容器の構造が見て取れる。
閉じ込め様式:オーミック、Hモード、Iモード
C-Modの運転初期には、オーミック加熱(プラズマ電流自身によるジュール加熱)でのエネルギー閉じ込めが、先行装置Alcator Cで確立された「Neo-Alcatorスケーリング」に従わないことが判明した。代わりにITER89-Pに近い、いわゆるオーミックLモードの閉じ込めが得られ、条件によってはNeo-Alcator予測を大きく上回った。この発見は、オーミック閉じ込めの密度依存性が単純な飽和則では記述できないことを示し、閉じ込めスケーリングの理解を改める契機となった。
ICRF加熱プラズマではHモード(エッジ輸送障壁を持つ高閉じ込め様式)が観測され、ELMのない状態で閉じ込め改善係数約2が得られた。C-ModのHモード研究で特に重要なのは、EDA Hモードと呼ばれる変種である。これはエッジに準一貫性のある揺動(quasi-coherent mode、周波数でおよそ100 kHz台)が常在し、その揺動が粒子輸送を担うことで、大きなELMを起こさずに定常なペデスタルを維持できる様式である。大型装置で問題となるELMによる壁熱負荷の脅威を、乱流による穏やかな粒子排出で回避できる可能性を示した点で意義が大きい。
さらにC-Modは、LモードとHモードの中間に位置する第三の閉じ込め様式「Iモード」を発見・体系化したことで知られる。Iモードではエッジに温度の輸送障壁(温度ペデスタル)が形成されてエネルギー閉じ込めがHモード並みに改善する一方、粒子の輸送障壁は形成されない。この「エネルギーは閉じ込め、粒子は通す」という非対称性が実用上極めて有利である。粒子障壁がないため不純物は炉心に蓄積せず、高原子番号金属壁での放射損失が抑えられる。またELMが通常存在せず、定常運転に適する。Iモードは磁場3–6テスラ、プラズマ電流0.7–1.3 MAの広い範囲で得られ、加熱電力を上げても閉じ込めの劣化が弱く、正規化閉じ込め係数H98が1を超える。エッジ温度ペデスタルは約1 keVに達し、EDA Hモードの0.6 keV未満と比べて高い衝突度領域まで拡張された。エッジでは100–300 kHz程度の弱い一貫性揺動が粒子輸送を担っていると考えられている。Iモードはその後ASDEX Upgradeなど他装置でも再現され、ELMを伴わない高閉じ込め運転の有力な候補として現在も研究が続いている。
ダイバータ物理と高原子番号金属壁
C-Modの第二の柱は、強磁場・高密度という条件下でのプラズマ境界と壁の物理である。ダイバータでは密度の上昇に伴って複数の運転領域が現れ、中・高密度域ではプラズマがダイバータ板から「離脱」するデタッチメント(detachment)が段階的に進行することが観測された。ダイバータ近傍の強い放射がプラズマ板への熱負荷を大幅に下げるため、C-Modではダイバータへの熱流は一般に低く抑えられていた。この放射による熱負荷緩和は、炉規模装置のダイバータ設計(放射ダイバータ)の基礎となる概念である。
壁材料としてのモリブデンは、炉心への不純物侵入が性能を左右する。測定によれば、オーミックLモードでは電子密度を上げるとモリブデン侵入係数が急激に減少し、不純物の「遮蔽」が強まることが示された。有効電荷Z<sub>eff</sub>が電子密度とともに下がるという普遍的な観測事実と整合し、高密度運転が金属不純物制御の鍵であることを示唆する。炉心タングステン輸送の研究では、C-Modの典型的な条件ではタングステンの蓄積が自然に回避されることも明らかになった。
プラズマ・材料相互作用の面では、境界プラズマの乱流が壁負荷を決める役割が詳細に調べられた。境界プラズマ中には磁力線に沿って引き伸ばされ、断面では局所的な高密度塊として振る舞う「ブロブ」状のフィラメント構造が存在し、磁場曲率と密度勾配に起因するドリフトによって外向きに輸送される。フィラメントの半径方向速度は、その横サイズと衝突性によって支配される電流経路(極化電流か、材料表面まで流れる平行電流か)で決まり、理論は速度が最大になる特性サイズの存在を予測する。C-Modの測定は、低密度ではシース接続型のフィラメントが、密度限界に近づくと高速度・高衝突性のフィラメントへ移行することを示した。また、高ダイバータ衝突度だけが境界揺動の強化や遠方SOLの「肩」形成を支配するわけではないことも指摘され、フィラメント輸送の理解を精緻化した。
壁そのものの損耗についても、可視光撮像によるモリブデン侵食のイメージングや熱計測が行われ、ICRF加熱や低域混成波電流駆動運転での侵食分布が明らかにされた。さらにダイバータのタングステン試験片表面に、ヘリウムプラズマ照射で成長するナノスケールの繊維状構造(ナノテンドリル)が実際のトカマク環境で形成されることが観測され、炉壁材料の長期課題への懸念を具体的に示した。
高周波加熱と電流駆動:ICRFと低域混成波
C-Modは補助加熱をすべて高周波(RF)に依存していた。ICRF波(およそ30–120 MHz帯)は高密度でもカットオフによる加熱不能がなく炉心加熱に適し、電源技術も成熟しているため、高磁場・高密度のコンパクト装置にはとりわけ有利な加熱手段である。実際、高磁場装置SPARCがICRFを唯一の補助加熱に選んだのはこの理由による。C-ModではICRF加熱イオンの分光計測により、イオンサイクロトロン加熱を受けた陽子の高エネルギー分布が実験と数値の両面から特徴づけられた。
一方、ICRFの難点はアンテナと境界プラズマの相互作用にある。アンテナ構造物上で整流されたRFシース電位がイオンのスパッタリングを加速し、高原子番号壁では不純物汚染が性能を制限しうる。C-Modはこの問題に対する実験的・理論的理解を大きく進めた。鍵となったのは「磁場整合(field-aligned)アンテナ」である。従来のトロイダル方向に整列したアンテナの代わりに、アンテナのストラップ・隔壁・保護タイルを磁力線のピッチ角(C-Modでは約7–13度)に合わせて約10度回転させ、ファラデースクリーンのバーを総磁場方向に整列させた。このアンテナは従来型と比べてモリブデン汚染を劇的に減らし、同じ入射RF電力で炉心放射電力を2–3割低減した。さらに4ストラップ構成でダイポール位相運転を行い、中央2ストラップと外側2ストラップへの電力配分(電力テーパリング)を調整することで、アンテナ箱に誘起される鏡像電流を最小化できることが示された。この二つの手法の組み合わせにより、アンテナ近傍だけでなく磁気的に接続された遠方の壁面での不純物源も低減でき、ICRFと境界プラズマの相互作用緩和の設計指針が確立された。以下に、磁場整合アンテナと従来型アンテナの構造を示す。

fig.1 Mitigation of ICRF—edge plasma interaction in Alcator C-Mod (2025) · CC BY 4.0
(a) Picture of the Alcator C-Mod four-strap field-aligned J antenna illustrating the concept of power tapering. When the antenna operates in dipole phasing (0 \pi 0 \pi), coupling more power through the central two straps than the outer two straps (represented by longer black arrows than red arrows in the picture) can minimize and potentially cancel out the image currents (represented by dashed arrows) on the antenna box for an appropriate P_\mathrm {cent}/P_\mathrm {tot}. (b) Picture of the Alcator C-Mod two-strap toroidally aligned D and E antennas. The pink stars in (a) and (b) show the locations of the thermocouples used for the analysis in figure 25.
図は4ストラップの磁場整合Jアンテナ(左)と、従来のトロイダル整列型D・Eアンテナ(右)を写したものである。左図の矢印はダイポール位相でのストラップ電流と、電力配分の調整により打ち消されるアンテナ箱の鏡像電流を示す。ファラデースクリーンのバーが磁力線に沿って傾いていることが分かる。
低域混成波(lower hybrid)を用いた電流駆動も行われ、Hモードペデスタル構造の制御への応用が試みられた。また境界プラズマ中の低域混成波周波数帯の波動が観測・同定され、RF波と境界乱流の相互作用の理解に寄与した。診断面でも、高分解能電子サイクロトロン放射計による電子温度分布・揺動計測、高分解能エッジトムソン散乱など、境界領域の精密計測手法が発展した。
ITERと次世代装置への貢献
C-Modは小型でありながら、その高磁場・高密度・金属壁という運転条件がITERやSPARCの想定条件と多くを共有していたため、炉規模装置への外挿の試金石としての役割を果たした。ITERの内壁近傍の磁力線に沿った輸送の研究は、他装置の結果と合わせてITER内壁の詳細形状の変更につながった。ランナウェイ電子の研究では、衝突理論の予測よりはるかに高い臨界電場が必要であることが示され、ディスラプション緩和設計に直結する知見となった。ガスジェットや大量ガス注入によるディスラプション緩和の研究はDIII-Dとの共同で行われ、磁気流体力学シミュレーションと対照された。
境界物理では、SOL輸送・フィラメント統計・ダイバータ離脱・不純物遮蔽のデータベースが、SPARCのような高磁場コンパクト装置の境界モデルの検証に直接使われている。閉じ込め物理では、Iモードの発見とその無次元パラメータスケーリング、EDA HモードによるELMフリー定常運転の実証が、次世代装置の運転シナリオの選択肢を広げた。運転終了後もC-Modのデータは検証・妥当性確認の基準データセットとして活用され続けており、コンパクト高磁場アプローチが核融合研究に残した足跡は大きい。
この解説が根拠にした論文から
- I-mode: an H-mode energy confinement regime with L-mode particle transport in Alcator C-ModNuclear Fusion 2010
- Alcator C-Mod: research in support of ITER and steps beyondNuclear Fusion 2015
- Confinement and divertor studies in Alcator C-ModPlasma Physics and Controlled Fusion 1994
- Mitigation of ICRF—edge plasma interaction in Alcator C-ModNuclear Fusion 2025
- Comparison between Alcator C-Mod ICRF experiments and 3D full wave simulationsNuclear Fusion 2026
- Molybdenum density scaling in Alcator C-Mod L- and I-mode plasmasNuclear Fusion 2026
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推移
研究の変遷
1985–19942本 · 0.04%
Alcator C-Mod の初期計測と最初の成果
この時期は corpus 内に 2 件のみであり、Ohmic heating との共起が示すように、主にオーミック加熱下での閉じ込めとダイバータ研究である。装置としては alcator-c-mod のみが現れ、「First ohmic H modes in ALCATOR C-MOD」や「Confinement and divertor studies in Alcator C-Mod」が代表的な論文である。
同時に語られた主題オーミック加熱
この時代の論文から
- First ohmic H modes in ALCATOR C-MODNuclear Fusion 1994
- Confinement and divertor studies in Alcator C-ModPlasma Physics and Controlled Fusion 1994
1995–200484本 · 0.85%
ICRF 加熱と閉じ込め研究の拡大
この時代は corpus 全体の 0.85% を占め、Impurity、Ion cyclotron heating、Toroidal rotation、H-mode などと強く共起する。装置は alcator-c-mod が中心で、tftr、jet、diii-d とも共起し、ICRF 加熱による中心トロイダル回転や、ディスラプション、ハロー電流などの研究が行われている。
同時に語られた主題不純物、イオンサイクロトロン加熱、トロイダル回転、輸送障壁、オーミック加熱、Hモード
この時代の論文から
- H mode confinement in Alcator C-ModNuclear Fusion 1997
- Cross-field plasma transport and main-chamber recycling in diverted plasmas on Alcator C-ModNuclear Fusion 2000
- Observations of central toroidal rotation in ICRF heated Alcator C-Mod plasmasNuclear Fusion 1998
- Disruptions and halo currents in Alcator C-ModNuclear Fusion 1996
2005–2014120本 · 0.78%
ペデスタル・SOL 物理と他装置比較
この時代はわずかに 0.78% へ低下しつつ、Impurity、Ion cyclotron heating、Lower hybrid、H-mode、Scrape-off layer、Pedestal などとの共起が続く。alcator-c-mod に加えて jet、iter、diii-d、mast が現れ、I-mode の発見やタングステンナノ構造成長、ガスジェットによるディスラプション緩和、ITER を想定した逃走電子閉じ込めのモデリングが行われている。
同時に語られた主題不純物、イオンサイクロトロン加熱、低域混成波、Hモード、スクレイプオフ層、ペデスタル
この時代の論文から
- I-mode: an H-mode energy confinement regime with L-mode particle transport in Alcator C-ModNuclear Fusion 2010
- Tungsten nano-tendril growth in the Alcator C-Mod divertorNuclear Fusion 2012
- Evidence for electromagnetic fluid drift turbulence controlling the edge plasma state in the Alcator C-Mod tokamakNuclear Fusion 2005
- Gas jet disruption mitigation studies on Alcator C-Mod and DIII-DNuclear Fusion 2007
2015–202687本 · 0.35%
多装置比較とデータ駆動研究への展開
この時代は曲線が 0.35% まで減り、Scrape-off layer、Impurity、I-mode、Pedestal、H-mode、Gyrokinetic などと共起する。装置は alcator-c-mod が主であるが、diii-d、jet、iter、east とも共起し、機械学習によるディスラプション予警報、Super H-mode の高融合性能、熱流束幅のスケーリング、L・I・H モードでの不純物輸送などの研究が行われている。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題スクレイプオフ層、Iモード、ペデスタル、不純物、イオンサイクロトロン加熱、Hモード
この時代の論文から
- Machine learning for disruption warnings on Alcator C-Mod, DIII-D, and EASTNuclear Fusion 2019
- High fusion performance in Super H-mode experiments on Alcator C-Mod and DIII-DNuclear Fusion 2019
- High-resolution heat flux width measurements at reactor-level magnetic fields and observation of a unified width scaling across confinement regimes in the Alcator C-Mod tokamakNuclear Fusion 2018
- Core impurity transport in Alcator C-Mod L-, I- and H-mode plasmasNuclear Fusion 2015
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている(C-Mod、Alcator C-Mod、alcator c-mod など)。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文120本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、7本の論文(うち全文4本)と2枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
