HL-3は、核融合・プラズマ物理学の装置。中国の磁気核融合実験装置であり、旧HL-2Mから改称されたトカマクである。超HモードやQHモードなどの先進運転シナリオ、ダイバータ設計、ELM制御、リアルタイム診断などの研究に活用されている。この用語集が追う論文のうち、タイトルにこの主題が現れるものは71本ある。比重が最も大きいのは直近の2025–2029年で、その期間に発表された論文の1.13%を占める。この用語集がこの主題を最初に拾うのは2020年以降で、それ以前の収録論文には現れない。
Tokamak in China (formerly HL-2M)
解説
HL-3は、中国が建設した中型トカマク実験装置である。もともとHL-2Mと呼ばれていた装置が2020年の運転開始前後にHL-3と改称された。主要半径1.78 m、マイナー半径0.65 m、プラズマ電流2.5〜3 MA、トロイダル磁場2.2〜3 Tという設計参数を持ち、断面積は細長比1.8程度、三角形度0.5程度のD型断面である。研究目的は、ITERおよび次世代核融合炉に向けた先進的ダイバータ概念と高熱流束部材の開発、高性能運転シナリオの確立であり、将来的には重水素・三重水素(D-T)実験も計画されている。

fig.1 Quantitative analysis of deuterium retention on HL-3 graphite tiles using combined LIA-QMS and LIBS (2026) · CC BY 4.0
(a) Internal photograph of the HL-3 device showing sampling regions 1–3, and the tile numbering for (b) Region 1 (LFS midplane), (c) Region 2 (HFS below midplane), and (d) Region 3 (LFS near the divertor).
図は装置内部の写真で、第一壁を覆う黒鉛タイルが規則的に並ぶ様子と、試料採取のために区分けされた3つの領域(高磁場側中間面、中間面下方、ダイバータ近傍の低磁場側)が示されている。この黒鉛タイルが直接プラズマに接する第一壁材であり、燃料の保持(co-deposition)評価の対象となる。
装置の概要とミッション
HL-3は2020年に運転を開始し、2022〜2023年の第2実験キャンペーンでダイバータ配置による1 MA超のプラズマ電流運転を達成した。この際、第一壁・下部ダイバータの更新、極低温・水冷・ベーキング・グロー放電洗浄系の整備が行われ、真空容器は135 °C・10日以上のベーキングで水を脱気した後、ヘリウムグロー放電洗浄で不純物を除去した。
補助加熱・電流駆動系は現在11 MWまで拡充されており、中性粒子ビーム入射(NBI)5 MW、電子サイクロトロン加熱(ECRH)4 MW、低域混成波電流駆動(LHCD)2 MWから構成される。計画では合計20 MWへの増強と、細長比約1.8のダブルヌル配置への移行が進められている。
診断システム
HL-3にはプラズマの主要パラメータを測定する包括的な診断装置群が整備されている。電子密度の実時間フィードバック制御には位相処理器付きヘテロダイン干渉計が、密度分布測定にはFMCW反射計が用いられる。電子温度分布は60チャネルのECE放射計(容器内準光学系とITER型長距離コルゲート導波管を使用)と、コア領域用(50 Hz/3 J)およびエッジ領域用(30 Hz/2 J)の2系統のトムソン散乱装置で測定される。これに加え、FIRレーザー偏光・干渉計、多色ガスパフ撮像、可視・赤外統合撮像系などが整備され、境界プラズマの密度・温度の二次元分布やプラズマ境界の再構成が行われている。中性粒子分析器(E∥B型)による高エネルギー粒子測定も導入されている。

fig.1 First experimental observation of QH-mode with EHOs on the HL-3 tokamak (2026) · CC BY 4.0
The typical plasma configuration and distribution of the diagnostics on the cross section of HL-3 tokamak.
図はHL-3の典型的なプラズマ断面における磁気平衡と診断装置の配置を示す。FIR、ドップラー反射計、ECE、CXRS、FM-CW反射計、軟X線、トムソン散乱、ダイバータプローブなどが、それぞれ測定対象領域に応じて配置されている様子が分かる。
ダイバータ物理と先進的ダイバータ構成
HL-3の研究の柱の一つが、プラズマ対向面への熱負荷低減である。ダイバータを脱離(detachment)状態で運転することは、ターゲット表面の電子温度と熱流束を下げる有効な手段であり、タングステン材では定常10 MW/m²程度が耐熱の目安とされる。HL-3の下部ダイバータは、スノーフレーク配置を含む多様な磁場構成に対応できるよう比較的開放的な構造を持ち、スノーフレーク・マイナス、スノーフレーク・プラス、さらにトリポッド型の先進的ダイバータ配置が実現されている。

fig.6 Recent advance progress of HL-3 experiments (2024) · CC BY 4.0
Typical advanced divertor configuration of HL-3, (a) snowflake-minus (SF−), (b) snowflake-plus (SF+), and (c) tripod.
図はHL-3で実現された3種類の先進的ダイバータ配置を示す。(a)スノーフレーク・マイナス、(b)スノーフレーク・プラス、(c)トリポッドであり、いずれもX点近傍の磁場構造が通常の単一X点配置と異なり、磁束膨張が大きいことが分かる。
実験では、赤外線サーモグラフィ測定により、スノーフレーク配置やX-ダイバータ配置が標準配置に比べてターゲット熱流束を顕著に低減することが確認された。その機構は、弱いポロイダル磁場と長い接続長による磁力線とターゲット面の入射角の減少、ダイバータ内の電力散逸体積の増大、再循環中性粒子や不純物に対する遮蔽能力の向上である。一方で、開放型のX-ダイバータでは粒子フラックスの分散によって再循環中性粒子の密度・圧力が低下し、粒子排出能力が弱まること、またE×Bドリフトが有利磁場方向の脱離を妨げる要因になることが実験とSOLPS-ITERシミュレーションの両方から示された。これらの課題に対し、V字スロット閉鎖構造とX-ダイバータの磁束膨張を組み合わせた閉鎖型V字スロットX-ダイバータ(CVXD)や、W型・V型・SAS・コンパクト放射型の利点を統合したX点スロット閉鎖(XSC)型上部ダイバータの設計がSOLPS-ITER解析に基づいて進められている。後者は細長比約1.8のダブルヌル運転を可能にする上部ダイバータとして、工学設計段階に入っている。
高閉鎖性運転とELM制御
Hモードはエッジ輸送障壁による高閉鎖性を実現するが、エッジ局在モード(ELM)に伴う瞬間的熱負荷がプラズマ対向面を損傷しうるため、その制御・回避が重要課題である。HL-3では、NBI・ECRH・LHCDを組み合わせてメガアンペア・プラズマでの標準的なセイトゥースを伴う高閉鎖性モードが初めて達成された。さらに、ELMのない高閉鎖性領域として、EDA HモードとQHモードの観測が報告されている。
EDA Hモードは、準コヒーレントモード(QCM)と呼ばれるエッジ変動がペデスタル領域の輸送を高め、圧力勾配を調整することでELMを生じさせずに高閉鎖性を維持する運転領域である。HL-3でもELMフリーのHモードでEDA Hモードに整合する特性が初めて観測され、その運転領域とQCMの性質が解析されている。QHモードでは、エッジ高調波振動(EHO)がペデスタル勾配領域に生じ、飽和したキンク/ピーリングモードとして振る舞うことでELMを回避する。HL-3でもEHOを伴う遷移的なQHモードが初めて観測され、EHOの駆動がE×B流れに関連する半径方向電場のシアおよび曲率と強く相関することが示されている。これらの観測は、低衝突性の燃焼プラズマで有利なELMフリー運転の実現可能性を探る上で重要である。
ELM制御の能動的手法としても、共鳴磁場摂動(RMP)の容器内コイル系、ペレット入射、超音速分子ビーム入射(SMBI)、低域混成波入射によるELM影響の緩和などが研究されている。ペレット入射系は直径1.0 mm・長さ1.0〜1.3 mmの円柱ペレットを60 Hz・100〜300 m/sで注入でき、SMBI系は高磁場側からとダイバータ熱流束制御用のものを含む3系統が整備されている。また、ペデスタル近傍のピーリング・バローニング不安定性的に振る舞うスーパーHモードの非線形シミュレーションや、静穏Hモードの予測的非線形MHD解析も進められている。
実験の進展と展望
HL-3では、1 MA超のHモード運転に伴う機器安全課題の管理、垂直不安定能動制御用電源の整備、深層学習に基づくディスラプション予測の新装置データ環境への適用、セイトゥースの実時間識別など、運転の安定性と信頼性を高める取り組みが進んでいる。プラズマ・壁相互作用の分野では、第2キャンペーン後に回収した黒鉛タイルに対し、レーザー誘起アブレーション質量分析とレーザー誘起ブレークダウン分光を組み合わせた手法で重水素保持量の定量評価が行われ、炭素材料における主要な保持機構である共堆積層の分布が調べられている。これは将来のD-T運転におけるトリチウム在庫管理の基礎データとなる。
今後は加熱系の20 MWへの増強、高細長比ダブルヌル配置への移行、閉鎖型先進ダイバータの実装を経て、D-T実験が計画されている。HL-3は、ITER支援および次世代炉の課題解決を目的とした、ダイバータ物理・高閉鎖性運転・プラズマ制御の統合的研究拠点として位置づけられている。
この解説が根拠にした論文から
- Recent advance progress of HL-3 experimentsNuclear Fusion 2024
- Design of an X-point slot closed divertor for the HL-3 tokamak with SOLPS-ITERNuclear Fusion 2025
- Design of a closed V-shape slot X-divertor to improve divertor detachment and pumping in HL-3 with SOLPS-ITERPlasma Physics and Controlled Fusion 2025
- First experimental observation of QH-mode with EHOs on the HL-3 tokamakNuclear Fusion 2026
- Experimental observation and edge characteristics of EDA H-mode on the HL-3 tokamakNuclear Fusion 2026
- Quantitative analysis of deuterium retention on HL-3 graphite tiles using combined LIA-QMS and LIBSNuclear Fusion 2026
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推移
研究の変遷
2015–202671本 · 0.28%
HL-3計測・運転開始の時代
この時代、HL-3装置に関する論文が現れ、プラズマ診断、Hモード、周辺局在モード、トムソン散乱、SOLPS-ITER、プラズマ平衡、磁気摂動、干渉計などと共に論じられている。ITERという語も2件併記され、HL-3が核融合研究の文脈で登場する。代表的な論文として、HL-3トカマクにおけるE parallel B型中性粒子分析器の開発と検証、HL-3縦型中性子カメラのコリメータ遮蔽構造のシミュレーション、多数ペレット入射システムの熱モデリング、真空システムのコミッショニングと初期運転、自由境界平衡の決定などがあり、装置の計測・運転・モデリングに関する研究が中心である。
この記述以降に論文が追加されている
同時に語られた主題プラズマ診断、SOLPS-ITER、中性ビーム、Hモード、高エネルギーイオン、周辺局在モード
この時代の論文から
- Development and validation of the E parallel B type neutral particle analyzer on the HL-3 tokamakFusion Engineering and Design 2023
- A simulation study of a collimating shield structure in a vertical neutron camera on HL-3Fusion Engineering and Design 2024
- Thermal modeling of the multiple shattered pellet injection system for HL-3Fusion Engineering and Design 2024
- Commissioning and initial operation of HL-3 vacuum systemFusion Engineering and Design 2024
よく登場する装置
この数字の作り方
- 数え方 —
- 同じものが別の名前で書かれていてもまとめて数えている。綴りが変わった時期に推移が動いて見える、ということは起きない
- 割合 —
- その時代の収録論文全体に占める比率。コーパスは1970年代より2010年代のほうが9倍大きいため、本数のままではほとんどの主題が右肩上がりに見えてしまう
- 記述 —
- その時代の論文・共起する主題・登場する装置だけを根拠にAIが書いている
- 冒頭の定義 —
- 用語そのものの説明だけは、論文27本の要旨を読ませたうえでAIの分野知識で書かせている。ここだけは収録論文に書かれていることの要約ではない
- 解説 —
- では、6本の論文(うち全文6本)と3枚の図版を読ませたうえでAIが書いている
- 範囲 —
- 収録は6誌に限られる。ここで減っていることは、分野がその取り組みをやめたことを意味しない
