ヴェンデルシュタイン(Wendelstein、wendelstein stellarator)は、核融合・プラズマ物理学の装置。ドイツのマックス・プランク研究所が開発した一連のステラレーター実験装置である。W7-ASで最適化の要素を検証し、後継のW7-Xでは超伝導コイルとアイランドダイバータを備え、定常運転による高性能プラズマの実証を目指す。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは408本ある。比重が最も大きかったのは2020–2024年で、その期間の論文の1.16%を占めた。直近の2025–2029年では0.94%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1985年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
ヴェンデルシュタイン7-X(Wendelstein 7-X、W7-X)は、ドイツ・グライフスヴァルトのマックス・プランク・プラズマ物理学研究所が建設した大型ヘリアカル・アドバンスド・ステラレータ(最適化ヘリカル装置)であり、現在稼働するステラレータとしてはLHD(日本)と並ぶ世界最大級の装置である。主要半径5.5 m、副半径0.5 m、プラズマ体積30 m³を持ち、2015年12月に初プラズマを達成した。その使命は二つある。すなわち、ステラレータ磁場の数理的最適化の実証と、核融合炉に関連するプラズマ条件での定常状態運転の実証である。ステラレータはプラズマ電流に依存しない外部コイル磁場で閉じ込めるため、電流駆動を要さず本質的に定常運転が可能であり、また電流起因のディスラプション(急速放電終息)が原理的に存在しない。W7-Xはこの概念の炉成立性を検証する旗艦装置である。

fig.01 Overview of first Wendelstein 7-X high-performance operation (2019) · CC BY 4.0
Schematic diagram of the superconducting stellarator device Wendelstein 7-X. The last closed magnetic flux surface is indicated in light blue. The 50 non-planar (red) and the 20 planar (orange) superconducting coils are operated in a evacuated cryostat volume between the plasma vessel and the outer vessel. Wendelstein 7-X is a high-iota low-shear device and the iota profiles (\beta=0) of some reference magnetic configurations are shown on the right hand side. The reference configurations are standard (EIM), high mirror ratio (KJM), high iota (FTM), and low iota (DBM).
概要と装置の使命
W7-Xの設計は、精緻な数値最適化手続きに基づいている。最適化の目標は、高温度・低衝突頻度領域での新古典輸送損失の抑制、プラズマ中心部での高エネルギー粒子(将来炉では核融合アルファ粒子)の閉じ込め改善、高ベータでの平衡・安定性の確保、そして信頼できるダイバータ運転の両立である。この「ドリフト最適化」により、磁場強度に沿って粒子の磁気モーメントを保存するよう配位が設計されており、W7-Xはその代表例として準オムニジーニー(quasi-omnigeneous)配位を設計点に含む。
装置は5つのトロイダル周期を持ち、豆形(bean-shaped)断面が各周期の中央に、三角形断面が境界に位置する三次元磁場構造をもつ。磁場は磁軸上で2.5 Tであり、液体ヘリウムで冷却したNbTi超伝導コイルによって生成される。すべての対プラズマ部材は能動水冷却能力を備えて設計されており、これが1800秒(30分)に及ぶ定常放電の技術的基盤となる。
磁場コイル系と磁場の最適化
磁場コイル系は、非平面超伝導コイル50個と平面超伝導コイル20個からなる。非平面コイルはねじれた三次元形状をした主閉じ込めコイルであり、平面コイルはこれに直列的に重ねて配位を変調する。さらに5つのトリムコイルが固有の1/1誤差場の補償のために、10個の制御コイルが境界磁場島構造の制御のために備えられている。コイル系は数ミリメートルの精度で製造・組立てられ、極低温への冷却収縮後も磁場の対称性を維持するよう設計されており、実際、初運転前の磁場計測により設計通りの磁場トポロジーと、トリムコイルで補正可能な範囲に収まる誤差場が確認された。
コイル電流の組み合わせにより、複数の基準磁場配位が得られる。標準配位では境界の回転変換(イオタ)がほぼ1(=5/5)となり、プラズマ境界に5本の磁場島の鎖が形成される。非平面コイルの電流を豆形断面付近で増やせば鏡比の高い「高鏡」配位(準オムニジーニー設計点)、平面コイルに逆方向電流を流せば境界回転変換を5/4まで上げた「高イオタ」配位が得られる。W7-Xはこのように高いイオタと低いせん断を特徴とし、境界磁場トポロジーを外部から柔軟に制御できる点が大きな特色である。
加熱系
定常加熱の主役は電子サイクロトロン共鳴加熱(ECRH)である。140 GHzのジャイロトロン10基で計10 MWが設計されており、2.5 Tの磁場で第二高調波加熱の中心加熱が可能である。初運転段階では6基・最大5 MWが用いられ、低磁場側の6か所の独立したステアリング鏡により、加熱位置の垂直方向移動やトロイダル方向の電流駆動が行えた。ECRHはジャイロトロンが連続運転可能であるため、ステラレータの定常化の理念と整合する加熱手段である。
これに加えて、高ベータプラズマや高エネルギー粒子物理の研究のために、55 keVの水素中性粒子入射(NBI)とイオンサイクロトロン共鳴加熱(ICRH)が整備されてきた。NBIの入射エネルギーは、より大型・高磁場の炉で生まれる核融合アルファ粒子と同じラーモア半径・軌道特性となるよう選ばれており、アルファ粒子閉じ込めの代理試験を可能にしている。ただしNBIはトロイダルに局在した粒子生成と非一様なピッチ角分布をもつため、炉でのアルファ粒子損失分布を直接模擬するものではない。
島ダイバータとパワー排出
熱・粒子排出は、先行装置ヴェンデルシュタイン7-ASで初めて探索された島ダイバータ概念に基づく。境界回転変換が有理数に近いことで生じる磁場島の鎖をプラズマ境界に置き、島の断面をターゲット板で切断して熱流を受け止める。装置は上下各5基、計10のダイバータユニットをもち、各ユニットは水平ターゲットと垂直ターゲットからなり、ポンプギャップを通じてサブダイバータ容積(排気ダクト)に接続される。

fig.1 Overview over the neutral gas pressures in Wendelstein 7-X during divertor operation under boronized wall conditions (2023) · CC BY 4.0
Geometry of one divertor module in Wendelstein 7-X including the pumping ducts at the AEH port and the AEP port, the horizontal and vertical divertor targets and the large and small pumping gap.
三次元の島ダイバータでは、10基のダイバータユニットへの熱負荷が本質的に非軸対称となる。これに加え、コイル製造・組立ての不完全さに由来する低次の誤差場(1/1、2/2成分)、粒子ドリフト、ベータ効果などが熱負荷の非対称性を増幅し、局所過負荷のリスクとなる。赤外線サーモグラフィによる全ダイバータの実時間監視と、トリムコイル・制御コイルによる誤差場補償によって熱負荷の対称化が図られており、制御コイルによる2/2誤差場補償の有効性も位相走査実験で示されている。
不純物ガス(ネオン、窒素)シードによる放射冷却排熱も実証された。単一トロイダル位置からの一方向注入で放射損失の8割に達する運転が可能であり、ダイバータ熱負荷を全体に約2/3低減でき、熱流の分離(detachment)が達成された。その代償として貯蔵エネルギーの低下が生じるが、密度低下はフィードバック制御されたダイバータ燃料補給で補償できる。この複雑な三次元島幾何での制御された熱負荷低減は、将来の全金属ダイバータでの分離制御への有望な知見とされる。
粒子排出と密度制御の鍵はサブダイバータ内の中性ガス圧である。制御コイル電流で島の形状を変えストライクラインをポンプギャップ近くへ移動させると、サブダイバータの中性ガス圧が3〜5割向上することが示されている。一方、壁に蓄積される粒子リザーバ(結合粒子貯蔵)は放電中の動的な粒子源・シンクとして振る舞い、密度制御を複雑にする要因となる。
運転段階と主要成果
W7-Xの運転は、炉内機器の整備進捗に応じた段階的アプローチをとる。最初の運転段階OP 1.1(2015年12月〜2016年3月)はリミタ配位であり、5枚の石墨リミタが熱負荷を担うため、注入エネルギーは当初2 MJ、後に4 MJに制限された。この段階ではプラズマ起動・運転の総合試験が主目的で、30を超える診断系が整備・稼働した。続くOP 1.2では冷却されていない石墨製試験ダイバータ(10モジュール)が設置され、注入エネルギー80 MJ、8 MW加熱で10秒級の放電が可能となり、島ダイバータでの初の本格的物理実験が行われた。さらに長パルス・高性能運転段階では、能動水冷却ダイバータと全炉内機器の水冷却、クライオポンプの整備により、10 MW加熱・最長30分の定常運転を目指す。
OP 1.2の非冷却運転では注入エネルギーは200 MJまで拡大され、典型的に10〜30秒の高性能放電、低出力では最長100秒の長パルス放電が実現した。この段階で、高密度プラズマの長パルス生成、ペレット入射による高速粒子輸送を介した中心燃料補給、島ダイバータでの放射排熱、そして最適化の検証である新古典輸送・閉じ込め特性の評価が進められた。高エネルギー粒子については、赤外線サーモグラフィによる第一壁・ダイバータへの高速イオン損失(ホットスポット)の計測とモンテカルロ軌道シミュレーションとの検証が行われ、NBI出力増強に伴う対プラズマ部材の負荷評価が課題として続いている。
装置・運転の側面でも、超伝導コイルの製造、クエンチ検出系、クライオスタットの組立て、リアルタイム制御ソフトウェア、実験データアーカイブなど、長パルス超伝導装置に固有の技術課題が体系的に解決されており、これら自体がステラレータ炉概念の技術的実証の一部をなしている。
この解説が根拠にした論文から
- Overview of first Wendelstein 7-X high-performance operationNuclear Fusion 2019
- Major results from the first plasma campaign of the Wendelstein 7-X stellaratorNuclear Fusion 2017
- Final integration, commissioning and start of the Wendelstein 7-X stellarator operationNuclear Fusion 2017
- Status of WENDELSTEIN 7-X constructionNuclear Fusion 2003
- First demonstration of radiative power exhaust with impurity seeding in the island divertor at Wendelstein 7-XNuclear Fusion 2019
- Identification of fast ion wall loads in Wendelstein 7-X from thermographic measurementsPlasma Physics and Controlled Fusion 2022
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推移
研究の変遷
1985–199414本 · 0.26%
輸送・閉じ込め研究の開始期
この時代はWendelstein VII-AおよびWendelstein 7-ASステラレータを対象に、電子熱輸送、不純物輸送、高速イオン損失の研究が中心であった。電子サイクロトロン加熱のパワー変調による局所熱伝導率評価や、動径電場の効果が調べられている。マシンリストにはwendelstein-7xが1件現れる。
同時に語られた主題電子サイクロトロン加熱、径方向電場、高エネルギーイオン、熱伝導率、不純物輸送、不純物
この時代の論文から
- Electron thermal conductivity from heat wave propagation in Wendelstein 7-ASNuclear Fusion 1992
- Evaluation of the local heat conductivity coefficient by power-modulated electron cyclotron heating in the Wendelstein VII-A StellaratorNuclear Fusion 1986
- Resonant superbanana and resonant banana losses of injected fast ions in Heliotron E and Wendelstein VII-A: effects of the radial electric fieldNuclear Fusion 1992
- Wendelstein stellaratorsNuclear Fusion 1985
1995–200440本 · 0.40%
W7-ASの物理研究とW7-X建設の開始
Wendelstein 7-ASにおいて、有理面での電子エネルギー輸送や非消滅トロイダル電流密度の安定性影響、放射凝縮によるダイバータデタッチメントなどの研究が進められた。同時にWENDELSTEIN 7-X建設の現状報告が登場し、マシンリストではwendelstein-7xが13件を占める。不純物ペレット消融モデルではASDEX Upgradeとの比較も行われた。
同時に語られた主題電源、不純物、Hモード、アルフヴェン波、アルヴェン固有モード、ダイバータ剥離
この時代の論文から
- Electron energy transport in the presence of rational surfacesin the Wendelstein 7-AS stellaratorNuclear Fusion 2002
- Modelling of impurity pellet ablation in ASDEX Upgrade (neon) and Wendelstein W7-AS (carbon) by means of a radiative (`killer') pellet codeNuclear Fusion 1999
- Status of WENDELSTEIN 7-X constructionNuclear Fusion 2003
- Effects of non-vanishing toroidal current densities on stability in the Wendelstein 7-AS stellaratorNuclear Fusion 2000
2005–2014105本 · 0.68%
W7-X建設と装置技術開発の時代
Wendelstein 7-Xの建設に関わる技術的課題や、定常運転のためのインベッセル機器、磁石システム、データ収集、プラズマ診断に関する論文が多数を占める。マシンリストではwendelstein-7xが79件に達し、一方でWendelstein 7-ASの電子サイクロトロン電流駆動やプローブ実験、有限ベータ配位でのジャイロ運動論的ITGモード解析なども行われた。JT-60SAやJETとの関連もわずかに見られる。
同時に語られた主題容器内機器、データ収集、プラズマ診断、定常状態、プラズマ対向機器、磁石システム
この時代の論文から
- Technical challenges in the construction of the steady-state stellarator Wendelstein 7-XNuclear Fusion 2013
- Gyrokinetic global electrostatic ion-temperature-gradient modes in finite β equilibria of Wendelstein 7-XNuclear Fusion 2005
- Reflectometry for Wendelstein 7-XNuclear Fusion 2006
- Electron cyclotron current drive in the Wendelstein 7-AS stellaratorPlasma Physics and Controlled Fusion 2005
2015–2026249本 · 0.99%
W7-Xの本格運転と高性能プラズマ研究
Wendelstein 7-Xの初プラズマ実験、高性能運転、ペレット入射、ダイバータ物理など、装置の運用成果が研究の中心である。不純物、プラズマ診断、中性粒子ビーム、高エネルギーイオン、スクレイプオフ層、リミター、軟X線などのトピックが並び、ASDEX Upgrade、TJ-II、LHD、ITERとの関連も見られる。とくにスクレイプオフ層とダイバータの物理が重要な課題として扱われている。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題不純物、プラズマ診断、高エネルギーイオン、中性ビーム、スクレイプオフ層、リミッター
この時代の論文から
- Overview of first Wendelstein 7-X high-performance operationNuclear Fusion 2019
- Major results from the first plasma campaign of the Wendelstein 7-X stellaratorNuclear Fusion 2017
- Plans for the first plasma operation of Wendelstein 7-XNuclear Fusion 2015
- High-performance plasmas after pellet injections in Wendelstein 7-XNuclear Fusion 2020
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている(Wendelstein、wendelstein stellarator など)。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文120本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、8本の論文(うち全文6本)と2枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
