TJ-II(TJ-II stellarator)は、核融合・プラズマ物理学の装置。スペイン・マドリードに設置された4周期・低磁気シアのヘリアック型ステラレータで、磁気配位の柔軟性が高く、回転変換や磁気井戸を大きく変えられる。電子サイクロトロン加熱と中性粒子ビーム入射を用い、輸送障壁や乱流、アルヴェン固有モードなどの研究に供されている。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは210本ある。比重が最も大きかったのは2000–2004年で、その期間の論文の0.66%を占めた。直近の2025–2029年では0.21%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1985年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
TJ-IIは、スペインのマドリードにある国立融合エネルギー研究所(CIEMAT)が運用する中型のヘリアック型スタセレータ装置である。主要半径1.5 m、プラズマ小半径0.22 m以下、磁場周期数4、軸上平均磁場約1 Tという規模を持ち、電子サイクロトロン共鳴加熱(ECRH)と中性粒子ビーム入射(NBI)の両方によって放電を生成・維持できる。1990年代後半に最初のプラズマを達成して以来、三次元磁場配位と輸送・乱流・電場との関係を研究する中核的実験装置として運用が続けられている。

fig.1 Multi-pellet injection into the NBI-heated phase of TJ-II plasmas (2024) · CC BY 4.0
A bird’s-eye view sketch of TJ-II showing locations of diagnostics of interest as well as quadrants A through to D, and sectors 1–8. The vacuum chamber is grey, magnetic field generation coils are dark blue (vertical, toroidal and circular) and orange (helical), and the plasma is purple. The device is operated nominally with an anti-clockwise toroidal magnetic field direction, BT, when viewed from above.
図は装置の鳥瞰図であり、灰色の真空容器、青色のトロイダル・垂直・円形コイルと橙色のヘリカルコイル、紫色のプラズマ、およびトムソン散乱やドップラーレフレクトメータ、重イオンビームプローブ(HIBP)などの診断装置の配置を示す。
ヘリアック型装置としての構成
TJ-IIは「フレキシブル・ヘリアック」に分類される。磁場を生成する系は、中心軸に沿って設置された円形コイル、その周りに巻かれたヘリカルコイル、そして外側の垂直場コイルからなる。ヘリカルコイルが中心コイルの周囲をねじれることで、磁気軸そのものがらせん状にねじれた配位が実現する。プラズマ断面は豆(ビーン)型をなし、プラズマ体積は1 m³以下と中型装置の範疇にある。

fig.A2 Validating neutral-beam current drive simulations in the TJ-II stellarator (2023) · CC BY 4.0
General view of the TJ-II stellarator configuration coils (a) and a detail view (b) showing both the plasma in blue and the different coils: the central coil (CC), in red; the helical coil (HX) twisted around CC, in green; and the outer vertical field coils (VF), also in red.
図は配位コイルの全体図と拡大図であり、青色のプラズマ、赤色の中心コイル(CC)、それを囲む緑色のヘリカルコイル(HX)、外側の赤い垂直場コイル(VF)の関係がわかる。
このコイル構成の特長は、各コイル電流を独立に制御できる点にある。電流比を変えることで、配位を放電ごとに、さらには一放電中で動的に変化させることができる。これが「フレキシブル」の名の由来であり、後述する輸送研究の中心的な手段となっている。
磁場配位の柔軟性と三次元位相空間
スタセレータは本質的に軸対称性を持たない三次元装置であり、その輸送と安定性は磁場配位の三次元トポロジーに強く依存する。TJ-IIではエッジの回転変換(ローテーショナル・トランスフォーム)を1.0から2.2の範囲で変えられる。回転変換が低次の有理値を横切る際には磁島が形成され、プラズマ縁の輸送や流れに影響を与える。また、適度なオーミック電流や電子サイクロトロン駆動電流を重ねて回転変換プロファイルを放電中に変化させることもできる。
軸対称性の破れは新古典輸送を増大させ、それに応じて両極性の径向電場が自発的に形成される。この電場とそのシアが乱流輸送を制御するという図式は、スタセレータ一般に共通するが、配位を系統的に掃引できるTJ-IIはその検証に特に適している。共鳴磁場摂動によって軸対称性を人為的に破るトカマクの研究とも直接に接続する主題である。
加熱・燃料投入・診断
加熱は2基のジャイロトロン(53.2 GHz、各300 kW、第二高調波Xモード)によるECRHと、2基の水素中性粒子ビーム入射装置(最大約30 kV、各600 kW級)とを組み合わせて行う。通常はECRHでプラズマを生成し、NBIを追加するが、リチウムで壁をコーティングした条件下ではNBIのみで放電を生成できることも示されている。NBIは順・逆の両方向に入射可能であり、非平衡入射によってはビーム駆動電流(NBCD)が生じ、回転変換プロファイルを変化させる。低密度プラズマでは中性原子との電荷交換損失が入射電力の相当部分に達しうるため、高速イオンの減速分布を正確に評価するにはその取り扱いが不可欠である。
燃料投入については、低温凍結ペレット注入装置を備える。ペレット注入はコア燃料供給の手段であると同時に、注入後にはISS04スケーリング則の予測を上回るエネルギー閉じ込め改善(ペレット誘起高性能位相)が観測されており、輸送研究の重要な手段にもなっている。壁処理としては液体リチウムおよびLiSnリミタによるコーティング実験が可能で、不純物のスパッタリングと粒子リサイクリングの研究に用いられている。
診断は充実しており、トムソン散乱、複数の干渉計、重イオンビームプローブ(2系統に増設され、トロイダル方向に90°離れた2断面で電位を測定可能)、ドップラーレフレクトメータ、再結合荷電交換分光(CXRS)、Hαカメラ、熱撮像カメラ、多ピン・ラングミュアプローブなどが運用されている。HIBPの二重化は電位の長距離相関、すなわちゾーナルフローの検出を可能にした。
輸送・電場・閉じ込め遷移
TJ-II研究の中心的主題は、乱流・径向電場・閉じ込めの三者関係である。スタセレータ縁では、線平均電子密度がある閾値を超えると「電子根」から「イオン根」への遷移が起こる。TJ-IIではこの閾値は線平均密度でおよそ0.6×10¹⁹ m⁻³であり、加熱電力にも依存する。遷移を横切るとエッジの径向電場が符号を反転し、シアを持つE_r層が形成されて乱流が抑制され、粒子閉じ込めが顕著に改善する。この遷移はL-H遷移や内部輸送障壁と同系列の現象であり、TJ-IIではECRH出力を変調することで制御パラメータ(実効的衝突性)の役割が調べられ、乱流の長距離相関や双コヒーレンス解析によって「相転移」としての性格が調べられている。
乱流研究では、ドップラーレフレクトメータによる乱流の径向相関長測定、遠隔ラングミュアプローブ間の長距離相関、バイオルソゴナル分解によるゾーナルフローの同定、間欠性に基づく二次元乱流構造のトポロジー解析などが行われている。ゾーナルフローとエッジシア層形成の関係、トロイダル方向の長距離相関と径向輸送の結合は、閉じ込め遷移の動力学を理解する鍵として追求されてきた。また、電子内部輸送障壁の形成が有理面や準コヒーレント振動と結びつく現象も報告されている。
高速粒子の物理も重要な研究領域である。NBIによって駆動されるアルフベン固有モードはHIBPで検出され、チャーピングや周波数掃引の挙動が理論シミュレーションと比較検証されている。これはITERなどで問題となる高速粒子による安定性への影響を理解する基礎を与える。
大型スタセレータへの意義
TJ-IIは中型装置でありながら、配位柔軟性と先進診断の組み合わせによって、閉じ込め改善・乱流・三次元トポロジー・電場・高速粒子といった、炉級磁場閉じ込め装置に共通する基礎問題を系統的に扱う場となっている。得られた知見は、運用中の最大級のヘリカル装置である大型ヘリカル装置(LHD)とウェンデルシュタイン7-X(W7-X)の研究に直接翻訳されることを目指しており、ペレット注入後の高性能位相やe–i根遷移のような主題は両装置でも並行して研究されている。さらに、非誘導電流や乱流輸送の検証研究を通じて、トカマクとスタセレータの両研究線の橋渡し、ひいてはITERおよび国際的な研究プログラムへの寄与もその目的に含まれる。
この解説が根拠にした論文から
- 3D effects on transport and plasma control in the TJ-II stellaratorNuclear Fusion 2017
- Overview of recent TJ-II stellarator resultsNuclear Fusion 2019
- Validating neutral-beam current drive simulations in the TJ-II stellaratorNuclear Fusion 2023
- First plasmas in the TJ-II flexible HeliacPlasma Physics and Controlled Fusion 1999
- Multi-pellet injection into the NBI-heated phase of TJ-II plasmasNuclear Fusion 2024
- Edge turbulence dynamics across electron–ion root transitions during ECRH modulation experiments in the TJ–II stellaratorPlasma Physics and Controlled Fusion 2026
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推移
研究の変遷
1985–19945本 · 0.09%
設計・理論検討の時代
この時期の論文はすべてTJ-IIの概念設計・理論解析であり、フレキシブルヘリアックとしての理想Mercier安定性や輸送、ECRHのマイクロ波吸収・超熱テールの影響を扱っている。実験装置としてのデータはまだなく、プラズマ診断や加熱といった実験要素との共起はECRHのみである。
同時に語られた主題電子サイクロトロン加熱
この時代の論文から
- Ideal Mercier stability for the TJ-II flexible HeliacNuclear Fusion 1990
- Study of transport in the flexible heliac TJ-IINuclear Fusion 1988
- Microwave absorption near the first and second harmonics in the flexible heliac TJ-IINuclear Fusion 1987
- Influence of a superthermal tail upon ECRH in the TJ-II flexible heliac – a theoretical studyNuclear Fusion 1988
1995–200443本 · 0.43%
実験開始と閉じ込め・輸送研究
TJ-IIの運転開始に伴い、閉じ込め改善、熱輸送、弾道輸送、ELM類似現象など実験結果が報告され始める。プラズマ診断、ECRH、トムソン散乱、動径電場、データ取得、バルーニングモードなどと共起し、環状磁気面の低次の有理面が熱輸送に与える影響などが調べられた。
同時に語られた主題プラズマ診断、電子サイクロトロン加熱、トムソン散乱、径方向電場、電子サイクロトロン放射、データ収集システム
この時代の論文から
- Enhanced heat confinement in the flexible heliac TJ-IINuclear Fusion 2002
- Ballistic transport phenomena in TJ-IINuclear Fusion 2002
- Influence of low-order rational magnetic surfaces on heat transport in TJ-II heliac ECRH plasmasNuclear Fusion 2004
- Edge-localized-mode-like events in the TJ-II stellaratorNuclear Fusion 2000
2005–201488本 · 0.57%
多様な物理課題とNBI・壁調整
NBIや追加熱、不純物、アルヴェン波、帯状流、輸送障壁などが主要な共起テーマとなる。Li被覆壁下での閉じ込め遷移、NBI駆動アルヴェン固有モードのECRHによる緩和、乱流拡散のH-L遷移での役割など、プラズマ・壁相互作用とMHD・乱流の相互作用が精力的に研究された。LHDとの比較も現れる。
同時に語られた主題中性粒子入射、電子サイクロトロン加熱、プラズマ診断、中性ビーム、不純物、アルフヴェン波
この時代の論文から
- Confinement transitions in TJ-II under Li-coated wall conditionsNuclear Fusion 2009
- Alfvén eigenmodes measured in the TJ-II stellaratorNuclear Fusion 2011
- Plasma potential and turbulence dynamics in toroidal devices (survey of T-10 and TJ-II experiments)Nuclear Fusion 2011
- Mitigation of NBI-driven Alfvén eigenmodes by electron cyclotron heating in the TJ-II stellaratorNuclear Fusion 2013
2015–202674本 · 0.30%
定常運転とアルヴェン物理・ペレット入射
ECRHとNBIが主要な加熱手段として継続し、アルヴェン波・固有モードと帯状流が中心的なテーマである。ペレット入射やスクレイプオフ層の乱流制御、磁気島と流れの関係、NBI駆動チャープモードの構造と磁気配位依存性など、詳細な実験とモデリングが進んだ。W7-Xとの共起が1件現れる。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題電子サイクロトロン加熱、中性粒子入射、アルフヴェン波、プラズマ診断、ペレット入射、帯状流
この時代の論文から
- Plasma flow, turbulence and magnetic islands in TJ-IINuclear Fusion 2016
- Measurement and control of turbulence spreading in the scrape-off layer of TJ-II stellaratorNuclear Fusion 2019
- Study of NBI-driven chirping mode properties and radial location by the heavy ion beam probe in the TJ-II stellaratorNuclear Fusion 2016
- Transition from chirping to steady NBI-driven Alfvén modes caused by magnetic configuration variations in the TJ-II stellaratorNuclear Fusion 2016
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている(TJ-II、TJ-II stellarator など)。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文120本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、6本の論文(うち全文5本)と2枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
