HT-7は、核融合・プラズマ物理学の装置。中国のASIPPに建設された超伝導トカマクであり、長パルス放電や低域混成波電流駆動(LHCD)、イオンバーンスタイン波(IBW)加熱による高閉じ込め運転の研究に用いられた。また、リチウム被覆やボロナイゼーションなどの壁調整技術の開発と、不純物挙動の解明にも貢献した。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは88本ある。比重が最も大きかったのは2000–2004年で、その期間の論文の0.47%を占めた。直近の2025–2029年では0.00%。この用語集がこの主題を最初に拾うのは1995年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
解説
HT-7は、中国・合肥の中国科学院合肥物質科学研究院(当時のプラズマ物理研究所)が運用した超伝導トカマク装置である。トロイダル場コイルに超伝導磁石を用い、パルス長の短い通常銅コイル装置では原理的に難しい、数秒から数百秒に及ぶ定常プラズマ運転を実験テーマの中心に据えた点に特徴がある。低域混成波電流駆動(LHCD)やイオン・ベルンシュタイン波(IBW)加熱といった高周波系を主な加熱・電流駆動手段とし、長パルス放電、非誘導電流駆動プラズマの閉じ込め、壁処理による不純物制御など、後の大型超伝導トカマクに直結する物理・工学課題を幅広く扱った。1990年代後半から2010年代前半まで運用され、その経験は後継装置EAST(実験先進超伝導トカマク、HT-7Uとして設計された)の基盤となった。
装置と超伝導磁石システム
HT-7は、同研究所の小型装置HT-6Mでの研究を踏まえて建設された中型トカマクで、ロシアから供与された超伝導トロイダル場コイル・システムを中核とする。超伝導磁石を採用したことの意味は単なる省エネルギーではなく、トロイダル場を数時間にわたり一定に保てること、すなわち磁場の維持がもはや放電時間の制約にならないことにある。一方で、変圧器(中心ソレノイド)による誘導電流駆動には依然としてフラックスの上限があり、放電を長く続けるには電流の非誘導駆動が不可欠となる。実際、初期の運転段階では10.7秒程度の繰り返し可能な放電が得られていたが、これはポロイダル場(PF)システムの能力の限界近くであり、それ以上の延長はLHCDによる電流駆動に依存することになった。
超伝導装置では、コイルを極低温に保つクライオスタットと真空容器の運転管理そのものが独自の技術課題であり、HT-7ではクライオスタット真空容器の運転経験が蓄積された。また、長パルス運転ではプラズマから壁への熱負荷が定常的に続き、水冷構造を持たない初期のリミッタでは熱除去が律速となる。このため銅クロム合金の熱シンクを持つ能動冷却型の平板トロイダル・リミッタが設計・導入され、ドープト・グラファイトと銅の接合技術など第一壁材料の開発も進められた。プラズマ水平位置を磁気プローブに頼らず推定する「センサーレス」制御の試みなど、長パルス・定常運転に必要な計測・制御技術の開発もこの時期の特徴である。
LHCDとIBWによる定常・長パルス運転
HT-7の物理実験の中心は、低域混成波電流駆動(LHCD)とイオン・ベルンシュタイン波(IBW)加熱の組み合わせによる高性能・長パルス放電である。LHCDはプラズマ低域混成周波数帯の波を入射して高速電子を生成し、トロイダル電流を直接駆動する方式で、HT-7では全電流をLH波だけで駆動する放電が3秒間達成された。IBWは、入射した高速波がプラズマ中でイオン・ベルンシュタイン波に変換されて電子を加熱する方式で、共鳴層の位置を選ぶことで軸上・軸外のいずれでも電子加熱が可能であり、電子圧力分布の形状を制御できる点が特徴である。
両者を組み合わせた実験では、IBWの共鳴層を適切に選ぶと閉じ込めが改善し、電子圧力分布が全体的に尖った形、あるいは局所的に急峻な形に制御できることが示された。軸外LHCDによって内部輸送障壁(ITB)構造が形成され、軸外IBW加熱によってMHD不安定化が抑制される例も得られた。LHCDとIBWを併用すると電流密度分布が広がる傾向が見られ、二つの波の間の相乗効果の兆候と解釈された。これらの最適化により、非誘導駆動割合50〜80%、規格化ベータと閉じ込め改善係数の積βN×H89が1〜4の放電が、数個から数十個のエネルギー閉じ込め時間にわたって維持された。長パルスでは電子温度約1 keV、中心密度約1×10^19 m^-3の放電が10〜20秒得られ、運転後期には400秒に及ぶ長パルス放電が達成されている。この400秒運転は、後続のEASTでの20秒超の長パルス・ダイバータ放電に向けた物理・技術両面の予備実験として位置づけられていた。
なお、高周波系は加熱以外にも使われた。ICRF(高周波)波は壁処理、プラズマ立ち上げ、高速波およびIBW加熱に利用され、特に新しいRF処理技術は将来の大型超伝導トカマクの壁処理手段として有力とされた。また、中性粒子ビーム(DNB)のビーム出力・プロファイル計測や、ペレット入射(HT-6Mとの共同研究)など、加熱・燃料供給の補助手段に関する研究も行われた。
MHD、セオウトゥースおよび端部物理
長パルス・非誘導駆動プラズマでは、電流分布が自励的に形成されるため、内部キンクモード(m=1モード)に伴うセオウトゥース振動が主要な観測対象となった。HT-7では、LHCDで電流を立ち上げたプラズマにおけるセオウトゥースの挙動、セオウトゥース・クラッシュ時にX点を横切る熱輸送の観測、クラッシュ時のバースト状電子サイクロトロン放射の解析などが行われた。特に、オーミックおよびLHCDプラズマでのセオウトゥース活動の系統的な研究は、クラッシュの機構をm=1磁気島の高速再接続ではなく乱流モデルで理解することを支持する結果を与えた。これは、セオウトゥース・クラッシュという古典的問題に対し、長パルス・電流駆動プラズマという新しい条件下で得られた知見である。
端部(エッジ)物理では、LHCD運転時のMHD活動が端部静電乱流に及ぼす影響、高密度オーミックプラズマにおける電子モード乱流とイオンモード乱流の共存(2次元ECE撮像による観測)、プラズマ境界における測地音響モードのスペクトル特性(ラングミュア・プローブアレイによる測定)などが調べられた。また、MARFE(端部の高密度放射層)が引き金となって閉じ込め改善モードが生じる現象も観測され、端部条件が全体の閉じ込め性能を左右するという描像を裏付けた。トロイダル電流の変調によってMHD活動を抑制する試みや、逃走電子の計測も行われている。
壁処理・プラズマ対向材料・不純物制御
定常運転では、壁からの水素再循環と不純物放出が放電品質を直接支配する。HT-7ではこの問題に対し、壁コーティングとプラズマ対向コンポーネント(PFC)の材料変更の両面から取り組んだ。2010年冬に炭素製PFCをモリブデン製(表面積約1.28 m^2)に交換した後、同一キャンペーン内でリチウムコーティング28回(計350 g)、続いてカルボラン(ボロン化)3 gという一連の壁処理を行い、同一条件に近い放電間で燃料保持と閉じ込めを比較する実験が実施された。
その結果は定量的に明瞭であった。モリブデンPFCのままでは壁からの脱ガスが顕著で、投入燃料の10%未満しか壁に捕獲されず(保持率は10^18個 s^-1程度)、中心部の巨大な放射損失のため閉じ込めは劣っていた。リチウムコーティング後は投入ガスの40〜80%が捕獲され(保持率10^20〜10^21個 s^-1)、放射が端部に局在し、良好な閉じ込めが記録された。ボロン化後は投入重水素の70〜80%が捕獲されるが、閉じ込めはリチウムほど良くなく、プラズマコアに顕著な放射が残った。有効イオン電荷Z_effの解析では、リチウムコーティングは端部再循環の制御に大きく優れる一方、不純物レベルの低減自体はボロン化の方が効果的である、という両者の役割分担が示された。高Z金属壁と低再循環の組み合わせがもたらす不純物挙動という課題は、その後の金属壁トカマク共通の問題となった。
リチウムによる表面制御は液体リチウムの利用にも展開され、プラズマ性能への効果が調べられた。また、リチウム・ボロンコーティングが重水素保持(壁への燃料トラップ)に及ぼす影響は、将来のD-T運転をにらんだ壁燃料管理の観点からも重要なデータを提供した。
HT-7からHT-7U/EASTへの系譜
HT-7の最大の意義は、超伝導トカマクによる定常運転という概念を実証し、それを次代の装置に引き継いだ点にある。HT-7で得られた長パルス運転の経験、LHCD・IBWによる電流駆動とプロファイル制御の手法、壁処理と不純物制御の技術は、HT-7Uとして設計が進められた後継装置に直接反映された。HT-7Uの物理設計は2000年頃にほぼ完了し、ケーブル・イン・コンジット導体を用いたトロイダル場コイルの2/3模型と中心ソレノイドの1/4模型が製作・試験されるなど、工学開発もHT-7の運転と並行して進んだ。この装置は後にEAST(実験先進超伝導トカマク)と改名され、能動水冷の炉内コンポーネントと形状制御を備えた世界初の全超伝導トカマクとして、2006年に最初のダイバータ・プラズマを達成した。
EASTの初期運転では、超伝導コイルの制約下でのプラズマ立ち上げ・電流立ち上げ、平衡再構成に基づく実時間位置制御などの課題が解決され、20秒超の長パルス・ほぼ完全非誘導駆動の放電が早期に達成されたが、その背後にはHT-7での長パルス運転研究があった。HT-7自体もEASTの運転開始後しばらくは併存し、EASTを支援する物理・技術実験の場として使われた。中型の超伝導装置で定常運転の物理と工学を先取りしたHT-7の役割は、ITERやその後の定常炉構想につながる「定常トカマク」研究の流れの中で位置づけられるものである。
この解説が根拠にした論文から
- Recent experiments in the EAST and HT-7 superconducting tokamaksNuclear Fusion 2009
- Overview of steady state operation of HT-7 and present status of the HT-7U projectNuclear Fusion 2000
- Integration of LHCD and IBW heating for high-performance discharges under steady-state operation in the HT-7 tokamakNuclear Fusion 2003
- Influence of Li and B coatings of metal walls on deuterium retention and plasma confinement in HT-7Nuclear Fusion 2012
- Investigation of Zeff and impurity behaviour in lithium coating experiments with full metallic first wall in HT-7 tokamakPlasma Physics and Controlled Fusion 2015
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推移
研究の変遷
1995–200433本 · 0.33%
HT-7における定常運転と波動加熱の実験
この時代のHT-7論文は33本で、コーパス全体の0.33%を占める。Lower hybrid current drive、Ion Bernstein wave、Steady stateなどと共に現れ、HT-7U計画の現状報告やLHCDとIBWの統合実験など、定常運転に向けた波動加熱と電流駆動の研究が中心である。代表的な論文として、2000年のOverview of steady state operation of HT-7 and present status of the HT-7U projectや、2004年のIBWとLHCDの相互作用の実験が挙げられる。
同時に語られた主題低域混成波電流駆動、低域混成波、イオンバーンスタイン波、電流駆動、定常状態、プラズマ診断
この時代の論文から
- Overview of steady state operation of HT-7 and present status of the HT-7U projectNuclear Fusion 2000
- Lower hybrid current drive experiments and improved performance on the HT-7 superconducting tokamakNuclear Fusion 1999
- High density operation on the HT-7 superconducting tokamakNuclear Fusion 2000
- Experimental investigation of the interaction of IBW and LHCD in the HT-7 tokamakNuclear Fusion 2004
2005–201454本 · 0.35%
多様な周辺プラズマ現象とEASTとの連携
この時代は54本と最も多くの論文が現れ、コーパス全体の0.35%を占める。Lower hybrid current driveに加えて、Sawtooth oscillation、Limiter、Runaway electron、Lithiumなどと共に現れ、EASTとの比較実験、準定常交流プラズマ電流運転、ICRFボロナイゼーション後のリサイクリング挙動など、周辺プラズマと運転手法の多様な研究が行われた。2009年のRecent experiments in the EAST and HT-7 superconducting tokamaksや2013年のkinetic geodesic acoustic modesの観測が代表的な論文である。
同時に語られた主題低域混成波電流駆動、低域混成波、鋸歯状振動、リミッター、電流駆動、逃走電子
この時代の論文から
- Recent experiments in the EAST and HT-7 superconducting tokamaksNuclear Fusion 2009
- Observation of nonlinear couplings between coexisting kinetic geodesic acoustic modes in the edge plasmas of the HT-7 tokamakNuclear Fusion 2013
- Quasi-steady-state ac plasma current operation in HT-7 tokamakNuclear Fusion 2007
- Overview of the latest HT-7 experimentsNuclear Fusion 2005
2015–20261本 · 0.00%
リチウム被覆と金属第一壁における不純物研究
この時代の論文は1本のみで、コーパス全体に占める割合は0.0%である。Lithium、Impurity、First wallと共に現れ、フルメタル第一壁を持つHT-7でのリチウムコーティング実験におけるZeffと不純物挙動を調査している。HT-7に関する研究はこの1本で終わっており、以降のコーパスには現れない。
この時代の論文から
- Investigation of Zeff and impurity behaviour in lithium coating experiments with full metallic first wall in HT-7 tokamakPlasma Physics and Controlled Fusion 2015
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文52本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、5本の論文(うち全文0本)と0枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
